銃砲火薬類取締法施行規則
法令番号: 勅令第十六號
公布年月日: 明治44年3月11日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ銃砲火藥類取締法施行規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年三月十日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
陸軍大臣 子爵 寺內正毅
海軍大臣 男爵 齋藤實
內務大臣 法學博士 男爵 平田東助
遞信大臣 男爵 後藤新平
司法大臣 子爵 岡部長職
勅令第十六號
銃砲火藥類取締法施行規則
第一條 銃砲火藥類取締法ニ於テ銃砲ト稱スルハ軍用銃砲及非軍用銃砲ヲ謂フ
軍用銃砲トハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ニ於テ軍用銃砲トシテ指定シタル銃砲及千米突以上ノ距離ニ有效ニ彈著スヘキ裝置ヲ有シ陸軍又ハ海軍ノ用ニ供シ得ヘキ銃砲ヲ謂ヒ非軍用銃砲トハ其ノ他ノ銃砲ヲ謂フ
第二條 銃砲火藥類取締法ニ於テ火藥類ト稱スルハ左ニ揭クル火藥、爆藥及火工品ヲ謂フ
一 火藥 硝酸鹽類ヲ主トスル有煙火藥、純硝化纖維素ヲ主トスル無煙火藥又ハ純硝化纖維素トナイトログリセリントノ結合物ヲ主トスル無煙火藥ノ類
二 爆藥 雷酸鹽雷汞ノ類其ノ他ノ起爆劑、ナイトログリセリン及之ヲ主トスル爆發藥各種ダイナマイトノ類硝酸アンモニア若ハ鹽酸鹽ヲ主トスル爆發藥又ハ爆發ノ用途ニ供スル棉火藥芳香系列ノ硝化物及之ヲ主トスル混和物ナイトロベンジン、ナイトロナフサリン、ナイトロトリユオール、ピクリン酸及ピクリン酸ヲ主トスル混和物ノ類ノ類
三 火工品 實包、空包、藥筒、藥包、彈藥筒、火藥若ハ爆藥ヲ裝塡シタル彈丸若ハ水雷、雷管、信管、爆管、門管、緩燃導火線一尺ノ燃燒時間十秒以上ヲ要スルモノ、速燃導火線又ハ煙火其ノ他火藥若ハ爆藥ヲ使用シタル火工品但シ玩具用普通火工品ヲ除ク
雷管又ハ信管ヲ裝置シタル導火線ハ雷管又ハ信管ト看做ス
第三條 銃砲火藥類取締法ニ於テ軍用火藥類又ハ軍用火工品ト稱スルハ專ラ陸軍又ハ海軍ノ用ニ供スル火藥類又ハ火工品ヲ謂ヒ普通火工品ト稱スルハ其ノ他ノ用ニ供スル火工品ヲ謂フ
第四條 銃砲火藥類取締法第一條第一號又ハ第二條第一項第一號ノ場合ニ於テ行政官廳ノ委託ヲ受ケタル者ハ事業開始前製造スヘキ銃砲又ハ製造若ハ變形修理スヘキ火藥類ノ種類、數量、委託ノ年月日、委託ノ條件及委託官廳名ヲ其ノ官廳ノ證明書ヲ添付シテ作業地廳府縣長官ニ屆出ツヘシ
第五條 銃砲火藥類取締法第一條第二號、第四號、第二條第一項第二號、第四號及第二項ノ許可ハ作業地廳府縣長官ヲ經由シ陸軍ノ用ニ供スル銃砲火藥類ニ付テハ陸軍大臣ニ、海軍ノ用ニ供スル銃砲火藥類ニ付テハ海軍大臣ニ、其ノ他ノ火藥類ニ付テハ內務大臣ニ之ヲ申請スヘシ
陸軍大臣又ハ海軍大臣前項ノ許可ヲ爲シタルトキハ內務大臣ニ之ヲ通知スヘシ
第六條 銃砲火藥類取締法第一條第三號、第二條第一項第三號及第六號ノ許可ハ作業地廳府縣長官ニ、同法第三條第一項ノ許可ハ營業地廳府縣長官ニ之ヲ申請スヘシ
第七條 行政官廳ノ許可ヲ受ケ又ハ營業トシテ銃砲火藥類ヲ製造又ハ變形修理スル者ハ其ノ事業ニ要スル設備ニ付許可ヲ爲シタル行政官廳又ハ其ノ委任ヲ受ケタル廳府縣長官ノ檢査ヲ受クルニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス其ノ變更ニ付亦同シ
第八條 銃砲火藥類ノ製造又ハ變形修理ヲ委託スル場合ニ於テハ委託行政官廳ハ本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ニ定ムルモノノ外取締上必要ナル設備又ハ事項ヲ命スルコトヲ得
前項ノ設備ニ付テハ前條ノ規定ヲ準用ス
第九條 前二條ノ規定ハ危害豫防ニ關スル警察官ノ職權ヲ行使スルコトヲ妨ケス
第十條 第七條又ハ第八條ノ規定ニ依リ檢査ヲ受ケタル設備又ハ許可ノ條件トシテ若ハ第八條ノ規定ニ依リ命令セラレタル事項ヲ變更セムトスル者ハ許可又ハ委託ヲ爲シタル行政官廳ノ許可ヲ受クヘシ
前項ノ許可申請ハ第五條ノ主務大臣ニ之ヲ爲ス場合ニ於テハ作業地廳府縣長官ヲ經由スヘシ
第十一條 銃砲火藥類取締法第三條ノ規定ニ依リ火藥類販賣業者ニ與フル許可ヲ分チテ甲乙ノ二種トス
甲種ノ許可ヲ受ケタル火藥類販賣業者ハ火藥類ニ關スル各種ノ商行爲ヲ爲スコトヲ得
乙種ノ許可ヲ受ケタル火藥類販賣業者ハ火藥類ヲ輸入シ之ヲ官廳又ハ火藥類販賣業者ニ賣渡スノ外火藥類ニ關スル他ノ商行爲ヲ爲スコトヲ得ス
第十二條 銃砲販賣業者及前條ノ火藥類販賣業者ノ道府縣ニ於ケル定員ハ內務大臣之ヲ定ム
第十三條 火藥類販賣業者ハ火藥庫ヲ備フルコトヲ要ス
第十四條 火藥類販賣業者ノ火藥類取扱ハ火藥類取扱免狀ヲ有スル者之ニ任スルコトヲ要ス一年間二千貫以上ノ火藥又ハ千貫以上ノ爆藥ヲ消費スル者ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ火藥及爆藥ヲ共ニ消費スル場合ニ於テハ爆藥一貫ヲ火藥二貫ト看做シ合算シタル數量ニ付之ヲ適用シ消費ノ場所二箇以上アル場合ニ於テハ各消費場所ニ付之ヲ適用ス
第十五條 火藥類取扱免狀ニ關スル規定ハ內務大臣之ヲ定ム
第十六條 火藥類讓渡ノ許可ハ所轄廳府縣長官ニ之ヲ申請スヘシ
火藥類讓受ノ許可ハ消費地廳府縣長官ニ之ヲ申請スヘシ但シ消費地定マラス若ハ二箇所以上ニ亙リ又ハ銃砲火藥類取締法施行區域外ニ係ル場合ハ所轄廳府縣長官ニ之ヲ申請スヘシ
第十七條 左ノ各號ノ火藥類ノ讓渡及讓受ニ付テハ內務大臣ノ定メタル場合ニ限リ前條ノ區分ニ依リ警察官署ニ之ヲ申請スルコトヲ得
一 火藥 三貫以內
二 爆藥 一貫以內
三 工業用雷管 二千箇以內
四 信管 千箇以內
五 爆管 千箇以內
六 門管 千箇以內
七 導火線 五百間以內
第十八條 軍用銃砲又ハ左ノ各號ノ火藥類ノ讓渡及讓受ノ許可ハ所轄警察官署ニ之ヲ申請スヘシ
一 火藥 一貫三百匁以內
二 銃用實包 千箇以內
三 銃用空包 千箇以內
四 銃用實包又ハ銃用空包ニ要スル雷管又ハ雷管附藥莢 二千箇以內
第十九條 前條ノ許可ハ二月間其ノ效力ヲ有ス
前三條ノ許可ハ許可ヲ爲シタル行政官廳取締上必要ト認ムルトキハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
前三條ノ規定ニ依ル讓受ノ許可ハ讓受ヲ要スル事由ノ消滅ニ依リ其ノ效力ヲ失フ
第二十條 軍用銃砲又ハ火藥類ノ讓渡ハ公賣又ハ競賣法若ハ民事訴訟法ニ依ル競賣ノ場合ニ於テハ許可ヲ要セサルモノトス
第二十一條 鑛業法ニ依リ鑛物ノ試掘若ハ採掘ヲ爲ス者又ハ內務大臣ノ定ムル所ニ依リ工事若ハ工業ノ爲火藥類消費ノ許可ヲ受ケタル者カ其ノ消費スル火藥類ヲ讓受クル場合ニ於テハ第十七條各號ノ火藥類ニ限リ、狩獵免許ヲ受ケタル者カ其ノ消費スル火藥類ヲ讓受タル場合ニ於テハ第十八條各號ノ火藥類ニ限リ行政官廳ノ許可ヲ要セサルモノトス
第二十二條 火藥類ハ左ニ揭クル者カ其ノ火藥類ヲ所持スル場合ノ外之ヲ所持スルコトヲ得ス
一 火藥類販賣業者
二 火藥類製造業者又ハ委託若ハ許可ヲ受ケ火藥類ノ製造若ハ變形修理ヲ爲ス者
三 第十六條及第十七條ノ規定ニ依リ火藥類讓受ノ許可ヲ受ケタル者
四 前條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケスシテ火藥類ヲ讓受ケタル者
五 第二十三條ノ規定ニ依リ火藥類ノ輸入又ハ輸出ノ許可ヲ受ケタル者
六 運送業者
七 相續又ハ遺贈ニ因リ火藥類ノ所有權ヲ取得シタル者
八 法人ノ合併ニ因リ火藥類ノ所有權ヲ取得シタル者
九 前各號ニ揭クル者ノ家族又ハ從業者
火藥類ヲ所持スル者廢業、許可ノ取消其ノ他ノ事由ニ因リ前項各號ニ該當セサルニ至リタルトキハ所轄警察官署ノ認可ヲ受ケ讓渡其ノ他必要ナル處分ヲ爲スヘシ
前二項ノ規定ハ第十八條各號ノ火藥類ニ之ヲ適用セス
第二十三條 銃砲火藥類取締法第八條ノ許可ハ輸出港、同法第九條ノ許可ハ輸入港ヲ管轄スル廳府縣長官ニ之ヲ申請スヘシ
前項ノ許可ハ軍用銃砲及軍用火藥類ニ付テハ輸出港又ハ輸入港ヲ管轄スル廳府縣長官ヲ經由シ陸軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ內務大臣及陸軍大臣ニ、海軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ內務大臣及海軍大臣ニ之ヲ申請スヘシ
第二十四條 前條ノ許可ハ一年間其ノ效力ヲ有ス但シ許可ヲ爲シタル行政官廳取締上必要ト認ムルトキハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第二十五條 輸入又ハ讓受ノ許可ヲ受ケタル火藥類ハ其ノ許可ヲ爲シタル行政官廳、第二十一條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケスシテ讓受ケタル火藥類ハ所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ他ノ用途ニ充ツルコトヲ得ス
第二十六條 銃砲火藥類取締法第十一條ノ規定ニ依ル銃砲火藥類ノ輸出若ハ輸入ノ禁止又ハ制限ハ內務大臣之ヲ行フ但シ陸軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ內務大臣及陸軍大臣、海軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ內務大臣及海軍大臣之ヲ行フ
第二十七條 火藥類ハ第十八條各號ニ該當スルモノヲ除クノ外火藥庫又ハ倉庫以外ノ場所ニ之ヲ貯藏スルコトヲ得ス但シ土工其ノ他一時ノ事業ニ要スル火藥類ハ其ノ事業中假貯藏所ニ之ヲ貯藏スルコトヲ得
火藥類ヲ裝塡セサル雷管附藥莢ハ前項ノ規定ニ拘ラス安全ナル場所ニ之ヲ貯藏スルコトヲ得
第二十八條 火藥類貯藏所ニ貯藏スル火藥類ハ左ノ數量ヲ超過スルコトヲ得ス
貯藏所ノ種類
火藥類ノ種類
火藥庫
倉庫
假貯藏所
火藥
一萬貫
十二貫
五千貫
爆藥
五千貫
三貫
二千五百貫
銃用實包
二千萬箇
三萬箇
千萬箇
銃用空包
二千萬箇
三萬箇
千萬箇
銃用雷管
千萬箇
十萬箇
五百萬箇
工業用雷管
六十萬箇
一萬箇
三十萬箇
信管、爆管、門管
無制限
三萬箇
無制限
前項ニ揭ケサル火工品ハ其ノ原料タル火藥又ハ爆藥ノ數量ニ依リ前項ノ規定ヲ適用ス但シ雷管附藥莢及導火線ハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條 內務大臣ハ安全ナル位置ニ於テ特別ノ設備ヲ爲シタル火藥庫ニ付危險ノ虞ナシト認ムル程度ニ於テ前條ノ數量ヲ超過スル火藥類ノ貯藏ヲ許可スルコトヲ得
第三十條 火藥類ノ製造又ハ變形修理ヲ爲ス作業所ニ存置シ得ヘキ火藥類ノ數量ハ其ノ設備ニ應シ製造若ハ變形修理ヲ委託若ハ許可シ又ハ其ノ營業ヲ許可シタル行政官廳之ヲ指定ス
第三十一條 火藥類ハ內務大臣ノ定ムル區別ニ依リ各別棟ノ火藥類貯藏所ニ之ヲ貯藏スヘシ但シ倉庫ニ在リテハ不燃質物ヲ以テ造リタル隔壁ニ依リ遮斷スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第三十二條 火藥類貯藏所ノ新設ハ所在地廳府縣長官ノ許可ヲ受クヘシ其ノ增築、改築、修繕又ハ模樣替ノ工事ヲ爲ストキ亦同シ
工事ヲ竣リタル火藥類貯藏所ハ警察官ノ檢査ヲ受クルニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第三十三條 第二十八條ノ規定ニ依リ火藥類貯藏所ニ貯藏スルコトヲ得ヘキ最大數量ノ火藥類ノ貯藏ニ付テハ倉庫ヲ除クノ外其ノ外壁ヨリ左ノ距離ヲ保有スヘシ
一 宮城、離宮、御用邸又ハ神宮ヘ二十町以上
二 皇陵、社寺、學校、公園、電氣瓦斯若ハ石油ノ工場、電力若ハ火力ヲ使用スル工場、發火質物件ヲ蓄積スル場所、鐵道、軌道、汽船ノ常航路若ハ繫留所又ハ市街地ヘ四町以上
三 宅地、國道、縣道、電線、瓦斯ノ傳導管、火ヲ取扱フ場所、蓄積シタル燃燒物其ノ他內務大臣ノ指定シタル箇所ヘ五十間以上
前項ノ距離ハ貯藏數量ノ增減ニ從ヒ貯藏數量ノ平方根ニ比例シテ之ヲ增減ス但シ各距離ノ五分ノ一ヲ下ルコトヲ得ス
倉庫ハ其ノ外壁ノ周圍ニ一間以上ノ空地ヲ保有スヘシ但シ貯藏數量ヲ減少シ特ニ廳府縣長官ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
廳府縣長官ハ必要ト認ムルトキハ假貯藏所ニ付第一項及第二項ノ規定ニ依ル距離以上ニ於テ特ニ其ノ距離ヲ指定スルコトヲ得
火藥類貯藏所相互ノ距離ニ付テハ本條ノ規定ヲ適用セス
第三十四條 內務大臣ハ天然又ハ人造ノ掩體ノ狀態其ノ他土地又ハ設備ノ狀況ニ依リ危險ノ虞ナシト認ムル程度ニ於テ前條ニ定ムル距離ノ減少ヲ許可スルコトヲ得
第三十五條 第二十九條及前條ノ許可ハ狀況ノ變更ニ依リ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第三十六條 第二十八條ノ規定ニ依リ倉庫ニ貯藏スルコトヲ得ヘキ數量ヲ超過スル火藥類ハ所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ同時ニ之ヲ運搬スルコトヲ得ス
第三十七條 火藥類ハ他ノ物件ト混包シ又ハ變裝若ハ假裝シテ之ヲ所持、運搬又ハ託送スルコトヲ得ス
前項ノ物件ヲ發見シタル者ハ直ニ警察官ニ之ヲ屆出ツヘシ
第三十八條 地盤又ハ物件ヲ破碎スルノ目的ヲ以テ火藥又ハ爆藥ヲ使用セムトスル者ハ使用地警察官署ノ許可ヲ受クヘシ但シ內務大臣カ特ニ定メタル場合又ハ鑛業法ニ依ル鑛物ノ試掘若ハ採掘ニ關シテハ此ノ限ニ在ラス
第三十九條 拳銃、短銃又ハ仕込銃ハ職務又ハ銃砲ニ關スル營業ノ爲ニスル場合ヲ除クノ外所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ授受、運搬又ハ携帶スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ仕込刀劒其ノ他變裝シタル戎器ニ之ヲ準用ス
第四十條 拳銃、短銃又ハ仕込銃ハ業務又ハ修學ノ爲ニスル場合ヲ除クノ外未成年者之ヲ所持シ又ハ未成年者ヲシテ之ヲ所持セシムルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ仕込刀劒其ノ他ノ戎器ニ之ヲ準用ス
第四十一條 火藥類ノ運搬、所持其ノ他ノ取扱ハ未成年者之ヲ爲シ又ハ未成年者、白痴者若ハ瘋癲者ヲシテ之ヲ爲サシムルコトヲ得ス但シ第十八條各號ノ火藥類ニ付テハ十五歲以上ノ者ニ限リ之ヲ爲シ又ハ之ヲ爲サシムルコトヲ得
第四十二條 營業者ハ許可ヲ受ケサル者ニ銃砲火藥類又ハ第三十九條ノ戎器ヲ讓渡スコトヲ得ス但シ讓受ニ付許可ヲ要セサル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第四十三條 試驗ノ結果不良品ト認定セラレタル火藥類ハ內務大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ所持者ニ於テ直ニ必要ナル處置ヲ爲スヘシ
第四十四條 第十一條乃至第十五條、第二十二條、第二十七條、第二十九條及第三十一條乃至第三十六條ノ規定ハ緩燃導火線ニ之ヲ適用セス
銃砲火藥類取締法第六條、第八條及第九條竝本令第十一條乃至第十五條、第二十二條、第二十七條乃至第二十九條及第三十一條乃至第三十六條ノ規定ハ煙火及遞信大臣カ船舶備付用ノ爲特ニ指定シタル煙火類似ノ火工品ニ之ヲ適用セス
緩燃導火線及煙火ニ付必要ナル規定ハ廳府縣長官之ヲ定ム
第二項ノ船舶備付用火工品ニ付必要ナル規定ハ遞信大臣之ヲ定ム
第四十五條 第七條、第八條第二項、第十條第一項、第十三條、第十四條、第二十二條、第二十五條、第二十七條、第二十八條、第三十一條、第三十二條、第三十六條、第三十七條第一項、第三十八條、第四十二條及第四十三條ノ規定ニ違反シタル者、第三十三條ノ規定ニ違反シ又ハ本令ニ依ル許可若ハ指定ノ範圍ヲ超エテ火藥類ヲ貯藏シタル者竝本令ニ基キテ發スル內務大臣ノ命令ノ規定ニ適合セサル火藥類貯藏所ニ火藥類ヲ貯藏シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條 第三十九條乃至第四十一條ノ規定ニ違反シタル者ハ三月以下ノ懲役若ハ五十圓以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ處ス
第四十七條 第四條又ハ第三十七條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四十八條 銃砲火藥類取締法第十條乃至第十三條及第十六條乃至第十八條ノ規定ハ銃砲火藥類ニ非サル他ノ戎器及爆發質物品ニ之ヲ準用ス
第四十九條 公賣又ハ競賣法若ハ民事訴訟法ニ依ル競賣ヲ爲ス者ハ銃砲火藥類取締法及本令ノ適用ニ付テハ之ヲ讓渡人ト看做ス
第五十條 左ノ事項ハ內務大臣之ヲ定ム但シ鐵道ニ依ル輸送ニ關スル事項ハ內閣總理大臣、郵便及船舶ニ依ル輸送及船舶ニ於ケル常用火藥類ノ貯藏ニ關スル事項ハ遞信大臣之ヲ定ム
一 火藥類ノ貯藏、收納、荷造其ノ他ノ取扱ノ方法及制限
二 第四十三條ノ規定ニ依ル火藥類試驗及不良品處置方法
三 火藥類運搬ノ方法及制限
四 火藥類作業所及火藥類貯藏所ノ設備
五 火藥類作業所及火藥類貯藏所ニ於テ遵守スヘキ事項
第五十一條 前條ノ規定ニ依ル命令ハ鑛業法第七十一條ノ規定ニ依リ農商務大臣ノ發スル命令ノ效力ヲ妨クルコトナシ
附 則
本令ハ明治四十四年五月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第十三條及第十四條ノ規定ハ仍二年間之ヲ適用セス
本令施行前火藥商又ハ甲種火藥商ノ許可ヲ受ケタル者ハ甲種火藥類販賣業者、輸入及卸賣ノ營業ニ限リ許可ヲ受ケタル者又ハ乙種火藥商ノ許可ヲ受ケタル者ハ乙種火藥類販賣業者トシテ各其ノ許可ヲ受ケタルモノト看做ス
本令施行ノ際本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ適合セサル火藥類貯藏所ハ所在地廳府縣長官ノ指定シタル期間ニ於テ之ヲ改造スヘシ
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ銃砲火薬類取締法施行規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年三月十日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
陸軍大臣 子爵 寺内正毅
海軍大臣 男爵 斎藤実
内務大臣 法学博士 男爵 平田東助
逓信大臣 男爵 後藤新平
司法大臣 子爵 岡部長職
勅令第十六号
銃砲火薬類取締法施行規則
第一条 銃砲火薬類取締法ニ於テ銃砲ト称スルハ軍用銃砲及非軍用銃砲ヲ謂フ
軍用銃砲トハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ニ於テ軍用銃砲トシテ指定シタル銃砲及千米突以上ノ距離ニ有効ニ弾著スヘキ装置ヲ有シ陸軍又ハ海軍ノ用ニ供シ得ヘキ銃砲ヲ謂ヒ非軍用銃砲トハ其ノ他ノ銃砲ヲ謂フ
第二条 銃砲火薬類取締法ニ於テ火薬類ト称スルハ左ニ掲クル火薬、爆薬及火工品ヲ謂フ
一 火薬 硝酸塩類ヲ主トスル有煙火薬、純硝化繊維素ヲ主トスル無煙火薬又ハ純硝化繊維素トナイトログリセリントノ結合物ヲ主トスル無煙火薬ノ類
二 爆薬 雷酸塩雷汞ノ類其ノ他ノ起爆剤、ナイトログリセリン及之ヲ主トスル爆発薬各種ダイナマイトノ類硝酸アンモニア若ハ塩酸塩ヲ主トスル爆発薬又ハ爆発ノ用途ニ供スル棉火薬芳香系列ノ硝化物及之ヲ主トスル混和物ナイトロベンジン、ナイトロナフサリン、ナイトロトリユオール、ピクリン酸及ピクリン酸ヲ主トスル混和物ノ類ノ類
三 火工品 実包、空包、薬筒、薬包、弾薬筒、火薬若ハ爆薬ヲ装填シタル弾丸若ハ水雷、雷管、信管、爆管、門管、緩燃導火線一尺ノ燃焼時間十秒以上ヲ要スルモノ、速燃導火線又ハ煙火其ノ他火薬若ハ爆薬ヲ使用シタル火工品但シ玩具用普通火工品ヲ除ク
雷管又ハ信管ヲ装置シタル導火線ハ雷管又ハ信管ト看做ス
第三条 銃砲火薬類取締法ニ於テ軍用火薬類又ハ軍用火工品ト称スルハ専ラ陸軍又ハ海軍ノ用ニ供スル火薬類又ハ火工品ヲ謂ヒ普通火工品ト称スルハ其ノ他ノ用ニ供スル火工品ヲ謂フ
第四条 銃砲火薬類取締法第一条第一号又ハ第二条第一項第一号ノ場合ニ於テ行政官庁ノ委託ヲ受ケタル者ハ事業開始前製造スヘキ銃砲又ハ製造若ハ変形修理スヘキ火薬類ノ種類、数量、委託ノ年月日、委託ノ条件及委託官庁名ヲ其ノ官庁ノ証明書ヲ添付シテ作業地庁府県長官ニ届出ツヘシ
第五条 銃砲火薬類取締法第一条第二号、第四号、第二条第一項第二号、第四号及第二項ノ許可ハ作業地庁府県長官ヲ経由シ陸軍ノ用ニ供スル銃砲火薬類ニ付テハ陸軍大臣ニ、海軍ノ用ニ供スル銃砲火薬類ニ付テハ海軍大臣ニ、其ノ他ノ火薬類ニ付テハ内務大臣ニ之ヲ申請スヘシ
陸軍大臣又ハ海軍大臣前項ノ許可ヲ為シタルトキハ内務大臣ニ之ヲ通知スヘシ
第六条 銃砲火薬類取締法第一条第三号、第二条第一項第三号及第六号ノ許可ハ作業地庁府県長官ニ、同法第三条第一項ノ許可ハ営業地庁府県長官ニ之ヲ申請スヘシ
第七条 行政官庁ノ許可ヲ受ケ又ハ営業トシテ銃砲火薬類ヲ製造又ハ変形修理スル者ハ其ノ事業ニ要スル設備ニ付許可ヲ為シタル行政官庁又ハ其ノ委任ヲ受ケタル庁府県長官ノ検査ヲ受クルニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス其ノ変更ニ付亦同シ
第八条 銃砲火薬類ノ製造又ハ変形修理ヲ委託スル場合ニ於テハ委託行政官庁ハ本令又ハ本令ニ基キテ発スル命令ニ定ムルモノノ外取締上必要ナル設備又ハ事項ヲ命スルコトヲ得
前項ノ設備ニ付テハ前条ノ規定ヲ準用ス
第九条 前二条ノ規定ハ危害予防ニ関スル警察官ノ職権ヲ行使スルコトヲ妨ケス
第十条 第七条又ハ第八条ノ規定ニ依リ検査ヲ受ケタル設備又ハ許可ノ条件トシテ若ハ第八条ノ規定ニ依リ命令セラレタル事項ヲ変更セムトスル者ハ許可又ハ委託ヲ為シタル行政官庁ノ許可ヲ受クヘシ
前項ノ許可申請ハ第五条ノ主務大臣ニ之ヲ為ス場合ニ於テハ作業地庁府県長官ヲ経由スヘシ
第十一条 銃砲火薬類取締法第三条ノ規定ニ依リ火薬類販売業者ニ与フル許可ヲ分チテ甲乙ノ二種トス
甲種ノ許可ヲ受ケタル火薬類販売業者ハ火薬類ニ関スル各種ノ商行為ヲ為スコトヲ得
乙種ノ許可ヲ受ケタル火薬類販売業者ハ火薬類ヲ輸入シ之ヲ官庁又ハ火薬類販売業者ニ売渡スノ外火薬類ニ関スル他ノ商行為ヲ為スコトヲ得ス
第十二条 銃砲販売業者及前条ノ火薬類販売業者ノ道府県ニ於ケル定員ハ内務大臣之ヲ定ム
第十三条 火薬類販売業者ハ火薬庫ヲ備フルコトヲ要ス
第十四条 火薬類販売業者ノ火薬類取扱ハ火薬類取扱免状ヲ有スル者之ニ任スルコトヲ要ス一年間二千貫以上ノ火薬又ハ千貫以上ノ爆薬ヲ消費スル者ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ火薬及爆薬ヲ共ニ消費スル場合ニ於テハ爆薬一貫ヲ火薬二貫ト看做シ合算シタル数量ニ付之ヲ適用シ消費ノ場所二箇以上アル場合ニ於テハ各消費場所ニ付之ヲ適用ス
第十五条 火薬類取扱免状ニ関スル規定ハ内務大臣之ヲ定ム
第十六条 火薬類譲渡ノ許可ハ所轄庁府県長官ニ之ヲ申請スヘシ
火薬類譲受ノ許可ハ消費地庁府県長官ニ之ヲ申請スヘシ但シ消費地定マラス若ハ二箇所以上ニ亘リ又ハ銃砲火薬類取締法施行区域外ニ係ル場合ハ所轄庁府県長官ニ之ヲ申請スヘシ
第十七条 左ノ各号ノ火薬類ノ譲渡及譲受ニ付テハ内務大臣ノ定メタル場合ニ限リ前条ノ区分ニ依リ警察官署ニ之ヲ申請スルコトヲ得
一 火薬 三貫以内
二 爆薬 一貫以内
三 工業用雷管 二千箇以内
四 信管 千箇以内
五 爆管 千箇以内
六 門管 千箇以内
七 導火線 五百間以内
第十八条 軍用銃砲又ハ左ノ各号ノ火薬類ノ譲渡及譲受ノ許可ハ所轄警察官署ニ之ヲ申請スヘシ
一 火薬 一貫三百匁以内
二 銃用実包 千箇以内
三 銃用空包 千箇以内
四 銃用実包又ハ銃用空包ニ要スル雷管又ハ雷管附薬莢 二千箇以内
第十九条 前条ノ許可ハ二月間其ノ効力ヲ有ス
前三条ノ許可ハ許可ヲ為シタル行政官庁取締上必要ト認ムルトキハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
前三条ノ規定ニ依ル譲受ノ許可ハ譲受ヲ要スル事由ノ消滅ニ依リ其ノ効力ヲ失フ
第二十条 軍用銃砲又ハ火薬類ノ譲渡ハ公売又ハ競売法若ハ民事訴訟法ニ依ル競売ノ場合ニ於テハ許可ヲ要セサルモノトス
第二十一条 鉱業法ニ依リ鉱物ノ試掘若ハ採掘ヲ為ス者又ハ内務大臣ノ定ムル所ニ依リ工事若ハ工業ノ為火薬類消費ノ許可ヲ受ケタル者カ其ノ消費スル火薬類ヲ譲受クル場合ニ於テハ第十七条各号ノ火薬類ニ限リ、狩猟免許ヲ受ケタル者カ其ノ消費スル火薬類ヲ譲受タル場合ニ於テハ第十八条各号ノ火薬類ニ限リ行政官庁ノ許可ヲ要セサルモノトス
第二十二条 火薬類ハ左ニ掲クル者カ其ノ火薬類ヲ所持スル場合ノ外之ヲ所持スルコトヲ得ス
一 火薬類販売業者
二 火薬類製造業者又ハ委託若ハ許可ヲ受ケ火薬類ノ製造若ハ変形修理ヲ為ス者
三 第十六条及第十七条ノ規定ニ依リ火薬類譲受ノ許可ヲ受ケタル者
四 前条ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケスシテ火薬類ヲ譲受ケタル者
五 第二十三条ノ規定ニ依リ火薬類ノ輸入又ハ輸出ノ許可ヲ受ケタル者
六 運送業者
七 相続又ハ遺贈ニ因リ火薬類ノ所有権ヲ取得シタル者
八 法人ノ合併ニ因リ火薬類ノ所有権ヲ取得シタル者
九 前各号ニ掲クル者ノ家族又ハ従業者
火薬類ヲ所持スル者廃業、許可ノ取消其ノ他ノ事由ニ因リ前項各号ニ該当セサルニ至リタルトキハ所轄警察官署ノ認可ヲ受ケ譲渡其ノ他必要ナル処分ヲ為スヘシ
前二項ノ規定ハ第十八条各号ノ火薬類ニ之ヲ適用セス
第二十三条 銃砲火薬類取締法第八条ノ許可ハ輸出港、同法第九条ノ許可ハ輸入港ヲ管轄スル庁府県長官ニ之ヲ申請スヘシ
前項ノ許可ハ軍用銃砲及軍用火薬類ニ付テハ輸出港又ハ輸入港ヲ管轄スル庁府県長官ヲ経由シ陸軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ内務大臣及陸軍大臣ニ、海軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ内務大臣及海軍大臣ニ之ヲ申請スヘシ
第二十四条 前条ノ許可ハ一年間其ノ効力ヲ有ス但シ許可ヲ為シタル行政官庁取締上必要ト認ムルトキハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第二十五条 輸入又ハ譲受ノ許可ヲ受ケタル火薬類ハ其ノ許可ヲ為シタル行政官庁、第二十一条ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケスシテ譲受ケタル火薬類ハ所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ他ノ用途ニ充ツルコトヲ得ス
第二十六条 銃砲火薬類取締法第十一条ノ規定ニ依ル銃砲火薬類ノ輸出若ハ輸入ノ禁止又ハ制限ハ内務大臣之ヲ行フ但シ陸軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ内務大臣及陸軍大臣、海軍ノ用ニ供スルモノニ付テハ内務大臣及海軍大臣之ヲ行フ
第二十七条 火薬類ハ第十八条各号ニ該当スルモノヲ除クノ外火薬庫又ハ倉庫以外ノ場所ニ之ヲ貯蔵スルコトヲ得ス但シ土工其ノ他一時ノ事業ニ要スル火薬類ハ其ノ事業中仮貯蔵所ニ之ヲ貯蔵スルコトヲ得
火薬類ヲ装填セサル雷管附薬莢ハ前項ノ規定ニ拘ラス安全ナル場所ニ之ヲ貯蔵スルコトヲ得
第二十八条 火薬類貯蔵所ニ貯蔵スル火薬類ハ左ノ数量ヲ超過スルコトヲ得ス
貯蔵所ノ種類
火薬類ノ種類
火薬庫
倉庫
仮貯蔵所
火薬
一万貫
十二貫
五千貫
爆薬
五千貫
三貫
二千五百貫
銃用実包
二千万箇
三万箇
千万箇
銃用空包
二千万箇
三万箇
千万箇
銃用雷管
千万箇
十万箇
五百万箇
工業用雷管
六十万箇
一万箇
三十万箇
信管、爆管、門管
無制限
三万箇
無制限
前項ニ掲ケサル火工品ハ其ノ原料タル火薬又ハ爆薬ノ数量ニ依リ前項ノ規定ヲ適用ス但シ雷管附薬莢及導火線ハ此ノ限ニ在ラス
第二十九条 内務大臣ハ安全ナル位置ニ於テ特別ノ設備ヲ為シタル火薬庫ニ付危険ノ虞ナシト認ムル程度ニ於テ前条ノ数量ヲ超過スル火薬類ノ貯蔵ヲ許可スルコトヲ得
第三十条 火薬類ノ製造又ハ変形修理ヲ為ス作業所ニ存置シ得ヘキ火薬類ノ数量ハ其ノ設備ニ応シ製造若ハ変形修理ヲ委託若ハ許可シ又ハ其ノ営業ヲ許可シタル行政官庁之ヲ指定ス
第三十一条 火薬類ハ内務大臣ノ定ムル区別ニ依リ各別棟ノ火薬類貯蔵所ニ之ヲ貯蔵スヘシ但シ倉庫ニ在リテハ不燃質物ヲ以テ造リタル隔壁ニ依リ遮断スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第三十二条 火薬類貯蔵所ノ新設ハ所在地庁府県長官ノ許可ヲ受クヘシ其ノ増築、改築、修繕又ハ模様替ノ工事ヲ為ストキ亦同シ
工事ヲ竣リタル火薬類貯蔵所ハ警察官ノ検査ヲ受クルニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第三十三条 第二十八条ノ規定ニ依リ火薬類貯蔵所ニ貯蔵スルコトヲ得ヘキ最大数量ノ火薬類ノ貯蔵ニ付テハ倉庫ヲ除クノ外其ノ外壁ヨリ左ノ距離ヲ保有スヘシ
一 宮城、離宮、御用邸又ハ神宮ヘ二十町以上
二 皇陵、社寺、学校、公園、電気瓦斯若ハ石油ノ工場、電力若ハ火力ヲ使用スル工場、発火質物件ヲ蓄積スル場所、鉄道、軌道、汽船ノ常航路若ハ繋留所又ハ市街地ヘ四町以上
三 宅地、国道、県道、電線、瓦斯ノ伝導管、火ヲ取扱フ場所、蓄積シタル燃焼物其ノ他内務大臣ノ指定シタル箇所ヘ五十間以上
前項ノ距離ハ貯蔵数量ノ増減ニ従ヒ貯蔵数量ノ平方根ニ比例シテ之ヲ増減ス但シ各距離ノ五分ノ一ヲ下ルコトヲ得ス
倉庫ハ其ノ外壁ノ周囲ニ一間以上ノ空地ヲ保有スヘシ但シ貯蔵数量ヲ減少シ特ニ庁府県長官ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
庁府県長官ハ必要ト認ムルトキハ仮貯蔵所ニ付第一項及第二項ノ規定ニ依ル距離以上ニ於テ特ニ其ノ距離ヲ指定スルコトヲ得
火薬類貯蔵所相互ノ距離ニ付テハ本条ノ規定ヲ適用セス
第三十四条 内務大臣ハ天然又ハ人造ノ掩体ノ状態其ノ他土地又ハ設備ノ状況ニ依リ危険ノ虞ナシト認ムル程度ニ於テ前条ニ定ムル距離ノ減少ヲ許可スルコトヲ得
第三十五条 第二十九条及前条ノ許可ハ状況ノ変更ニ依リ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第三十六条 第二十八条ノ規定ニ依リ倉庫ニ貯蔵スルコトヲ得ヘキ数量ヲ超過スル火薬類ハ所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ同時ニ之ヲ運搬スルコトヲ得ス
第三十七条 火薬類ハ他ノ物件ト混包シ又ハ変装若ハ仮装シテ之ヲ所持、運搬又ハ託送スルコトヲ得ス
前項ノ物件ヲ発見シタル者ハ直ニ警察官ニ之ヲ届出ツヘシ
第三十八条 地盤又ハ物件ヲ破砕スルノ目的ヲ以テ火薬又ハ爆薬ヲ使用セムトスル者ハ使用地警察官署ノ許可ヲ受クヘシ但シ内務大臣カ特ニ定メタル場合又ハ鉱業法ニ依ル鉱物ノ試掘若ハ採掘ニ関シテハ此ノ限ニ在ラス
第三十九条 拳銃、短銃又ハ仕込銃ハ職務又ハ銃砲ニ関スル営業ノ為ニスル場合ヲ除クノ外所轄警察官署ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ授受、運搬又ハ携帯スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ仕込刀剣其ノ他変装シタル戎器ニ之ヲ準用ス
第四十条 拳銃、短銃又ハ仕込銃ハ業務又ハ修学ノ為ニスル場合ヲ除クノ外未成年者之ヲ所持シ又ハ未成年者ヲシテ之ヲ所持セシムルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ仕込刀剣其ノ他ノ戎器ニ之ヲ準用ス
第四十一条 火薬類ノ運搬、所持其ノ他ノ取扱ハ未成年者之ヲ為シ又ハ未成年者、白痴者若ハ瘋癲者ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ得ス但シ第十八条各号ノ火薬類ニ付テハ十五歳以上ノ者ニ限リ之ヲ為シ又ハ之ヲ為サシムルコトヲ得
第四十二条 営業者ハ許可ヲ受ケサル者ニ銃砲火薬類又ハ第三十九条ノ戎器ヲ譲渡スコトヲ得ス但シ譲受ニ付許可ヲ要セサル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第四十三条 試験ノ結果不良品ト認定セラレタル火薬類ハ内務大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ所持者ニ於テ直ニ必要ナル処置ヲ為スヘシ
第四十四条 第十一条乃至第十五条、第二十二条、第二十七条、第二十九条及第三十一条乃至第三十六条ノ規定ハ緩燃導火線ニ之ヲ適用セス
銃砲火薬類取締法第六条、第八条及第九条並本令第十一条乃至第十五条、第二十二条、第二十七条乃至第二十九条及第三十一条乃至第三十六条ノ規定ハ煙火及逓信大臣カ船舶備付用ノ為特ニ指定シタル煙火類似ノ火工品ニ之ヲ適用セス
緩燃導火線及煙火ニ付必要ナル規定ハ庁府県長官之ヲ定ム
第二項ノ船舶備付用火工品ニ付必要ナル規定ハ逓信大臣之ヲ定ム
第四十五条 第七条、第八条第二項、第十条第一項、第十三条、第十四条、第二十二条、第二十五条、第二十七条、第二十八条、第三十一条、第三十二条、第三十六条、第三十七条第一項、第三十八条、第四十二条及第四十三条ノ規定ニ違反シタル者、第三十三条ノ規定ニ違反シ又ハ本令ニ依ル許可若ハ指定ノ範囲ヲ超エテ火薬類ヲ貯蔵シタル者並本令ニ基キテ発スル内務大臣ノ命令ノ規定ニ適合セサル火薬類貯蔵所ニ火薬類ヲ貯蔵シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス
第四十六条 第三十九条乃至第四十一条ノ規定ニ違反シタル者ハ三月以下ノ懲役若ハ五十円以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ処ス
第四十七条 第四条又ハ第三十七条第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第四十八条 銃砲火薬類取締法第十条乃至第十三条及第十六条乃至第十八条ノ規定ハ銃砲火薬類ニ非サル他ノ戎器及爆発質物品ニ之ヲ準用ス
第四十九条 公売又ハ競売法若ハ民事訴訟法ニ依ル競売ヲ為ス者ハ銃砲火薬類取締法及本令ノ適用ニ付テハ之ヲ譲渡人ト看做ス
第五十条 左ノ事項ハ内務大臣之ヲ定ム但シ鉄道ニ依ル輸送ニ関スル事項ハ内閣総理大臣、郵便及船舶ニ依ル輸送及船舶ニ於ケル常用火薬類ノ貯蔵ニ関スル事項ハ逓信大臣之ヲ定ム
一 火薬類ノ貯蔵、収納、荷造其ノ他ノ取扱ノ方法及制限
二 第四十三条ノ規定ニ依ル火薬類試験及不良品処置方法
三 火薬類運搬ノ方法及制限
四 火薬類作業所及火薬類貯蔵所ノ設備
五 火薬類作業所及火薬類貯蔵所ニ於テ遵守スヘキ事項
第五十一条 前条ノ規定ニ依ル命令ハ鉱業法第七十一条ノ規定ニ依リ農商務大臣ノ発スル命令ノ効力ヲ妨クルコトナシ
附 則
本令ハ明治四十四年五月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第十三条及第十四条ノ規定ハ仍二年間之ヲ適用セス
本令施行前火薬商又ハ甲種火薬商ノ許可ヲ受ケタル者ハ甲種火薬類販売業者、輸入及卸売ノ営業ニ限リ許可ヲ受ケタル者又ハ乙種火薬商ノ許可ヲ受ケタル者ハ乙種火薬類販売業者トシテ各其ノ許可ヲ受ケタルモノト看做ス
本令施行ノ際本令又ハ本令ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ適合セサル火薬類貯蔵所ハ所在地庁府県長官ノ指定シタル期間ニ於テ之ヲ改造スヘシ