薬事法
法令番号: 法律第四十八號
公布年月日: 昭和18年3月12日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル藥事法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月十一日
內閣總理大臣 東條英機
農林大臣 井野碩哉
厚生大臣 小泉親彥
內務大臣 湯澤三千男
法律第四十八號
藥事法
第一章 總則
第一條 本法ハ藥事衞生ノ適正ヲ期シ國民體力ノ向上ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第二章 藥劑師
第二條 藥劑師ハ調劑、醫藥品ノ供給其ノ他藥事衞生ヲ掌リ國民體力ノ向上ニ寄與スルヲ以テ其ノ本分トス
第三條 藥劑師タラントスル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ免許ヲ受クルコトヲ要ス
第四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ藥劑師免許ヲ與ヘズ
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二 未成年者、禁治產者、準禁治產者、精神病者、瘖啞者又ハ盲者
第五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ藥劑師免許ヲ與ヘザルコトアルベシ
一 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者
二 藥事ニ關シ罰金ニ處セラレタル者
三 前二號ニ該當スル者ヲ除クノ外藥事ニ關シ不正ノ行爲アリタル者
第六條 厚生省ニ藥劑師名簿ヲ備ヘ藥劑師免許ニ關スル事項ヲ登錄ス
登錄スベキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 藥劑師第四條各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ免許ヲ取消スベシ
藥劑師第五條各號ノ一ニ該當シ又ハ藥劑師タルノ品位ヲ損スル行爲アリタルトキハ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトアルベシ其ノ事免許前ニ係ル場合亦同ジ
前項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖モ改悛ノ情顯著ナルトキハ再免許ヲ與フルコトアルベシ
第一項ノ取消處分ヲ受ケタル者ニ付第四條第二號ノ原因止ミタルトキ亦同ジ
前項前段ノ規定ニ依リ再免許ヲ受ケタル者主務大臣ノ定ムル期間內ニ於テ第五條第一號又ハ第二號ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ再免許ハ效力ヲ失フ
第一項乃至第三項ノ處分ハ主務大臣之ヲ行フ
第八條 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ藥劑師ヲシテ醫藥品ノ取扱其ノ他藥事衞生ニ關シ必要ナル事項ノ修習ヲ爲サシムルコトヲ得
第三章 藥劑師會
第九條 日本藥劑師會及道府縣藥劑師會ハ藥事衞生ノ改良發達ヲ圖リ國民體力ノ向上ニ關スル國策ニ協力スルヲ以テ目的トス
日本藥劑師會及道府縣藥劑師會ハ法人トス
第十條 藥劑師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣藥劑師會ヲ設立スベシ
藥劑師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣藥劑師會ノ會員トス
藥劑師ニ非ザルモ藥劑師免許ヲ受クル資格ヲ有スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ道府縣藥劑師會ノ會員タラシムルコトヲ得ルモノトス
第十一條 道府縣藥劑師會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本藥劑師會ヲ設立スベシ
道府縣藥劑師會ハ日本藥劑師會ノ會員トス
第十二條 道府縣藥劑師會ハ其ノ會員ヨリ徵收スベキ收入ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十三條 前四條ニ規定スルモノノ外日本藥劑師會及道府縣藥劑師會ノ設立ノ手續、區域、機關、經費ノ負擔及其ノ徵收、監督、會員ノ懲戒其ノ他ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四章 藥局及調劑
第十四條 藥局ヲ開設セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
藥局ハ命令ノ定ムル所ニ依リ藥劑師ヲシテ之ヲ管理セシムベシ
第十五條 藥劑師ニ非ザレバ販賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ調劑ヲ爲スコトヲ得ズ
第十六條 藥劑師販賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ調劑ヲ爲ス場合ハ藥局ニ於テ之ヲ爲スベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條 藥局ニ於テ調劑ニ從事スル藥劑師ハ調劑ノ需アル場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十八條 藥劑師ハ醫師、齒科醫師又ハ獸醫師ノ處方箋ニ依リ調劑スベシ
藥劑師ハ處方箋中疑ハシキ廉アルトキハ其ノ處方箋ヲ交付シタル醫師、齒科醫師又ハ獸醫師ニ質シ證明ヲ得ルニ非ザレバ調劑ヲ爲スコトヲ得ズ
第十九條 藥劑師調劑ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク調劑ニ關スル事項ヲ調劑錄ニ記載スベシ
第二十條 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ調劑報酬ニ關シ必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第二十一條 前七條ニ規定スルモノノ外藥局及調劑ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 醫藥品
第二十二條 醫藥品ノ製造業ヲ行ハントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
醫藥品製造業者ハ醫藥品ノ性狀品質ヲ適正ナラシムル爲命令ノ定ムル所ニ依リ藥劑師ヲ置クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前二項ニ規定スルモノノ外醫藥品ノ製造ノ設備及管理、製品ノ封緘其ノ他製造ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前三項ノ規定ハ醫藥品ノ輸入販賣業又ハ移入販賣業ニ之ヲ準用ス
第二十三條 醫藥品ノ販賣業ヲ行ハントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣ハ藥劑師ニ非ザル醫藥品販賣業者ニシテ藥劑師ヲ使用セザルモノノ取扱品目ノ制限ニ關シ必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
前二項ニ規定スルモノノ外醫藥品ノ販賣ノ方法其ノ他販賣又ハ授與ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條 主務大臣ハ保健衞生上特ニ必要アリト認ムル醫藥品ノ價格ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十五條 主務大臣ハ醫藥品ニ付局方ヲ定メタルトキハ之ヲ日本藥局方ニ收載スベシ
第二十六條 日本藥局方ニ收載セル醫藥品ハ其ノ性狀品質日本藥局方ノ所定ニ適合スルニ非ザレバ之ヲ販賣若ハ授與シ又ハ販賣若ハ授與ノ目的ヲ以テ製造、輸入、移入、貯藏若ハ陳列スルコトヲ得ズ
主務大臣ハ保健衞生上特ニ必要アリト認ムル醫藥品ニ付性狀品質ノ適正ヲ圖ル爲必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第二十七條 日本藥局方ニ收載セル醫藥品ハ其ノ容器又ハ被包ニ日本藥局方ナル文字及日本藥局方名ヲ、日本藥局方ニ收載セザル醫藥品ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ容器又ハ被包ニ其ノ名稱竝ニ成分及分量、成分不明ナルモノハ其ノ本質及製造法ノ要旨ヲ記載スルニ非ザレバ之ヲ販賣若ハ授與シ又ハ販賣若ハ授與ノ目的ヲ以テ貯藏若ハ陳列スルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ニ規定スルモノノ外醫藥品ノ貯藏、小分其ノ他取扱ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條 醫藥品ノ效能ニ關シテハ何人ト雖モ虛僞又ハ誇大ノ廣吿ヲ爲スコトヲ得ズ
主務大臣ハ前項ニ規定スルモノノ外醫藥品ニ關スル廣吿、醫藥品ノ容器若ハ被包ニ記載スル事項又ハ醫藥品ニ添附シ若ハ添附セズシテ頒布スル文書ニ關シ必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第二十九條 毒藥、劇藥及麻藥ノ品目ハ主務大臣之ヲ定ム
本法ニ規定スルモノノ外毒藥、劇藥及麻藥ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 監督
第三十條 主務大臣又ハ地方長官ハ保健衞生上特ニ必要アリト認ムルトキハ藥局開設者又ハ醫藥品ノ製造業者、輸入販賣業者、移入販賣業者若ハ販賣業者ニ對シ當該業務ニ關シ必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 主務大臣又ハ地方長官ハ第二十二條第一項ノ規定(同條第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ違反シテ製造、輸入若ハ移入セラレタル醫藥品、第二十六條第一項ノ規定若ハ同條第二項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シテ製造、輸入、移入、貯藏若ハ陳列セラレタル醫藥品又ハ保健衞生上危害ヲ生ズルノ虞アリト認ムル醫藥品ニ付其ノ所有者ヲシテ廢棄セシメ、所有者若ハ所持者ヲシテ保健衞生上危害ヲ生ズルノ虞ナキ方法ニ依リ處置セシメ又ハ直接ニ廢棄シ其ノ他必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第三十二條 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ藥局開設者又ハ醫藥品ノ製造業者、輸入販賣業者、移入販賣業者若ハ販賣業者ニ付當該業務ニ關シ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ藥局、工場、店舖、事務所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ其ノ構造設備、業務ノ狀況若ハ醫藥品、醫藥品ノ原料材料、調劑錄等ノ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシメ又ハ試驗ノ爲必要ナル分量ノ醫藥品若ハ其ノ原料材料ヲ無償ニテ收去セシムルコトヲ得
第三十三條 醫藥品ノ製造業者、輸入販賣業者又ハ移入販賣業者其ノ業務ニ關シ犯罪又ハ不正ノ行爲アリタルトキハ主務大臣ハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
藥局開設者又ハ醫藥品販賣業者其ノ業務ニ關シ犯罪又ハ不正ノ行爲アリタルトキハ地方長官ハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
第三十四條 醫藥品ノ製造業者、輸入販賣業者又ハ移入販賣業者正當ノ事由ナクシテ其ノ業務ヲ行ハザルトキハ主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
藥局開設者又ハ醫藥品販賣業者正當ノ事由ナクシテ其ノ業務ヲ行ハザルトキハ地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第七章 雜則
第三十五條 第八條及第四章乃至前章ニ規定スル主務大臣ノ職權ノ一部ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第三十六條 樺太ニ於テ本法ヲ適用スルニ付必要ナル事項ニ關シテハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第八章 罰則
第三十七條 麻藥ニ關シ第二十二條第一項ノ規定(同條第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ違反シタル者又ハ麻藥ノ輸出若ハ移出ニ關シ第二十九條第二項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十八條 當該官吏又ハ其ノ職ニ在リタル者故ナク第三十二條ノ規定ニ依ル調劑錄ノ檢査ニ關シ知得シタル個人ノ祕密ヲ漏洩シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
職務上前項ノ祕密ヲ知得シタル他ノ公務員又ハ公務員タリシ者故ナク其ノ祕密ヲ漏洩シタルトキ亦前項ニ同ジ
第三十九條 第三十七條ノ規定ニ該當スル者ヲ除クノ外第二十二條第一項ノ規定(同條第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ違反シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金若ハ科料ニ處ス
一 第二十二條第三項ノ規定(同條第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
二 麻藥ニ關シ第二十三條第三項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
三 製造、輸入又ハ移入ニ關シ第二十六條第一項ノ規定ニ違反シタル者
四 製造、輸入又ハ移入ニ關シ第二十六條第二項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
第四十一條 前條ノ規定ニ該當スル者ヲ除クノ外左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第十四條、第二十二條第二項(同條第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十三條第一項、第二十六條第一項、第二十七條第一項又ハ第二十八條第一項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十五條乃至第十九條ノ規定ニ違反シタル者
三 第二十條、第二十三條第二項第三項、第二十六條第二項、第二十七條第二項又ハ第二十八條第二項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
四 藥局ニ關シ第二十一條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
五 調劑ニ關シ第二十一條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
六 第二十四條ノ規定ニ基キテ發スル命令又ハ同條ノ規定ニ依ル處分ニ違反シタル者
七 毒藥又ハ劇藥ニ關シ第二十九條第二項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
八 第三十一條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
九 第三十一條ノ規定ニ依ル廢棄其ノ他ノ處分又ハ第三十二條若ハ第四十七條第二項ノ規定ニ依ル當該官吏ノ檢査若ハ收去ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
十 第三十二條又ハ第四十七條第二項ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
十一 業務停止中ノ藥劑師ニシテ其ノ業務ヲ爲シタルモノ
十二 誤リテ調劑ヲ爲シタル者
十三 醫藥品ノ容器又ハ被包ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者
十四 業務停止中ノ藥局開設者又ハ醫藥品ノ製造業者、輸入販賣業者、移入販賣業者若ハ販賣業者ニシテ其ノ業務ヲ爲シタルモノ
第四十二條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十七條、第三十九條、第四十條又ハ前條第一號、第三號、第四號、第六號乃至第八號、第十號、第十三號若ハ第十四號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免カルルコトヲ得ズ
第四十三條 第三十七條、第三十九條、第四十條竝ニ第四十一條第一號、第三號、第四號、第六號乃至第八號、第十號、第十三號及第十四號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ其ノ業務ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第四十四條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
附 則
第四十五條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六條 藥品營業竝藥品取扱規則、賣藥法及藥劑師法ハ之ヲ廢止ス但シ藥劑師法中道府縣藥劑師會及日本藥劑師會ニ關スル規定ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勅令ヲ以テ定ムル時迄仍其ノ效力ヲ有ス
第四十七條 醫師、齒科醫師又ハ獸醫師ハ其ノ診療ニ用フベキ醫藥品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第十五條ノ規定ニ拘ラズ調劑ヲ爲スコトヲ得
地方長官必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ病院若ハ診療所ノ開設者又ハ開業ノ獸醫師ニ付醫藥品ノ使用ニ關シ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ醫藥品ヲ貯藏スル場所ニ臨檢シ醫藥品ヲ檢査セシメ若ハ試驗ノ爲必要ナル分量ノ醫藥品ヲ無償ニテ收去セシムルコトヲ得
第四十八條 藥劑師法ニ依リ藥劑師免許ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ藥劑師免許ヲ受ケタルモノト看做ス
第四十九條 本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布吿刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ニ處セラレタル者ハ六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタルモノト看做ス
第五十條 藥劑師法ニ依ル藥劑師名簿ノ登錄ハ之ヲ本法ニ依ル藥劑師名簿ノ登錄ト看做ス
第五十一條 藥劑師法ニ依リ爲シタル藥劑師免許ノ取消ノ處分又ハ業務ノ停止ノ處分ハ之ヲ本法ノ相當規定ニ依リテ爲シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ停止ノ期間ハ仍從前ノ例ニ依ル
第五十二條 藥劑師法ノ道府縣藥劑師會及日本藥劑師會ノ權利義務ニシテ第四十六條但書ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ定ムル時ニ於テ存スルモノハ各本法ノ道府縣藥劑師會及日本藥劑師會之ヲ承繼ス
第五十三條 舊法ニ依リ開設シタル藥局ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ第十四條第一項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケタルモノト看做ス
第五十四條 前條ノ規定ハ從前ノ規定ニ依リ醫藥品ノ製造業、輸入販賣業、移入販賣業又ハ販賣業ヲ行フ者ニシテ本法施行ノ際現ニ當該事業ヲ行フ者ニ之ヲ準用ス
從前ノ規定ニ依リ前項ノ者ニ付爲シタル業務停止ノ處分ハ之ヲ本法ノ相當規定ニ依リ爲シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ停止ノ期間ハ仍從前ノ例ニ依ル
第五十五條 本法施行ノ際現ニ存スル醫藥品ノ容器又ハ被包ニ記載スベキ事項ニ付テハ第二十七條第一項ノ規定ニ拘ラズ本法施行ノ日ヨリ二年ヲ限リ仍從前ノ例ニ依ルコトヲ得
第五十六條 藥品營業竝藥品取扱規則、賣藥法若ハ藥劑師法若ハ之ニ基キテ發スル命令又ハ花柳病豫防法第七條第一項ノ規定ニ違反シタル者ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第五十七條 花柳病豫防法中左ノ通改正ス
第七條、第八條及附則第二項ヲ削ル
第五十八條 阿片法中左ノ通改正ス
第五條中「藥劑師藥種商」ヲ「醫藥品販賣業者」ニ改ム
第六條第一項及第六條ノ二中「製藥者」ヲ「醫藥品製造業者」ニ改ム
第五十九條 昭和十五年法律第九十二號中左ノ通改正ス
第四條中「藥劑師法、」ヲ「藥事法及」ニ改メ「及藥品營業竝藥品取扱規則」ヲ削ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル薬事法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月十一日
内閣総理大臣 東条英機
農林大臣 井野碩哉
厚生大臣 小泉親彦
内務大臣 湯沢三千男
法律第四十八号
薬事法
第一章 総則
第一条 本法ハ薬事衛生ノ適正ヲ期シ国民体力ノ向上ヲ図ルヲ以テ目的トス
第二章 薬剤師
第二条 薬剤師ハ調剤、医薬品ノ供給其ノ他薬事衛生ヲ掌リ国民体力ノ向上ニ寄与スルヲ以テ其ノ本分トス
第三条 薬剤師タラントスル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ免許ヲ受クルコトヲ要ス
第四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ薬剤師免許ヲ与ヘズ
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
二 未成年者、禁治産者、準禁治産者、精神病者、瘖唖者又ハ盲者
第五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ薬剤師免許ヲ与ヘザルコトアルベシ
一 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者
二 薬事ニ関シ罰金ニ処セラレタル者
三 前二号ニ該当スル者ヲ除クノ外薬事ニ関シ不正ノ行為アリタル者
第六条 厚生省ニ薬剤師名簿ヲ備ヘ薬剤師免許ニ関スル事項ヲ登録ス
登録スベキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 薬剤師第四条各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ免許ヲ取消スベシ
薬剤師第五条各号ノ一ニ該当シ又ハ薬剤師タルノ品位ヲ損スル行為アリタルトキハ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトアルベシ其ノ事免許前ニ係ル場合亦同ジ
前項ノ取消処分ヲ受ケタル者ト雖モ改悛ノ情顕著ナルトキハ再免許ヲ与フルコトアルベシ
第一項ノ取消処分ヲ受ケタル者ニ付第四条第二号ノ原因止ミタルトキ亦同ジ
前項前段ノ規定ニ依リ再免許ヲ受ケタル者主務大臣ノ定ムル期間内ニ於テ第五条第一号又ハ第二号ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ再免許ハ効力ヲ失フ
第一項乃至第三項ノ処分ハ主務大臣之ヲ行フ
第八条 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ薬剤師ヲシテ医薬品ノ取扱其ノ他薬事衛生ニ関シ必要ナル事項ノ修習ヲ為サシムルコトヲ得
第三章 薬剤師会
第九条 日本薬剤師会及道府県薬剤師会ハ薬事衛生ノ改良発達ヲ図リ国民体力ノ向上ニ関スル国策ニ協力スルヲ以テ目的トス
日本薬剤師会及道府県薬剤師会ハ法人トス
第十条 薬剤師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府県薬剤師会ヲ設立スベシ
薬剤師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府県薬剤師会ノ会員トス
薬剤師ニ非ザルモ薬剤師免許ヲ受クル資格ヲ有スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ道府県薬剤師会ノ会員タラシムルコトヲ得ルモノトス
第十一条 道府県薬剤師会ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本薬剤師会ヲ設立スベシ
道府県薬剤師会ハ日本薬剤師会ノ会員トス
第十二条 道府県薬剤師会ハ其ノ会員ヨリ徴収スベキ収入ニ関シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十三条 前四条ニ規定スルモノノ外日本薬剤師会及道府県薬剤師会ノ設立ノ手続、区域、機関、経費ノ負担及其ノ徴収、監督、会員ノ懲戒其ノ他ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四章 薬局及調剤
第十四条 薬局ヲ開設セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
薬局ハ命令ノ定ムル所ニ依リ薬剤師ヲシテ之ヲ管理セシムベシ
第十五条 薬剤師ニ非ザレバ販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為スコトヲ得ズ
第十六条 薬剤師販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為ス場合ハ薬局ニ於テ之ヲ為スベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十七条 薬局ニ於テ調剤ニ従事スル薬剤師ハ調剤ノ需アル場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十八条 薬剤師ハ医師、歯科医師又ハ獣医師ノ処方箋ニ依リ調剤スベシ
薬剤師ハ処方箋中疑ハシキ廉アルトキハ其ノ処方箋ヲ交付シタル医師、歯科医師又ハ獣医師ニ質シ証明ヲ得ルニ非ザレバ調剤ヲ為スコトヲ得ズ
第十九条 薬剤師調剤ヲ為シタルトキハ遅滞ナク調剤ニ関スル事項ヲ調剤録ニ記載スベシ
第二十条 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ調剤報酬ニ関シ必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
第二十一条 前七条ニ規定スルモノノ外薬局及調剤ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 医薬品
第二十二条 医薬品ノ製造業ヲ行ハントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
医薬品製造業者ハ医薬品ノ性状品質ヲ適正ナラシムル為命令ノ定ムル所ニ依リ薬剤師ヲ置クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前二項ニ規定スルモノノ外医薬品ノ製造ノ設備及管理、製品ノ封緘其ノ他製造ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前三項ノ規定ハ医薬品ノ輸入販売業又ハ移入販売業ニ之ヲ準用ス
第二十三条 医薬品ノ販売業ヲ行ハントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣ハ薬剤師ニ非ザル医薬品販売業者ニシテ薬剤師ヲ使用セザルモノノ取扱品目ノ制限ニ関シ必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
前二項ニ規定スルモノノ外医薬品ノ販売ノ方法其ノ他販売又ハ授与ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四条 主務大臣ハ保健衛生上特ニ必要アリト認ムル医薬品ノ価格ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ公正ヲ図ル為必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第二十五条 主務大臣ハ医薬品ニ付局方ヲ定メタルトキハ之ヲ日本薬局方ニ収載スベシ
第二十六条 日本薬局方ニ収載セル医薬品ハ其ノ性状品質日本薬局方ノ所定ニ適合スルニ非ザレバ之ヲ販売若ハ授与シ又ハ販売若ハ授与ノ目的ヲ以テ製造、輸入、移入、貯蔵若ハ陳列スルコトヲ得ズ
主務大臣ハ保健衛生上特ニ必要アリト認ムル医薬品ニ付性状品質ノ適正ヲ図ル為必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
第二十七条 日本薬局方ニ収載セル医薬品ハ其ノ容器又ハ被包ニ日本薬局方ナル文字及日本薬局方名ヲ、日本薬局方ニ収載セザル医薬品ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ容器又ハ被包ニ其ノ名称並ニ成分及分量、成分不明ナルモノハ其ノ本質及製造法ノ要旨ヲ記載スルニ非ザレバ之ヲ販売若ハ授与シ又ハ販売若ハ授与ノ目的ヲ以テ貯蔵若ハ陳列スルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ニ規定スルモノノ外医薬品ノ貯蔵、小分其ノ他取扱ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八条 医薬品ノ効能ニ関シテハ何人ト雖モ虚偽又ハ誇大ノ広告ヲ為スコトヲ得ズ
主務大臣ハ前項ニ規定スルモノノ外医薬品ニ関スル広告、医薬品ノ容器若ハ被包ニ記載スル事項又ハ医薬品ニ添附シ若ハ添附セズシテ頒布スル文書ニ関シ必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
第二十九条 毒薬、劇薬及麻薬ノ品目ハ主務大臣之ヲ定ム
本法ニ規定スルモノノ外毒薬、劇薬及麻薬ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 監督
第三十条 主務大臣又ハ地方長官ハ保健衛生上特ニ必要アリト認ムルトキハ薬局開設者又ハ医薬品ノ製造業者、輸入販売業者、移入販売業者若ハ販売業者ニ対シ当該業務ニ関シ必要ナル指示ヲ為スコトヲ得
第三十一条 主務大臣又ハ地方長官ハ第二十二条第一項ノ規定(同条第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ違反シテ製造、輸入若ハ移入セラレタル医薬品、第二十六条第一項ノ規定若ハ同条第二項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シテ製造、輸入、移入、貯蔵若ハ陳列セラレタル医薬品又ハ保健衛生上危害ヲ生ズルノ虞アリト認ムル医薬品ニ付其ノ所有者ヲシテ廃棄セシメ、所有者若ハ所持者ヲシテ保健衛生上危害ヲ生ズルノ虞ナキ方法ニ依リ処置セシメ又ハ直接ニ廃棄シ其ノ他必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第三十二条 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ薬局開設者又ハ医薬品ノ製造業者、輸入販売業者、移入販売業者若ハ販売業者ニ付当該業務ニ関シ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ薬局、工場、店舗、事務所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ其ノ構造設備、業務ノ状況若ハ医薬品、医薬品ノ原料材料、調剤録等ノ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシメ又ハ試験ノ為必要ナル分量ノ医薬品若ハ其ノ原料材料ヲ無償ニテ収去セシムルコトヲ得
第三十三条 医薬品ノ製造業者、輸入販売業者又ハ移入販売業者其ノ業務ニ関シ犯罪又ハ不正ノ行為アリタルトキハ主務大臣ハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
薬局開設者又ハ医薬品販売業者其ノ業務ニ関シ犯罪又ハ不正ノ行為アリタルトキハ地方長官ハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
第三十四条 医薬品ノ製造業者、輸入販売業者又ハ移入販売業者正当ノ事由ナクシテ其ノ業務ヲ行ハザルトキハ主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
薬局開設者又ハ医薬品販売業者正当ノ事由ナクシテ其ノ業務ヲ行ハザルトキハ地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第七章 雑則
第三十五条 第八条及第四章乃至前章ニ規定スル主務大臣ノ職権ノ一部ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第三十六条 樺太ニ於テ本法ヲ適用スルニ付必要ナル事項ニ関シテハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第八章 罰則
第三十七条 麻薬ニ関シ第二十二条第一項ノ規定(同条第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ違反シタル者又ハ麻薬ノ輸出若ハ移出ニ関シ第二十九条第二項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十八条 当該官吏又ハ其ノ職ニ在リタル者故ナク第三十二条ノ規定ニ依ル調剤録ノ検査ニ関シ知得シタル個人ノ秘密ヲ漏洩シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
職務上前項ノ秘密ヲ知得シタル他ノ公務員又ハ公務員タリシ者故ナク其ノ秘密ヲ漏洩シタルトキ亦前項ニ同ジ
第三十九条 第三十七条ノ規定ニ該当スル者ヲ除クノ外第二十二条第一項ノ規定(同条第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ違反シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金若ハ科料ニ処ス
一 第二十二条第三項ノ規定(同条第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
二 麻薬ニ関シ第二十三条第三項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
三 製造、輸入又ハ移入ニ関シ第二十六条第一項ノ規定ニ違反シタル者
四 製造、輸入又ハ移入ニ関シ第二十六条第二項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
第四十一条 前条ノ規定ニ該当スル者ヲ除クノ外左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第十四条、第二十二条第二項(同条第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十三条第一項、第二十六条第一項、第二十七条第一項又ハ第二十八条第一項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十五条乃至第十九条ノ規定ニ違反シタル者
三 第二十条、第二十三条第二項第三項、第二十六条第二項、第二十七条第二項又ハ第二十八条第二項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
四 薬局ニ関シ第二十一条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
五 調剤ニ関シ第二十一条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
六 第二十四条ノ規定ニ基キテ発スル命令又ハ同条ノ規定ニ依ル処分ニ違反シタル者
七 毒薬又ハ劇薬ニ関シ第二十九条第二項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者
八 第三十一条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
九 第三十一条ノ規定ニ依ル廃棄其ノ他ノ処分又ハ第三十二条若ハ第四十七条第二項ノ規定ニ依ル当該官吏ノ検査若ハ収去ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
十 第三十二条又ハ第四十七条第二項ノ規定ニ依ル報告ヲ怠リ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
十一 業務停止中ノ薬剤師ニシテ其ノ業務ヲ為シタルモノ
十二 誤リテ調剤ヲ為シタル者
十三 医薬品ノ容器又ハ被包ニ虚偽ノ記載ヲ為シタル者
十四 業務停止中ノ薬局開設者又ハ医薬品ノ製造業者、輸入販売業者、移入販売業者若ハ販売業者ニシテ其ノ業務ヲ為シタルモノ
第四十二条 法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第三十七条、第三十九条、第四十条又ハ前条第一号、第三号、第四号、第六号乃至第八号、第十号、第十三号若ハ第十四号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免カルルコトヲ得ズ
第四十三条 第三十七条、第三十九条、第四十条並ニ第四十一条第一号、第三号、第四号、第六号乃至第八号、第十号、第十三号及第十四号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ其ノ業務ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第四十四条 前二条ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処スルコトヲ得ズ
附 則
第四十五条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六条 薬品営業並薬品取扱規則、売薬法及薬剤師法ハ之ヲ廃止ス但シ薬剤師法中道府県薬剤師会及日本薬剤師会ニ関スル規定ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勅令ヲ以テ定ムル時迄仍其ノ効力ヲ有ス
第四十七条 医師、歯科医師又ハ獣医師ハ其ノ診療ニ用フベキ医薬品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第十五条ノ規定ニ拘ラズ調剤ヲ為スコトヲ得
地方長官必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ病院若ハ診療所ノ開設者又ハ開業ノ獣医師ニ付医薬品ノ使用ニ関シ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ医薬品ヲ貯蔵スル場所ニ臨検シ医薬品ヲ検査セシメ若ハ試験ノ為必要ナル分量ノ医薬品ヲ無償ニテ収去セシムルコトヲ得
第四十八条 薬剤師法ニ依リ薬剤師免許ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ薬剤師免許ヲ受ケタルモノト看做ス
第四十九条 本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六号布告刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ニ処セラレタル者ハ六年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ処セラレタルモノト看做ス
第五十条 薬剤師法ニ依ル薬剤師名簿ノ登録ハ之ヲ本法ニ依ル薬剤師名簿ノ登録ト看做ス
第五十一条 薬剤師法ニ依リ為シタル薬剤師免許ノ取消ノ処分又ハ業務ノ停止ノ処分ハ之ヲ本法ノ相当規定ニ依リテ為シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ停止ノ期間ハ仍従前ノ例ニ依ル
第五十二条 薬剤師法ノ道府県薬剤師会及日本薬剤師会ノ権利義務ニシテ第四十六条但書ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ定ムル時ニ於テ存スルモノハ各本法ノ道府県薬剤師会及日本薬剤師会之ヲ承継ス
第五十三条 旧法ニ依リ開設シタル薬局ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ第十四条第一項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケタルモノト看做ス
第五十四条 前条ノ規定ハ従前ノ規定ニ依リ医薬品ノ製造業、輸入販売業、移入販売業又ハ販売業ヲ行フ者ニシテ本法施行ノ際現ニ当該事業ヲ行フ者ニ之ヲ準用ス
従前ノ規定ニ依リ前項ノ者ニ付為シタル業務停止ノ処分ハ之ヲ本法ノ相当規定ニ依リ為シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ停止ノ期間ハ仍従前ノ例ニ依ル
第五十五条 本法施行ノ際現ニ存スル医薬品ノ容器又ハ被包ニ記載スベキ事項ニ付テハ第二十七条第一項ノ規定ニ拘ラズ本法施行ノ日ヨリ二年ヲ限リ仍従前ノ例ニ依ルコトヲ得
第五十六条 薬品営業並薬品取扱規則、売薬法若ハ薬剤師法若ハ之ニ基キテ発スル命令又ハ花柳病予防法第七条第一項ノ規定ニ違反シタル者ノ処罰ニ付テハ仍旧法ニ依ル
第五十七条 花柳病予防法中左ノ通改正ス
第七条、第八条及附則第二項ヲ削ル
第五十八条 阿片法中左ノ通改正ス
第五条中「薬剤師薬種商」ヲ「医薬品販売業者」ニ改ム
第六条第一項及第六条ノ二中「製薬者」ヲ「医薬品製造業者」ニ改ム
第五十九条 昭和十五年法律第九十二号中左ノ通改正ス
第四条中「薬剤師法、」ヲ「薬事法及」ニ改メ「及薬品営業並薬品取扱規則」ヲ削ル