朕相續稅法施行規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月二十二日
大藏大臣 男爵 曾禰荒助
勅令第六十八號
相續稅法施行規則
第一條 相續開始地ノ稅務署ヲ以テ相續稅ノ所轄稅務署トス
相續開始地カ相續稅法施行地ニ在ラサルトキハ同法施行地ニ在ル相續財產所在地ノ稅務署ヲ以テ所轄稅務署トス相繼財產カ二箇以上ノ稅務署管內ニ在ルトキハ其ノ主タル財產ノ所在地ノ稅務署ヲ以テ所轄稅務署トス
第二條 相續開始シタルトキハ相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人ハ相續稅法第十一條第一項ニ定メタル期間內ニ左ニ揭クル事項ヲ記載シタル書面ニ相續財產目錄及相續財產ノ價格中ヨリ控除セラルヘキ金額ノ明細書ヲ添附シ之ヲ所轄稅務署ニ提出スヘシ但シ相續人二人以上ナル場合ニ於テ其ノ一人ヨリ本條ニ依ル書類ヲ提出シタルトキハ他ノ相續人ハ之ヲ提出スルコトヲ要セス
一 被相續人ノ氏名
二 相續開始地
三 相續開始ノ日
四 家督相續、遺產相續ノ區別
五 被相續人カ相續開始前一年內ニ相續稅法施行地ニ在ル財產ニ付贈與ヲ爲シタルトキハ其ノ財產ノ價額及受贈者ノ住所氏名
六 相續人ノ住所氏名
七 相續人ト被相續人トノ續柄
前項ノ書類ヲ提出スル場合ニ於テ相續人確定セサルトキハ前項第六號及第七號ノ代リニ相續人ノ確定セサル理由ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テ相續人確定シタルトキハ相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人ハ第一項第六號及第七號ニ揭クル事項ヲ記載シタル書面ヲ所轄稅務署ニ提出スヘシ
相續稅法第二十三條ニ依リ遺產相續ノ開始ト看做サルヘキ場合ニ於テハ第一項第一號乃至第三號第六號及第七號ノ事項ヲ記載シタル書面ヲ提出スルヲ以テ足ル
第三條 稅務署長ハ相續財產ノ價額ヲ評定シテ課稅價格ヲ決定シ之ヲ相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人ニ通知スヘシ
相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人ハ前項ノ決定ニ對シ其ノ說明ヲ求ムルコトヲ得
第四條 課稅價格ノ決定ニ對シ異議アル者再審査ヲ求メムトスルトキハ其ノ理由ヲ詳記シ相續稅法第十四條ニ定メタル期間內ニ所轄稅務署長ニ申出ツヘシ
第五條 稅務署長再審査ノ請求ヲ受ケタルトキハ相續稅審査委員會ノ諮問ヲ經テ課稅價格ヲ決定シ之ヲ異議申立人ニ通知スヘシ
第三條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六條 各稅務署所轄內ニ相續稅審査委員會ヲ置ク但シ稅務署所轄內ニ在ル市又ハ北海道沖繩縣ノ區ニ付テハ大藏大臣ハ特ニ審査委員會ヲ置クコトヲ得
第七條 審査委員會ハ大藏大臣ノ命シタル收稅官吏二名及直接國稅百圓以上ヲ納ムル者三名ヲ以テ之ヲ組織ス
審査委員ノ任期ハ三年トス
第八條 審査委員會ハ稅務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第九條 審査委員會ハ每年最初ノ開會ノ時ニ於テ審査委員中ヨリ會長ヲ選擧スヘシ
第十條 審査委員會ノ會長出席セサルトキハ出席シタル審査委員中ノ年長者之ヲ代理スヘシ
第十一條 審査委員會ハ定員ノ過半數ニ當ル委員出席スルニ非サレハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ會長ノ決スル所ニ依ル
第十二條 審査委員ハ自己又ハ自己ノ親族ノ相續ニ關スル審査ノ議事ニ與ルコトヲ得ス
第十三條 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ審査委員會ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第十四條 相續人二人以上ナル場合ニ於テ相續稅納付前相續財產ノ分割ヲ爲スモ相續稅ハ各相續人連帶シテ之ヲ納付スルコトヲ要ス
第十五條 相續稅ノ年賦延納ヲ求メムトスル者ハ擔保ノ種類及延納期間ヲ記シ相續稅法第十七條ノ期間內ニ所轄稅務署ニ出願スヘシ
第十六條 擔保ノ種類ハ左ニ揭クルモノニ限ル
一 稅務署長ニ於テ確實ト認ムル有價證券
二 土地
三 建物
四 稅務署長ニ於テ納稅保證ニ堪フル資力アリト認ムル保證人
第十七條 擔保トシテ有價證券ヲ提供セムトスル者ハ之ヲ供託シ其ノ供託受領證ヲ提出スヘシ
擔保トシテ土地建物ヲ提供シタル者アルトキハ稅務署長ハ抵當權ノ登記ヲ登記所ニ囑託スヘシ
第十八條 稅務署長ニ於テ擔保物ノ價格減少シタリト認ムルトキ又ハ保證人ノ資力納稅保證ニ堪ヘサルニ至リタリト認ムルトキハ增擔保ヲ提供セシメ又ハ保證人ヲ變換セシムルコトヲ得
第十九條 年賦延納金額ハ相續稅金額ヲ延納年間ニ平分シテ之ヲ定ム
第二十條 增擔保ヲ提供スヘキ場合ニ於テ之ヲ提供セス又ハ保證人ヲ變換スヘキ場合ニ於テ之ヲ變換セサルトキハ稅務署長ハ年賦延納ノ許可ヲ取消シ稅金ヲ一時ニ徵收スヘシ年賦延納金滯納ノ場合ニ於テモ亦同シ
第二十一條 年賦延納ノ許可ヲ受ケタル者相續稅ヲ滯納シタルトキハ擔保物アルトキハ擔保物ヲ以テ其ノ稅金ニ充テ保證人アルトキハ保證人ニ通知シテ其ノ稅金ヲ納メシム
擔保物ヲ以テ稅金ニ充ツヘキ場合ニ於テハ之ヲ公賣ニ付シ相續稅及公賣ノ費用ニ充テ不足アルトキハ之ヲ追徵シ殘餘アルトキハ之ヲ還付ス
保證人ニ於テ稅金ヲ完納セサルトキハ納稅者ニ對シ滯納處分ヲ行ヒ仍稅金ニ不足アルトキハ保證人ニ對シ滯納處分ヲ行フ
第二十二條 年賦延納ノ許可ヲ受ケタル者相續稅ヲ完納シタルトキハ稅務署長ハ擔保解除ノ手續ヲ爲スヘシ
第二十三條 相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人相續稅法第十一條ニ依ル書類ヲ期限迄ニ提出セサルトキハ所轄稅務署長ハ期間ヲ定メテ之ヲ催吿スヘシ
前項ノ期間內ニ書類ヲ提出セサルトキハ所轄稅務署長ハ其ノ認ムル所ニ依リ課稅價格ヲ決定スヘシ
附 則
本令ハ明治三十八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕相続税法施行規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月二十二日
大蔵大臣 男爵 曽祢荒助
勅令第六十八号
相続税法施行規則
第一条 相続開始地ノ税務署ヲ以テ相続税ノ所轄税務署トス
相続開始地カ相続税法施行地ニ在ラサルトキハ同法施行地ニ在ル相続財産所在地ノ税務署ヲ以テ所轄税務署トス相継財産カ二箇以上ノ税務署管内ニ在ルトキハ其ノ主タル財産ノ所在地ノ税務署ヲ以テ所轄税務署トス
第二条 相続開始シタルトキハ相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人ハ相続税法第十一条第一項ニ定メタル期間内ニ左ニ掲クル事項ヲ記載シタル書面ニ相続財産目録及相続財産ノ価格中ヨリ控除セラルヘキ金額ノ明細書ヲ添附シ之ヲ所轄税務署ニ提出スヘシ但シ相続人二人以上ナル場合ニ於テ其ノ一人ヨリ本条ニ依ル書類ヲ提出シタルトキハ他ノ相続人ハ之ヲ提出スルコトヲ要セス
一 被相続人ノ氏名
二 相続開始地
三 相続開始ノ日
四 家督相続、遺産相続ノ区別
五 被相続人カ相続開始前一年内ニ相続税法施行地ニ在ル財産ニ付贈与ヲ為シタルトキハ其ノ財産ノ価額及受贈者ノ住所氏名
六 相続人ノ住所氏名
七 相続人ト被相続人トノ続柄
前項ノ書類ヲ提出スル場合ニ於テ相続人確定セサルトキハ前項第六号及第七号ノ代リニ相続人ノ確定セサル理由ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テ相続人確定シタルトキハ相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人ハ第一項第六号及第七号ニ掲クル事項ヲ記載シタル書面ヲ所轄税務署ニ提出スヘシ
相続税法第二十三条ニ依リ遺産相続ノ開始ト看做サルヘキ場合ニ於テハ第一項第一号乃至第三号第六号及第七号ノ事項ヲ記載シタル書面ヲ提出スルヲ以テ足ル
第三条 税務署長ハ相続財産ノ価額ヲ評定シテ課税価格ヲ決定シ之ヲ相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人ニ通知スヘシ
相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人ハ前項ノ決定ニ対シ其ノ説明ヲ求ムルコトヲ得
第四条 課税価格ノ決定ニ対シ異議アル者再審査ヲ求メムトスルトキハ其ノ理由ヲ詳記シ相続税法第十四条ニ定メタル期間内ニ所轄税務署長ニ申出ツヘシ
第五条 税務署長再審査ノ請求ヲ受ケタルトキハ相続税審査委員会ノ諮問ヲ経テ課税価格ヲ決定シ之ヲ異議申立人ニ通知スヘシ
第三条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六条 各税務署所轄内ニ相続税審査委員会ヲ置ク但シ税務署所轄内ニ在ル市又ハ北海道沖縄県ノ区ニ付テハ大蔵大臣ハ特ニ審査委員会ヲ置クコトヲ得
第七条 審査委員会ハ大蔵大臣ノ命シタル収税官吏二名及直接国税百円以上ヲ納ムル者三名ヲ以テ之ヲ組織ス
審査委員ノ任期ハ三年トス
第八条 審査委員会ハ税務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第九条 審査委員会ハ毎年最初ノ開会ノ時ニ於テ審査委員中ヨリ会長ヲ選挙スヘシ
第十条 審査委員会ノ会長出席セサルトキハ出席シタル審査委員中ノ年長者之ヲ代理スヘシ
第十一条 審査委員会ハ定員ノ過半数ニ当ル委員出席スルニ非サレハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ会長ノ決スル所ニ依ル
第十二条 審査委員ハ自己又ハ自己ノ親族ノ相続ニ関スル審査ノ議事ニ与ルコトヲ得ス
第十三条 税務署長又ハ其ノ代理官ハ審査委員会ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第十四条 相続人二人以上ナル場合ニ於テ相続税納付前相続財産ノ分割ヲ為スモ相続税ハ各相続人連帯シテ之ヲ納付スルコトヲ要ス
第十五条 相続税ノ年賦延納ヲ求メムトスル者ハ担保ノ種類及延納期間ヲ記シ相続税法第十七条ノ期間内ニ所轄税務署ニ出願スヘシ
第十六条 担保ノ種類ハ左ニ掲クルモノニ限ル
一 税務署長ニ於テ確実ト認ムル有価証券
二 土地
三 建物
四 税務署長ニ於テ納税保証ニ堪フル資力アリト認ムル保証人
第十七条 担保トシテ有価証券ヲ提供セムトスル者ハ之ヲ供託シ其ノ供託受領証ヲ提出スヘシ
担保トシテ土地建物ヲ提供シタル者アルトキハ税務署長ハ抵当権ノ登記ヲ登記所ニ嘱託スヘシ
第十八条 税務署長ニ於テ担保物ノ価格減少シタリト認ムルトキ又ハ保証人ノ資力納税保証ニ堪ヘサルニ至リタリト認ムルトキハ増担保ヲ提供セシメ又ハ保証人ヲ変換セシムルコトヲ得
第十九条 年賦延納金額ハ相続税金額ヲ延納年間ニ平分シテ之ヲ定ム
第二十条 増担保ヲ提供スヘキ場合ニ於テ之ヲ提供セス又ハ保証人ヲ変換スヘキ場合ニ於テ之ヲ変換セサルトキハ税務署長ハ年賦延納ノ許可ヲ取消シ税金ヲ一時ニ徴収スヘシ年賦延納金滞納ノ場合ニ於テモ亦同シ
第二十一条 年賦延納ノ許可ヲ受ケタル者相続税ヲ滞納シタルトキハ担保物アルトキハ担保物ヲ以テ其ノ税金ニ充テ保証人アルトキハ保証人ニ通知シテ其ノ税金ヲ納メシム
担保物ヲ以テ税金ニ充ツヘキ場合ニ於テハ之ヲ公売ニ付シ相続税及公売ノ費用ニ充テ不足アルトキハ之ヲ追徴シ残余アルトキハ之ヲ還付ス
保証人ニ於テ税金ヲ完納セサルトキハ納税者ニ対シ滞納処分ヲ行ヒ仍税金ニ不足アルトキハ保証人ニ対シ滞納処分ヲ行フ
第二十二条 年賦延納ノ許可ヲ受ケタル者相続税ヲ完納シタルトキハ税務署長ハ担保解除ノ手続ヲ為スヘシ
第二十三条 相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人相続税法第十一条ニ依ル書類ヲ期限迄ニ提出セサルトキハ所轄税務署長ハ期間ヲ定メテ之ヲ催告スヘシ
前項ノ期間内ニ書類ヲ提出セサルトキハ所轄税務署長ハ其ノ認ムル所ニ依リ課税価格ヲ決定スヘシ
附 則
本令ハ明治三十八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス