特定不況産業安定臨時措置法
法令番号: 法律第四十四号
公布年月日: 昭和53年5月15日
法令の形式: 法律
特定不況産業安定臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和五十三年五月十五日
内閣総理大臣 福田赳夫
法律第四十四号
特定不況産業安定臨時措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
特定不況産業の設備の処理等(第三条―第十二条)
第三章
特定不況産業信用基金
第一節
総則(第十三条―第二十一条)
第二節
設立(第二十二条―第二十六条)
第三節
管理(第二十七条―第三十八条)
第四節
業務(第三十九条―第四十一条)
第五節
財務及び会計(第四十二条―第四十九条)
第六節
監督(第五十条・第五十一条)
第七節
補則(第五十二条―第五十四条)
第四章
雑則(第五十五条―第五十八条)
第五章
罰則(第五十九条―第六十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、最近における内外の経済的事情の著しい変化にかんがみ、特定不況産業について、その実態に即した安定基本計画を策定し、計画的な設備の処理の促進等のための措置を講ずることにより、雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定に配慮しつつ特定不況産業における不況の克服と経営の安定を図り、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(特定不況産業)
第二条 この法律において「特定不況産業」とは、次に掲げる業種に属する製造業であつて、政令で指定するものをいう。
一 平炉又は電気炉を使用する普通鋼の鋼塊又は鋼材の半製品の製造業
二 アルミニウム製錬業
三 合成繊維製造業
四 船舶製造業
五 前各号に掲げるもののほか、内外の経済的事情の著しい変化により、その業種に属する事業の目的物たる物品を製造する設備の生産能力が著しく過剰となり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれるため、その業種に属する事業者の相当部分の経営の著しい不安定が長期にわたり継続するおそれがあると認められる業種で、設備の処理(廃棄若しくは長期の格納若しくは休止(廃棄に代わるべき設備の生産能力の縮小の態様として妥当なものに限る。)又は譲渡(譲渡された設備が廃棄されることが明らかな場合に限る。第三十九条第二項において同じ。)により設備が生産の用に供されないようにすることをいう。以下同じ。)を行うことによりその事態を克服することが国民経済の健全な発展を図るため必要であると認められるものとして政令で定めるもの
2 前項各号に掲げる業種に属する製造業を営む者は、主務大臣に対し、当該製造業につき同項の規定による指定をすべき旨の申出をすることができる。
3 主務大臣は、前項の申出があつた場合において、その申出をした者の数が当該製造業を営む者のすべての数の大部分を占め、かつ、その申出をした者の事業活動が当該製造業を営む者のすべての事業活動の大部分を占める場合に限り、当該製造業につき第一項の規定による指定をするための手続をとるものとする。
4 主務大臣は、一の業種を第一項第五号の業種として同号の政令で定める手続をとるには、その目的からみて適当と認められる審議会(これに該当する審議会がない場合にあつては、産業構造審議会。以下「関係審議会」という。)の意見を聴かなければならない。
5 第一項第一号から第四号までに掲げるそれぞれの業種又はその業種の一部が経済的事情の変化により同項第五号に規定する要件に該当しなくなつた場合には、当該業種又は当該業種の一部に属する製造業につき同項の規定による指定をすることができず、同項の規定による指定がされている当該製造業につきその指定を取り消すものとする。
6 一の業種を第一項第五号の業種として定めるための同号の政令の制定又は改正は、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日後は、行わないものとする。
第二章 特定不況産業の設備の処理等
(安定基本計画)
第三条 主務大臣は、前条第一項の規定による指定があつたときは、特定不況産業ごとに、速やかに、関係審議会の意見を聴いて、特定不況産業における不況の克服と経営の安定を図るための基本となるべき計画(以下「安定基本計画」という。)を定めなければならない。
2 安定基本計画に定める事項は、次のとおりとする。
一 設備の処理を行うべき設備の種類及びその生産能力の合計、当該設備についての設備の処理の方法及び期間その他設備の処理に関する事項
二 前号の設備の処理と併せて行うべき当該設備の新設、増設及び改造の制限又は禁止(当該設備の更新又は改良を妨げるものを除く。以下同じ。)に関する事項
三 第一号の設備の処理と併せて行うべき事業の転換その他の措置(雇用の安定を図るための措置を含む。)に関する事項
3 安定基本計画で設備の処理について定めることができる設備の種類は、特定不況産業ごとに、政令で定める。
4 第二項第一号に規定する設備の生産能力の計算の方法は、前項の規定により政令で定める設備の種類ごとに、主務省令で定める。
5 安定基本計画は、当該特定不況産業に属する事業者の雇用する労働者の雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定について、十分な考慮が払われたものでなければならない。
6 関係審議会は、第一項の規定により意見を聴かれた場合において、その意見を定めようとするときは、あらかじめ、当該特定不況産業に係る主たる事業者団体及び労働組合の意見を聴かなければならない。
7 主務大臣は、第一項の規定により安定基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。
8 主務大臣は、経済的事情の変化のため必要があると認めるときは、関係審議会の意見を聴いて、安定基本計画を変更しなければならない。
9 第六項の規定は前項の規定により関係審議会が意見を聴かれた場合に、第七項の規定は前項の場合に準用する。
(事業者の努力)
第四条 特定不況産業に属する事業者は、前条第七項の規定により当該特定不況産業に関する安定基本計画が告示されたときは、その安定基本計画(同条第八項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に定めるところに従つて、設備の処理その他の措置を自主的に行うよう努めなければならない。
(共同行為の実施に関する指示)
第五条 主務大臣は、特定不況産業に属する事業者の自主的な努力のみをもつてしては、当該特定不況産業に関する安定基本計画に定めるところに従つて設備の処理並びに当該設備の処理と併せて行うべき当該設備の新設、増設及び改造の制限又は禁止(以下「設備の処理等」という。)が実施されないと認められる場合において、当該特定不況産業に属する事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあり、国民経済の健全な発展に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、関係審議会の意見を聴いて、当該特定不況産業に属する事業者に対し、当該設備について、設備の処理等に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。
2 前項の規定による指示は、共同行為をすべき期間及び共同行為の内容を定めて、告示により行う。
3 第三条第六項の規定は、第一項の規定により関係審議会が意見を聴かれた場合に準用する。
(共同行為の内容)
第六条 前条第一項に規定する共同行為の内容は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 安定基本計画に定めるところに従つて設備の処理等を実施するため必要な程度を超えないこと。
二 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。
三 不当に差別的でないこと。
四 当該共同行為の指示を受けた事業者の従業員の地位を不当に害するものでないこと。
(共同行為の指示の変更等)
第七条 主務大臣は、第五条第一項の規定による指示に係る共同行為の内容が前条各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その指示を変更し、又は取り消さなければならない。
2 第五条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(共同行為の届出)
第八条 第五条第一項の規定による指示(前条第一項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)を受けた者は、その指示に従つて共同行為をしたときは、遅滞なく、主務省令で定める事項を主務大臣に届け出なければならない。これを変更し、又は廃止したときも、同様とする。
(資金の確保)
第九条 国は、安定基本計画に定めるところに従つて行われる設備の処理その他の措置に必要な資金の確保に努めるものとする。
(雇用の安定等)
第十条 特定不況産業に属する事業者は、当該特定不況産業に関する安定基本計画に定めるところに従つて設備の処理その他の措置を行うに当たつては、当該措置に係る事業所における労働組合(当該事業所において、労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者)と協議して、その雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、特定不況産業に属する事業者であつて当該特定不況産業に関する安定基本計画に定めるところに従つて設備の処理その他の措置を行うものの雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 国及び都道府県は、前項に規定する事業者に雇用されていた労働者について、職業訓練の実施、就職のあつせんその他その者の職業及び生活の安定に資するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
4 国及び都道府県は、第二項に規定する事業者の関連中小企業者について、その経営の安定に資するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)
第十一条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第五条第一項の規定による指示を受けた者がその指示に従つてする共同行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるときは、この限りでない。
(公正取引委員会との関係)
第十二条 主務大臣は、第五条第一項の規定による指示をしようとするときは、公正取引委員会の同意を得なければならない。
2 主務大臣は、第八条の規定による届出を受理したときは、遅滞なく、その旨を公正取引委員会に通知しなければならない。
3 公正取引委員会は、第五条第一項の規定による指示に係る共同行為の内容が第六条第一号から第三号までの規定に適合するものでなくなつたと認めるときは、主務大臣に対し、第七条第一項の規定による変更又は取消しを求めることができる。
第三章 特定不況産業信用基金
第一節 総則
(目的)
第十三条 特定不況産業信用基金は、特定不況産業における計画的な設備の処理を促進するため、これに必要な資金等の借入れに係る債務を保証して、その資金等の融通を円滑にすることを目的とする。
(法人格)
第十四条 特定不況産業信用基金(以下「基金」という。)は、法人とする。
(数)
第十五条 基金は、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第十六条 基金の資本金は、その設立に際し、日本開発銀行及び日本開発銀行以外の者が出資する額の合計額とする。
2 基金は、必要があるときは、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第十七条 基金は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 基金は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第十八条 日本開発銀行以外の出資者は、その持分を譲渡することができる。
2 日本開発銀行以外の出資者の持分の移転は、譲受者について第五十二条第二項各号に掲げる事項を出資者原簿に記載した後でなければ、基金その他の第三者に対抗することができない。
(名称)
第十九条 基金は、その名称中に特定不況産業信用基金という文字を用いなければならない。
2 基金でない者は、その名称中に特定不況産業信用基金という文字を用いてはならない。
(登記)
第二十条 基金は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第二十一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、基金について準用する。
第二節 設立
(発起人)
第二十二条 基金を設立するには、産業又は金融に関し学識経験を有する者十五人以上が発起人となることを必要とする。
2 発起人は、定款及び事業計画書を作成し、日本開発銀行以外の者に対し基金に対する出資を募集しなければならない。
3 前項の事業計画書に記載すべき事項は、大蔵省令・通商産業省令で定める。
(設立の認可等)
第二十三条 発起人は、前条第二項の規定による募集が終わつたときは、定款及び事業計画書を大蔵大臣及び通商産業大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
第二十四条 大蔵大臣及び通商産業大臣は、設立の認可をしようとするときは、前条の規定による認可の申請が次の各号に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画書の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 定款又は事業計画書に虚偽の記載がないこと。
三 事業の運営が健全に行われ、製造業における計画的な設備の処理の促進に寄与することが確実であると認められること。
2 大蔵大臣及び通商産業大臣は、前項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、発起人が推薦した者のうちから、基金の理事長又は監事となるべき者を指名する。
3 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、基金の設立の時において、それぞれ第三十条第一項の規定により理事長又は監事に任命されたものとする。
(事務の引継ぎ)
第二十五条 前条第二項の規定により理事長となるべき者が指名されたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引ぎ継がなければならない。
2 理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、日本開発銀行及び出資の募集に応じた日本開発銀行以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第二十六条 理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあったときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 基金は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三節 管理
(定款記載事項)
第二十七条 基金の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員に関する事項
六 評議員会に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法
2 基金の定款の変更は、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(役員)
第二十八条 基金に、役員として、理事長一人、理事三人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第二十九条 理事長は、基金を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して基金の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、基金の業務を監査する。
(役員の任命)
第三十条 理事長及び監事は、大蔵大臣及び通商産業大臣が任命する。
2 理事は、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第三十一条 役員の任期は、三年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第三十二条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第三十三条 大蔵大臣及び通商産業大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 大蔵大臣及び通商産業大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第三十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、大蔵大臣及び通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第三十五条 基金と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が基金を代表する。
(評議員会)
第三十六条 基金に、その運営に関する重要事項を審議する機関として、評議員会を置く。
2 評議員会は、評議員二十人以内で組織する。
3 評議員は、産業又は金融に関し学識経験を有する者のうちから、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(職員の任命)
第三十七条 基金の職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第三十八条 基金の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四節 業務
(業務)
第三十九条 基金は、第十三条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 特定不況産業における計画的な設備の処理のため必要な資金及び当該設備の処理に伴つて必要となる資金の借入れに係る債務の保証
二 前号の業務に附帯する業務
2 前項第一号の債務の保証は、特定不況産業に属する事業者が安定基本計画に従つて行う設備の処理のため必要な資金及び当該設備の処理に伴つて必要となる資金並びに当該設備の処理が譲渡により行われる場合において、譲渡を受ける者が支払う補償金の支払に必要な資金(当該資金を負担する者がある場合における当該負担金の拠出に必要な資金を含む。)の借入れについて行う。
3 基金は、第十六条第一項の規定により出資された金額及び同条第二項の認可を受けた場合において出資された金額と基金が負担する保証債務の弁済に充てることを条件として日本開発銀行以外の者から出えんされた金額の合計額に相当する金額(大蔵省令・通商産業省令で定めるところにより、毎事業年度の損益計算上利益又は損失を生じたときは、その利益又は損失の額により増加し又は減少した金額)をもつて第一項第一号の業務の資金に充てるものとする。
(業務の委託)
第四十条 基金は、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、その業務(債務の保証の決定を除く。)の一部を日本開発銀行その他の金融機関に委託することができる。
2 日本開発銀行その他の金融機関は、他の法律の規定にかかわらず、前項の規定による委託を受け、当該業務を行うことができる。
3 第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関の役員又は職員で、当該委託業務に従事するものは、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
(業務方法書)
第四十一条 基金は、業務の開始前に、業務方法書を作成し、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書には、第三十九条第一項第一号の業務の方法その他の大蔵省令・通商産業省令で定める事項を定めておかなければならない。
第五節 財務及び会計
(事業年度)
第四十二条 基金の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第四十三条 基金は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第四十四条 基金は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に大蔵大臣及び通商産業大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 基金は、前項の規定により財務諸表を大蔵大臣及び通商産業大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
(書類の送付)
第四十五条 基金は、第四十三条又は前条第一項に規定する認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る予算、事業計画及び資金計画に関する書類又は財務諸表を出資者に送付しなければならない。
(借入金)
第四十六条 基金は、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第四十七条 基金は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他大蔵大臣及び通商産業大臣の指定する有価証券の保有
二 資金運用部への預託
三 銀行その他大蔵大臣及び通商産業大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金
四 信託業務を行う銀行又は信託会社への金銭信託
(給与及び退職手当の支給の基準)
第四十八条 基金は、役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、大蔵大臣及び通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(省令への委任)
第四十九条 この法律に規定するもののほか、基金の財務及び会計に関し必要な事項は、大蔵省令・通商産業省令で定める。
第六節 監督
(監督)
第五十条 基金は、大蔵大臣及び通商産業大臣が監督する。
2 大蔵大臣及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第五十一条 大蔵大臣又は通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務若しくは財産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に基金の事務所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 大蔵大臣又は通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金から業務の委託を受けた者(以下「受託者」という。)に対し、その委託を受けた業務に関し、報告をさせ、又はその職員に受託者の事務所に立ち入り、その委託を受けた業務に関し業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
3 前二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第七節 補則
(出資者原簿)
第五十二条 基金は、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原簿には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び出資金の払込みの年月日又は出資者の持分の譲受けの年月日
三 出資額又は出資者の持分の譲受け額(以下「出資額」という。)
3 出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第五十三条 基金は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる金額は、その出資額を限度とする。
3 第一項の規定による分配の結果なお残余財産があるときは、その財産は、国庫に帰属する。
4 前三項に規定するもののほか、基金の解散については、別に法律で定める。
(主務大臣との協議)
第五十四条 大蔵大臣及び通商産業大臣は、次の場合には、主務大臣(大蔵大臣及び通商産業大臣を除く。)に協議しなければならない。
一 第四十一条第一項の認可をしようとするとき。
二 第四十三条の認可をしようとするとき。
第四章 雑則
(報告の徴収)
第五十五条 主務大臣は、第一章又は第二章の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定不況産業に属する事業者に対し、その業務又は経理の状況に関し報告をさせることができる。
(都道府県知事の意見の申出)
第五十六条 都道府県知事は、安定基本計画に従つて行われる設備の処理その他の措置が当該都道府県における地域経済に著しい悪影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認められるときは、主務大臣に対し、意見を申し出ることができる。
(連絡及び協力)
第五十七条 主務大臣及び労働大臣は、第二章の規定の施行に当たつては、特定不況産業に係る労働者の雇用に関する事項について、相互に緊密に連絡し、及び協力しなければならない。
(主務大臣等)
第五十八条 この法律における主務大臣は、当該特定不況産業を所管する大臣とする。ただし、第二条第二項から第四項までの規定における主務大臣は、当該製造業を所管する大臣とする。
2 この法律における主務省令は、主務大臣の発する命令とする。
第五章 罰則
第五十九条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金又は受託者の役員又は職員は、十万円以下の罰金に処する。
一 第五十一条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
二 第五十一条第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
第六十条 第五十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。
第六十一条 第八条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の罰金に処する。
第六十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の刑を科する。
第六十三条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金の役員は、十万円以下の過料に処する。
一 第三章の規定により大蔵大臣及び通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第二十条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第三十九条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第四十七条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第五十条第二項の規定による大蔵大臣及び通商産業大臣の命令に違反したとき。
第六十四条 第十九条第二項の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の廃止)
第二条 この法律は、昭和五十八年六月三十日までに廃止するものとする。
(経過措置)
第三条 この法律の施行の際現にその名称中に特定不況産業信用基金という文字を用いている者については、第十九条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第四条 基金の最初の事業年度は、第四十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
第五条 基金の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第四十三条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「基金の成立後遅滞なく」とする。
(基金に対する日本開発銀行の出資)
第六条 日本開発銀行は、日本開発銀行法(昭和二十六年法律第百八号)第十八条第一項の規定にかかわらず、大蔵大臣の認可を受けて、基金に出資することができる。
2 前項の規定により日本開発銀行が出資する場合における日本開発銀行法第十八条の二第二項並びに第五十一条第二号及び第四号の規定の適用については、同法第十八条の二第二項中「出資」とあるのは「出資及び特定不況産業安定臨時措置法(以下「安定法」という。)附則第六条第一項の規定により行う出資」と、同法第五十一条第二号中「場合」とあるのは「場合及び安定法附則第六条第一項の規定により大蔵大臣の認可を受けなければならない場合」と、同条第四号中「規定する業務」とあるのは「規定する業務並びに安定法附則第六条第一項の規定による出資」とする。
(地方税法の一部改正)
第七条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第四号中「林業信用基金」の下に「、特定不況産業信用基金」を加える。
(所得税法の一部改正)
第八条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中特定業種退職金共済組合の項の次に次のように加える。
特定不況産業信用基金
特定不況産業安定臨時措置法(昭和五十三年法律第四十四号)
(法人税法の一部改正)
第九条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中特定業種退職金共済組合の項の次に次のように加える。
特定不況産業信用基金
特定不況産業安定臨時措置法(昭和五十三年法律第四十四号)
(印紙税法の一部改正)
第十条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
別表第三中情報処理振興事業協会等に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第二十八条第一項第四号及び第五号(業務の範囲)の業務に関する文書の項の次に次のように加える。
特定不況産業安定臨時措置法(昭和五十三年法律第四十四号)第三十九条第一項第一号(業務)の業務に関する文書
特定不況産業信用基金
(大蔵省設置法の一部改正)
第十一条 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第十二条第一項第九号中「中央漁業信用基金」の下に「、特定不況産業信用基金」を加える。
(通商産業省設置法の一部改正)
第十二条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第九条第三号の次に次の一号を加える。
三の二 特定不況産業信用基金に関すること。
内閣総理大臣 福田赳夫
大蔵大臣 村山達雄
厚生大臣 小沢辰男
農林大臣 中川一郎
通商産業大臣 河本敏夫
運輸大臣 福永健司