日本航空株式会社法
法令番号: 法律第154号
公布年月日: 昭和28年8月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

日本の国際航空事業は世界に比べて立ち遅れており、早急な開始が必要である。しかし、高額な資金を要する事業を民間資本のみで実施することは困難である。そこで、諸外国の例に倣い、政府出資10億円と民間資本を結集し、特殊法人を設立して国際線及び国内幹線を総合的に経営させることとした。新会社は政府出資による特殊法人だが、政府の干渉を極力排除し、民間企業の長所を活かせるよう配慮している。この特殊法人の基礎法規として本法案を提案する。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 運輸委員会 第3号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年6月24日)
参議院
(昭和28年6月30日)
衆議院
(昭和28年7月14日)
(昭和28年7月16日)
(昭和28年7月17日)
(昭和28年7月18日)
(昭和28年7月20日)
(昭和28年7月21日)
参議院
(昭和28年7月22日)
(昭和28年7月23日)
(昭和28年7月24日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
日本航空株式会社法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百五十四号
日本航空株式会社法
(会社の目的)
第一条 日本航空株式会社(以下「会社」という。)は、国際路線及び国内幹線における定期航空運送業並びにこれに附帯する事業を経営することを目的とする株式会社とする。
(株式)
第二条 会社の株式は、額面株式とする。
2 会社の株式は、記名株式とする。
3 会社は、商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百四条の規定にかかわらず、定款の定めるところにより、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第四条第一項各号に掲げる者が議決権の三分の一以上を占めることとならないようにするため、株式の譲渡を制限することができる。
4 前項の規定により株式の譲渡を制限する定をしたときは、その定を登記しなければならない。
(政府の出資)
第三条 政府は、予算の範囲内において、会社に対して出資することができる。
(代表取締役の決定の決議)
第四条 商法第二百六十一条第一項の会社を代表すべき取締役の決定の決議は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(社債発行限度の特例)
第五条 会社は、商法第二百九十七条の規定による制限をこえて社債を募集することができる。但し、資本及び準備金の総額又は最終の貸借対照表により会社に現存する純財産額のいずれか少い額の二倍をこえてはならない。
(一般担保)
第六条 会社の社債権者は、会社の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
(社債の募集等)
第七条 会社は、社債を募集し、又は弁済期限が一年をこえる資金を借り入れようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(補助金の交付)
第八条 政府は、会社に対し、その行う定期航空運送事業のうち当該路線の性質上経営が困難なものにつき公益上必要な最少限度の運送を確保するため、予算の範囲内において、補助金を交付することができる。
(債務保証)
第九条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、会社の債務について、保証契約をすることができる。
(政府所有株式の後配)
第十条 会社は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第一条の規定にかかわらず、毎営業年度における配当することができる利益金額が政府以外の者の所有する株式に対し年百分の八の割合に達するまでは、政府の所有する株式に対し利益を配当することを要しない。
2 会社は、政府以外の者の所有する株式に対し年百分の八の割合をこえて利益の配当をする場合は、その割合をこえて配当することができる利益金額を、政府以外の者の所有する株式に対しては一、政府の所有する株式に対しては五の割合で配当しなければならない。但し、政府の所有する株式に対する利益の配当が年百分の十の割合をこえることとなる場合は、この限りでない。
(定款の変更等)
第十一条 会社の定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 前項の合併の決議(会社と定期航空運送事業を営まない法人との合併であつて会社が存続するものについての決議を除く。)についての運輸大臣の認可は、航空法第百十五条第一項の規定の適用については、同項の認可とみなす。
(重要な施設の譲渡等)
第十二条 会社は、航空機その他運輸省令で定める重要な施設を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(協議)
第十三条 運輸大臣は、第七条、第十一条第一項(会社の定款の変更の決議に係るものについては、会社が発行する株式の総数を変更するものに限る。)及び前条の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(財産目録等の提出)
第十四条 会社は、毎営業年度終了後三箇月以内に、その営業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書を運輸大臣に提出しなければならない。
(商号の使用制限)
第十五条 会社以外の者は、その商号中に日本航空株式会社という文字を使用してはならない。
(経理の監査)
第十六条 運輸大臣は、必要があると認めるときは、会社の経理の監査をすることができる。
(報告及び検査)
第十七条 運輸大臣は、前条の規定による監査をするため必要があると認めるときは、会社からその経理に関する報告を徴し、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、経理の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
(罰則)
第十八条 左の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした会社の取締役は、十万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して、社債を募集し、又は資金を借り入れたとき。
二 第十二条の規定に違反して、施設を譲渡し、又は担保に供したとき。
三 第十四条の規定に違反して、財産目録、貸借対照表若しくは損益計算書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。
第十九条 第十五条の規定に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
第二十条 第十七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(会社の設立)
2 運輸大臣は、設立委員を命じて、会社の設立に関して発起人の職務を行わせる。
3 設立委員は、定款を作成したときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
4 政府は、会社の設立に際し、十億円に相当する株式を額面価額で引き受けるものとする。
5 昭和二十七年十月二十日航空法第百条第一項の免許を受けた日本航空株式会社(以下「免許会社」という。)は、会社の設立委員の任命後二箇月以内に商法第三百四十三条に規定する株主総会の決議を得て、会社に対してその営業の全部を出資することができる。
6 免許会社が前項の出資をする場合においては、免許会社の株主は、その所有する株式の数に比例して、会社の株式引受人となる。
7 前項の規定により引き受けることとなる会社の株式に一株に満たないものがある者の所有する免許会社の株式については、設立委員は、商法第三百七十九条第一項に規定する処分をすることができる。
8 免許会社は、附則第五項の決議があつた後は、その財産を善良な管理者の注意をもつて管理しなければならない。
9 附則第五項の規定により免許会社が出資する営業の価格は、臨時に運輸省に置く評価審査会が決定する。
10 前項の評価審査会は、委員七人をもつて組織する。
11 免許会社は、附則第五項の出資をする場合においては、会社の成立の時において、解散するものとし、その権利及び義務は、会社に承継されるものとする。この場合においては、商法第百七十七条第三項の規定は、適用しない。
12 前項の場合において、免許会社の株式を目的とする質権は、附則第六項の規定により免許会社の株主が受けるべき株式又は附則第七項の処分により免許会社の株主に交付すべき金銭の上に存在する。
13 商法第二百九条第四項の規定は、前項の質権に準用する。
14 会社の株式申込証には、商法第百七十五条第二項第一号に掲げる事項に代えて、附則第三項の規定による定款の認可の年月日を記載しなければならない。
15 附則第四項及び附則第六項の規定により政府及び免許会社の株主が会社の設立に際して発行する株式の総数を引き受けた場合においても、会社の設立は、募集設立に関する商法の規定によるものとする。
16 商法第百六十七条及び第百八十一条の規定は、会社の設立については適用しない。
17 附則第二項から前項までに規定するものの外、第九項の評価審査会の運営の手続その他会社の設立及び免許会社の解散に関して必要な事項は、政令で定める。
(定期航空運送事業者等の地位の承継)
18 免許会社が附則第五項の出資をする場合においては、会社は、その成立の時において、免許会社の航空法の規定による定期航空運送事業者、不定期航空運送事業者及び航空機使用事業者としての地位を承継する。
(商号についての経過規定)
19 第十五条の規定は、この法律の施行の際現にその商号中に日本航空株式会社という文字を使用している者については、会社の成立後六箇月間は、適用しない。
(債務保証の限度額)
20 政府が第九条の規定に基き債務を保証することのできる限度額は、昭和二十八年度においては、会社がその事業を経営するために必要とする借入金の金額三十四億四千六百万円及びその利子額五億一千七百万円とする。
(他の法令の改正)
21 経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の一部を次のように改正する。
別表乙号第六号を次のように改める。
六 日本航空株式会社
22 租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。
第十条の二の次に次の一条を加える。
第十条の三 日本航空株式会社が左の各号に掲げる事項について登記を受ける場合における登録税は、これを免除する。但し、資本の金額又は増加資本の金額のうち、政府の出資及び日本航空株式会社法(昭和二十八年法律第百五十四号)附則第五項の出資に係る部分に限る。
一 会社の設立
二 会社の資本増加
23 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第二十八条の二第一項第十四号の次に次の一号を加える。
十四の二 日本航空株式会社に関する認可及び補助金の交付に関すること。
第二十八条の二第二項中「第十三号、第十四号」を「第十三号から第十四号の二まで」に改める。
法務大臣 犬養健
大蔵大臣 小笠原三九郎
運輸大臣 石井光次郎
内閣総理大臣 吉田茂