近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律
法令番号: 法律第144号
公布年月日: 昭和39年7月3日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

近畿圏整備法第15条に基づく付属法律として、既成都市区域内の一定区域を工場制限区域と定め、人口増大の原因となる大規模な工場や学校の新設・増設を制限することで、産業と人口の過度集中を防止することを目的としている。制限対象は工場、大学、高等専門学校、各種学校で、制限区域は京都市、大阪市、堺市、布施市、守口市、神戸市、尼崎市、西宮市の人口密度の高い市街地部分を予定。制限区域内での新増設には府県知事(指定都市は市長)の許可を必要とし、許可基準や違反措置等は首都圏の工業等制限法に準じている。

参照した発言:
第46回国会 衆議院 建設委員会 第26号

審議経過

第46回国会

衆議院
(昭和39年5月6日)
参議院
(昭和39年5月7日)
(昭和39年5月19日)
衆議院
(昭和39年5月27日)
(昭和39年6月3日)
(昭和39年6月5日)
(昭和39年6月12日)
(昭和39年6月16日)
参議院
(昭和39年6月22日)
(昭和39年6月23日)
(昭和39年6月25日)
(昭和39年6月26日)
近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十九年七月三日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百四十四号
近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
制限施設(第四条―第十条)
第三章
雑則(第十一条―第十五条)
第四章
罰則(第十六条―第十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、工場等制限区域について、大規模な工場、大学、高等専門学校その他人口の増大をもたらす原因となる施設の新設及び増設を制限し、もつて既成都市区域への産業及び人口の過度の集中を防止することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「既成都市区域」とは、近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)第二条第三項に規定する区域をいう。
2 この法律で「作業場」とは、製造業(物の加工業を含み、政令で定める業種に属するものを除く。以下同じ。)の用に供する工場の作業場をいう。
3 この法律で「教室」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学(政令で定める大学を除くものとし、以下単に「大学」という。)若しくは高等専門学校又は同法第八十三条第一項に規定する各種学校(政令で定める各種学校を除くものとし、以下単に「各種学校」という。)の教室をいう。
4 この法律で「制限施設」とは、一の団地内にある作業場又は教室で、その床面積の合計がそれぞれ基準面積以上であるものをいう。
5 前項の基準面積とは、作業場については工場の種類に従つて千平方メートル以上で政令で定める面積、大学及び高等専門学校の教室については千五百平方メートル、各種学校の教室について八百平方メートルをいう。
6 この法律で「学校」とは、大学、高等専門学校及び各種学校をいう。
(工場等制限区域)
第三条 既成都市区域のうち政令で定める区域を工場等制限区域とする。
第二章 制限施設
(新設及び増設の制限)
第四条 工場等制限区域内においては、制限施設を新設し、又は増設してはならない。ただし、府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)の区域内においては、府県が制限施設を新設し、又は増設する場合を除き、指定都市の市長とし、以下「知事等」という。)の許可を受けたときは、この限りでない。
2 次の各号の一に該当するときは、その用途変更若しくは利用又は床面積の増加は、制限施設の新設とみなす。
一 制限施設以外の施設の用途を変更し、又は新たに利用することによつて、その施設を制限施設とするとき。
二 一の団地内において作業場又は教室の床面積を増加することによつて、その団地内の作業場又は教室を制限施設とするとき。
(経過措置)
第五条 一の地域が工場等制限区域となつた際現にその区域内において施行されている工事(用途変更又は新たな利用のための作業を含む。以下同じ。)に係る制限施設の新設又は増設については、前条第一項の規定を適用しない。第二条第二項、第三項又は第五項の規定に基づく政令の改正により制限施設の範囲が拡張された際現に工場等制限区域内において施行されている工事に係る制限施設で、当該政令の改正の結果制限施設となるものの新設又は増設についても、同様とする。
(許可の申請)
第六条 第四条第一項ただし書の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を知事等に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその代表者の氏名及び住所
二 制限施設の種類及び作業場にあつては工場の種類
三 制限施設の所在地
四 制限施設の床面積
五 工場等制限区域内に制限施設を新設し、又は増設しようとする理由
2 前項の申請書には、制限施設に係る敷地及び建築物の配置図その他政令で定める書類を添附しなければならない。
(許可の基準等)
第七条 知事等は、第四条第一項ただし書の許可の申請があつたときは、次の各号の一に該当する場合でなければ、許可をしてはならない。
一 当該制限施設の新設又は増設が、工場等制限区域内における人口の増大をもたらすこととならないと認められるとき。
二 当該制限施設の新設又は増設によつて、工場等制限区域内における住民又は他の事業者がその生活上又は事業経営上現に受けており、又は将来受けるべき著しい不便が排除されると認められるとき。
三 工場等制限区域外において申請者が当該申請に係る事業を経営することが著しく困難であると認められるとき。
四 その他政令で定める場合に該当するとき。
2 知事等は、第四条第一項ただし書の規定により許可又は不許可の処分をするには、あらかじめ、近畿圏整備長官及び関係行政機関の長の承認を受けなければならない。
3 指定都市の市長が前項の規定により近畿圏整備長官の承認を求めるには、府県知事を経由しなければならない。この場合において、府県知事は、すみやかに、その意見を附して、これを近畿圏整備長官に進達するものとする。
(許可の承継)
第八条 第四条第一項ただし書の許可を受けた者がその許可に係る作業場又は教室をその用に供している、又は供しようとしている製造業又は学校につき事業の譲渡又は学校の設置者の変更が行なわれた場合において、その譲受人又は新たな設置者が事業の譲渡又は設置者の変更が行なわれた日から起算して六箇月以内に政令で定める事項を知事等に届け出たときは、その者は、当該許可を受けた者の地位を承継する。
2 第四条第一項ただし書の許可を受けた者につき、相続又は合併が行なわれた場合において、相続人又は合併後存続し若しくは合併により設立した法人が相続又は合併が行なわれた日から起算して六箇月以内に政令で定める事項を知事等に届けたときも、前項と同様とする。
(許可の取消し)
第九条 知事等は、第四条第一項ただし書の許可を受けた者が、正当な理由がないのに一年以内に許可を受けた制限施設の新設又は増設の工事に着手しないときは、その許可を取り消すことができる。
2 第七条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により許可を取り消す場合に準用する。
(違反に対する措置)
第十条 知事等は、第四条第一項の規定に違反して新設され、又は増設された制限施設を製造業又は学校の用に供している者に対し、その違反を是正するに必要な限度で、当該制限施設の使用制限を命ずることができる。
第三章 雑則
(立入検査)
第十一条 知事等は、前条の規定による処分をしようとするときは、その職員に、当該処分に係る工場又は学校に立ち入り、制限施設その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(聴聞)
第十二条 知事等は、第九条第一項又は第十条の規定による処分をしようとするときは、その処分に係る者に対し、相当な期間をおいて予告した上、公開による聴聞を行なわなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、その処分に係る者及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(審査請求の手続における意見の聴取)
第十三条 この法律の規定によつて知事等がした処分についての審査請求に対する裁決は、近畿圏整備長官及び関係行政機関の長の意見を聞いた後にしなければならない。
(国の設置する制限施設に関する特例)
第十四条 国が制限施設を新設し、又は増設する場合においては、当該制限施設を管理する行政機関の長と知事等との協議が成立することをもつて第四条第一項ただし書の許可があつたものとみなす。
(他の法律の適用)
第十五条 この法律は、製造業又は学校につき、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)、学校教育法その他の関係法律の適用を妨げるものではない。
第四章 罰則
第十六条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第四条第一項の規定に違反して制限施設を新設し、又は増設した者
二 第十条の規定による命令に違反した者
第十七条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項又は第二項に規定する届出に関し、虚偽の届出をした者
二 第十一条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して六箇月をこえ一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 近畿圏整備法の一部を次のように改正する。
第四条に次の二号を加える。
五 近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律(昭和三十九年法律第百四十四号)の施行に関する事務を処理すること。
六 近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律その他の法律(これらに基づく命令を含む。)により近畿圏整備長官の権限に属する事務を処理すること。
第五条第二項中「監督する」を「監督するほか、他の法律(これに基づく命令を含む。)によりその権限に属する事項を実施する」に改める。
第十五条(見出しを含む。)、中「工場、学校等制限区域」を「工場等制限区域」に改める。
内閣総理大臣 池田勇人
大蔵大臣 田中角栄
文部大臣 灘尾弘吉
厚生大臣 小林武治
農林大臣 赤城宗徳
通商産業大臣臨時代理 国務大臣 田中角栄
運輸大臣 綾部健太郎