(目的)
第一条 この法律は、武力攻撃事態等において、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)に従って武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置について定めることにより、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 武力攻撃事態等 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第一条に規定する武力攻撃事態等をいう。
二 武力攻撃 事態対処法第二条第一号に規定する武力攻撃をいう。
三 武力攻撃事態 事態対処法第二条第二号に規定する武力攻撃事態をいう。
四 合衆国軍隊 武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施しているアメリカ合衆国の軍隊をいう。
五 行動関連措置 武力攻撃事態等において、合衆国軍隊の行動(前号に規定する行動(武力攻撃が発生した事態以外の武力攻撃事態等にあっては、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための同号に規定する行動)をいう。以下同じ。)が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置であって、対処基本方針(事態対処法第九条第一項に規定する対処基本方針をいう。以下同じ。)に基づき、自衛隊その他の指定行政機関(事態対処法第二条第四号に規定する指定行政機関をいう。以下同じ。)が実施するものをいう。
(政府の責務)
第三条 政府は、武力攻撃事態等においては、的確かつ迅速に行動関連措置を実施し、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に努めるものとする。
(行動関連措置の基本原則)
第四条 行動関連措置は、武力攻撃を排除する目的の範囲内において、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えるものであってはならない。
(地方公共団体及び事業者の責務)
第五条 地方公共団体及び事業者は、指定行政機関から行動関連措置に関し協力を要請されたときは、その要請に応じるよう努めるものとする。
(合衆国政府との連絡)
第六条 政府は、第三条の責務を果たすため、武力攻撃事態等の状況の認識及び武力攻撃事態等への対処に関し、日米安保条約に基づき、アメリカ合衆国政府と常に緊密な連絡を保つよう努めるものとする。
(情報の提供)
第七条 政府は、武力攻撃事態等においては、国民に対し、合衆国軍隊の行動に係る地域その他の合衆国軍隊の行動に関する状況及び行動関連措置の実施状況について、必要な情報の提供を適切に行うものとする。
(地方公共団体との連絡調整)
第八条 政府は、合衆国軍隊の行動又は行動関連措置の実施が地方公共団体の実施する対処措置(事態対処法第二条第七号に規定する対処措置をいう。)に影響を及ぼすおそれがあるときは、関係する地方公共団体との連絡調整を行うものとする。
(合衆国軍隊の行為に係る通知)
第九条 防衛庁長官は、武力攻撃事態(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十六条第一項の規定による防衛出動命令があった場合に限る。第十四条第一項において同じ。)において、合衆国軍隊から、同法第百十五条の十一第一項若しくは第二項又は第百十五条の十六第一項に規定する行為をし、又はした旨の連絡を受けたときは、これらの規定の例に準じて通知するものとする。
(自衛隊による行動関連措置としての物品及び役務の提供の実施)
第十条 内閣総理大臣又はその委任を受けた者は、行動関連措置としての自衛隊に属する物品の提供を実施することができる。
2 自衛隊法第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、行動関連措置としての役務の提供を実施することができる。
3 前項に規定するもののほか、防衛庁長官は、内閣総理大臣の承認を得て、防衛庁本庁の機関又は自衛隊の部隊等(自衛隊法第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)に、行動関連措置としての役務の提供の実施を命ずることができる。
4 第一項の規定による自衛隊に属する物品の提供及び前二項の規定による自衛隊による役務の提供として行う業務は、補給(武器の提供を行う補給を除く。)、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用又は訓練に関する業務(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)とする。
(指定行政機関による行動関連措置の実施)
第十一条 前二条に規定するもののほか、指定行政機関は、法令及び対処基本方針に基づき、必要な行動関連措置を実施するものとする。
(武器の使用)
第十二条 第十条第三項の規定により行動関連措置としての役務の提供の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、その職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する自衛隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
(行動関連措置に関する指針の作成)
第十三条 武力攻撃事態等対策本部長(事態対処法第十一条第一項に規定する武力攻撃事態等対策本部長をいう。)は、行動関連措置を的確かつ迅速に実施するため、対処基本方針に基づき、行動関連措置に関する指針を定めることができる。
2 指定行政機関は、前項に規定する指針が定められたときは、当該指針に基づき、必要な行動関連措置を適切に実施しなければならない。
(損失の補償)
第十四条 国は、合衆国軍隊の次の各号に掲げる行為により損失を受けた者がある場合においては、それぞれ当該各号に定める法律の規定の例により、その損失を補償しなければならない。
一 武力攻撃事態において、合衆国軍隊の行動に係る地域内を緊急に移動するに際して、通行に支障がある場所をう回するために行う自衛隊法第九十二条の二前段に規定する場所の通行 同条後段
二 武力攻撃事態において、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第百十四条の五第一項の規定により同項に規定する自衛隊等の使用する車両以外の車両の道路における通行が禁止され、又は制限されている区域又は道路の区間を合衆国軍隊車両(合衆国軍隊の使用する車両をいう。以下この号において同じ。)により通行する場合において、車両その他の物件が通行の妨害となることにより合衆国軍隊の行動の実施に著しい支障を生ずるおそれがあり、かつ、警察官又は当該車両その他の物件の占有者、所有者若しくは管理者のいずれもがその場にいないときに、合衆国軍隊車両の円滑な通行の確保に必要な措置をとるためやむを得ない限度において行う当該車両その他の物件の破損 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第八十二条第一項
2 前項の規定は、他の法律の規定により国が損害賠償又は損失補償の責めに任ずべき損失については、適用しない。
(土地の使用等)
第十五条 内閣総理大臣は、武力攻撃事態において、合衆国軍隊の用に供するため土地又は家屋(以下「土地等」という。)を緊急に必要とする場合において、その土地等を合衆国軍隊の用に供することが適正かつ合理的であり、かつ、武力攻撃を排除する上で不可欠であると認めるときは、その告示して定めた地域内に限り、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和二十七年法律第百四十号)の規定にかかわらず、期間を定めて、当該土地等を使用することができる。
2 前項の規定により土地を使用する場合において、当該土地の上にある立木その他土地に定着する物件(家屋を除く。以下「立木等」という。)が合衆国軍隊の行動の実施の妨げとなると認められるときは、内閣総理大臣は、当該立木等を移転することができる。この場合において、事態に照らし移転が著しく困難であると認めるときは、当該立木等を処分することができる。
3 第一項の規定により家屋を使用する場合において、合衆国軍隊の行動の実施のためやむを得ない必要があると認められるときは、内閣総理大臣は、その必要な限度において、当該家屋の形状を変更することができる。
4 自衛隊法第百三条第七項から第十項まで、第十七項及び第十八項の規定は前三項の規定により土地等を使用し、立木等を移転し、若しくは処分し、又は家屋の形状を変更する場合について、同条第十三項、第十五項及び第十六項の規定は第一項の規定により土地等を使用する場合について準用する。この場合において、同条第七項及び第十三項中「都道府県知事」とあるのは「内閣総理大臣」と、同条第十項中「都道府県(第一項ただし書の場合にあつては、国)」とあるのは「国」と、同条第十三項中「その職員」とあるのは「その指名する職員」と読み替えるものとする。
5 前各項の規定により内閣総理大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、防衛庁の職員に委任することができる。
(政令への委任)
第十六条 この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
(罰則)
第十七条 第十五条第四項において読み替えて準用する自衛隊法第百三条第十三項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、二十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。