(建物の区分所有)
第一条 一むねの建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
(定義)
第二条 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(次条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び次条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
(共用部分)
第三条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
第四条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分は、それらの区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、、第二十条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第百七十七条の規定は、共用部分には適用しない。
(区分所有者の権利義務)
第五条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
(先取特権)
第六条 区分所有者は、共用部分又は建物の敷地につき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利を含む。)及び建物に備えつけた動産の上に先取特権を有する。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。
(区分所有権売渡請求権)
第七条 専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
(共用部分の共有)
第八条 共用部分が区分所有者の全員又はその一部の共有に属する場合には、その共用部分の共有については、次条から第十五条までに定めるところによる。ただし、第十条及び第十二条から第十四条までに規定する事項については、規約で別段の定めをすることを妨げない。
第九条 各共有者は、共用部分をその用方に従つて使用することができる。
第十条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、第四条第一項ただし書の共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
第十一条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。
第十二条 共用部分の変更は、共有者全員の合意がなければ、することができない。ただし、共用部分の改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものは、共有者の持分の四分の三以上の多数で決することができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
第十三条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、共有者の持分の過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前条第二項の規定は、前項本文の場合に準用する。
3 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。
第十四条 各共有者は、その持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
第十五条 共有者が共用部分につき他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行なうことができる。
(共用部分の管理所有)
第十六条 第四条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(同条第一項ただし書の共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
2 前項の共用部分の所有者は、規約に別段の定めがない限り、その共用部分につき、保存行為及びその共用部分の性質を変えない範囲内における利用又は改良を目的とする行為を除くその他の行為をすることができない。
(管理者)
第十七条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行なうに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。
第十八条 管理者は、共用部分を保存し、第十二条第一項若しくは第十三条第一項の規定による共有者の合意若しくは決定又は集会の決議を実行し、及び規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
第十九条 管理者は、毎年一回一定の時期に、区分所有者に対し、その事務に関する報告をしなければならない。
第二十条 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
2 第五条第二項及び第十六条の規定は、前項の場合に準用する。
第二十一条 第六条の規定は、管理者が共用部分又は建物の敷地につき区分所有者に対して債権を有する場合に準用する。
第二十二条 この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。
(規約)
第二十三条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。ただし、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
第二十四条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者全員の書面による合意によつてする。
2 一部の区分所有者のみの共用に供されるべき共用部分に関する規約の設定、変更又は廃止は、それらの区分所有者のみの書面による合意によつてすることができる。この場合において、他の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
3 第一項及び前項前段の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
第二十五条 規約は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。
第二十六条 規約は、管理者又は区分所有者若しくはその代理人で建物を使用しているものの一人が保管しなければならない。
2 前項の規定により規約を保管すべき区分所有者又はその代理人は、区分所有者の過半数で定める。
3 第一項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、規約の閲覧をさせなければならない。
(集会)
第二十七条 管理者又は区分所有者の四分の一以上で議決権の四分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
第二十八条 集会を招集するには、会日より少なくとも五日前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に通知しなければならない。ただし、その日数は、規約で増減することができる。
第二十九条 集会においては、前条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
第三十条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十条に定める割合による。
第三十一条 集会の議事は、規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
第三十二条 集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。
第三十三条 集会の議事については、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長がこれに署名押印しなければならない。
第三十四条 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面による合意があつたときは、集会の決議があつたものとみなす。
(建物の一部が滅失した場合)
第三十五条 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。
2 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。ただし、裁判所は、他の区分所有者の請求により、相当の期限を許与することができる。
3 第一項の場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、区分所有者は、建物の再建に関し協議をしなければならない。
4 前項の協議をすることができないとき、又はその協議が成立しないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。ただし、裁判所は、他の区分所有者の請求により、代金の支払につき相当の期限を許与することができる。
5 前四項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
(団地への準用)
第三十六条 第十七条から第十九条まで及び第二十二条から第三十四条までの規定は、一団地内に数むねの建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者の共有に属する場合に準用する。この場合において、第十七条から第十九条まで、第二十三条から第二十八条まで、第三十条から第三十二条まで及び第三十四条中「区分所有者」とあるのは「土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)の共有者」と、第十八条及び第二十四条中「共用部分」とあるのは「土地又は附属施設」と、第十八条中「第十二条第一項若しくは第十三条第一項」とあるのは「民法第二百五十一条若しくは第二百五十二条」と、第三十条中「第十条に定める」とあるのは「持分の」と読み替えるものとする。
(過料)
第三十七条 正当な理由がなく、第二十六条第三項(第三十三条第三項、第三十四条第二項又は前条において準用する場合を含む。)の規定に違反した規約、議事録又は書面の閲覧を拒んだ者は、一万円以下の過料に処する。