自作農維持創設資金融通法
法令番号: 法律第165号
公布年月日: 昭和30年8月15日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

農地改革後、自作農となった農家が自然災害や疾病、相続等による臨時支出のため農地を売却せざるを得ない状況が増加している。特に経済的に弱い農家は転落の危険にさらされており、農業経営の安定と農家の転落防止のための制度確立が急務となっている。そこで、農地および採草放牧地が農業経営の基盤であることを踏まえ、農林漁業金融公庫が農地等の取得・維持・細分化防止に必要な資金を長期低利で貸し付けることで、農家経営の安定を図ることを目的として本法案を提出するものである。

参照した発言:
第22回国会 参議院 農林水産委員会 第11号

審議経過

第22回国会

参議院
(昭和30年5月24日)
(昭和30年5月26日)
衆議院
(昭和30年6月4日)
(昭和30年6月14日)
(昭和30年7月21日)
(昭和30年7月26日)
(昭和30年7月28日)
(昭和30年7月28日)
参議院
(昭和30年7月29日)
(昭和30年7月29日)
衆議院
(昭和30年7月30日)
参議院
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
自作農維持創設資金融通法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年八月十五日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百六十五号
自作農維持創設資金融通法
(目的)
第一条 この法律は、農地及び採草放牧地が農業経営の基盤であり、かつ、農業者がこれらの土地を所有することがその農業経営の安定を図るための要件であることにかんがみ、農地若しくは採草放牧地を取得し、自作地若しくは自作採草放牧地を維持し、又は自作地若しくは自作採草放牧地の細分化を防止しようとする農業者に対し、農林漁業金融公庫がこれに必要な資金を長期かつ低利で貸し付けることにより、農業者の経営の安定を図ることを目的とする。
(貸付)
第二条 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)は、前条の目的を達成するため、次の各号に掲げる者で、第五条第一項の都道府県知事の認定を受けたものに対し、それぞれ当該各号に掲げる資金の貸付を行う。
一 その耕作又は養畜の事業に供している農地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地をいう。以下同じ。)又は採草放牧地(同項に規定する採草放牧地をいう。以下同じ。)の面積、生産力等の条件及びその家族労働力等の農業経営能力を考慮して、農地又は採草放牧地の面積を増加しなければその経営の安定を確保することができないと認められる農業者に対し、その者がその経営の安定を確保するに要する農地又は採草放牧地を取得するのに必要な資金
二 小作地(農地法第二条第二項に規定する小作地をいう。以下同じ。)又は小作採草放牧地(同条第三項に規定する小作採草放牧地をいう。以下同じ。)につき耕作又は養畜の事業を行う者に対し、その者がその小作地又は小作採草放牧地を取得するのに必要な資金
三 共同相続人のうち遺産に属する農地又は採草放牧地について耕作又は養畜の事業を行おうとする者に対し、その者が、他の共同相続人からその農地又は採草放牧地に係る相続分の譲渡を受けるのに必要な資金その他遺産の分割によるその農地又は採草放牧地の細分化を防止するのに必要な資金
四 疾病、負傷、災害その他省令で定めるやむを得ない理由により資金を必要とする農業者で、その自作地(農地法第二条第二項に規定する自作地をいう。)又は自作採草放牧地(同条第三項に規定する自作採草放牧地をいう。)を売り渡す等その農業経営に著しい支障を及ぼすことなしには当該資金を調達することが困難と認められるものに対し、これにあてるための資金
2 前項の規定による貸付金の返還を確保するための方法については、公庫が、農林大臣及び大蔵大臣の承認を受けて定めるものとする。
(貸付条件)
第三条 前条の規定による貸付金(以下「貸付金」という。)の利率は、年五分、その償還期間は、二十年以内、その据置期間は、三年以内とする。
(貸付金額等の決定)
第四条 公庫は、第二条の規定による資金の貸付を行う場合には、貸付の申込をした者につき、次条第一項の農業経営安定計画を参酌して、貸付金額及び償還期間その他の貸付条件を定めなければならない。
(都道府県知事の認定)
第五条 第二条の規定による資金の貸付を受けようとする者は、省令で定める手続に従い、農業経営安定計画を作成し、これを申請書に添え、都道府県知事に提出して、当該貸付を受けることが適当である旨の都道府県知事の認定を受けなければならない。
2 前項の農業経営安定計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 農業経営の状況
二 資産及び負債の状況
三 収入及び支出の状況
四 収入及び支出の改善措置の概要
五 前号の措置に必要な資金の額及び調達方法
六 貸付金の使用計画及び償還計画
七 その他省令で定める事項
3 都道府県知事は、第一項の規定により申請書の提出があつたときは、次の各号の要件をみたす場合に限り、同項の認定をするものとする。
一 申請者が農業に精進する見込があること。
二 農業経営安定計画が適正であり、申請者がこれを達成する見込が確実であること。
三 申請者が農業経営安定計画を達成するためには、当該貸付を受けることが必要であつて他に適当な方法がないこと。
(都道府県知事の指導)
第六条 都道府県知事は、資金の貸付を受けた者(その者の一般承継人を含む。)に対し、その農業経営安定計画の達成につき必要な指導をすることができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)の一部を次のように改正する。
第一条に次の一項を加える。
2 農林漁業金融公庫は、前項に規定するものの外、自作農維持創設資金融通法(昭和三十年法律第百六十五号)に基き、農業者に対し、農地若しくは採草放牧地を取得し、自作地若しくは自作採草放牧地を維持し、又は自作地若しくは自作採草放牧地の細分化を防止するのに必要な資金を融通することを目的とする。
第十八条第三項中「第一項に掲げる業務」を「第一項及び前項に規定する業務」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 公庫は、第一項に規定する業務の外、自作農維持創設資金融通法(以下「融通法」という。)第二条に規定する資金の貸付の業務を行う。
第二十九条第二項中「この法律」の下に「又は融通法」を加える。
第三十条第二項第一号中「、この法律に基く命令又はこれらの法令に基いてする主務大臣の命令」を「若しくは融通法又はこれらの法律に基く命令」に改める。
大蔵大臣 一万田尚登
農林大臣臨時代理 国務大臣 高碕達之助
内閣総理大臣 鳩山一郎