湿田単作地域農業改良促進法
法令番号: 法律第354号
公布年月日: 昭和27年12月29日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

日本の水田面積約300万町歩のうち69万町歩が排水不良の湿田地域であり、生産力が低く、蓄力導入や農耕作業が困難で病虫害も多発する状況にある。これらの地域に特性を考慮した農業改良計画を立て、土地改良等の生産条件を整備し水田の裏作を可能にすれば、飛躍的な増産が見込める。本法案は、湿田地域に対し灌漑排水や区画整理等を計画的に実施し、農業技術の改善を効率的に行うことで、食糧その他農産物の増産を図ることを目的とする。

参照した発言:
第15回国会 衆議院 農林委員会 第7号

審議経過

第15回国会

衆議院
(昭和27年12月12日)
(昭和27年12月16日)
参議院
(昭和27年12月16日)
(昭和27年12月17日)
衆議院
(昭和27年12月18日)
(昭和27年12月19日)
(昭和27年12月20日)
参議院
(昭和27年12月20日)
(昭和27年12月22日)
(昭和27年12月23日)
(昭和28年3月13日)
衆議院
(昭和28年3月14日)
湿田単作地域農業改良促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年十二月二十九日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三百五十四号
湿田単作地域農業改良促進法
(目的)
第一条 この法律は、湿田であるために農地としての利用率が低くて農業生産力が劣つている地域につき、総合的な計画に基いて農地の改良及び農業技術の改善を最も効率的に行い、もつて食糧その他農産物の生産の急速な増進に寄与することを目的とする。
(湿田単作地域等の指定)
第二条 農林大臣は、湿田単作地域農業改良促進対策審議会の議決を経て、湿田であるために農地としての利用率が低くて農業生産力が劣つている地域を含む都道府県の区域の全部又は一部を湿田単作地域として指定する。
2 農林大臣は、前項の指定をしたときは、その旨を公示するとともに当該都道府県の知事に通知しなければならない。
3 前項の通知を受けた都道府県知事は、農林大臣が湿田単作地域農業改良促進対策審議会の議決を経て定める基準に従い、第一項の指定に係る地域内において湿田であるために農地としての利用率が低くて農業生産力が劣つている市町村の区域の全部又は一部を湿田単作地区として指定する。
4 都道府県知事は、前項の指定をしたときは、その旨を公示するとともに当該市町村の長に通知しなければならない。
(市町村長の定める農業改良計画)
第三条 前条第四項の通知を受けた市町村長は、同条第三項の指定に係る湿田単作地区についての農業改良計画を定め、これを都道府県知事に提出しなければならない。
2 市町村長は、前項の規定により、農業改良計画を定めるには、あらかじめ、当該市町村農業委員会及び当該地区内にあるかんがい排水施設その他農業用施設を管理する者の意見を聞かなければならない。
(都道府県知事の定める農業改良計画)
第四条 都道府県知事は、前条第一項の農業改良計画を参しやくして、湿田単作地区についての当該都道府県の農業改良計画を定め、これを農林大臣に提出しなければならない。
(農林大臣の定める農業改良計画)
第五条 農林大臣は、前条の農業改良計画を参しやくし、湿田単作地域農業改良促進対策審議会の議決を経て、湿田単作地域についての国の農業改良計画を定め、これを当該都道府県知事に通知しなければならない。
2 政府は、毎年度国の財政の許す範囲内において、前項の湿田単作地域における農業改良計画に基く農業改良事業を実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。
3 政府は、毎年度、第一項の湿田単作地域における農業改良計画に基く農業改良事業を実施するために必要な資金の融通に関する計画を定めなければならない。
(都道府県知事の定める農業改良計画の変更)
第六条 都道府県知事は、前条第一項の通知を受けたときは、第四条の規定により定めた当該都道府県の農業改良計画を必要に応じて変更し、当該市町村長に通知しなければならない。
(市町村長の定める農業改良計画の変更)
第七条 市町村長は、前条の通知を受けた場合に必要があると認めるときは、第三条第一項の規定により定めた当該市町村の農業改良計画を変更することができる。この場合には、第三条第二項の規定を準用する。
(事情の変更による農業改良計画の変更)
第八条 農林大臣、都道府県知事又は市町村長は、国、当該都道府県又は当該市町村の農業改良計画を定める基礎となつた事情が著しく変更したときは、それぞれ、農業改良計画を定める場合の例により、その定めた農業改良計画を変更することができる。
(農業改良計画の内容)
第九条 農業改良計画は、左に掲げる事項を含むものとする。
一 かんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全若しくは利用上必要な施設の新設、廃止若しくは変更、区画整理、客土、埋立その他の農地の改良に関する事項
二 農業技術の改善その他農業生産に関する事項
2 前項の計画は、立地条件、農業技術発達の程度、労働力その他の諸条件を総合的に勘案して事業の経済的効果を最大に発揮するようなものでなければならない。
(事業の実施)
第十条 第三条から前条までに規定する農業改良計画に基く事業は、この法律に定めるものの外、当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、都道府県その他の者が実施するものとする。
(湿田単作地域農業改良促進対策審議会の設置及び権限)
第十一条 この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項その他湿田単作地域における農業改良促進に関する重要事項を調査審議するために、農林省に湿田単作地域農業改良促進対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、湿田単作地域における農業改良促進に関する重要事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。
(審議会の組織等)
第十二条 審議会は、左に掲げる者につき、農林大臣が任命する委員二十五人以内で組織する。
一 衆議院議員の中から衆議院が指名した者
五人
二 参議院議員の中から参議院が指名した者
三人
三 自治庁次長
四 大蔵事務次官
五 農林事務次官
六 経済審議庁次長
七 都道府県知事
二人
八 都道府県議会議長
二人
九 市町村長
二人
十 市町村議会議長
二人
十一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学の教授
二人
十二 農業者の団体を代表する者
三人以内
2 前項第一号、第二号及び第七号から第十二号までに掲げる者につき任命された委員の任期は、二年とする。但し、捕欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 審議会は、あらかじめ、委員の中から、会長に事故がある場合に会長の職務を代行する者を定めておかなければならない。
6 専門の事項を調査審議させるために、審議会に、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験を有する者の中から、審議会の推薦に基いて、農林大臣が任命する。
8 委員及び専門委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(委任事項)
第十三条 この法律で政令に委任するものの外、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、命令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、昭和三十三年三月三十一日限りその効力を失う。
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第一項の表中急傾斜地帯農業振興対策審議会の項の次に次の一項を加える。
湿田単作地域農業改良促進対策審議会
湿田単作地域農業改良促進法(昭和二十七年法律第三百五十四号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
農林大臣 広川弘禅
内閣総理大臣 吉田茂