特定放射光施設の共用の促進に関する法律
法令番号: 法律第78号
公布年月日: 平成6年6月29日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

科学技術の高度化と国際貢献の必要性が高まる中、先端的研究施設の整備と共用促進が求められている。兵庫県の播磨科学公園都市で建設中の特定放射光施設は、世界最高性能の汎用性の高い施設であり、国内外の研究者による幅広い利用が期待されている。本法案は、内閣総理大臣による基本方針の策定、日本原子力研究所・理化学研究所の業務範囲拡大、放射光利用研究促進機構の指定等を通じて、特定放射光施設の共用促進を図り、科学技術の試験研究基盤強化と国際交流の進展を目指すものである。

参照した発言:
第129回国会 衆議院 科学技術委員会 第1号

審議経過

第129回国会

衆議院
(平成6年6月2日)
(平成6年6月3日)
(平成6年6月7日)
参議院
(平成6年6月22日)
特定放射光施設の共用の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成六年六月二十九日
内閣総理大臣 羽田孜
法律第七十八号
特定放射光施設の共用の促進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
基本方針(第四条)
第三章
日本原子力研究所及び理化学研究所の業務
第一節
日本原子力研究所の業務(第五条―第七条)
第二節
理化学研究所の業務(第八条―第十条)
第四章
放射光利用研究促進機構(第十一条―第二十五条)
第五章
雑則(第二十六条―第二十八条)
第六章
罰則(第二十九条・第三十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する試験研究を行う者による特定放射光施設の共用を促進するための措置を講ずることにより、科学技術に関する試験研究の基盤の強化を図り、あわせて科学技術に関する試験研究に係る国際交流の進展を図り、もって科学技術の振興に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定放射光施設」とは、日本原子力研究所及び理化学研究所により設置される、加速された電子又は陽電子から放射される強い指向性と高い輝度を有する電磁波(以下「放射光」という。)を使用して科学技術に関する試験研究(以下「試験研究」という。)を行うための施設であって、総理府令で定めるものをいう。
2 この法律において「共用施設」とは、特定放射光施設のうち試験研究を行う者の共用に供される部分をいう。
3 この法律において「専用施設」とは、日本原子力研究所及び理化学研究所以外の者により設置される施設であって、特定放射光施設に係る放射光を使用して試験研究を行うためのものをいう。
(政府の責務)
第三条 政府は、この法律の目的を達成するため、共用施設又は専用施設を利用した試験研究(以下「施設利用研究」という。)を行う者に対する支援、施設利用研究の促進に資する試験研究及び国際交流の推進その他の特定放射光施設の共用を促進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第二章 基本方針
(基本方針)
第四条 内閣総理大臣は、特定放射光施設の共用の促進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 特定放射光施設の共用の促進に関する基本的な方向
二 施設利用研究に関する事項
三 共用施設及び専用施設の整備に関する事項
四 共用施設及び専用施設の運営に関する事項
五 その他特定放射光施設の共用の促進に際し配慮すべき事項
3 内閣総理大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第三章 日本原子力研究所及び理化学研究所の業務
第一節 日本原子力研究所の業務
(日本原子力研究所の業務)
第五条 日本原子力研究所は、日本原子力研究所法(昭和三十一年法律第九十二号)第二十二条第一項に規定する業務のほか、この法律の目的を達成するため、次に掲げる業務を行う。
一 原子力の研究、開発及び利用の推進に資すると認められる共用施設の建設及び維持管理を行い、並びにこれを試験研究を行う者の共用に供すること。
二 原子力の研究、開発及び利用の推進に資すると認められる専用施設を設置してこれを利用した試験研究を行う者に対し、当該試験研究に必要な放射光の提供その他の便宜を供与すること。
三 前二号の業務に附帯する業務を行うこと。
(実施計画)
第六条 日本原子力研究所は、総理府令で定めるところにより、前条に規定する業務の実施計画を作成し、毎事業年度、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の実施計画は、基本方針の内容に即して定められなければならない。
(日本原子力研究所法の特例)
第七条 第五条の規定により日本原子力研究所の業務が行われる場合には、日本原子力研究所法第二十四条第一項中「第二十二条第一項」とあるのは「第二十二条第一項及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律(以下「特定放射光施設法」という。)第五条」と、同法第三十五条中「命令」とあるのは「命令並びに特定放射光施設法」と、同法第三十六条第二項、第三十七条第一項及び第四十一条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は特定放射光施設法」と、同法第四十一条第三号中「第二十二条第一項」とあるのは「第二十二条第一項及び特定放射光施設法第五条」とする。
第二節 理化学研究所の業務
(理化学研究所の業務)
第八条 理化学研究所は、理化学研究所法(昭和三十三年法律第八十号)第二十二条第一項に規定する業務のほか、この法律の目的を達成するため、次に掲げる業務を行う。
一 共用施設(第五条第一号に掲げる業務に係るものを除く。)の建設及び維持管理を行い、並びにこれを試験研究を行う者の共用に供すること。
二 専用施設(第五条第二号に掲げる業務に係るものを除く。)を設置してこれを利用した試験研究を行う者に対し、当該試験研究に必要な放射光の提供その他の便宜を供与すること。
三 前二号の業務に附帯する業務を行うこと。
(準用)
第九条 第六条の規定は、理化学研究所について準用する。この場合において、同条第一項中「前条」とあるのは、「第八条」と読み替えるものとする。
(理化学研究所法の特例)
第十条 第八条の規定により理化学研究所の業務が行われる場合には、理化学研究所法第三十三条中「命令」とあるのは「命令並びに特定放射光施設の共用の促進に関する法律(以下「特定放射光施設法」という。)」と、同法第三十四条第二項及び第四十一条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は特定放射光施設法」と、同法第四十一条第三号中「第二十二条第一項」とあるのは「第二十二条第一項及び特定放射光施設法第八条」とする。
第四章 放射光利用研究促進機構
(指定等)
第十一条 内閣総理大臣は、特定放射光施設の共用の促進を図ることを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定による法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、放射光利用研究促進機構(以下「機構」という。)として指定することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による指定をしたときは、機構の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
3 機構は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
(業務)
第十二条 機構は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 次条に規定する業務を行うこと。
二 施設利用研究の実施に関し、情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
三 施設利用研究に関する内外の動向の調査及び分析並びに啓発活動を行うこと。
四 施設利用研究の促進に資する試験研究を行うこと。
五 施設利用研究の促進のため、海外から研究者を招へいすること。
六 日本原子力研究所又は理化学研究所の委託を受けて、共用施設の維持管理及び運転を行うこと。
七 前各号に掲げるもののほか、特定放射光施設の共用の促進を図るために必要な業務を行うこと。
(機構による供用業務の実施)
第十三条 第十一条第一項の規定による指定がされたときは、日本原子力研究所は第五条に規定する業務(共用施設の建設、維持管理及び運転並びにこれらに附帯するものを除く。)の全部又は一部を、理化学研究所は第八条に規定する業務(共用施設の建設、維持管理及び運転並びにこれらに附帯するものを除く。)の全部又は一部を、供用業務として機構に行わせるものとする。
(準用)
第十四条 第六条の規定は、機構が供用業務を行う場合について準用する。この場合において、同条第一項中「日本原子力研究所」とあるのは「機構」と、「前条に規定する業務」とあるのは「供用業務」と読み替えるものとする。
(諮問委員会)
第十五条 機構は、諮問委員会を置くものとする。
2 諮問委員会は、機構の代表者の諮問に応じ、供用業務の実施計画の作成その他供用業務の実施に関する重要事項を審議し、及びこれに関し必要と認める意見を機構の代表者に述べることができる。
3 諮問委員会の委員は、施設利用研究に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣の認可を受けて、機構の代表者が任命する。
(業務規程の認可)
第十六条 機構は、供用業務を行い、又は第十二条第二号に掲げる業務(以下「支援業務」という。)を行うときは、これらの業務の開始前に、当該業務の実施に関する規程(以下「業務規程」という。)を作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 内閣総理大臣は、前項の認可をした業務規程が供用業務又は支援業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。
3 業務規程に記載すべき事項は、総理府令で定める。
(事業計画等)
第十七条 機構は、毎事業年度、総理府令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 機構は、総理府令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、内閣総理大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(区分経理)
第十八条 機構は、供用業務又は支援業務を行う場合には、これらの業務に係る経理とその他の経理とを区分して整理しなければならない。
(交付金)
第十九条 国は、予算の範囲内において、機構に対し、供用業務及び支援業務に要する費用の全部又は一部に相当する金額を交付することができる。
(総理府令への委任)
第二十条 この章に定めるもののほか、機構が供用業務又は支援業務を行う場合における機構の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。
(役員の選任及び解任)
第二十一条 機構の役員の選任及び解任は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 内閣総理大臣は、機構の役員がこの章の規定若しくは当該規程に基づく命令若しくは処分に違反したとき、第十六条第一項の認可を受けた業務規程に違反する行為をしたとき、又は供用業務若しくは支援業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、機構に対して、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十二条 供用業務に従事する機構の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
(報告及び検査)
第二十三条 内閣総理大臣は、この法律の施行に必要な限度において、機構に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、機構の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(監督命令)
第二十四条 内閣総理大臣は、この章の規定を施行するために必要な限度において、機構に対し、第十二条に規定する業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(指定の取消し等)
第二十五条 内閣総理大臣は、機構が次の各号のいずれかに該当するときは、第十一条第一項の規定による指定を取り消し、又は期間を定めて第十二条に規定する業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 指定に関し不正な行為があったとき。
二 この章の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
三 第十六条第一項の認可を受けた業務規程によらないで供用業務又は支援業務を行ったときその他第十二条に規定する業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により指定を取り消し、又は第十二条に規定する業務の全部若しくは一部の停止を命じたときは、その旨を公示しなければならない。
第五章 雑則
(日本原子力研究所、理化学研究所及び機構の業務における配慮)
第二十六条 日本原子力研究所、理化学研究所及び機構は、第五条、第八条及び第十二条に規定する業務が円滑に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
(科学技術庁長官への委任)
第二十七条 この法律に規定する内閣総理大臣の権限は、科学技術庁長官に委任することができる。ただし、第四条第一項及び第三項に規定する権限については、この限りでない。
(大蔵大臣との協議)
第二十八条 内閣総理大臣(前条の規定により委任された場合には、科学技術庁長官)は、次の場合には、あらかじめ、大蔵大臣と協議しなければならない。
一 第十六条第一項又は第十七条第一項の規定による認可をしようとするとき。
二 第十六条第三項、第十七条又は第二十条の規定により総理府令を定めようとするとき。
三 第十七条第二項の規定による承認をしようとするとき。
第六章 罰則
第二十九条 第二十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、三十万円以下の罰金にする。
第三十条 法人の代表者又は法人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(科学技術庁設置法の一部を改正)
第三条 科学技術庁設置法(昭和三十一年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第五条第十八号中「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)」を「特定放射光施設の共用の促進に関する法律(平成六年法律第七十八号)及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)」に改める。
内閣総理大臣 羽田孜
大蔵大臣 藤井裕久