朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル「トラホーム」豫防法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年三月二十六日
內閣總理大臣 原敬
內務大臣 床次竹二郞
法律第二十七號
「トラホーム」豫防法
第一條 醫師「トラホーム」患者ヲ診斷シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ患者又ハ其ノ保護者ニ消毒其ノ他ノ豫防方法ヲ指示スヘシ
當該官吏又ハ吏員ハ必要ト認ムルトキハ「トラホーム」患者又ハ其ノ保護者ニ消毒其ノ他ノ豫防方法ヲ指示スヘシ
第一項又ハ前項ノ規定ニ依リ指示ヲ受ケタル者ハ其ノ指示ニ從ヒ消毒其ノ他ノ豫防方法ヲ行フヘシ
第二條「トラホーム」患者ハ速ニ醫師ノ治療ヲ受クヘシ
「トラホーム」患者ノ保護者ハ其ノ患者ヲシテ速ニ醫師ノ治療ヲ受ケシムヘシ
第三條 行政官廳ハ「トラホーム」患者ニシテ治療ヲ受クルノ途ナキ者ニ對シ治療ヲ施行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ治療ヲ施行スル場合ニ於テハ其ノ費用ハ患者所在地ノ市町村ノ負擔トス
第四條 行政官廳ハ「トラホーム」豫防上必要ト認ムルトキハ左ノ事項ヲ行フコトヲ得
一 檢診ヲ施行スルコト
二 「トラホーム」患者ニ對シ客ニ接スル業務ニ從事スルヲ停止スルコト
三 學校、幼稚園、製造所其ノ他ノ多衆ノ集合スル場所又ハ旅店、料理店、理髮店其ノ他ノ客ノ來集ヲ目的トスル場所ニ付病毒傳播ノ媒介トナルヘキ事項ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ場所ノ管理ヲ爲ス者若ハ其ノ代理ヲ爲ス者ニ對シ「トラホーム」豫防上必要ナル施設ヲ爲サシムルコト
地方長官ニ於テ前項第一號ノ檢診ヲ施行スル場合ニ於テハ其ノ費用ハ北海道地方費又ハ府縣ノ負擔トス
第五條 市町村ハ地方長官ノ指示ニ從ヒ「トラホーム」ノ豫防及治療ニ關スル施設ヲ爲スヘシ
第六條 北海道地方費又ハ府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ「トラホーム」ノ豫防及治療ノ爲費用ノ支出ヲ爲ス市町村ニ對シ其ノ費用ノ補助ヲ爲スヘシ
第七條 國庫ハ前條ノ補助ノ爲其ノ他「トラホーム」ノ豫防及治療ノ爲費用ノ支出ヲ爲ス北海道地方費又ハ府縣ニ對シ其ノ支出額ノ六分ノ一ヲ補助ス
第八條 官廳、公署、官立公立ノ學校製造所等ニ於テハ其ノ長ハ第四條第一項第三號ノ規定ニ準シ「トラホーム」豫防ニ關スル事項ヲ施行スヘシ
第九條 第一條第一項又ハ第三項ノ規定ニ違反シタルモノハ科料ニ處ス
第十條 第四條第一項ノ規定ニ依ル行政官廳ノ命令又ハ處分ニ違反シタル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十一條 本法ニ於テ保護者ト稱スルハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヲ謂フ
一 未成年者ニ對シ親權ヲ行フ者又ハ未成年者若ハ禁治產者ノ後見人、親權ヲ行フ者又ハ後見人ナキトキハ戶主、戶主未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ戶主ニ對シ親權ヲ行フ者又ハ戶主ノ後見人
二 敎育、監護又ハ傭使ノ目的ヲ以テ未成年者ヲ寄寓セシムル者又ハ其ノ法定代理人
第十二條 本法中市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘキモノトス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル「トラホーム」予防法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年三月二十六日
内閣総理大臣 原敬
内務大臣 床次竹二郎
法律第二十七号
「トラホーム」予防法
第一条 医師「トラホーム」患者ヲ診断シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ患者又ハ其ノ保護者ニ消毒其ノ他ノ予防方法ヲ指示スヘシ
当該官吏又ハ吏員ハ必要ト認ムルトキハ「トラホーム」患者又ハ其ノ保護者ニ消毒其ノ他ノ予防方法ヲ指示スヘシ
第一項又ハ前項ノ規定ニ依リ指示ヲ受ケタル者ハ其ノ指示ニ従ヒ消毒其ノ他ノ予防方法ヲ行フヘシ
第二条「トラホーム」患者ハ速ニ医師ノ治療ヲ受クヘシ
「トラホーム」患者ノ保護者ハ其ノ患者ヲシテ速ニ医師ノ治療ヲ受ケシムヘシ
第三条 行政官庁ハ「トラホーム」患者ニシテ治療ヲ受クルノ途ナキ者ニ対シ治療ヲ施行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ治療ヲ施行スル場合ニ於テハ其ノ費用ハ患者所在地ノ市町村ノ負担トス
第四条 行政官庁ハ「トラホーム」予防上必要ト認ムルトキハ左ノ事項ヲ行フコトヲ得
一 検診ヲ施行スルコト
二 「トラホーム」患者ニ対シ客ニ接スル業務ニ従事スルヲ停止スルコト
三 学校、幼稚園、製造所其ノ他ノ多衆ノ集合スル場所又ハ旅店、料理店、理髪店其ノ他ノ客ノ来集ヲ目的トスル場所ニ付病毒伝播ノ媒介トナルヘキ事項ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ場所ノ管理ヲ為ス者若ハ其ノ代理ヲ為ス者ニ対シ「トラホーム」予防上必要ナル施設ヲ為サシムルコト
地方長官ニ於テ前項第一号ノ検診ヲ施行スル場合ニ於テハ其ノ費用ハ北海道地方費又ハ府県ノ負担トス
第五条 市町村ハ地方長官ノ指示ニ従ヒ「トラホーム」ノ予防及治療ニ関スル施設ヲ為スヘシ
第六条 北海道地方費又ハ府県ハ命令ノ定ムル所ニ依リ「トラホーム」ノ予防及治療ノ為費用ノ支出ヲ為ス市町村ニ対シ其ノ費用ノ補助ヲ為スヘシ
第七条 国庫ハ前条ノ補助ノ為其ノ他「トラホーム」ノ予防及治療ノ為費用ノ支出ヲ為ス北海道地方費又ハ府県ニ対シ其ノ支出額ノ六分ノ一ヲ補助ス
第八条 官庁、公署、官立公立ノ学校製造所等ニ於テハ其ノ長ハ第四条第一項第三号ノ規定ニ準シ「トラホーム」予防ニ関スル事項ヲ施行スヘシ
第九条 第一条第一項又ハ第三項ノ規定ニ違反シタルモノハ科料ニ処ス
第十条 第四条第一項ノ規定ニ依ル行政官庁ノ命令又ハ処分ニ違反シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十一条 本法ニ於テ保護者ト称スルハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヲ謂フ
一 未成年者ニ対シ親権ヲ行フ者又ハ未成年者若ハ禁治産者ノ後見人、親権ヲ行フ者又ハ後見人ナキトキハ戸主、戸主未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ戸主ニ対シ親権ヲ行フ者又ハ戸主ノ後見人
二 教育、監護又ハ傭使ノ目的ヲ以テ未成年者ヲ寄寓セシムル者又ハ其ノ法定代理人
第十二条 本法中市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘキモノトス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム