朕船員法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十四日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
司法大臣 鹽野季彥
遞信大臣 永井柳太郞
拓務大臣 大谷尊由
厚生大臣 侯爵 木戶幸一
勅令第百三十五號
船員法施行令
第一條 船員法第一條第二項第三號ノ乘組員ハ左ニ揭グル者トス
一 船內ノ通信官署ニ勤務スル者
二 母船式漁業ニ使用スル母船ニ乘組ミ專ラ漁撈若ハ漁獲物ノ加工其ノ他ノ處理又ハ之ニ關スル事務ニ從事スル者
三 敎習船ニ乘組ミ敎習ヲ受クル者
第二條 同一ノ家庭ニ屬スル者ノミヲ使用スル船舶ニ於テハ十五歲未滿ノ者ヲ船員トシテ使用スルコトヲ得
第三條 十八歲以上ノ者ヲ石炭夫又ハ火夫トシテ雇入ルルコト能ハザル港ニ於テハ十六歲以上ノ者ニ限リ之ヲ雇入レ使用スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ十八歲以上ノ者一人ニ代ヘ十六歲以上ノ者二人ヲ雇入ルルコトヲ要ス
專ラ日本各港間ヲ航行スル船舶ニシテ總噸數二千噸ヲ超エザルモノニ於テハ十六歲以上ノ者ヲ、漁船ニ於テハ十五歲以上ノ者ヲ石炭夫又ハ火夫トシテ使用スルコトヲ得
第四條 漁船及同一ノ家庭ニ屬スル者ノミヲ使用スル船舶ノ船員ハ船員法第五條ノ健康證明書ヲ有スルコトヲ要セズ
第五條 緊急已ムコトヲ得ザル事由アルトキハ船員法第五條ノ健康證明書ヲ有セザル者ヲ船員トシテ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ船長ハ最初ニ到着シタル港ニ於テ健康證明書ヲ得シムルノ手續ヲ爲スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ健康證明書ヲ受クルコト能ハザル者ハ引續キ之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第六條 船長ハ無線電信ニ依ル遭難信號ヲ接受シタルトキト雖モ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ遭難者ノ救助ニ赴クコトヲ要セズ
一 遭難者ノ所在ニ到着シタル船舶ヨリ救助ノ必要ナキ旨ノ通報アリタルトキ
二 遭難船舶ノ船長ガ遭難信號ニ應答シタル船舶中適當ト認ムル船舶ニ救助ヲ求メタル場合ニ於テ救助ヲ求メラレタル船舶ノ全部ヨリ救助ニ赴ク旨ノ通報アリタルトキ
三 已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ救助ニ赴クコト能ハズ又ハ特殊ノ事情ニ因リ救助ニ赴クコトノ不相當若ハ不必要ト認メラルル場合ニ於テ其ノ旨ヲ直ニ遭難船舶ノ船長ニ通報シタルトキ
第七條 船舶所有者ハ海員ノ給料及手當ヲ船內ニ於テ支拂フトキハ船長ヲシテ當該海員ニ對シ直接之ヲ支拂ハシムルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ管海官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ船長以外ノ職員ヲシテ之ヲ支拂ハシムルコトヲ得
第八條 船舶所有者ハ海員ノ請求アリタルトキハ給料及手當ヲ其ノ家族又ハ本人ノ收入ニ依リ生計ヲ維持スル者ニ支拂フコトヲ要ス
第九條 船舶所有者ハ海員ノ雇入契約ガ終了シタル場合又ハ遞信大臣ノ定ムル場合ニ於テ權利者ノ請求アリタルトキハ遲滯ナク給料及手當ヲ支拂フコトヲ要ス
第十條 船舶所有者ハ其ノ費用ヲ以テ遞信大臣ノ定ムル食料表ニ依ル食料ヲ海員ニ支給スルコトヲ要ス但シ漁船、沿海區域ヲ航行スル船舶又ハ總噸數千噸未滿ノ船舶ノ海員ニ支給スル食料ハ當該食料表ニ依ラザルモノナルコトヲ妨ゲズ
第十一條 遠洋區域ヲ航行スル船舶ニシテ最大搭載人員百人ヲ超ユルモノニハ醫師ヲ乘組マシムルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ管海官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ期間ヲ限リ之ヲ乘組マシメザルコトヲ得
第十二條 遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル船舶ニハ遞信大臣ノ定ムル醫藥其ノ他ノ衞生用品及醫療書ヲ備フルコトヲ要ス
第十三條 前二條ノ規定ハ漁船ニハ之ヲ適用セズ
第十四條 海員ガ雇入契約存續中疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタルトキハ船舶所有者ハ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負擔スルコトヲ要ス但シ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負擔シタル期間ガ三月ニ及ブモ疾病又ハ傷痍ガ治癒セザルトキハ以後療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負擔スルコトヲ要セズ
海員ガ職務ヲ行フニ因ラズシテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル場合ニ於テ疾病又ハ傷痍ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ前項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第十五條 海員ガ其ノ職務ヲ行フニ因リ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル後雇入契約終了シタルトキハ船舶所有者ハ海員ノ雇入契約終了後ト雖モ前條ノ規定ニ依リ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負擔スル期間海員ニ給料ト同額ノ手當ヲ支給シ且其ノ期間經過後一月ノ範圍內ニ於テ海員ノ失業期間之ニ給料ト同額ノ手當ヲ支給スルコトヲ要ス但シ疾病又ハ傷痍ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 船員法第二十三條ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキハ船舶所有者ハ二月ノ範圍內ニ於テ海員ノ失業期間之ニ給料ト同額ノ手當ヲ支給スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ漁船ノ海員ニハ之ヲ適用セズ
第十七條 第十四條ニ規定スル療養ニ必要ナル費用及前二條ノ規定ニ依リ支給スル手當ハ每月一囘以上之ヲ支拂フコトヲ要ス
第十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ船舶所有者(第四號ノ場合ニ在リテハ舊所有者)ハ遲滯ナク海員ニ一月分ノ給料ト同額ノ手當ヲ支給スルコトヲ要ス
一 船員法第二十四條各號ニ揭グル場合ヲ除クノ外已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ海員ガ雇止メラレタルトキ
二 船員法第二十五條第一項第一號又ハ第三號ノ規定ニ依リ海員ガ雇止ヲ請求シタルトキ
三 船員法第二十六條第一項ノ規定ニ依リ船長ヨリ豫吿ヲ爲シタルニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
四 船員法第二十八條第一項ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
第十九條 船舶所有者ハ海員ガ其ノ職務ヲ行フニ因リテ死亡シタルトキハ遲滯ナク其ノ遺族又ハ海員ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ葬祭ヲ行フ者ニ之ニ要スル相當ノ費用ヲ支給スルコトヲ要ス
第二十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ船舶所有者ハ遲滯ナク其ノ費用ヲ以テ雇入港迄海員ヲ送還スルコトヲ要ス但シ船舶所有者ハ其ノ費用ノ負擔ヲ增加セザル場合ニ於テハ海員ノ希望スル地迄之ヲ送還スルコトヲ要ス
一 船員法第二十三條ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
二 船員法第二十四條各號ニ揭グル場合ヲ除クノ外已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ海員ガ雇止メラレタルトキ
三 船舶ガ海員ノ雇入港ヲ發航シタル後船員法第二十四條第一號ノ規定ニ依リ海員ガ雇止メラレタルトキ
四 船員法第二十四條第三號又ハ第二十五條第一項第二號ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ但シ海員ガ職務ヲ行フニ因ラズシテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル場合ニ於テ疾病又ハ傷痍ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
五 船員法第二十五條第一項第一號又ハ第三號ノ規定ニ依リ海員ガ雇止ヲ請求シタルトキ
六 船員法第二十六條第一項ノ規定ニ依リ船長ヨリ豫吿ヲ爲シタルニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
七 船員法第二十八條第二項ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
八 海員ノ本國以外ノ地ニ於テ雇入契約ガ期間ノ滿了ニ因リ終了シタルトキ
第二十一條 船舶所有者ノ負擔スベキ海員ノ送還ノ費用ハ送還中ノ運送賃、宿泊費及食費竝ニ雇入契約終了ノ時ヨリ遲滯ナク出發スル時迄ノ宿泊費及食費トス
第二十二條 船舶所有者ハ第二十條第二號、第三號又ハ第六號ノ場合ニ於テハ送還ニ必要ナル期間海員ニ給料ト同額ノ手當ヲ支給スルコトヲ要ス送還ニ代ヘテ其ノ費用ヲ支給スルトキ亦同ジ
前項ノ手當ハ送還中ニ於テ、送還ニ代ヘテ其ノ費用ヲ支給スルトキハ其ノ際之ヲ支給スルコトヲ要ス
第二十三條 船舶所有者ハ海員ニ對シ第十五條、第十六條又ハ第二十二條ノ規定ニ依リ二以上ノ手當ヲ同時ニ支給スベキ期間ニ付テハ孰レカ一ノ手當ヲ支給スルヲ以テ足ル
第二十四條 第十五條、第十六條、第十八條又ハ第二十二條ノ規定ニ依ル手當ノ算出ノ標準トスベキ給料ハ雇入契約終了ノ時ノ給料トス但シ其ノ月額ガ三十圓ニ滿タザルトキハ之ヲ三十圓トス
第二十五條 船舶所有者ハ豫メ管海官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ當該船舶所有者及海員ノ出捐スル共濟組合又ハ當該船舶所有者ノ出捐スル海員ノ扶助施設ノ爲シタル給付ノ限度ニ於テ之ニ相當スル第十四條乃至第十六條又ハ第十九條ノ規定ニ依ル給付ヲ爲スコトヲ要セズ
管海官廳ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第二十六條 第十條及第十四條乃至第二十五條ノ規定ハ船長ニ之ヲ準用ス
第二十七條 船員法第三十五條ニ規定スル懲戒ノ適用ハ船長ガ職員其ノ他適當ノ者ヲ立會ハシメ懲戒セントスル海員及關係者ヲ取調ベタル後行爲ノ輕重ニ從ヒ之ヲ定ム但シ二種以上ノ懲戒ヲ併科スルコトヲ得ズ
第二十八條 帝國ノ領事官又ハ貿易事務官ハ船員手帳ノ交付、訂正、書換及返還竝ニ第七條、第十一條、第二十五條及第三十一條ノ規定ニ依ル許可ニ關スル事務ヲ除クノ外船員法ニ依リ管海官廳ノ行フベキ一切ノ事務ヲ行フ
第二十九條 船員法第四十六條第一號ニ揭グル船舶ノ船員ガ傭人扶助令、共濟組合規則其ノ他ノ規程ニ依リ給付ヲ受クル場合ニ於テ遞信大臣ガ之ヲ充分ト認メタルトキハ第十條、第十四條乃至第十六條、第十八條乃至第二十條又ハ第二十二條ノ規定ニ依ル給付ハ之ヲ當該船員ニ爲スコトヲ要セズ
船員法第十八條、第二十條及第三十九條ノ規定ハ國ノ所有ニ屬スル船舶ノ船員ニハ之ヲ適用セズ
第三十條 船員法第二條、第三條、第四條(石炭夫又ハ火夫ニ關スル規定ヲ除ク)、第五條乃至第七條、第三十一條、第三十四條乃至第三十七條、第四十一條、第四十九條及第五十七條乃至第六十條ノ規定ハ同法第一條第二項第一號及第二號ニ揭グル乘組員ニ之ヲ準用ス
第二條、第四條、第五條及第二十七條ノ規定ハ前項ニ揭グル乘組員ニ之ヲ準用ス
第三十一條 船員法第四條、第五條及第四十九條ノ規定ハ第一條第三號ニ揭グル乘組員ニ之ヲ準用ス但シ管海官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ十五歲未滿ノ者ヲ船員ノ作業ニ、十八歲未滿ノ者ヲ石炭夫又ハ火夫ノ作業ニ使用スルコトヲ得
第三十二條 遞信大臣漁船ノ船員ノ最低年齡、船員手帳、給料及手當ノ支拂方法、食料、醫療施設、送還竝ニ船員法第二十九條ノ規定ニ依ル扶助、手當及葬祭ノ費用ニ關スル事項ニ付法律勅令ノ制定改廢案ヲ閣議ニ提出シ若ハ省令ノ制定改廢ヲ爲サントスルトキ又ハ漁船ノ船員ノ監督ニ關シ必要ナル規則ノ制定ニ付同法第四十八條ノ規定ニ依ル認可ヲ爲サントスルトキハ豫メ農林大臣ニ議スルモノトス
第三十三條 第九條、第十條、第十二條及第二十九條中遞信大臣トアルハ臺灣在籍船舶ニ付テハ臺灣總督トス
附 則
本令ハ昭和十二年法律第七十九號施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
船員最低年齡法施行令ハ之ヲ廢止ス
第十一條及第十二條ノ規定ハ本令施行ノ日ヨリ一年內ハ之ヲ適用セズ
明治三十三年勅令第四百十五號第一條中「船員法第二十三條第一項」ヲ「船員法第十四條第一項」ニ改ム
入營者職業保障法施行令第一條第三號中「船員法第七十九條ノ規定ニ依リ指定セラレタル市町村長」ヲ「船員法第四十五條ノ規定ニ依リ管海官廳ノ事務ヲ行フ市町村長」ニ改ム
朕船員法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十四日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
司法大臣 塩野季彦
逓信大臣 永井柳太郎
拓務大臣 大谷尊由
厚生大臣 侯爵 木戸幸一
勅令第百三十五号
船員法施行令
第一条 船員法第一条第二項第三号ノ乗組員ハ左ニ掲グル者トス
一 船内ノ通信官署ニ勤務スル者
二 母船式漁業ニ使用スル母船ニ乗組ミ専ラ漁撈若ハ漁獲物ノ加工其ノ他ノ処理又ハ之ニ関スル事務ニ従事スル者
三 教習船ニ乗組ミ教習ヲ受クル者
第二条 同一ノ家庭ニ属スル者ノミヲ使用スル船舶ニ於テハ十五歳未満ノ者ヲ船員トシテ使用スルコトヲ得
第三条 十八歳以上ノ者ヲ石炭夫又ハ火夫トシテ雇入ルルコト能ハザル港ニ於テハ十六歳以上ノ者ニ限リ之ヲ雇入レ使用スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ十八歳以上ノ者一人ニ代ヘ十六歳以上ノ者二人ヲ雇入ルルコトヲ要ス
専ラ日本各港間ヲ航行スル船舶ニシテ総噸数二千噸ヲ超エザルモノニ於テハ十六歳以上ノ者ヲ、漁船ニ於テハ十五歳以上ノ者ヲ石炭夫又ハ火夫トシテ使用スルコトヲ得
第四条 漁船及同一ノ家庭ニ属スル者ノミヲ使用スル船舶ノ船員ハ船員法第五条ノ健康証明書ヲ有スルコトヲ要セズ
第五条 緊急已ムコトヲ得ザル事由アルトキハ船員法第五条ノ健康証明書ヲ有セザル者ヲ船員トシテ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ船長ハ最初ニ到着シタル港ニ於テ健康証明書ヲ得シムルノ手続ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ健康証明書ヲ受クルコト能ハザル者ハ引続キ之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第六条 船長ハ無線電信ニ依ル遭難信号ヲ接受シタルトキト雖モ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ遭難者ノ救助ニ赴クコトヲ要セズ
一 遭難者ノ所在ニ到着シタル船舶ヨリ救助ノ必要ナキ旨ノ通報アリタルトキ
二 遭難船舶ノ船長ガ遭難信号ニ応答シタル船舶中適当ト認ムル船舶ニ救助ヲ求メタル場合ニ於テ救助ヲ求メラレタル船舶ノ全部ヨリ救助ニ赴ク旨ノ通報アリタルトキ
三 已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ救助ニ赴クコト能ハズ又ハ特殊ノ事情ニ因リ救助ニ赴クコトノ不相当若ハ不必要ト認メラルル場合ニ於テ其ノ旨ヲ直ニ遭難船舶ノ船長ニ通報シタルトキ
第七条 船舶所有者ハ海員ノ給料及手当ヲ船内ニ於テ支払フトキハ船長ヲシテ当該海員ニ対シ直接之ヲ支払ハシムルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ管海官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ船長以外ノ職員ヲシテ之ヲ支払ハシムルコトヲ得
第八条 船舶所有者ハ海員ノ請求アリタルトキハ給料及手当ヲ其ノ家族又ハ本人ノ収入ニ依リ生計ヲ維持スル者ニ支払フコトヲ要ス
第九条 船舶所有者ハ海員ノ雇入契約ガ終了シタル場合又ハ逓信大臣ノ定ムル場合ニ於テ権利者ノ請求アリタルトキハ遅滞ナク給料及手当ヲ支払フコトヲ要ス
第十条 船舶所有者ハ其ノ費用ヲ以テ逓信大臣ノ定ムル食料表ニ依ル食料ヲ海員ニ支給スルコトヲ要ス但シ漁船、沿海区域ヲ航行スル船舶又ハ総噸数千噸未満ノ船舶ノ海員ニ支給スル食料ハ当該食料表ニ依ラザルモノナルコトヲ妨ゲズ
第十一条 遠洋区域ヲ航行スル船舶ニシテ最大搭載人員百人ヲ超ユルモノニハ医師ヲ乗組マシムルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ管海官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ期間ヲ限リ之ヲ乗組マシメザルコトヲ得
第十二条 遠洋区域又ハ近海区域ヲ航行スル船舶ニハ逓信大臣ノ定ムル医薬其ノ他ノ衛生用品及医療書ヲ備フルコトヲ要ス
第十三条 前二条ノ規定ハ漁船ニハ之ヲ適用セズ
第十四条 海員ガ雇入契約存続中疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタルトキハ船舶所有者ハ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負担スルコトヲ要ス但シ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負担シタル期間ガ三月ニ及ブモ疾病又ハ傷痍ガ治癒セザルトキハ以後療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負担スルコトヲ要セズ
海員ガ職務ヲ行フニ因ラズシテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル場合ニ於テ疾病又ハ傷痍ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ前項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第十五条 海員ガ其ノ職務ヲ行フニ因リ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル後雇入契約終了シタルトキハ船舶所有者ハ海員ノ雇入契約終了後ト雖モ前条ノ規定ニ依リ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負担スル期間海員ニ給料ト同額ノ手当ヲ支給シ且其ノ期間経過後一月ノ範囲内ニ於テ海員ノ失業期間之ニ給料ト同額ノ手当ヲ支給スルコトヲ要ス但シ疾病又ハ傷痍ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六条 船員法第二十三条ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキハ船舶所有者ハ二月ノ範囲内ニ於テ海員ノ失業期間之ニ給料ト同額ノ手当ヲ支給スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ漁船ノ海員ニハ之ヲ適用セズ
第十七条 第十四条ニ規定スル療養ニ必要ナル費用及前二条ノ規定ニ依リ支給スル手当ハ毎月一回以上之ヲ支払フコトヲ要ス
第十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ船舶所有者(第四号ノ場合ニ在リテハ旧所有者)ハ遅滞ナク海員ニ一月分ノ給料ト同額ノ手当ヲ支給スルコトヲ要ス
一 船員法第二十四条各号ニ掲グル場合ヲ除クノ外已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ海員ガ雇止メラレタルトキ
二 船員法第二十五条第一項第一号又ハ第三号ノ規定ニ依リ海員ガ雇止ヲ請求シタルトキ
三 船員法第二十六条第一項ノ規定ニ依リ船長ヨリ予告ヲ為シタルニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
四 船員法第二十八条第一項ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
第十九条 船舶所有者ハ海員ガ其ノ職務ヲ行フニ因リテ死亡シタルトキハ遅滞ナク其ノ遺族又ハ海員ノ死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ葬祭ヲ行フ者ニ之ニ要スル相当ノ費用ヲ支給スルコトヲ要ス
第二十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ船舶所有者ハ遅滞ナク其ノ費用ヲ以テ雇入港迄海員ヲ送還スルコトヲ要ス但シ船舶所有者ハ其ノ費用ノ負担ヲ増加セザル場合ニ於テハ海員ノ希望スル地迄之ヲ送還スルコトヲ要ス
一 船員法第二十三条ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
二 船員法第二十四条各号ニ掲グル場合ヲ除クノ外已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ海員ガ雇止メラレタルトキ
三 船舶ガ海員ノ雇入港ヲ発航シタル後船員法第二十四条第一号ノ規定ニ依リ海員ガ雇止メラレタルトキ
四 船員法第二十四条第三号又ハ第二十五条第一項第二号ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ但シ海員ガ職務ヲ行フニ因ラズシテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタル場合ニ於テ疾病又ハ傷痍ニ付海員ニ故意又ハ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
五 船員法第二十五条第一項第一号又ハ第三号ノ規定ニ依リ海員ガ雇止ヲ請求シタルトキ
六 船員法第二十六条第一項ノ規定ニ依リ船長ヨリ予告ヲ為シタルニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
七 船員法第二十八条第二項ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約ガ終了シタルトキ
八 海員ノ本国以外ノ地ニ於テ雇入契約ガ期間ノ満了ニ因リ終了シタルトキ
第二十一条 船舶所有者ノ負担スベキ海員ノ送還ノ費用ハ送還中ノ運送賃、宿泊費及食費並ニ雇入契約終了ノ時ヨリ遅滞ナク出発スル時迄ノ宿泊費及食費トス
第二十二条 船舶所有者ハ第二十条第二号、第三号又ハ第六号ノ場合ニ於テハ送還ニ必要ナル期間海員ニ給料ト同額ノ手当ヲ支給スルコトヲ要ス送還ニ代ヘテ其ノ費用ヲ支給スルトキ亦同ジ
前項ノ手当ハ送還中ニ於テ、送還ニ代ヘテ其ノ費用ヲ支給スルトキハ其ノ際之ヲ支給スルコトヲ要ス
第二十三条 船舶所有者ハ海員ニ対シ第十五条、第十六条又ハ第二十二条ノ規定ニ依リ二以上ノ手当ヲ同時ニ支給スベキ期間ニ付テハ孰レカ一ノ手当ヲ支給スルヲ以テ足ル
第二十四条 第十五条、第十六条、第十八条又ハ第二十二条ノ規定ニ依ル手当ノ算出ノ標準トスベキ給料ハ雇入契約終了ノ時ノ給料トス但シ其ノ月額ガ三十円ニ満タザルトキハ之ヲ三十円トス
第二十五条 船舶所有者ハ予メ管海官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ当該船舶所有者及海員ノ出捐スル共済組合又ハ当該船舶所有者ノ出捐スル海員ノ扶助施設ノ為シタル給付ノ限度ニ於テ之ニ相当スル第十四条乃至第十六条又ハ第十九条ノ規定ニ依ル給付ヲ為スコトヲ要セズ
管海官庁ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第二十六条 第十条及第十四条乃至第二十五条ノ規定ハ船長ニ之ヲ準用ス
第二十七条 船員法第三十五条ニ規定スル懲戒ノ適用ハ船長ガ職員其ノ他適当ノ者ヲ立会ハシメ懲戒セントスル海員及関係者ヲ取調ベタル後行為ノ軽重ニ従ヒ之ヲ定ム但シ二種以上ノ懲戒ヲ併科スルコトヲ得ズ
第二十八条 帝国ノ領事官又ハ貿易事務官ハ船員手帳ノ交付、訂正、書換及返還並ニ第七条、第十一条、第二十五条及第三十一条ノ規定ニ依ル許可ニ関スル事務ヲ除クノ外船員法ニ依リ管海官庁ノ行フベキ一切ノ事務ヲ行フ
第二十九条 船員法第四十六条第一号ニ掲グル船舶ノ船員ガ傭人扶助令、共済組合規則其ノ他ノ規程ニ依リ給付ヲ受クル場合ニ於テ逓信大臣ガ之ヲ充分ト認メタルトキハ第十条、第十四条乃至第十六条、第十八条乃至第二十条又ハ第二十二条ノ規定ニ依ル給付ハ之ヲ当該船員ニ為スコトヲ要セズ
船員法第十八条、第二十条及第三十九条ノ規定ハ国ノ所有ニ属スル船舶ノ船員ニハ之ヲ適用セズ
第三十条 船員法第二条、第三条、第四条(石炭夫又ハ火夫ニ関スル規定ヲ除ク)、第五条乃至第七条、第三十一条、第三十四条乃至第三十七条、第四十一条、第四十九条及第五十七条乃至第六十条ノ規定ハ同法第一条第二項第一号及第二号ニ掲グル乗組員ニ之ヲ準用ス
第二条、第四条、第五条及第二十七条ノ規定ハ前項ニ掲グル乗組員ニ之ヲ準用ス
第三十一条 船員法第四条、第五条及第四十九条ノ規定ハ第一条第三号ニ掲グル乗組員ニ之ヲ準用ス但シ管海官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ十五歳未満ノ者ヲ船員ノ作業ニ、十八歳未満ノ者ヲ石炭夫又ハ火夫ノ作業ニ使用スルコトヲ得
第三十二条 逓信大臣漁船ノ船員ノ最低年齢、船員手帳、給料及手当ノ支払方法、食料、医療施設、送還並ニ船員法第二十九条ノ規定ニ依ル扶助、手当及葬祭ノ費用ニ関スル事項ニ付法律勅令ノ制定改廃案ヲ閣議ニ提出シ若ハ省令ノ制定改廃ヲ為サントスルトキ又ハ漁船ノ船員ノ監督ニ関シ必要ナル規則ノ制定ニ付同法第四十八条ノ規定ニ依ル認可ヲ為サントスルトキハ予メ農林大臣ニ議スルモノトス
第三十三条 第九条、第十条、第十二条及第二十九条中逓信大臣トアルハ台湾在籍船舶ニ付テハ台湾総督トス
附 則
本令ハ昭和十二年法律第七十九号施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
船員最低年齢法施行令ハ之ヲ廃止ス
第十一条及第十二条ノ規定ハ本令施行ノ日ヨリ一年内ハ之ヲ適用セズ
明治三十三年勅令第四百十五号第一条中「船員法第二十三条第一項」ヲ「船員法第十四条第一項」ニ改ム
入営者職業保障法施行令第一条第三号中「船員法第七十九条ノ規定ニ依リ指定セラレタル市町村長」ヲ「船員法第四十五条ノ規定ニ依リ管海官庁ノ事務ヲ行フ市町村長」ニ改ム