農産物価格安定法
法令番号: 法律第225号
公布年月日: 昭和28年8月17日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

戦後、米麦以外の農産物は自由市場に移行したが、零細農家が多く、出荷時期が集中し需要変動への対応が困難なため、価格が不安定化している。この状況を放置すれば農業生産と農家経済に深刻な影響を及ぼし、需要者や関連産業にも悪影響を与える恐れがある。政府は澱粉買上げなどの応急措置を講じてきたが、十分な効果が得られていない。そこで、いも類などの重要農産物の生産を安定させ、生産農家の経済安定を図るため、価格安定制度を確立する必要がある。このような趣旨から本法案を提案する。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 農林委員会 第20号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年7月17日)
参議院
(昭和28年7月20日)
衆議院
(昭和28年7月21日)
(昭和28年7月22日)
参議院
(昭和28年7月22日)
(昭和28年7月23日)
(昭和28年7月24日)
(昭和28年7月27日)
(昭和28年7月28日)
(昭和28年7月29日)
(昭和28年7月30日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
農産物価格安定法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月十七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百二十五号
農産物価格安定法
(目的)
第一条 この法律は、米麦に次いで重要な農産物の価格が正常な水準から低落することを防止し、もつて農業生産及び農家経済の安定に資することを目的とする。
(買入)
第二条 政府は、前条の目的を達成するため、省令の定めるところにより、甘しよ生切干、甘しよでん粉、馬鈴しよでん粉及びなたね(以下「農産物等」という。)を、毎年農林大臣の定める数量の範囲内において、その生産者又はその者が直接若しくは間接の構成員となつている法人で省令で定めるもの(以下「生産者団体」という。)の売渡の申込により買い入れる。
2 前項の規定により買い入れる農産物等の数量は、生産者団体の意見を聞き、農産物等及びその原料である農産物の需給事情、時価等を勘案して定める。
3 第一項の規定により買い入れる農産物等は、省令で定める種類及び規格のものに限る。
(優先買入)
第三条 前条第一項の場合において、生産者団体があらかじめ農林大臣の承認又はその勧告を受けて第一条の目的を達成するために農産物等の販売の調整を行うときは、政府は、省令の定めるところにより、当該生産者団体からの売渡の申込に係る数量の農産物等を優先的に買い入れるものとする。
(甘しよ及び馬鈴しよの価格維持のための措置)
第四条 政府は、第二条第一項の売渡の申込が甘しよでん粉又は馬鈴しよでん粉に係るものである場合において、その原料である甘しよ又は馬鈴しよの生産者がその売渡の対価として受ける額が当該甘しよ又は馬鈴しよにつき定める次条第一項第一号の原料基準価格に基く額に達していないと認められるときは、その売渡の申込に応じないことができる。
(買入価格)
第五条 第二条第一項の規定により買い入れる農産物等の政府の買入の価格は、政令の定めるところにより、左の各号に掲げる額(以下「買入基準価格」という。)を基準とし、生産者団体にはかり、その意見を尊重して農林大臣が定める。
一 甘しよ生切干、甘しよでん粉又は馬鈴しよでん粉については、その原料である甘しよ又は馬鈴しよにつき、政令の定めるところにより、農業パリテイ指数に基き算出した価格、生産費及び需給事情その他の経済事情を参しやくして農林大臣が定める額(以下「原料基準価格」という。)に、加工に要する費用等を加えて得た額
二 なたねについては、農林大臣が、政令の定めるところにより、農業パリテイ指数に基き算出した価格、生産費及び需給事情その他の経済事清を参しやくして定める額
2 政府が生産者団体から買い入れる場合には、前項の政府の買入の価格に、農林大臣の定める金利、保管料等に相当する額を加算することができる。
3 第一項の政府の買入の価格及び原料基準価格は、毎年、政令で定める期日までに定めて公表しなければならない。
(買入価格等の改定)
第六条 前条第一項の政府の買入の価格及び原料基準価格は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において特に必要があるときは、改定することができる。この場合には、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(売渡及び売渡価格)
第七条 政府は、第二条第一項の規定により買い入れた農産物等を、当該農産物等の需給事情を勘案し、農産物等の時価に悪影響を及ぼさないように売り渡すものとする。
2 前項の売渡の価格は、買入基準価格及び時価を下つてはならない。但し、左の各号に掲げる場合には、農林大臣の定める価格とすることができる。
一 新規の用途又は販路に向けるため必要があるとき。
二 試験研究の用に供するとき。
三 管理上の必要により売り払うとき。
(生産者団体に対する措置)
第八条 農林大臣は、必要があると認めるときは、生産者団体に対し、第一条の目的を達成するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2 政府は、生産者団体が農林大臣の承認又は勧告を受けて第一条の目的を達成するために農産物等の販売の調整を行う場合において必要があるときは、必要な資金のあつ旋その他必要な措置を行うものとする。
(農産物等に関する調査)
第九条 農林大臣は、農産物等(甘しよ及び馬鈴しよを含む。以下本項において同じ。)の生産費、需給事情その他農産物等の価格の安定に関して必要な事項を調査するため必要があるときは、農産物等の生産者又は生産者団体から必要な事項の報告を徴し、又はその職員にこれらの者の営業所、事業所、倉庫等に立ち入らせ、帳簿書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を証する証票を携帯し、関係人の要求があるときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 食糧管理特別会計法(大正十年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。
第一条中「(てん菜生産振興臨時措置法(昭和二十八年法律第二号)ニ依リ政府ノ買入ルル甜菜糖ヲ含ム以下同シ)」を「及農産物価格安定法(昭和二十八年法律第二百二十五号)ニ依リ政府ノ買入ルル農産物等(以下農産物等ト謂フ)」に、第二条、第三条、第四条ノ三、第六条第一項及び第六条ノ五中「食糧」を「食糧及農産物等」に改め、附則第六項を次のように改める。
飼料需給安定法(昭和二十七年法律第三百五十六号)ノ規定ニ依ル飼料及てん菜生産振興臨時措置法(昭和二十八年法律第二号)ノ規定ニ依ル甜菜糖ノ買入、売渡、保管又ハ検査ニ関スル一切ノ歳入歳出ハ当分ノ間本会計ノ所属トスコノ場合ニ於テ第二条、第三条、第四条ノ三、第六条第一項及第六条ノ五中「食糧及農産物等」トアルハ「食糧、農産物等、飼料及甜菜糖」ト読替フルモノトス
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十七号の二の次に次の一号を加える。
四十七の三 農産物等(農産物価格安定法(昭和二十八年法律第二百二十五号)第二条第一項の農産物等をいう。以下同じ。)の買入、保管及び売渡を行うこと。
第四十八条第三号の次に次の一号を加える。
三の二 農産物等の買入及び売渡の価格の決定並びにてん菜糖の買入の価格の決定に関すること。
第四十九条に次の一号を加える。
三 農産物等及び輸入飼料の保管並びに輸入飼料たる麦類の売渡を行うこと。
第五十条に次の一号を加える。
五 農産物等及び輸入飼料の買入及び売渡(輸入飼料たる麦類の売渡を除く。)を行うこと。
大蔵大臣 小笠原三九郎
農林大臣 保利茂
内閣総理大臣 吉田茂