海岸砂地地帯農業振興臨時措置法
法令番号: 法律第12号
公布年月日: 昭和28年3月16日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

海岸砂地地帯は全国で15万余町歩に及び、潮を含んだ強風による農作物被害や土砂の堆積・飛散により、農業と住民生活に深刻な影響を及ぼしている。防災林は約4万町歩整備されているが、不備な箇所が多く、5万6千町歩の不毛地が放置されている状態である。また、戦時中の伐採や戦後の無計画な開墾により7千余町歩の防災林が荒廃している。さらに、漁業不振による漁民の農業移行や内陸部の人口問題解決のため、海岸砂地地帯の開発が急務となっている。本法案は、防災林整備による災害防止と農地造成、畑地灌漑等の施設整備を通じて、食糧増産と農村人口問題の解決、農家経済の確立を図ることを目的としている。

参照した発言:
第15回国会 衆議院 農林委員会 第15号

審議経過

第15回国会

衆議院
(昭和27年12月24日)
(昭和28年2月4日)
(昭和28年2月5日)
参議院
(昭和28年2月6日)
衆議院
(昭和28年2月18日)
参議院
(昭和28年2月18日)
衆議院
(昭和28年2月21日)
参議院
(昭和28年2月23日)
(昭和28年2月24日)
(昭和28年2月26日)
(昭和28年3月13日)
衆議院
(昭和28年3月14日)
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年三月十六日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第十二号
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、海岸砂地地帯に対し、潮風又は飛砂に因る災害の防止のための造林事業及び農業生産の基礎条件の整備に関する事業をすみやかに且つ総合的に実施することによつて、当該地帯の保全と農業生産力の向上を図り、もつて農業経営の安定と農民生活の改善を期することを目的とする。
(海岸砂地地帯の指定)
第二条 農林大臣は、海岸砂地地帯農業振興対策審議会の意見を聞いて、潮風又は潮流に因つてたい積された砂土におおわれているために、土砂の飛散又は移動がはなはだしいか又は農業生産力が著しく劣つている土地が集団的に存在する都道府県の区域の一部を海岸砂地地帯として指定する。
2 農林大臣は、前項の指定をしたときは、その旨を公示するとともに当該都道府県知事に通知しなければならない。
(都道府県知事の定める農業振興計画)
第三条 前条第二項の通知を受けた都道府県知事は、同条第一項の指定に係る海岸砂地地帯についての農業振興計画を定め、農林大臣に提出しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により農業振興計画を定めるには、あらかじめ、関係人の意見を聞かなければならない。
(農林大臣の定める農業振興計画)
第四条 農林大臣は、前条第一項の農業振興計画を参しやくし、海岸砂地地帯農業振興対策審議会の意見を聞いて、海岸砂地地帯についての国の農業振興計画を定めなければならない。
2 政府は、毎年度、国の財政の許す範囲内において、前項の農業振興計画を実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。
3 前項の予算の計上に当つては、第一項の農業振興計画が総合的且つ効率的に実施されるよう考慮されなければならない。
4 政府は、毎年度、第一項の農業振興計画を実施するために必要な資金の融通に関する計画を定めなければならない。
(農業振興計画の内容)
第五条 農業振興計画は、左に掲げる事項を含むものとする。
一 防災林の造成、改良及び維持管理に関する事項
二 農地の造成、改良及び保全に関する事項
三 農業用道路その他農地の利用上必要な施設の整備に関する事項
四 農畜産物の生産、加工、販売その他処理についての共同施設の整備に関する事項
五 農業技術の改良、農業経営の合理化及び農民生活の改善に関する事項
(事業の実施)
第六条 第三条及び第四条第一項に規定する農業振興計画に基く事業は、この法律に定めるものの外、当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施する。
(委任事項)
第七条 第三条から前条までに定めるものを除く外、農業振興計画の決定について必要な事項は、省令で定める。
(海岸砂地地帯農業振興対策審議会の設置及び権限)
第八条 この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項その他海岸砂地地帯における農業振興に関する重要事項を調査審議するために、農林省に海岸砂地地帯農業振興対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、海岸砂地地帯における農業振興に関する重要事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。
(審議会の組織等)
第九条 審議会は、左に掲げる委員二十五人以内で組織する。
一 衆議院議員の中から衆議院が指名した者
五人
二 参議院議員の中から参議院が指名した者
三人
三 自治庁次長
四 大蔵事務次官
五 農林事務次官
六 建設事務次官
七 経済審議庁次長
八 都道府県知事の中から農林大臣が任命した者
二人
九 都道府県議会議長の中から農林大臣が任命した者
二人
十 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学の教授の中から農林大臣が任命した者
三人
十一 農林業者の団体を代表する者の中から農林大臣が任命した者
五人以内
2 前項第一号、第二号及び第八号から第十一号までに掲げる委員の任期は、二年とする。但し、補欠の任期は、前任者の残任期間とする。
3 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 審議会は、あらかじめ、委員の中から、会長に事故がある場合に会長の職務を代行する者を定めておかなければならない。
6 専門の事項を調査審議させるために、審議会に、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験を有する者の中から、審議会の推薦に基いて、農林大臣が任命する。
8 委員及び専門委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(国有財産の無償貸付等)
第十条 国は、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十二条(無償貸付)又は第二十八条(譲与)の規定にかかわらず、第四条第一項の農業振興計画による事業を行う地方公共団体その他の者に対し、その事業の用に必要な普通財産を無償で貸し付け、又は譲与することができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、昭和三十五年三月三十一日限りその効力を失う。
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第一項の表中湿田単作地域農業改良促進対策審議会の項の次に次の一項を加える。
海岸砂地地帯農業振興対策審議会
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法(昭和二十八年法律第十二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 向井忠晴
農林大臣 田子一民