消費者保護基本法
法令番号: 法律第78号
公布年月日: 昭和43年5月30日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

戦後の日本において、政府の役割は国民の福祉と利益の増進が主となっている。消費生活は国民生活の大きな部分を占めるため、消費者利益の擁護は政府の重要な任務である。しかし、市場経済下では生産が必ずしも消費者の希望に即応せず、消費者の利益に合致しない生産や宣伝が行われている。また消費者側も知識不足や所得制約などの問題を抱えている。そこで政府は地方公共団体と協力し、消費者保護のための基本的理念を定める必要がある。本法案は政府の役割を規定する意識革命として位置づけられ、既存の法令や行政の見直し、地方との連携強化、消費者の意識向上などを通じて、消費者保護を実現していく基本法として提案するものである。

参照した発言:
第58回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第6号

審議経過

第58回国会

衆議院
参議院
衆議院
(昭和43年4月25日)
参議院
(昭和43年5月24日)
(昭和43年6月3日)
消費者保護基本法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十三年五月三十日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第七十八号
消費者保護基本法
目次
第一章
総則(第一条―第六条)
第二章
消費者の保護に関する施策等(第七条―第十五条)
第三章
行政機関等(第十六条・第十七条)
第四章
消費者保護会議等(第十八条―第二十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、消費者の利益の擁護及び増進に関し、国、地方公共団体及び事業者の果たすべき責務並びに消費者の果たすべき役割を明らかにするとともにその施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する対策の総合的推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。
(国の責務)
第二条 国は、経済社会の発展に即応して、消費者の保護に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第三条 地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、当該地域の社会的、経済的状況に応じた消費者の保護に関する施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第四条 事業者は、その供給する商品及び役務について、危害の防止、適正な計量及び表示の実施等必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する消費者の保護に関する施策に協力する責務を有する。
2 事業者は、常に、その供給する商品及び役務について、品質その他の内容の向上及び消費者からの苦情の適切な処理に努めなければならない。
(消費者の役割)
第五条 消費者は、経済社会の発展に即応して、みずからすすんで消費生活に関する必要な知識を修得するとともに、自主的かつ合理的に行動するように努めることによつて、消費生活の安定及び向上に積極的な役割を果たすものとする。
(法制上の措置等)
第六条 国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行なわなければならない。
2 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講じなければならない。
第二章 消費者の保護に関する施策等
(危害の防止)
第七条 国は、国民の消費生活において商品及び役務が国民の生命、身体及び財産に対して及ぼす危害を防止するため、商品及び役務について、必要な危害防止の基準を整備し、その確保を図る等必要な施策を講ずるものとする。
(計量の適正化)
第八条 国は、消費者が事業者との間の取引に際し計量につき不利益をこうむることがないようにするため、商品及び役務について適正な計量の実施の確保を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(規格の適正化)
第九条 国は、商品の品質の改善及び国民の消費生活の合理化に寄与するため、商品及び役務について、適正な規格を整備し、その普及を図る等必要な施策を講ずるものとする。
2 前項の規定による規格の整備は、技術の進歩、消費生活の向上等に応じて行なうものとする。
(表示の適正化等)
第十条 国は、消費者が商品の購入若しくは使用又は役務の利用に際しその選択等を誤ることがないようにするため、商品及び役務について、品質その他の内容に関する表示制度を整備し、虚偽又は誇大な表示を規制する等必要な施策を講ずるものとする。
(公正自由な競争の確保等)
第十一条 国は、商品及び役務の価格等について公正かつ自由な競争を不当に制限する行為を規制するために必要な施策を講ずるとともに、国民の消費生活において重要度の高い商品及び役務の価格等であつてその形成につき決定、認可その他の国の措置が必要とされるものについては、これらの措置を講ずるにあたり、消費者に与える影響を十分に考慮するよう努めるものとする。
(啓発活動及び教育の推進)
第十二条 国は、消費者が自主性をもつて健全な消費生活を営むことができるようにするため、商品及び役務に関する知識の普及及び情報の提供、生活設計に関する知識の普及等消費者に対する啓発活動を推進するとともに、消費生活に関する教育を充実する等必要な施策を講ずるものとする。
(意見の反映)
第十三条 国は、消費者の保護に関する適正な施策の策定及び実施に資するため、消費者の意見を国の施策に反映させるための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとする。
(試験、検査等の施設の整備等)
第十四条 国は、消費者の保護に関する施策の実効を確保するため、商品の試験、検査等を行なう施設を整備するとともに、必要に応じて試験、検査等の結果を公表する等必要な施策を講ずるものとする。
(苦情処理体制の整備等)
第十五条 事業者は、消費者との間の取引に関して生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努めなければならない。
2 市町村(特別区を含む。)は、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情の処理のあつせん等に努めなければならない。
3 国及び都道府県は、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
第三章 行政機関等
(行政組織の整備及び行政運営の改善)
第十六条 国及び地方公共団体は、消費者の保護に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立つた行政組織の整備及び行政運営の改善に努めなければならない。
(消費者の組織化)
第十七条 国は、消費者がその消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な組織活動が促進されるよう必要な施策を講ずるものとする。
第四章 消費者保護会議等
(消費者保護会議)
第十八条 総理府に、附属機関として、消費者保護会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、消費者の保護に関する基本的な施策の企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進する事務をつかさどる。
第十九条 会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。
3 委員は、関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する。
4 会議に、幹事を置く。
5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7 会議の庶務は、経済企画庁国民生活局において処理する。
8 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(国民生活審議会)
第二十条 消費者の保護に関する基本的事項の調査審議については、この法律によるほか、経済企画庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十三号)第十四条の定めるところにより、国民生活審議会において行なうものとする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表中中央通学路及び踏切道交通安全対策協議会の項の次に次のように加える。
消費者保護会議
消費者保護基本法(昭和四十三年法律第七十八号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。
内閣総理大臣 佐藤栄作