薬剤師法
法令番号: 法律第四十四號
公布年月日: 大正14年4月14日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル藥劑師法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十四年四月十三日
內閣總理大臣 子爵 加藤高明
內務大臣 若槻禮次郞
法律第四十四號
藥劑師法
第一條 藥劑師トハ醫師、齒科醫師又ハ獸醫ノ處方箋ニ依リ調劑ヲ爲ス者ヲ謂フ
藥劑師ハ藥品ノ製造及販賣ヲ爲スコトヲ得
第二條 藥劑師タラムトスル者ハ內務大臣ノ免許ヲ受ケ藥劑師名簿ニ登錄ヲ受クヘシ
前項ノ免許ヲ受クルニハ左ノ各號ノ一ニ該當スル資格ヲ有スルコトヲ要ス
一 大學令ニ依ル大學ニ於テ藥學ヲ修メ學士ト稱スルコトヲ得ル者、官立公立ノ藥學專門學校、醫科大學附屬藥學專門部若ハ醫學專門學校藥學科ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ニ於テ之ト同等以上ト認メ指定シタル學校ヲ卒業シタル者
二 藥劑師試驗ニ合格シタル者
三 外國ノ藥學校ヲ卒業シ又ハ外國ニ於テ藥劑師ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ命令ノ規定ニ該當スルモノ
第一項ノ登錄及前項第二號ノ藥劑師試驗ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 內務大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ藥劑師ノ免許ヲ爲スコトヲ得ス
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二 未成年者、禁治產者又ハ準禁治產者
三 精神病者、瘖啞者又ハ盲者
第四條 內務大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ藥劑師ノ免許ヲ爲ササルコトヲ得
一 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者
二 藥事ニ關シ罰金ノ刑ニ處セラレ又ハ不正ノ行爲アリタル者
第五條 藥劑師ニ非サレハ販賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ調劑ヲ爲スコトヲ得ス
藥劑師販賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ調劑ヲ爲ス場合ニ於テハ藥局ニ於テ之ヲ行フヘシ
第六條 藥劑師ニ非サレハ藥局ヲ開設スルコトヲ得ス但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラス
藥局ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 藥劑師ニ非サレハ藥局ヲ管理スルコトヲ得ス藥劑師ト雖二以上ノ藥局ヲ管理スルコトヲ得ス
第八條 藥劑師ハ調劑ノ需アル場合ニ於テハ晝夜ヲ問ハス正當ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第九條 藥劑師ハ醫師、齒科醫師又ハ獸醫ノ氏名ヲ自記シ又ハ調印シタル處方箋ニ依リ調劑スヘキモノトス但シ處方箋中疑ハシキ廉アルトキハ其ノ醫師、齒科醫師又ハ獸醫ニ質シ證明ヲ得ルニ非サレハ調劑ヲ爲スコトヲ得ス
第十條 藥劑師ハ醫師、齒科醫師又ハ獸醫ノ處方箋ニ記載セラレタル藥品ニ付之ヲ省略シ又ハ他ノ藥品ヲ以テ之ニ代ヘ調劑ヲ爲スコトヲ得ス但シ藥品ニシテ缺乏セルモノアル場合ニ於テ其ノ醫師、齒科醫師又ハ獸醫ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 藥劑師毒藥又ハ劇藥ヲ配伍シタル調劑ヲ爲シタルトキハ處方箋ニ檢印シ其ノ日附ヨリ三年間之ヲ保存スヘシ但シ處方箋ニ指定スル使用期間ニ對スル調劑ノ全部ヲ了ラサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テハ處方箋ニ調劑ノ年月日及調劑量ヲ記入シ記名捺印スヘシ
第十二條 藥局開設者ハ藥局ニ調劑錄ヲ備フヘシ
藥劑師調劑ヲ爲シタルトキハ直ニ調劑錄ニ調劑ニ關スル事項ヲ記載スヘシ
調劑錄ハ三年間之ヲ保存スヘシ
第十三條 藥劑師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣藥劑師會ヲ設立スヘシ
道府縣藥劑師會ハ日本藥劑師會ヲ設立スルコトヲ得
道府縣藥劑師會及日本藥劑師會ハ法人トス勅令ノ定ムル所ニ依リ藥事衞生ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
道府縣藥劑師會ハ道府縣ヲ、日本藥劑師會ハ內地ヲ區域トス
第十四條 道府縣藥劑師會及日本藥劑師會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員ヨリ徵收スヘキ收入ニ關シ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十五條 本法ニ規定スルモノノ外道府縣藥劑師會及日本藥劑師會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 藥劑師第三條各號ノ一ニ該當スルトキハ內務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スヘシ
藥劑師第四條各號ノ一ニ該當スルトキハ內務大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
前二項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖第三條第二號又ハ第三號ノ原因止ミタルトキ又ハ改悛ノ情顯著ナルトキハ再免許ヲ爲スコトヲ得
內務大臣第二項ノ處分ヲ行フ場合及改悛ノ情顯著ナル者ニ對シ前項ノ再免許ヲ爲ス場合ニ於テハ中央衞生會ノ審議ヲ經ルコトヲ要ス
第十七條 第五條第一項、第六條第一項、第七條若ハ第九條ノ規定ニ違反シタル者又ハ業務停止中ノ藥劑師ニシテ其ノ業務ヲ爲シタルモノハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十八條 第五條第二項、第八條若ハ第十條乃至第十二條ノ規定ニ違反シタル者又ハ誤リテ調劑ヲ爲シタル者ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
藥品營業竝藥品取扱規則中第一條乃至第十五條、第十六條乃至第十九條、第四十一條ノ五、第四十三條第一項、第四十四條、第四十六條、第四十六條ノ二第一項及第三項竝之ニ伴フ罰則ノ規定ハ之ヲ廢止ス
醫師、齒科醫師又ハ獸醫ハ其ノ診療ニ用フヘキ藥品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第五條第一項ノ規定ニ拘ラス調劑ヲ爲スコトヲ得
本法施行ノ際現ニ藥劑師タル者ハ本法ニ依リ藥劑師ノ免許ヲ受ケ藥劑師名簿ニ登錄ヲ受ケタル者ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ帝國大學醫科大學藥學科ヲ卒業シタル者ハ大學令ニ依ル大學ニ於テ藥學ヲ修メ學士ト稱スルコトヲ得ル者、高等中學校醫學部藥學科又ハ高等學校醫學部藥學科ヲ卒業シタル者ハ官立藥學專門學校ヲ卒業シタル者ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル薬剤師法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十四年四月十三日
内閣総理大臣 子爵 加藤高明
内務大臣 若槻礼次郎
法律第四十四号
薬剤師法
第一条 薬剤師トハ医師、歯科医師又ハ獣医ノ処方箋ニ依リ調剤ヲ為ス者ヲ謂フ
薬剤師ハ薬品ノ製造及販売ヲ為スコトヲ得
第二条 薬剤師タラムトスル者ハ内務大臣ノ免許ヲ受ケ薬剤師名簿ニ登録ヲ受クヘシ
前項ノ免許ヲ受クルニハ左ノ各号ノ一ニ該当スル資格ヲ有スルコトヲ要ス
一 大学令ニ依ル大学ニ於テ薬学ヲ修メ学士ト称スルコトヲ得ル者、官立公立ノ薬学専門学校、医科大学附属薬学専門部若ハ医学専門学校薬学科ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ニ於テ之ト同等以上ト認メ指定シタル学校ヲ卒業シタル者
二 薬剤師試験ニ合格シタル者
三 外国ノ薬学校ヲ卒業シ又ハ外国ニ於テ薬剤師ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ命令ノ規定ニ該当スルモノ
第一項ノ登録及前項第二号ノ薬剤師試験ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 内務大臣ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ薬剤師ノ免許ヲ為スコトヲ得ス
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
二 未成年者、禁治産者又ハ準禁治産者
三 精神病者、瘖唖者又ハ盲者
第四条 内務大臣ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ薬剤師ノ免許ヲ為ササルコトヲ得
一 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者
二 薬事ニ関シ罰金ノ刑ニ処セラレ又ハ不正ノ行為アリタル者
第五条 薬剤師ニ非サレハ販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為スコトヲ得ス
薬剤師販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為ス場合ニ於テハ薬局ニ於テ之ヲ行フヘシ
第六条 薬剤師ニ非サレハ薬局ヲ開設スルコトヲ得ス但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラス
薬局ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 薬剤師ニ非サレハ薬局ヲ管理スルコトヲ得ス薬剤師ト雖二以上ノ薬局ヲ管理スルコトヲ得ス
第八条 薬剤師ハ調剤ノ需アル場合ニ於テハ昼夜ヲ問ハス正当ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第九条 薬剤師ハ医師、歯科医師又ハ獣医ノ氏名ヲ自記シ又ハ調印シタル処方箋ニ依リ調剤スヘキモノトス但シ処方箋中疑ハシキ廉アルトキハ其ノ医師、歯科医師又ハ獣医ニ質シ証明ヲ得ルニ非サレハ調剤ヲ為スコトヲ得ス
第十条 薬剤師ハ医師、歯科医師又ハ獣医ノ処方箋ニ記載セラレタル薬品ニ付之ヲ省略シ又ハ他ノ薬品ヲ以テ之ニ代ヘ調剤ヲ為スコトヲ得ス但シ薬品ニシテ欠乏セルモノアル場合ニ於テ其ノ医師、歯科医師又ハ獣医ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 薬剤師毒薬又ハ劇薬ヲ配伍シタル調剤ヲ為シタルトキハ処方箋ニ検印シ其ノ日附ヨリ三年間之ヲ保存スヘシ但シ処方箋ニ指定スル使用期間ニ対スル調剤ノ全部ヲ了ラサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テハ処方箋ニ調剤ノ年月日及調剤量ヲ記入シ記名捺印スヘシ
第十二条 薬局開設者ハ薬局ニ調剤録ヲ備フヘシ
薬剤師調剤ヲ為シタルトキハ直ニ調剤録ニ調剤ニ関スル事項ヲ記載スヘシ
調剤録ハ三年間之ヲ保存スヘシ
第十三条 薬剤師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府県薬剤師会ヲ設立スヘシ
道府県薬剤師会ハ日本薬剤師会ヲ設立スルコトヲ得
道府県薬剤師会及日本薬剤師会ハ法人トス勅令ノ定ムル所ニ依リ薬事衛生ノ改良発達ヲ図ルヲ以テ目的トス
道府県薬剤師会ハ道府県ヲ、日本薬剤師会ハ内地ヲ区域トス
第十四条 道府県薬剤師会及日本薬剤師会ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ会員ヨリ徴収スヘキ収入ニ関シ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十五条 本法ニ規定スルモノノ外道府県薬剤師会及日本薬剤師会ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 薬剤師第三条各号ノ一ニ該当スルトキハ内務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スヘシ
薬剤師第四条各号ノ一ニ該当スルトキハ内務大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
前二項ノ取消処分ヲ受ケタル者ト雖第三条第二号又ハ第三号ノ原因止ミタルトキ又ハ改悛ノ情顕著ナルトキハ再免許ヲ為スコトヲ得
内務大臣第二項ノ処分ヲ行フ場合及改悛ノ情顕著ナル者ニ対シ前項ノ再免許ヲ為ス場合ニ於テハ中央衛生会ノ審議ヲ経ルコトヲ要ス
第十七条 第五条第一項、第六条第一項、第七条若ハ第九条ノ規定ニ違反シタル者又ハ業務停止中ノ薬剤師ニシテ其ノ業務ヲ為シタルモノハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十八条 第五条第二項、第八条若ハ第十条乃至第十二条ノ規定ニ違反シタル者又ハ誤リテ調剤ヲ為シタル者ハ二百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
薬品営業並薬品取扱規則中第一条乃至第十五条、第十六条乃至第十九条、第四十一条ノ五、第四十三条第一項、第四十四条、第四十六条、第四十六条ノ二第一項及第三項並之ニ伴フ罰則ノ規定ハ之ヲ廃止ス
医師、歯科医師又ハ獣医ハ其ノ診療ニ用フヘキ薬品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第五条第一項ノ規定ニ拘ラス調剤ヲ為スコトヲ得
本法施行ノ際現ニ薬剤師タル者ハ本法ニ依リ薬剤師ノ免許ヲ受ケ薬剤師名簿ニ登録ヲ受ケタル者ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ帝国大学医科大学薬学科ヲ卒業シタル者ハ大学令ニ依ル大学ニ於テ薬学ヲ修メ学士ト称スルコトヲ得ル者、高等中学校医学部薬学科又ハ高等学校医学部薬学科ヲ卒業シタル者ハ官立薬学専門学校ヲ卒業シタル者ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六号布告刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス