貴金属管理法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百二十八号
貴金属管理法
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
貴金属地金の政府買入(第三條―第六條)
第三章
貴金属地金の政府売却(第七條―第十一條)
第四章
金地金の取引等の制限(第十二條・第十三條)
第五章
歯科用貴金属地金加工業等の管理(第十四條―第十九條)
第六章
雑則(第二十條―第二十三條)
第七章
罰則(第二十四條―第二十八條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、貴金属を国際收支の改善その他の国民経済上最も有効な用途にあてるため、これを政府に集中するとともに、その取引及び使用を調整することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「貴金属」とは、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及びイリドスミンをいう。
2 この法律において「貴金属地金」とは、製錬又は採取の過程を経た貴金属を含有する地金であつて、その価値がもつぱらその含有する貴金属にあるものをいう。
3 この法律において「貴金属鉱物」とは、貴金属を含有する鉱物(砂鉱を含む。)又は製錬の過程にあるこれらのものであつて、その価値がもつぱらその含有する貴金属にあるものをいう。
4 この法律において「貴金属鉱さい」とは、貴金属鉱物の製錬により生ずる廃棄物をいう。
5 この法律において「貴金属含有物」とは、工業上貴金属を抽出することができるものであつて、金貨、銀貨、貴金属地金、貴金属鉱物、貴金属鉱さい及び貴金属地金の加工品以外のものをいう。
6 この法律において「歯科用貴金属地金」とは、歯科医療用白金加金線その他歯科医療の用に供する目的で政府が売り渡した貴金属地金の加工品であつて、主務大臣の指定するものをいう。
7 この法律において「歯科用貴金属地金加工業」とは、貴金属地金を歯科用貴金属地金に加工することを目的とする事業をいう。
8 この法律において「歯科用貴金属地金加工業者」とは、第十四條第一項の規定による認可を受けて歯科用貴金属地金加工業を営む者をいう。
9 この法律において「歯科用貴金属地金販売業」とは、歯科用貴金属地金を販売することを目的とする事業をいう。
10 この法律において「歯科用貴金属地金販売業者」とは、第十八條第一項の規定による認可を受けて歯科用貴金属地金販売業を営む者をいう。
11 この法律において「歯科医療者」とは、歯科医療をする病院及び診療所並びに歯科大学(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十八條の規定により存続する歯科医学校を含む。)をいう。
12 この法律において「金鉱業者」とは、その価値が主としてその含有する金にある鉱物を目的とする鉱業権者をいう。
第二章 貴金属地金の政府買入
(貴金属地金の政府への売却)
第三條 貴金属鉱物の製錬若しくは採取により、又は貴金属鉱さいの製錬により新たに貴金属地金を取得した者は、その取得に係る貴金属地金を品位千分中貴金属九百九十八(金及び銀については、九百九十九)以上に精製し、又は精製を委託し、これを精製の完了した日の属する月の翌月末日までに、主務省令で定める手続により、政府に売却しなければならない。
2 前項の場合において、同項の規定により貴金属地金を政府に売却しなければならない者が、当該貴金属地金を同項に規定する品位の貴金属地金に精製することができないとき、又は精製を委託することができないときは、当該貴金属地金を取得した日の属する月の翌月末日までに、主務省令で定める手続により、造幣庁に精製を委託して、これを政府に売却しなければならない。この場合においては、造幣庁は、主務省令で定める精製に要する費用を徴收することができる。
3 前二項の売却の期限の計算については、貴金属地金を主務省令で定める手続により造幣庁に納入した時をもつて前二項の売却の時とする。
4 第一項又は第二項の規定により政府に貴金属地金を売却しなければならない者が災害その他やむを得ない事由により、第一項又は第二項に規定する期限までに貴金属地金を政府に売却することが困難であると認められるときは、主務大臣は、本人の申請により、六月以内に限り、その期限を延長することができる。
第四條 貴金属含有物から貴金属地金を回收した者は、その回收に係る貴金属地金を前條第一項に規定する品位の貴金属地金に精製し、又は精製を委託し、これを精製の完了した日の属する月の翌月末日までに、主務省令で定める手続により、政府に売却しなければならない。
2 前條第二項から第四項までの規定は、前項の場合に準用する。
(適用除外)
第五條 前二條の規定は、左に掲げる場合には適用しない。
一 当該貴金属地金を研究、試験又は標本の用に供する場合
二 前号に掲げる場合の外、主務大臣の許可を受けた場合
2 前項第二号に規定する主務大臣の許可を受けようとする者は、主務省令で定める様式により、主務大臣に申請しなければならない。
(買入価格)
第六條 第三條又は第四條の規定により政府が貴金属地金を買い入れる場合の価格は、主務大臣が定める。
第三章 貴金属地金の政府売却
(貴金属地金の買受の申請)
第七條 工業、工芸、歯科用貴金属地金への加工その他の用に供するため政府の所有に係る貴金属地金を買い受けようとする者は、主務省令で定める手続により、その用途を示して主務大臣に申請しなければならない。
(貴金属配分計画の作成)
第八條 主務大臣は、前條の申請を基礎とし、主務省令で定める手続により、政府の所有に係る貴金属地金の売却についての見積に関する書類を作成し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
2 大蔵大臣は、主務大臣と協議して前項の見積について必要な調整を行い、貴金属地金の売却数量を定めた貴金属配分計画を作成し、これを主務大臣に通知しなければならない。
(貴金属地金の売却)
第九條 主務大臣は、前條第二項の貴金属配分計画で定めた数量の範囲内で、第七條の規定により申請した者に対して売却する貴金属地金の数量を決定して、当該申請者に通知しなければならない。
2 政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者が第七條の規定により示した用途を変更しようとするときは、主務大臣の許可を受けなければならない。
3 前項の許可を受けようとする者は、主務省令で定める手続により、主務大臣に申請しなければならない。
4 主務大臣は、第七條又は前項の申請があつた場合においては、左に掲げる事項を参しやくして第一項の決定若しくは前項の許可をし、又はこれらの申請を却下しなければならない。
一 用途が正当であるかどうか。
二 貴金属地金の数量がその用途にあてるために必要な数量をこえないかどうか。
5 主務大臣は、第三項の申請があつた場合において、申請者の所有する貴金属地金が変更しようとする用途にあてるために必要な数量をこえていると認めたときは、申請者に対して、当該数量をこえる貴金属地金を第六條に規定する価格で政府に売却することを命ずることができる。
6 政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者が当該貴金属地金をその用途にあてる前に滅失したときは、遅滯なく、その旨を主務大臣に届け出でなければならない。
7 政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者がやむを得ない事由により当該貴金属地金をその用途に供することができないときは、第六條に規定する価格で政府に当該貴金属地金の買受を請求することができる。
(売却価格)
第十條 第七條及び前條の規定により政府が貴金属地金を売却する場合の価格は、主務大臣が定める。
(歯科用貴金属地金の割当)
第十一條 主務大臣は、主務省令で定める手続により、歯科用貴金属地金加工業者の所有する歯科用貴金属地金を歯科用貴金属地金販売業者に割り当てることができる。
2 歯科用貴金属地金加工業者は、その加工した歯科用貴金属地金を前項の規定により割当を受けた歯科用貴金属地金販売業者に讓り渡さなければならない。
3 都道府県知事は、主務省令で定める手続により、歯科用貴金属地金販売業者の所有する歯科用貴金属地金を歯科医療者に割り当てることができる。
4 歯科用貴金属地金販売業者は、その所有する歯科用貴金属地金を前項の規定により割当を受けた歯科医療者に讓り渡さなければならない。
5 歯科医療者は、第三項の規定により割当を受けた歯科用貴金属地金を歯科医療以外の用に供してはならない。
6 第一項又は第三項の規定による割当は、申請数量の範囲内において、歯科用貴金属地金販売業者の資力、歯科医療者の医療能力等を基準として決定する。
7 第一項又は第三項の規定により割り当てられる歯科用貴金属地金の価格は、主務大臣が定める。
第四章 金地金の取引等の制限
(金地金の取引等の制限)
第十二條 金地金は、主務大臣の許可を受けなければ取引し、又はよう解し、若しくは加工してはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 第三條第一項若しくは第二項、第四條又は第九條第五項若しくは第七項の規定により金地金を政府に売却するために取引し、又はよう解し、若しくは加工する場合
二 第七條及び第九條の規定により政府から金地金を買い受け、又は買い受けた金地金をその用途に供する場合
三 前條第一項又は第三項の規定により歯科用貴金属地金の割当を受けた歯科用貴金属地金販売業者若しくは歯科医療者が、その割り当てられた歯科用貴金属地金を讓り受け、若しくはこれを歯科医療の用に供する場合又は第十七條(第十八條第三項において準用する場合を含む。)の規定による命令に従つて売却する場合
四 その他政令で定める場合
2 前項に規定する主務大臣の許可を受けようとする者は、主務省令で定める様式により、主務大臣に申請しなければならない。
3 左の各号の一に該当するものは、前二項及び第二十二條第三項の規定の適用については、これらの規定に規定する金地金とみなす。
一 金地金の加工品であつて、その含有する金の価格が当該加工品の価格の二分の一をこえるもの。但し、じゆう器、身辺装飾用品及び主務大臣の指定するものを除く。
二 き損その他の事由により使用できなくなつた金地金の加工品であつて、その価値がもつぱら当該加工品の含有する金にあるもの。
三 金地金の加工の際に生ずる金地金の屑
四 本邦又は外国の金貨。但し、古貨を除く。
(違反行為の効力)
第十三條 前條第一項の規定に違反してされた取引は、無効とする。
第五章 歯科用貴金属地金加工業等の管理
(歯科用貴金属地金加工業の認可)
第十四條 歯科用貴金属地金加工業は、主務大臣の認可を受けなければ営むことができない。
2 前項の認可を受けようとする者は、主務省令で定める手続により、主務大臣に申請しなければならない。
3 主務大臣は、左に掲げる場合においては、第一項の認可をしないことができる。
一 申請者がこの法律に基いて処罰され、その処罰の日から二年を経ない者である場合。但し、懲役に処せられた者については、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経ない者である場合
二 申請者がこの法律に基いてその認可を取り消され、その取消の日から二年を経ない者である場合
三 申請者の技術的能力、資力又は信用が不充分なため、歯科用貴金属地金加工業の確実な経営が著しく困難であると認められる場合
4 法人が申請者である場合においては、前項第一号及び第二号の規定の適用については、その代表者もまた申請者とみなす。
5 未成年者又は禁治産者が申請者である場合においては、第三項第一号及び第二号の規定の適用については、その法定代理人もまた申請者とみなす。但し、営業に関し成年者と同一の能力を有する未成年者の場合においては、この限りでない。
6 歯科用貴金属地金加工業者が死亡した場合において、引き続いて歯科用貴金属地金加工業を営む相続人は、第一項に規定する認可を受けた者とみなす。この場合において、当該相続人は、主務省令で定める様式により、遅滯なく、その旨を主務大臣に届け出でなければならない。
(事業の休廃止の届出)
第十五條 歯科用貴金属地金加工業者は、その事業を廃止し、又は休止したときは、主務省令で定める様式により、遅滯なく、その旨を主務大臣に届け出でなければならない。
(認可の取消及び事業の停止)
第十六條 主務大臣は、歯科用貴金属地金加工業者がこの法律又はこの法律に基く主務大臣の命令に違反したときは、その認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めてその事業の停止を命ずることができる。
2 主務大臣は、前項の規定による処分をしようとするときは、公開による聽聞を行わなければならない。
3 主務大臣は、前項の聽聞をしようとするときは、その期日の二週間前までに第一項の規定による処分をしようとする理由並びに聽聞の期日及び場所を当該歯科用貴金属地金加工業者に通知し、且つ、聽聞の期日及び場所を公示しなければならない。
4 第二項の聽聞においては、当該歯科用貴金属地金加工業者又はその代理人が出頭して自己のために釈明し、且つ、有利な証拠を提出することができる。
5 前二項に規定するものの外、聽聞の手続に関して必要な事項は、政令で定める。
(事業の休廃止等の場合の処置)
第十七條 歯科用貴金属地金加工業者が死亡し、その相続人が引き続いて歯科用貴金属地金加工業を営まない場合又は歯科用貴金属地金加工業者がその事業を廃止し、若しくは休止し、若しくはその認可の取消若しくはその事業の停止の処分を受けた場合においては、主務大臣は、その相続人又は歯科用貴金属地金加工業者であつた者に対して、その所有する歯科用貴金属地金を歯科用貴金属地金加工業者に売却することを命ずることができる。この場合においては、その価格は、第十一條第七項の規定により主務大臣が定める同條第一項の規定により割り当てられた歯科用貴金属地金の価格によらなければならない。
(歯科用貴金属地金販売業の認可)
第十八條 歯科用貴金属地金販売業は、都道府県知事の認可を受けなければ営むことができない。
2 都道府県知事は、前項の規定により歯科用貴金属地金販売業の認可をしたときは、主務省令で定める手続により、その旨を主務大臣に通知しなければならない。
3 第十四條第二項から第六項まで、第十五條から前條までの規定は、歯科用貴金属地金販売業及び歯科用貴金属地金販売業者について準用する。この場合において、これらの規定中「主務大臣」とあるのは「都道府県知事」と、前條中「同條第一項」とあるのは「同條第三項」と読み替えるものとする。
(認可)
第十九條 何人も二以上の都道府県知事に対して前條第一項の認可の申請をしてはならない。
2 二以上の都道府県知事から前條第一項の認可を受けた場合においては、その認可を受けた者に対するすべての同項の認可は、効力を失う。
3 第十四條第二項(前條第三項において準用する場合を含む。)の規定による認可の申請をする場合においては、その申請書に、その申請者が他の法人その他の団体と重要な利害関係を有するかどうか、又、若し有する場合には、当該団体と重要な利害関係を有する他の者と申請者との間に事業上の関係があるかどうかを記載しなければならない。
4 主務大臣又は都道府県知事は、第十四條第一項又は前條第一項の認可をする場合において、実質的に同一人に二以上の同一種類の認可をすることとなると認めるときは、これらの規定による認可をしてはならない。
5 第十四條第一項又は前條第一項の認可を受けた者が、これらの規定による同一種類の認可を受けている法人その他の団体と重要な利害関係を有するに至つたときは、三月以内にその旨を主務大臣又は都道府県知事に届け出でなければならない。
第六章 雑則
(輸入税の免除)
第二十條 戦時中における金鉱業整備に因り荒廃した金鉱業の復興を促進するため、金鉱業者がその事業に必要である旨の主務大臣の証明を得て輸入した左に掲げる物品に対しては、この法律施行の日から三年間に限り、輸入税を免除する。
一 関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)別表輸入税表に掲げる物品のうちこの法律の別表に掲げるもの
二 前号に該当する器具又は機械の部分品及び附属品
三 第一号に該当する機械とともに一組として輸入される附属原動機及びその附属装置
2 前項の主務大臣の証明及び免税の手続に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第二十一條 政府は、前條の規定により輸入税の免除を受けた物品を輸入した金鉱業者が左の各号の一に該当する場合においては、当該金鉱業者から国税徴收法(明治三十年法律第二十一号)の規定の例により輸入税を徴收する。
一 当該金鉱業者が輸入税の免除を受けた物品をその事業の用以外の用に供した場合
二 当該金鉱業者が輸入の免除を受けた物品を輸入の日から一年以内にその事業の用に供しなかつた場合
(報告、質問及び立入検査)
第二十二條 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、主務省令で定めるところにより、左に掲げる者から報告を徴することができる。
一 歯科用貴金属地金加工業者
二 歯科用貴金属地金販売業者
三 歯科医療者
四 第三條又は第四條の規定により政府に貴金属地金を売却しなければならない者
五 第七條及び第九條の規定により政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者
六 第十二條第二項の規定により主務大臣に申請した者
七 第二十條の規定により輸入税の免除を受けた物品を輸入した金鉱業者
2 主務大臣は、当該職員をして、左に掲げる者又はその代表者、代理人若しくは使用人その他の従業者に質問させることができる。
一 前項第一号から第七号までに掲げる者
二 第七條の規定により買受の申請をした者
三 第十四條第二項の規定により認可の申請をした者
3 主務大臣は、当該職員をして、左に掲げる場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
一 前項に掲げる者の事務所、営業所、工場又は倉庫
二 貴金属鉱物、貴金属鉱さい、貴金属含有物又は金地金その他の貴金属地金が蔵置されていると認められる場所
4 都道府県知事は、当該職員をして、左に掲げる者又はその代表者、代理人若しくは使用人その他の従業者に質問させることができる。
一 歯科用貴金属地金販売業者
二 歯科医療者
三 第十八條第三項において準用する第十四條第二項の規定により認可の申請をした者
5 都道府県知事は、当該職員をして、前項に掲げる者の事務所、営業所若しくは倉庫又は歯科用貴金属地金が蔵置されていると認められる場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
6 第三項又は前項の規定により当該職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帶し、関係人にこれを呈示しなければならない。
7 第二項若しくは第四項に規定する質問又は第三項若しくは第五項に規定する立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(主務大臣及び主務省令)
第二十三條 第二條第六項、第十一條、第十四條から第十九條までの規定における主務大臣は、厚生大臣とし、第二十條の規定における主務大臣は、通商産業大臣とし、第七條から第九條までの規定における主務大臣は、第七條の申請者の業務に関する行政の所管大臣とし、第二十二條の規定における主務大臣は、大蔵大臣、厚生大臣及び第七條の申請者の業務に関する行政の所管大臣とし、その他の規定における主務大臣は、大蔵大臣とする。
2 第十一條、第十四條、第十五條及び第十八條の規定における主務省令は、厚生省令とし、第二十條の規定における主務省令は、大蔵省令、通商産業省令とし、第七條から第九條までの規定における主務省令は、大蔵大臣及び第七條の申請者の業務に関する行政の所管大臣の発する省令とし、第二十二條の規定における主務省令は、大蔵大臣、厚生大臣及び第七條の申請者の業務に関する行政の所管大臣の発する省令とし、その他の規定における主務省令は、大蔵省令とする。
第七章 罰則
第二十四條 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。但し、当該違反行為の目的物の価格の三倍が三十万円をこえるときは、罰金は、当該価格の三倍以下とする。
一 第三條第一項若しくは第二項(第四條第二項において準用する場合を含む。)又は第四條第一項の規定に違反して貴金属地金を政府に売却しなかつた者
二 第十一條第二項又は第四項の規定に違反して歯科用貴金属地金を割当を受けた歯科用貴金属地金販売業者又は歯科医療者以外の者に讓り渡した歯科用貴金属地金加工業者又は歯科用貴金属地金販売業者
三 第十一條第五項の規定に違反して歯科用貴金属地金を歯科医療以外の用に供した者
四 第十二條第一項の規定に違反して金地金を取引し、又はよう解し、若しくは加工した者
第二十五條 左の各号の一に該当する者は、二年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第九條第二項の規定に違反して許可を受けないで用途を変更した者
二 第九條第五項の規定による命令に違反して貴金属地金を売却しなかつた者
三 第十四條第一項の規定に違反して認可を受けないで歯科用貴金属地金加工業を営んだ者
四 第十七條(第十八條第三項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反して歯科用貴金属地金を売却しなかつた者
五 第十八條第一項の規定に違反して認可を受けないで歯科用貴金属地金販売業を営んだ者
六 第十九條第一項の規定に違反して二以上の都道府県知事に対して認可の申請をした者。但し、これにより二以上の認可を受けた場合に限る。
第二十六條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第九條第六項の規定又は第十四條第六項若しくは第十五條の規定(第十八條第三項において準用する場合を含む。)又は第十九條第五項の規定に違反して届出をせず、又は虚僞の届出をした者
二 第二十二條第一項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
三 第二十二條第二項又は第四項の規定による質問に対して陳述をせず、又は虚僞の陳述をした者
四 第二十二條第三項又は第五項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十七條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し前三條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第二十八條 第二十四條又は第二十五條の犯罪に係る貴金属地金、歯科用貴金属地金又は金地金であつて犯人の所有又は占有するものは、沒收する。
2 犯人以外の者が犯罪の後前項の貴金属地金、歯科用貴金属地金又は金地金を取得した場合において、その取得の当時善意であつたと認められないときは、これを沒收する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 左に掲げる法令は、廃止する。
産金法(昭和十二年法律第五十九号)
産金法施行令(昭和十二年勅令第四百五十四号)
金、銀又は白金等の取引等取締に関する件(昭和二十年勅令第五百七十七号)
金、銀又は白金等の取引等取締に関する件の施行に関する件(昭和二十年大蔵省令第八十七号)
貴金属地金の取引等についての帳簿及び報告に関する政令(昭和二十四年政令第二百九十二号)
3 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
4 この法律施行前において、旧金、銀又は白金等の取引等取締に関する件第一條第一項に規定する取引又は行為について同項に規定する大蔵大臣の許可があつた場合には、当該取引又は行為について第十二條第一項に規定する主務大臣の許可があつたものとみなす。
5 この法律施行前において、旧金、銀又は白金等の取引等取締に関する件の施行に関する件第一條の規定により大蔵大臣に許可申請書を提出した場合においては、第七條又は第十二條第二項の規定により主務大臣に申請があつたものとみなす。
6 この法律施行の際現に歯科用貴金属地金加工業又は歯科用貴金属地金販売業を営んでいる者であつてこの法律施行後その事業を継続しようとするものは、第十四條第二項(第十八條第三項において準用する場合を含む。)の規定に準じ、この法律施行後一月以内に主務大臣又は都道府県知事に認可を申請しなければならない。
7 第十四條第三項から第五項まで及び第十九條第三項の規定は、前項の場合に準用する。
8 第六項の規定による申請をし、主務大臣又は都道府県知事の認可を受けた者は、第十四條第一項又は第十八條第一項の認可を受けた者とみなす。
9 この法律施行の際現に歯科用貴金属地金加工業又は歯科用貴金属地金販売業を営んでいる者は、第十四條第一項又は第十八條第一項の規定にかかわらず、この法律施行後一月を経過した日(第六項の規定による申請をした者については、主務大臣又は都道府県知事の認可又は不認可の通知のあつた日)まで、その事業を営むことができる。
別表
関税定率法別表輸入税表
免税される物品
番号
品名
九五
植物性揮発油 二 其ノ他  乙 其ノ他
パイン油
二二九
別号ニ掲ゲザル薬材、化学薬及製薬
青化石灰及び浮遊選鉱剤
二三〇
薬材、化学薬及製薬ノ調合品(別号ニ掲ゲザルモノ)
浮遊選鉱剤
四六二ノ二
特殊鋼
ドリルスチール
五八四
キヤプスタン、ウインチ、ウインドラス其ノ他別号ニ掲ゲザルワイヂングマシン
スラツシヤーホイスト
五九五
ニウマチツクツール及ニウマチツクマシン
ドリフター
六〇四
別号ニ掲ゲザル機械
試錐機、物理探鉱機、エヤーストウイングマシン、選鉱用機械及び青化製錬用機械
法務総裁 殖田俊吉
大蔵大臣臨時代理 国務大臣 殖田俊吉
文部大臣 高瀬莊太郎
厚生大臣 林讓治
農林大臣 森幸太郎
通商産業大臣 高瀬莊太郎
運輸大臣 大屋晋三
電気通信大臣 小沢佐重喜
建設大臣 益谷秀次
内閣総理大臣 吉田茂
貴金属管理法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百二十八号
貴金属管理法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
貴金属地金の政府買入(第三条―第六条)
第三章
貴金属地金の政府売却(第七条―第十一条)
第四章
金地金の取引等の制限(第十二条・第十三条)
第五章
歯科用貴金属地金加工業等の管理(第十四条―第十九条)
第六章
雑則(第二十条―第二十三条)
第七章
罰則(第二十四条―第二十八条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、貴金属を国際収支の改善その他の国民経済上最も有効な用途にあてるため、これを政府に集中するとともに、その取引及び使用を調整することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「貴金属」とは、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及びイリドスミンをいう。
2 この法律において「貴金属地金」とは、製錬又は採取の過程を経た貴金属を含有する地金であつて、その価値がもつぱらその含有する貴金属にあるものをいう。
3 この法律において「貴金属鉱物」とは、貴金属を含有する鉱物(砂鉱を含む。)又は製錬の過程にあるこれらのものであつて、その価値がもつぱらその含有する貴金属にあるものをいう。
4 この法律において「貴金属鉱さい」とは、貴金属鉱物の製錬により生ずる廃棄物をいう。
5 この法律において「貴金属含有物」とは、工業上貴金属を抽出することができるものであつて、金貨、銀貨、貴金属地金、貴金属鉱物、貴金属鉱さい及び貴金属地金の加工品以外のものをいう。
6 この法律において「歯科用貴金属地金」とは、歯科医療用白金加金線その他歯科医療の用に供する目的で政府が売り渡した貴金属地金の加工品であつて、主務大臣の指定するものをいう。
7 この法律において「歯科用貴金属地金加工業」とは、貴金属地金を歯科用貴金属地金に加工することを目的とする事業をいう。
8 この法律において「歯科用貴金属地金加工業者」とは、第十四条第一項の規定による認可を受けて歯科用貴金属地金加工業を営む者をいう。
9 この法律において「歯科用貴金属地金販売業」とは、歯科用貴金属地金を販売することを目的とする事業をいう。
10 この法律において「歯科用貴金属地金販売業者」とは、第十八条第一項の規定による認可を受けて歯科用貴金属地金販売業を営む者をいう。
11 この法律において「歯科医療者」とは、歯科医療をする病院及び診療所並びに歯科大学(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十八条の規定により存続する歯科医学校を含む。)をいう。
12 この法律において「金鉱業者」とは、その価値が主としてその含有する金にある鉱物を目的とする鉱業権者をいう。
第二章 貴金属地金の政府買入
(貴金属地金の政府への売却)
第三条 貴金属鉱物の製錬若しくは採取により、又は貴金属鉱さいの製錬により新たに貴金属地金を取得した者は、その取得に係る貴金属地金を品位千分中貴金属九百九十八(金及び銀については、九百九十九)以上に精製し、又は精製を委託し、これを精製の完了した日の属する月の翌月末日までに、主務省令で定める手続により、政府に売却しなければならない。
2 前項の場合において、同項の規定により貴金属地金を政府に売却しなければならない者が、当該貴金属地金を同項に規定する品位の貴金属地金に精製することができないとき、又は精製を委託することができないときは、当該貴金属地金を取得した日の属する月の翌月末日までに、主務省令で定める手続により、造幣庁に精製を委託して、これを政府に売却しなければならない。この場合においては、造幣庁は、主務省令で定める精製に要する費用を徴収することができる。
3 前二項の売却の期限の計算については、貴金属地金を主務省令で定める手続により造幣庁に納入した時をもつて前二項の売却の時とする。
4 第一項又は第二項の規定により政府に貴金属地金を売却しなければならない者が災害その他やむを得ない事由により、第一項又は第二項に規定する期限までに貴金属地金を政府に売却することが困難であると認められるときは、主務大臣は、本人の申請により、六月以内に限り、その期限を延長することができる。
第四条 貴金属含有物から貴金属地金を回収した者は、その回収に係る貴金属地金を前条第一項に規定する品位の貴金属地金に精製し、又は精製を委託し、これを精製の完了した日の属する月の翌月末日までに、主務省令で定める手続により、政府に売却しなければならない。
2 前条第二項から第四項までの規定は、前項の場合に準用する。
(適用除外)
第五条 前二条の規定は、左に掲げる場合には適用しない。
一 当該貴金属地金を研究、試験又は標本の用に供する場合
二 前号に掲げる場合の外、主務大臣の許可を受けた場合
2 前項第二号に規定する主務大臣の許可を受けようとする者は、主務省令で定める様式により、主務大臣に申請しなければならない。
(買入価格)
第六条 第三条又は第四条の規定により政府が貴金属地金を買い入れる場合の価格は、主務大臣が定める。
第三章 貴金属地金の政府売却
(貴金属地金の買受の申請)
第七条 工業、工芸、歯科用貴金属地金への加工その他の用に供するため政府の所有に係る貴金属地金を買い受けようとする者は、主務省令で定める手続により、その用途を示して主務大臣に申請しなければならない。
(貴金属配分計画の作成)
第八条 主務大臣は、前条の申請を基礎とし、主務省令で定める手続により、政府の所有に係る貴金属地金の売却についての見積に関する書類を作成し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
2 大蔵大臣は、主務大臣と協議して前項の見積について必要な調整を行い、貴金属地金の売却数量を定めた貴金属配分計画を作成し、これを主務大臣に通知しなければならない。
(貴金属地金の売却)
第九条 主務大臣は、前条第二項の貴金属配分計画で定めた数量の範囲内で、第七条の規定により申請した者に対して売却する貴金属地金の数量を決定して、当該申請者に通知しなければならない。
2 政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者が第七条の規定により示した用途を変更しようとするときは、主務大臣の許可を受けなければならない。
3 前項の許可を受けようとする者は、主務省令で定める手続により、主務大臣に申請しなければならない。
4 主務大臣は、第七条又は前項の申請があつた場合においては、左に掲げる事項を参しやくして第一項の決定若しくは前項の許可をし、又はこれらの申請を却下しなければならない。
一 用途が正当であるかどうか。
二 貴金属地金の数量がその用途にあてるために必要な数量をこえないかどうか。
5 主務大臣は、第三項の申請があつた場合において、申請者の所有する貴金属地金が変更しようとする用途にあてるために必要な数量をこえていると認めたときは、申請者に対して、当該数量をこえる貴金属地金を第六条に規定する価格で政府に売却することを命ずることができる。
6 政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者が当該貴金属地金をその用途にあてる前に滅失したときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出でなければならない。
7 政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者がやむを得ない事由により当該貴金属地金をその用途に供することができないときは、第六条に規定する価格で政府に当該貴金属地金の買受を請求することができる。
(売却価格)
第十条 第七条及び前条の規定により政府が貴金属地金を売却する場合の価格は、主務大臣が定める。
(歯科用貴金属地金の割当)
第十一条 主務大臣は、主務省令で定める手続により、歯科用貴金属地金加工業者の所有する歯科用貴金属地金を歯科用貴金属地金販売業者に割り当てることができる。
2 歯科用貴金属地金加工業者は、その加工した歯科用貴金属地金を前項の規定により割当を受けた歯科用貴金属地金販売業者に譲り渡さなければならない。
3 都道府県知事は、主務省令で定める手続により、歯科用貴金属地金販売業者の所有する歯科用貴金属地金を歯科医療者に割り当てることができる。
4 歯科用貴金属地金販売業者は、その所有する歯科用貴金属地金を前項の規定により割当を受けた歯科医療者に譲り渡さなければならない。
5 歯科医療者は、第三項の規定により割当を受けた歯科用貴金属地金を歯科医療以外の用に供してはならない。
6 第一項又は第三項の規定による割当は、申請数量の範囲内において、歯科用貴金属地金販売業者の資力、歯科医療者の医療能力等を基準として決定する。
7 第一項又は第三項の規定により割り当てられる歯科用貴金属地金の価格は、主務大臣が定める。
第四章 金地金の取引等の制限
(金地金の取引等の制限)
第十二条 金地金は、主務大臣の許可を受けなければ取引し、又はよう解し、若しくは加工してはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 第三条第一項若しくは第二項、第四条又は第九条第五項若しくは第七項の規定により金地金を政府に売却するために取引し、又はよう解し、若しくは加工する場合
二 第七条及び第九条の規定により政府から金地金を買い受け、又は買い受けた金地金をその用途に供する場合
三 前条第一項又は第三項の規定により歯科用貴金属地金の割当を受けた歯科用貴金属地金販売業者若しくは歯科医療者が、その割り当てられた歯科用貴金属地金を譲り受け、若しくはこれを歯科医療の用に供する場合又は第十七条(第十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定による命令に従つて売却する場合
四 その他政令で定める場合
2 前項に規定する主務大臣の許可を受けようとする者は、主務省令で定める様式により、主務大臣に申請しなければならない。
3 左の各号の一に該当するものは、前二項及び第二十二条第三項の規定の適用については、これらの規定に規定する金地金とみなす。
一 金地金の加工品であつて、その含有する金の価格が当該加工品の価格の二分の一をこえるもの。但し、じゆう器、身辺装飾用品及び主務大臣の指定するものを除く。
二 き損その他の事由により使用できなくなつた金地金の加工品であつて、その価値がもつぱら当該加工品の含有する金にあるもの。
三 金地金の加工の際に生ずる金地金の屑
四 本邦又は外国の金貨。但し、古貨を除く。
(違反行為の効力)
第十三条 前条第一項の規定に違反してされた取引は、無効とする。
第五章 歯科用貴金属地金加工業等の管理
(歯科用貴金属地金加工業の認可)
第十四条 歯科用貴金属地金加工業は、主務大臣の認可を受けなければ営むことができない。
2 前項の認可を受けようとする者は、主務省令で定める手続により、主務大臣に申請しなければならない。
3 主務大臣は、左に掲げる場合においては、第一項の認可をしないことができる。
一 申請者がこの法律に基いて処罰され、その処罰の日から二年を経ない者である場合。但し、懲役に処せられた者については、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経ない者である場合
二 申請者がこの法律に基いてその認可を取り消され、その取消の日から二年を経ない者である場合
三 申請者の技術的能力、資力又は信用が不充分なため、歯科用貴金属地金加工業の確実な経営が著しく困難であると認められる場合
4 法人が申請者である場合においては、前項第一号及び第二号の規定の適用については、その代表者もまた申請者とみなす。
5 未成年者又は禁治産者が申請者である場合においては、第三項第一号及び第二号の規定の適用については、その法定代理人もまた申請者とみなす。但し、営業に関し成年者と同一の能力を有する未成年者の場合においては、この限りでない。
6 歯科用貴金属地金加工業者が死亡した場合において、引き続いて歯科用貴金属地金加工業を営む相続人は、第一項に規定する認可を受けた者とみなす。この場合において、当該相続人は、主務省令で定める様式により、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出でなければならない。
(事業の休廃止の届出)
第十五条 歯科用貴金属地金加工業者は、その事業を廃止し、又は休止したときは、主務省令で定める様式により、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出でなければならない。
(認可の取消及び事業の停止)
第十六条 主務大臣は、歯科用貴金属地金加工業者がこの法律又はこの法律に基く主務大臣の命令に違反したときは、その認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めてその事業の停止を命ずることができる。
2 主務大臣は、前項の規定による処分をしようとするときは、公開による聴聞を行わなければならない。
3 主務大臣は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の二週間前までに第一項の規定による処分をしようとする理由並びに聴聞の期日及び場所を当該歯科用貴金属地金加工業者に通知し、且つ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
4 第二項の聴聞においては、当該歯科用貴金属地金加工業者又はその代理人が出頭して自己のために釈明し、且つ、有利な証拠を提出することができる。
5 前二項に規定するものの外、聴聞の手続に関して必要な事項は、政令で定める。
(事業の休廃止等の場合の処置)
第十七条 歯科用貴金属地金加工業者が死亡し、その相続人が引き続いて歯科用貴金属地金加工業を営まない場合又は歯科用貴金属地金加工業者がその事業を廃止し、若しくは休止し、若しくはその認可の取消若しくはその事業の停止の処分を受けた場合においては、主務大臣は、その相続人又は歯科用貴金属地金加工業者であつた者に対して、その所有する歯科用貴金属地金を歯科用貴金属地金加工業者に売却することを命ずることができる。この場合においては、その価格は、第十一条第七項の規定により主務大臣が定める同条第一項の規定により割り当てられた歯科用貴金属地金の価格によらなければならない。
(歯科用貴金属地金販売業の認可)
第十八条 歯科用貴金属地金販売業は、都道府県知事の認可を受けなければ営むことができない。
2 都道府県知事は、前項の規定により歯科用貴金属地金販売業の認可をしたときは、主務省令で定める手続により、その旨を主務大臣に通知しなければならない。
3 第十四条第二項から第六項まで、第十五条から前条までの規定は、歯科用貴金属地金販売業及び歯科用貴金属地金販売業者について準用する。この場合において、これらの規定中「主務大臣」とあるのは「都道府県知事」と、前条中「同条第一項」とあるのは「同条第三項」と読み替えるものとする。
(認可)
第十九条 何人も二以上の都道府県知事に対して前条第一項の認可の申請をしてはならない。
2 二以上の都道府県知事から前条第一項の認可を受けた場合においては、その認可を受けた者に対するすべての同項の認可は、効力を失う。
3 第十四条第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)の規定による認可の申請をする場合においては、その申請書に、その申請者が他の法人その他の団体と重要な利害関係を有するかどうか、又、若し有する場合には、当該団体と重要な利害関係を有する他の者と申請者との間に事業上の関係があるかどうかを記載しなければならない。
4 主務大臣又は都道府県知事は、第十四条第一項又は前条第一項の認可をする場合において、実質的に同一人に二以上の同一種類の認可をすることとなると認めるときは、これらの規定による認可をしてはならない。
5 第十四条第一項又は前条第一項の認可を受けた者が、これらの規定による同一種類の認可を受けている法人その他の団体と重要な利害関係を有するに至つたときは、三月以内にその旨を主務大臣又は都道府県知事に届け出でなければならない。
第六章 雑則
(輸入税の免除)
第二十条 戦時中における金鉱業整備に因り荒廃した金鉱業の復興を促進するため、金鉱業者がその事業に必要である旨の主務大臣の証明を得て輸入した左に掲げる物品に対しては、この法律施行の日から三年間に限り、輸入税を免除する。
一 関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)別表輸入税表に掲げる物品のうちこの法律の別表に掲げるもの
二 前号に該当する器具又は機械の部分品及び附属品
三 第一号に該当する機械とともに一組として輸入される附属原動機及びその附属装置
2 前項の主務大臣の証明及び免税の手続に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第二十一条 政府は、前条の規定により輸入税の免除を受けた物品を輸入した金鉱業者が左の各号の一に該当する場合においては、当該金鉱業者から国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)の規定の例により輸入税を徴収する。
一 当該金鉱業者が輸入税の免除を受けた物品をその事業の用以外の用に供した場合
二 当該金鉱業者が輸入の免除を受けた物品を輸入の日から一年以内にその事業の用に供しなかつた場合
(報告、質問及び立入検査)
第二十二条 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、主務省令で定めるところにより、左に掲げる者から報告を徴することができる。
一 歯科用貴金属地金加工業者
二 歯科用貴金属地金販売業者
三 歯科医療者
四 第三条又は第四条の規定により政府に貴金属地金を売却しなければならない者
五 第七条及び第九条の規定により政府の所有に係る貴金属地金を買い受けた者
六 第十二条第二項の規定により主務大臣に申請した者
七 第二十条の規定により輸入税の免除を受けた物品を輸入した金鉱業者
2 主務大臣は、当該職員をして、左に掲げる者又はその代表者、代理人若しくは使用人その他の従業者に質問させることができる。
一 前項第一号から第七号までに掲げる者
二 第七条の規定により買受の申請をした者
三 第十四条第二項の規定により認可の申請をした者
3 主務大臣は、当該職員をして、左に掲げる場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
一 前項に掲げる者の事務所、営業所、工場又は倉庫
二 貴金属鉱物、貴金属鉱さい、貴金属含有物又は金地金その他の貴金属地金が蔵置されていると認められる場所
4 都道府県知事は、当該職員をして、左に掲げる者又はその代表者、代理人若しくは使用人その他の従業者に質問させることができる。
一 歯科用貴金属地金販売業者
二 歯科医療者
三 第十八条第三項において準用する第十四条第二項の規定により認可の申請をした者
5 都道府県知事は、当該職員をして、前項に掲げる者の事務所、営業所若しくは倉庫又は歯科用貴金属地金が蔵置されていると認められる場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
6 第三項又は前項の規定により当該職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。
7 第二項若しくは第四項に規定する質問又は第三項若しくは第五項に規定する立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(主務大臣及び主務省令)
第二十三条 第二条第六項、第十一条、第十四条から第十九条までの規定における主務大臣は、厚生大臣とし、第二十条の規定における主務大臣は、通商産業大臣とし、第七条から第九条までの規定における主務大臣は、第七条の申請者の業務に関する行政の所管大臣とし、第二十二条の規定における主務大臣は、大蔵大臣、厚生大臣及び第七条の申請者の業務に関する行政の所管大臣とし、その他の規定における主務大臣は、大蔵大臣とする。
2 第十一条、第十四条、第十五条及び第十八条の規定における主務省令は、厚生省令とし、第二十条の規定における主務省令は、大蔵省令、通商産業省令とし、第七条から第九条までの規定における主務省令は、大蔵大臣及び第七条の申請者の業務に関する行政の所管大臣の発する省令とし、第二十二条の規定における主務省令は、大蔵大臣、厚生大臣及び第七条の申請者の業務に関する行政の所管大臣の発する省令とし、その他の規定における主務省令は、大蔵省令とする。
第七章 罰則
第二十四条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。但し、当該違反行為の目的物の価格の三倍が三十万円をこえるときは、罰金は、当該価格の三倍以下とする。
一 第三条第一項若しくは第二項(第四条第二項において準用する場合を含む。)又は第四条第一項の規定に違反して貴金属地金を政府に売却しなかつた者
二 第十一条第二項又は第四項の規定に違反して歯科用貴金属地金を割当を受けた歯科用貴金属地金販売業者又は歯科医療者以外の者に譲り渡した歯科用貴金属地金加工業者又は歯科用貴金属地金販売業者
三 第十一条第五項の規定に違反して歯科用貴金属地金を歯科医療以外の用に供した者
四 第十二条第一項の規定に違反して金地金を取引し、又はよう解し、若しくは加工した者
第二十五条 左の各号の一に該当する者は、二年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第九条第二項の規定に違反して許可を受けないで用途を変更した者
二 第九条第五項の規定による命令に違反して貴金属地金を売却しなかつた者
三 第十四条第一項の規定に違反して認可を受けないで歯科用貴金属地金加工業を営んだ者
四 第十七条(第十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反して歯科用貴金属地金を売却しなかつた者
五 第十八条第一項の規定に違反して認可を受けないで歯科用貴金属地金販売業を営んだ者
六 第十九条第一項の規定に違反して二以上の都道府県知事に対して認可の申請をした者。但し、これにより二以上の認可を受けた場合に限る。
第二十六条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第九条第六項の規定又は第十四条第六項若しくは第十五条の規定(第十八条第三項において準用する場合を含む。)又は第十九条第五項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第二十二条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第二十二条第二項又は第四項の規定による質問に対して陳述をせず、又は虚偽の陳述をした者
四 第二十二条第三項又は第五項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第二十八条 第二十四条又は第二十五条の犯罪に係る貴金属地金、歯科用貴金属地金又は金地金であつて犯人の所有又は占有するものは、没収する。
2 犯人以外の者が犯罪の後前項の貴金属地金、歯科用貴金属地金又は金地金を取得した場合において、その取得の当時善意であつたと認められないときは、これを没収する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 左に掲げる法令は、廃止する。
産金法(昭和十二年法律第五十九号)
産金法施行令(昭和十二年勅令第四百五十四号)
金、銀又は白金等の取引等取締に関する件(昭和二十年勅令第五百七十七号)
金、銀又は白金等の取引等取締に関する件の施行に関する件(昭和二十年大蔵省令第八十七号)
貴金属地金の取引等についての帳簿及び報告に関する政令(昭和二十四年政令第二百九十二号)
3 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
4 この法律施行前において、旧金、銀又は白金等の取引等取締に関する件第一条第一項に規定する取引又は行為について同項に規定する大蔵大臣の許可があつた場合には、当該取引又は行為について第十二条第一項に規定する主務大臣の許可があつたものとみなす。
5 この法律施行前において、旧金、銀又は白金等の取引等取締に関する件の施行に関する件第一条の規定により大蔵大臣に許可申請書を提出した場合においては、第七条又は第十二条第二項の規定により主務大臣に申請があつたものとみなす。
6 この法律施行の際現に歯科用貴金属地金加工業又は歯科用貴金属地金販売業を営んでいる者であつてこの法律施行後その事業を継続しようとするものは、第十四条第二項(第十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定に準じ、この法律施行後一月以内に主務大臣又は都道府県知事に認可を申請しなければならない。
7 第十四条第三項から第五項まで及び第十九条第三項の規定は、前項の場合に準用する。
8 第六項の規定による申請をし、主務大臣又は都道府県知事の認可を受けた者は、第十四条第一項又は第十八条第一項の認可を受けた者とみなす。
9 この法律施行の際現に歯科用貴金属地金加工業又は歯科用貴金属地金販売業を営んでいる者は、第十四条第一項又は第十八条第一項の規定にかかわらず、この法律施行後一月を経過した日(第六項の規定による申請をした者については、主務大臣又は都道府県知事の認可又は不認可の通知のあつた日)まで、その事業を営むことができる。
別表
関税定率法別表輸入税表
免税される物品
番号
品名
九五
植物性揮発油 二 其ノ他  乙 其ノ他
パイン油
二二九
別号ニ掲ゲザル薬材、化学薬及製薬
青化石灰及び浮遊選鉱剤
二三〇
薬材、化学薬及製薬ノ調合品(別号ニ掲ゲザルモノ)
浮遊選鉱剤
四六二ノ二
特殊鋼
ドリルスチール
五八四
キヤプスタン、ウインチ、ウインドラス其ノ他別号ニ掲ゲザルワイヂングマシン
スラツシヤーホイスト
五九五
ニウマチツクツール及ニウマチツクマシン
ドリフター
六〇四
別号ニ掲ゲザル機械
試錐機、物理探鉱機、エヤーストウイングマシン、選鉱用機械及び青化製錬用機械
法務総裁 殖田俊吉
大蔵大臣臨時代理 国務大臣 殖田俊吉
文部大臣 高瀬荘太郎
厚生大臣 林譲治
農林大臣 森幸太郎
通商産業大臣 高瀬荘太郎
運輸大臣 大屋晋三
電気通信大臣 小沢佐重喜
建設大臣 益谷秀次
内閣総理大臣 吉田茂