(目的)
第一条 この法律は、原子力による発電が我が国の電気の安定供給に欠くことのできないものであることにかんがみ、原子力発電施設等の周辺の地域について、地域の防災に配慮しつつ、生活環境、産業基盤等の総合的かつ広域的な整備に必要な特別措置を講ずること等により、これらの地域の振興を図り、もって国民経済の健全な発展と国民生活の安定に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「原子力発電施設等」とは、原子力発電施設で政令で定める者が設置するもの及び原子力発電と密接な関連を有する施設で政令で定めるものをいう。
(原子力発電施設等立地地域の指定)
第三条 内閣総理大臣は、都道府県知事の申出に基づき、原子力立地会議の審議を経て、一又は二以上の原子力発電施設等(設置されることが確実であるものを含む。)の周辺の地域であって、次の各号に掲げる要件に該当するものを原子力発電施設等立地地域として指定することができる。
一 市町村の区域が隣接すること等により自然的経済的社会的条件からみて一体として振興することが必要であると認められること。
二 政令で定めるところにより計算された当該原子力発電施設等の発生電力量(原子力発電施設以外の施設にあっては、政令で定めるところにより発生電力量として算定されたものをいう。)の合計が、政令で定める規模以上であること。
三 工業再配置促進法(昭和四十七年法律第七十三号)第二条第一項に規定する移転促進地域又は移転促進地域以外の地域で工業の集積の程度について政令で定める要件に該当するものに属さないこと。
2 都道府県知事は、前項の申出をしようとするときは、あらかじめ関係市町村長の意見を聴かなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定により原子力発電施設等立地地域を指定したときは、その旨並びに当該原子力発電施設等及び当該原子力発電施設等立地地域の区域を官報で公示しなければならない。
4 前三項の規定は、原子力発電施設等立地地域を変更する場合に準用する。
(振興計画の決定及び変更)
第四条 都道府県知事は、前条第一項の規定により原子力発電施設等立地地域の指定があったときは、原子力発電施設等立地地域の振興に関する計画(以下「振興計画」という。)の案を作成し、内閣総理大臣に提出するものとする。
2 都道府県知事は、前項の振興計画の案を作成しようとするときは、関係市町村長及び振興計画に基づく事業を行うこととなる者(国を除く。)の意見を聴かなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の振興計画の案に基づき、原子力立地会議の審議を経て、振興計画を決定する。
4 内閣総理大臣は、振興計画を決定したときは、これを当該振興計画の案を提出した都道府県知事に通知するものとする。
5 前各項の規定は、振興計画を変更する場合に準用する。
(振興計画の内容)
第五条 振興計画は、当該原子力発電施設等立地地域の生活環境、産業基盤等の総合的な整備等に関し必要な次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 原子力発電施設等立地地域の振興の基本的方針に関する事項
二 基幹的な道路、鉄道、港湾等の交通施設及び通信施設の整備に関する事項
三 農林水産業、商工業その他の産業の振興に関する事項
六 防災及び国土の保全に係る施設の整備に関する事項
八 前各号に掲げるもののほか、原子力発電施設等立地地域の振興に関し必要な事項
2 振興計画は、地域の防災に配慮するとともに、他の法令の規定による地域振興に関する計画と調和が保たれたものでなければならない。
(事業の実施)
第六条 振興計画に基づく事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。
(国の負担又は補助の割合の特例)
第七条 振興計画に基づく事業のうち、別表に掲げるもので原子力発電施設等立地地域の住民生活の安全の確保に資することから緊急に整備することが必要なものとして政令で定めるものに要する経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、同表に定める割合とする。ただし、他の法令の規定により同表に掲げる割合を超える国の負担割合が定められている場合は、この限りでない。
(原子力発電施設等立地地域の振興のための地方債)
第八条 振興計画に基づく事業で前条の規定の適用を受けるものにつき当該地方公共団体が必要とする経費の財源に充てるため起こした地方債(当該地方債を財源として設置した施設に関する事業の経営に伴う収入を当該地方債の元利償還に充てることができるものを除く。)で、総務大臣が指定したものに係る元利償還に要する経費は、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の定めるところにより、当該地方公共団体に交付すべき地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入するものとする。
(財政上、金融上及び税制上の措置)
第九条 国は、前二条に定めるもののほか、振興計画を達成するために必要があると認めるときは、振興計画に基づく事業を実施する者に対し、財政上、金融上及び税制上の措置を講ずるよう努めなければならない。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定により、地方公共団体が、原子力発電施設等立地地域の区域内において製造の事業その他政令で定める事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者について、その事業に対する事業税、その事業に係る建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税又はその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が総務省令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(事業税又は固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあっては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が総務省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(原子力立地会議の設置及び所掌事務)
第十一条 内閣府に、原子力立地会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 原子力発電施設等立地地域に関し、第三条第一項に規定する事項を処理すること。
二 振興計画に関し、第四条第三項に規定する事項を処理すること。
三 前二号に掲げるもののほか、原子力発電施設等立地地域の振興に関する重要事項を調査審議すること。
(会議の組織等)
第十二条 会議は、議長及び議員八人をもって組織する。
4 前三項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(政令への委任)
第十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。