(目的)
第一条 この法律は、社会経済の情報化の進展に伴い身体障害者の電気通信の利用の機会を確保することの必要性が増大していることにかんがみ、通信・放送身体障害者利用円滑化事業を推進するための措置を講ずることにより、通信・放送役務の利用に関する身体障害者の利便の増進を図り、もって情報化の均衡ある発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「通信・放送役務」とは、電気通信役務(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)並びに放送(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第一号に規定する放送をいう。以下同じ。)及び有線放送(有線テレビジョン放送法(昭和四十七年法律第百十四号)第二条第一項に規定する有線放送をいう。以下同じ。)の役務をいう。
2 この法律において「解説番組」とは、テレビジョン放送(放送法第二条第二号の五に規定するテレビジョン放送をいう。以下同じ。)において送られる影像を視覚障害者に対して説明するために放送される放送番組であって、当該テレビジョン放送の電波に重畳して行われるテレビジョン音声多重放送(同法第三条の二第四項に規定するテレビジョン音声多重放送をいう。)の放送番組であるものをいう。
3 この法律において「字幕番組」とは、テレビジョン放送において送られる音声その他の音響を文字又は図形により聴覚障害者に対して説明するために放送される放送番組であって、当該テレビジョン放送の電波に重畳して行われるテレビジョン文字多重放送(放送法第三条の二第四項に規定するテレビジョン文字多重放送をいう。)の放送番組であるものをいう。
4 この法律において「通信・放送身体障害者利用円滑化事業」とは、次に掲げる業務を行う事業であって、身体上の障害のため通信・放送役務を利用するのに支障のある者が当該通信・放送役務を円滑に利用できるようにするためのもので、身体障害者の利便の増進に著しく寄与するものをいう。
二 通信・放送役務を提供するための電気通信設備に付随する工作物を設置する業務
三 解説番組、字幕番組その他の放送又は有線放送の放送番組を制作する業務
(基本方針)
第三条 郵政大臣は、通信・放送役務の利用に関する身体障害者の利便の増進を図るため、通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針には、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 通信・放送役務の利用に関する身体障害者の利便の増進に関する基本的な方向
二 通信・放送身体障害者利用円滑化事業の内容に関する事項
三 その他通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に際し配慮すべき重要事項
3 郵政大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、厚生大臣、通商産業大臣その他の関係行政機関の長に協議し、かつ、政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。
4 郵政大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(通信・放送機構の業務の特例)
第四条 通信・放送機構(以下「機構」という。)は、通信・放送機構法(昭和五十四年法律第四十六号。以下「機構法」という。)第二十八条第一項に規定する業務のほか、この法律の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 通信・放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金に充てるための助成金を交付すること。
二 郵政大臣及び大蔵大臣が指定する金融機関が行う通信・放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金の貸付けについて、当該金融機関に対し、利子補給金を支給すること。
三 通信・放送身体障害者利用円滑化事業に関し、情報の収集、調査及び研究を行い、その成果を提供し、並びに照会及び相談に応ずること。
(業務の委託等)
第五条 機構は、郵政大臣及び大蔵大臣の認可を受けて、前条第二号に掲げる業務(利子補給金の支給の決定を除く。)の一部を金融機関に委託することができる。
2 金融機関は、他の法律の規定にかかわらず、前項の規定による委託を受け、当該業務を行うことができる。
3 第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関の役員又は職員で、当該委託業務に従事するものは、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
4 機構法第四十条の規定は、第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関について準用する。この場合において、同条第一項中「郵政大臣(研究開発出資業務については、郵政大臣又は大蔵大臣)」とあるのは「郵政大臣又は大蔵大臣」と、「その業務」とあるのは「その委託を受けた業務」と、「事務所その他の事業所」とあるのは「事務所」と、「業務の状況」とあるのは「その委託を受けた業務に関し業務の状況」と読み替えるものとする。
(機構法等の適用等)
第六条 第四条の規定により機構の業務が行われる場合には、機構法第十七条第二項中「研究開発出資業務」とあるのは「研究開発出資業務又は身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(以下「障害者利用円滑化法」という。)第四条第二号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。以下「障害者利用円滑化金融関連業務」という。)」と、機構法第十九条第四項、第二十九条、第三十九条及び第四十条第一項中「研究開発出資業務」とあるのは「研究開発出資業務又は障害者利用円滑化金融関連業務」と、機構法第三十九条、第四十条第一項及び第四十五条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は障害者利用円滑化法」と、機構法第四十三条第一項中「次の場合」とあるのは「次の場合(障害者利用円滑化金融関連業務に係る第二十九条第一項の規定による認可をしようとするときを除く。)」と、同条第二項中「次の場合」とあるのは「次の場合(障害者利用円滑化法第四条に規定する業務に係る第二十九条第一項の規定による認可をしようとするときを除く。)」と、機構法第四十五条第三号中「第二十八条第一項」とあるのは「第二十八条第一項及び障害者利用円滑化法第四条」とする。
2 第四条の規定により機構の業務が行われる場合の機構の財務及び会計に関する事項については、機構法に規定するもののほか、特定通信・放送開発事業実施円滑化法(平成二年法律第三十五号。以下「通信・放送開発法」という。)の規定の適用があるものとする。この場合において、通信・放送開発法第十条中「第六条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。)」とあるのは「第六条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。)並びに身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律第四条に規定する業務」とし、通信・放送開発法第十一条の規定により読み替えて適用される機構法の規定の適用については、次の表の第一欄に掲げる機構法の規定中同表の第二欄に掲げる字句を通信・放送開発法第十一条の規定により読み替えた同表の第三欄に掲げる字句は、同表の第四欄に掲げる字句にそれぞれ読み替えるものとする。
第一欄 |
第二欄 |
第三欄 |
第四欄 |
第三十一条 |
研究開発出資業務 |
研究開発出資業務又は金融関連業務 |
研究開発出資業務又は両金融関連業務(金融関連業務及び身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(以下「障害者利用円滑化法」という。)第四条第二号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。)をいう。以下同じ。) |
第三十二条、第三十五条及び第三十八条 |
研究開発出資業務 |
研究開発出資業務又は金融関連業務 |
研究開発出資業務又は両金融関連業務 |
第三十八条 |
この法律 |
この法律及び通信・放送開発法 |
この法律、通信・放送開発法及び障害者利用円滑化法 |
第四十二条第一項 |
及び一般勘定 |
、通信・放送開発法第六条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。以下「債務保証等業務」という。)に係る勘定並びに一般勘定 |
、通信・放送開発法第六条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。)並びに障害者利用円滑化法第四条に規定する業務(以下「両利子補給等業務」という。)に係る勘定並びに一般勘定 |
第四十二条第二項 |
及び一般勘定 |
、債務保証等業務に係る勘定及び一般勘定 |
、両利子補給等業務に係る勘定及び一般勘定 |
第四十三条第一項 |
次の場合 |
次の場合(金融関連業務に係る第二十九条第一項、第三十一条若しくは第三十五条の規定による認可又は第三十二条第一項の規定による承認をしようとするときを除く。) |
次の場合(両金融関連業務に係る第三十一条若しくは第三十五条の規定による認可又は第三十二条第一項の規定による承認をしようとするときを除く。) |
第四十三条第二項 |
次の場合 |
次の場合(通信・放送開発法第六条第一項に規定する業務に係る第二十九条第一項又は第三十一条の規定による認可をしようとするときを除く。) |
次の場合(通信・放送開発法第六条第一項に規定する業務及び障害者利用円滑化法第四条に規定する業務に係る第三十一条の規定による認可をしようとするときを除く。) |
(資金の確保等)
第七条 政府は、通信・放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるものとする。
2 郵政大臣(第四条第二号に掲げる業務については、郵政大臣及び大蔵大臣)は、同条に規定する機構の業務の円滑な運営が図られるように、情報の提供その他の必要な配慮を行うものとする。
(罰則)
第八条 第五条第四項において準用する機構法第四十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした金融機関の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。