入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律
法令番号: 法律第126号
公布年月日: 昭和41年7月9日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

全国の民有林野面積の13%を占める入会林野等は、旧来の慣習に制約された権利関係により利用が低位にとどまり、農林業経営の発展や農山村民の所得向上に十分寄与できていない。その開発を妨げる最大の要因は入会権等の権利の存在であり、これを近代的な所有権や地上権等に転換することが強く求められている。しかし、権利関係の近代化には煩雑な手続きと多額の経費が必要で、農山村民が独力で実行することは極めて困難である。そこで、農山村民が自主的かつ円満に近代化を実現できるよう、必要な手続きを定め、登記手続きの簡素化、租税の減免、経費の補助等の援助措置を講ずることとした。

参照した発言:
第51回国会 衆議院 本会議 第30号

審議経過

第51回国会

衆議院
(昭和41年3月22日)
(昭和41年4月6日)
(昭和41年4月12日)
(昭和41年4月13日)
(昭和41年4月19日)
(昭和41年4月20日)
参議院
(昭和41年4月20日)
(昭和41年4月22日)
衆議院
(昭和41年5月27日)
(昭和41年6月9日)
(昭和41年6月10日)
(昭和41年6月20日)
(昭和41年6月21日)
(昭和41年6月21日)
参議院
(昭和41年6月23日)
(昭和41年6月24日)
(昭和41年6月27日)
(昭和41年6月27日)
(昭和41年6月27日)
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和四十一年七月九日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百二十六号
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
入会林野整備(第三条―第十八条)
第三章
旧慣使用林野整備(第十九条―第二十四条)
第四章
雑則(第二十五条―第二十九条)
第五章
罰則(第三十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、入会林野又は旧慣使用林野である土地の農林業上の利用を増進するため、これらの土地に係る権利関係の近代化を助長するための措置を定め、もつて農林業経営の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「入会権」とは、民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十三条及び第二百九十四条に規定する入会権をいい、「入会林野」とは、入会権の目的となつている土地で主として木竹の生育に供され又は採草若しくは家畜の放牧の目的に供されるものをいい、「入会権者」とは、入会林野につき入会権に基づいて使用又は収益をする者をいう。
2 この法律において「入会林野整備」とは、入会林野である土地について、その農林業上の利用を増進するため、入会権を消滅させること及びこれに伴い入会権以外の権利を設定し、移転し、又は消滅させることをいう。
3 この法律において「旧慣使用権」とは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十八条の六第一項に規定する権利をいい、「旧慣使用林野」とは、旧慣使用権の目的となつている土地で主として木竹の生育に供され又は採草若しくは家畜の放牧の目的に供されるものをいい、「旧慣使用権者」とは、旧慣使用林野につき旧慣使用権を有する者をいう。
4 この法律において「旧慣使用林野整備」とは、旧慣使用林野である土地について、その農林業上の利用を増進するため、旧慣使用権を消滅させること及びこれに伴い旧慣使用権以外の権利を設定し、又は移転することをいう。
第二章 入会林野整備
(入会林野整備の実施手続)
第三条 入会林野整備は、その対象とする入会林野に係るすべての入会権者が、その全員の合意によつて、入会林野整備に要する経費の分担の方法、代表者の選任の方法、代表権の範囲、事務所の所在地等農林省令で定める事項を内容とする規約及び入会林野整備に関する計画を定め、その代表者によつて、当該計画書を当該入会林野の所在地を管轄する都道府県知事に提出し、その認可を受けて、行なうことができる。
(入会林野整備計画の内容)
第四条 前条の入会林野整備に関する計画(以下「入会林野整備計画」という。)においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 その対象とする入会林野たる土地の所在、地番、地目及び面積
二 前号の入会林野に係るすべての入会権の内容並びに当該入会林野に係るすべての入会権者の氏名及び住所
三 第一号の入会林野につき入会権を消滅させることに伴い所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得させるべき各入会権者の氏名及び住所、当該各入会権者に取得させるべき権利の種類、当該権利に係る土地の所在、地番、地目及び面積並びに当該権利が所有権以外の権利である場合には、その存続期間、対価その他の条件
四 第一号の入会林野につき入会権を消滅させることに伴い、前号の各入会権者に所有権が移転されるべき土地又は同号の権利が設定されるべき土地の所有者の氏名若しくは名称及び住所並びに消滅させるべき権利がある場合には、その種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名若しくは名称及び住所
五 第一号の入会林野について存する所有権及び入会権以外の権利で前号の消滅させるべき権利でないもの(第三者に対抗することができる権利及びこれに設定されている権利を除く。)の種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名又は名称及び住所
六 第一号の入会林野につき入会権を消滅させた後における当該土地の利用に関する計画
七 第一号の入会林野につき入会権を消滅させること及びこれに伴い第三号の各入会権者に所有権が移転され若しくは同号の権利が設定され又は入会権以外の権利が消滅することにより、金銭の支払又は徴収をする必要がある場合には、その相手方の氏名又は名称、金額及び支払又は徴収の時期、方法その他の条件
八 その他農林省令で定める事項
2 前項第五号に掲げる事項に関して前条の入会権者が過失がなくて知ることができないものについては、入会林野整備計画において定めることを要しない。
3 第一項第六号に掲げる土地の利用に関する計画においては、同条第三号の権利を取得させるべき入会権者の全部又は一部が当該権利を取得した後にその取得に係る権利の全部又は一部を生産森林組合(森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第七十九条第一項第二号に掲げる事業を行なう森林組合をいう。以下同じ。)又は農業生産法人(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第七項に規定する農業生産法人をいう。以下同じ。)に出資する計画(以下「出資計画」という。)がある場合には、その出資計画を当該土地の利用に関する計画の一部として定めなければならない。
4 入会林野整備計画においては、第一項各号に掲げる事項以外の事項を定めてはならない。
5 処分の制限がある入会林野で農林省令で定めるもの並びに地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている入会林野で当該権利が差押、仮差押又は仮処分の目的となつているものについては、入会林野整備計画を定めることができない。
(関係権利者の同意及び認可の申請)
第五条 第三条の認可を申請しようとする入会権者は、その代表者によつて、農林省令で定めるところにより、当該認可の申請に係る入会林野整備計画において定められた事項のうち前条第一項第四号及び第五号に掲げる者に係る部分につき、それぞれ、それらの者の同意を得なければならない。
2 前項の入会権者の代表者は、同項に規定する者の同意を求める場合には、それらの者に規約及び代表者の資格を証する書面を提示しなければならない。
3 第三条の認可の申請は、農林省令で定めるところにより、申請書に、入会林野整備計画書のほか次に掲げる書類を添附してしなければならない。ただし、第五号に揚げる意見書は、当該入会林野の所在する市町村が農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十八号)第三条第一項ただし書又は第五項の規定により農業委員会を置かない市町村である場合には、添附することを要しない。
一 規約
二 入会権に係る慣行を記載した書面
三 第一項に規定する者の同意があつたことを証する書面
四 入会林野の所在地を管轄する市町村長の意見書
五 入会林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地(農地法第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地をいう。以下同じ。)である場合には、農業委員会の意見書
六 入会林野整備計画に係る土地の利用について法令の規定による制限がある場合には、当該法令の施行について権限を有する行政機関の意見書
七 その他農林省令で定める書類
4 前項第四号から第六号までに掲げる意見書は、第一項の入会権者の代表者が意見を求めた日から四十日を経過しても、これを得ることができなかつたときは、添附することを要しない。この場合には、その意見書を得ることができなかつた事情を明らかにした書面を添附しなければならない。
(審査及び公告等)
第六条 都道府県知事は、第三条の認可の申請があつたときは、当該申請に係る入会林野整備計画につき詳細な審査を行なつてその適否を決定し、その旨を当該申請をした入会権者の代表者(以下「申請人代表者」という。)に通知しなければならない。
2 都道府県知事は、第三条の認可の申請について、次の各号の一に該当する場合を除き、前項の規定により適当とする旨の決定をしなければならない。
一 申請の手続又は入会林野整備計画の決定の手続若しくは内容が、法令又は法令に基づいてする行政庁の処分に違反しているとき。
二 入会林野整備計画の内容が、当該入会林野整備計画に係る土地の農林業上の利用を増進することが確実であると認められるものでないとき。
三 入会林野整備計画の内容が、当該入会林野についての入会権に係る慣行その他当該入会林野について存する権利関係からみて、一部の者に対し権利の集中その他の不当な利益をもたらすものであると認められるとき。
四 入会林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合には、当該入会林野整備計画において定める当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転の内容が、農地法第三条第二項各号の一に該当するものであるとき(同項第五号に掲げる場合であつて同項ただし書の政令で定める相当の事由があるとき、及び同法第五条第一項本文に規定する場合に該当するときを除く。)。
3 前条第四項の場合において、第一項の規定により適否の決定をしようとするときは、都道府県知事は、当該市町村長、農業委員会又は行政機関の意見をきかなければならない。
4 都道府県知事は、第一項の規定により第三条の認可の申請を適当とする旨の決定をしたときは、遅滞なくその旨を公告し、かつ、三十日以上の相当の期間を定めてその決定に係る入会林野整備計画書の写しを公衆の縦覧に供しなければならない。
(異議の申出等)
第七条 当該入会林野整備計画に関係のある土地又はその土地に定着する物件の所有者その他これらの土地又は物件に関し権利を有する者は、前条第四項の規定による公告に係る決定に対して異議があるときは、同項に規定する縦覧期間の満了する日の翌日から起算して三十日を経過する日までに、都道府県知事にこれを申し出ることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による異議の申出を受けた場合には、当該異議の申出が同項に規定する期日後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、及び当該異議の申出が理由がないときを除き、当該申請人代表者に対し、相当の期間を定めてその期間内に当該異議の申出をした者(以下「異議申出人」という。)との協議をすべき旨を命じなければならない。
3 前項の規定により協議をすべき旨を命ぜられた場合には、当該申請人代表者は、次条第一項の規定による調停の申請をする場合を除き、前項の期間の満了する日の翌日から起算して十日を経過する日までに、農林省令で定めるところにより、その協議の結果を都道府県知事に報告しなければならない。
4 行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)中処分についての異議申立てに関する規定(同法第四十五条、同法第四十七条第三項並びに同法第四十八条において準用する同法第十四条第一項ただし書、第二項及び第三項、同法第三十七条並びに同法第四十条第六項を除く。)は、第一項の規定による異議の申出について準用する。
5 第二項の規定による処分又は前項において準用する行政不服審査法第四十七条第一項若しくは第二項の規定による決定については、同法による不服申立てをすることができない。
(調停)
第八条 前条第二項の期間の満了する日までに同項の協議をすることができなかつたとき、又はその協議がととのわなかつたときは、当該申請人代表者は、その満了する日の翌日から起算して十日を経過する日までに、農林省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、必要な調停を行なうべき旨の申請をすることができる。
2 都道府県知事は、前項の申請があつた場合には、すみやかに調停を行なうものとする。
3 都道府県知事は、前項の調停を行なう場合には、当事者の意見をきいて調停案を作成しなければならない。
4 都道府県知事は、前項の規定により調停案を作成したときは、これを当事者に示してその受諾を勧告するものとする。
(入会林野整備計画等の変更)
第九条 都道府県知事が第六条第一項の規定により第三条の認可の申請を適当とする旨の決定をした後において当該入会林野に係る入会権者についての変更(入会権者の死亡を除く。以下この項において「入会権者変更」という。)があつたとき、又は第七条第二項の協議がととのい若しくは前条第二項の調停が成立したことにより入会林野整備計画の変更を必要とするときは、当該入会林野整備計画につき第三条の認可を申請した入会権者(入会権者変更があつた場合には、その変更後のすべての入会権者。以下この条において同じ。)は、その申請人代表者によつて、都道府県知事に当該入会林野整備計画の変更の申請をしなければならない。
2 前項の場合を除くほか、第六条第一項の規定により適当とする旨の決定があつた第三条の認可の申請に係る入会林野整備計画の変更を必要とする場合には、当該入会林野整備計画につき同条の認可を申請した入会権者は、その申請人代表者によつて、都道府県知事に当該変更の申請をすることができる。
3 前二項の規定により変更の申請をしようとする場合において、当該変更に係る事項のうちに第四条第一項第四号又は第五号に掲げる者に係る部分があるときは、当該変更の申請をしようとする入会権者は、その申請人代表者によつて、農林省令で定めるところにより、当該部分につき、それぞれ、それらの者の同意を得なければならない。この場合には、第五条第二項の規定を準用する。
4 第五条第三項(同項第一号及び第二号を除く。)及び第四項並びに第六条第一項から第三項までの規定は、第一項又は第二項の規定による変更の申請について準用する。この場合において、第五条第三項第三号中「第一項」とあるのは「第九条第三項」と、同条第四項中「第一項の入会権者の代表者」とあり、第六条第一項中「当該申請をした入会権者の代表者(以下「申請人代表者」という。)」とあるのは「当該申請人代表者」と読み替えるものとする。
5 都道府県知事が前項において準用する第六条第一項の規定により第一項又は第二項の規定による変更の申請を適当とする旨の決定をした場合には、当該変更に係る事項についてさらに第六条第四項及び第七条からこの条までに規定する手続を行なうべきものとする。
6 第三条の認可を申請した入会権者は、規約又は代表者を変更したときは、遅滞なく、その代表者によつて、農林省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(申請の却下)
第十条 都道府県知事は、第七条第二項の規定により協議をすべき旨を命じた場合(前条第五項の規定による場合を含む。)において、第七条第三項に規定する期日までに同項の規定による報告がなかつたとき、同条第二項の協議をすることができなかつた旨若しくはその協議がととのわなかつた旨の同条第三項の規定による報告があつたとき、又は第八条第二項の調停が成立しなかつたときは、第六条第一項の規定により適当とする旨の決定をした第三条の認可の申請を却下しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による却下をしたときは、その旨を当該異議申出人に通知しなければならない。
3 第一項の規定による却下については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
(認可及び金銭の供託)
第十一条 都道府県知事は、第七条第一項の規定による異議の申出(第九条第五項の規定によるものを含む。)がないとき、又は当該異議の申出があつた場合において、そのすべてについて、第七条第四項において準用する行政不服審査法第四十七条第一項若しくは第二項の規定による決定をしたとき、若しくは第七条第二項の協議がととのつた旨の同条第三項の規定による報告があり若しくは第八条第二項の調停が成立したとき(当該協議がととのい又は当該調停が成立したことにより入会林野整備計画の変更を必要とするときを除く。)は、第三条の認可の申請に係る入会林野整備計画(第九条第一項又は第二項の規定による変更の申請があつた場合には、当該申請に係る変更後の入会林野整備計画。以下この条において同じ。)の認可をしなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により認可をしようとする場合において、当該認可をしようとする第三条の認可の申請に係る入会林野整備計画において入会権者が入会権者以外の者に対し当該認可につき次項の規定による公告のある日の翌日までに金銭を支払うべきこととされているときは、当該申請人代表者に、当該入会権者以外の者ごとにその支払うべきこととされている金銭(当該入会林野整備計画において当該入会権者以外の者が入会権者に対し当該認可につき同項の規定による公告のある日の翌日までに支払うべきこととされている金銭がある場合には、その額を控除した額の金銭)の供託をさせなければならない。ただし、当該申請人代表者が当該入会権者以外の者から供託をしなくてもよい旨の申出があつたことを都道府県知事に届け出た場合は、この限りでない。
3 都道府県知事は、第一項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告し、かつ、当該認可に係る入会林野整備計画を記載した書面を管轄登記所に送付しなければならない。
4 第一項の規定による認可については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
5 第三条の認可の申請に係る入会林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合において、当該入会林野整備計画につき第一項の規定による認可があつたときは、当該入会林野整備計画において定められている当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転については、農地法第三条第一項又は第五条第一項の許可があつたものとみなす。
(入会林野整備の効果)
第十二条 前条第三項の規定による公告があつたときは、その公告があつた入会林野整備計画の定めるところにより、その公告があつた日限りすべての入会権及びその他の権利が消滅し、その公告があつた日の翌日において、所有権が移転し、又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定される。
(金銭の支払及び徴収等)
第十三条 第十一条第三項の規定による公告があつたときは、その公告があつた入会林野整備計画につき同条第一項の規定による認可を受けた者は、その代表者によつて、当該入会林野整備計画の定めるところに従い、金銭(同条第二項の規定により申請人代表者によつて供託がされた金銭を除く。)を支払わなければならない。
2 前項の場合には、同項に規定する認可を受けた者は、その代表者によつて、当該入会林野整備計画の定めるところに従い、金銭(第十一条第二項の規定により供託をするため申請人代表者によつて徴収された金銭を除く。)を徴収することができる。
3 第一項の場合には、第十一条第二項本文に規定する入会権者以外の者は、当該入会林野整備計画の定めるところに従い、同項の規定により供託がされた金銭に対してその権利を行なうことができる。
(登記)
第十四条 都道府県知事は、第十一条第三項の規定による公告をした場合において必要があるときは、所有者に代わつて、その公告をした入会林野整備計画に関係のある土地の分割又は合併の手続をすることができる。
2 都道府県知事は、第十一条第三項の規定による公告をしたときは、遅滞なくその公告をした入会林野整備計画に係る土地についての必要な登記を嘱託しなければならない。
3 第十二条の規定により所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得した者からその取得に係る権利の全部又は一部の出資(その者が、第十一条第三項の規定による公告があつた入会林野整備計画において定められている出資計画を実施するために行なうものに限る。)を受けた生産森林組合又は農業生産法人が、第十一条第三項の規定による公告があつた日の翌日から起算して二十日を経過する日までに、農林省令で定めるところにより、当該出資をした者の氏名及び住所、当該出資の目的たる権利の種類、当該権利に係る土地の所在、地番、地目及び面積並びに当該権利が所有権以外の権利である場合には、その存続期間、対価その他の条件を都道府県知事に届け出たときは、都道府県知事は、遅滞なく当該法人のために当該権利の取得に関し必要な登記を嘱託しなければならない。
4 第十一条第三項の規定による公告があつた後においては、その公告があつた入会林野整備計画に係る土地に関しては、前二項の規定による登記がされるまでは、他の登記をすることができない。ただし、登記の申請人が確定日付のある書類によりその公告前に登記原因が生じたことを証明した場合は、この限りでない。
(入会権者の地位の承継)
第十五条 第十一条第三項の規定による公告があつた場合において、その公告があつた日までに死亡した入会権者でその公告があつた入会林野整備計画において権利を取得し又は金銭の支払をし若しくはこれを受けるべきこととされていたものがあるときは、その者の地位は、その相続人が承継する。
(処分、手続等の効力)
第十六条 第三条の認可を申請しようとする入会権者の代表者、申請人代表者若しくは第十一条第一項の規定による認可を受けた者の代表者の変更があつた場合又は第三条の認可の申請があつた日以後において入会林野整備計画に関係のある土地若しくはその土地に定着する物件の所有者その他これらの土地若しくは物件に関し権利を有する者の変更があつた場合には、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により又はこの法律の規定に基づいてする行政庁の処分により従前のこれらの者がした手続その他の行為は、新たにこれらの者となつた者がしたものとみなし、従前のこれらの者に対してした処分、手続その他の行為は、新たにこれらの者となつた者に対してしたものとみなす。
(都道府県及び市町村の援助)
第十七条 都道府県及び市町村は、この章の規定による入会林野整備の円滑な実施を確保するため、当該入会林野整備を行なおうとする入会権者に対して、規約又は入会林野整備計画の作成又は変更に関し、助言、指導その他の援助を行なうように努めるものとする。
(数都府県にわたる事項の処理)
第十八条 入会林野整備の対象とする入会林野が二以上の都府県にわたる場合には、この章において都道府県知事の権限に属させた事項は、農林大臣が処理する。
第三章 旧慣使用林野整備
(旧慣使用林野整備の実施手続)
第十九条 旧慣使用林野整備は、市町村長が、当該市町村又は当該市町村にある財産区の所有に属する旧慣使用林野につき、その農林業上の利用を増進するための他の事業で国若しくは都道府県の行なうもの又はこれらの補助に係るものの効率的な実施を促進するため、あらかじめ旧慣使用林野整備を行なうことにつき当該市町村の議会(当該旧慣使用林野が、議会又は総会が設けられている財産区の所有に属する場合には、当該財産区の議会又は総会。以下同じ。)の議決を経て、旧慣使用林野整備に関する計画を定め、当該計画書を都道府県知事に提出し、その認可を受けて、行なうことができる。
(旧慣行使用林野整備計画の決定手続及び内容)
第二十条 市町村長は、前条の旧慣行使用林野整備に関する計画(以下「旧慣使用林野整備計画」という。)を定めるには、その対象とする旧慣使用林野に係るすベての旧慣使用権者の意見をきくとともに、それらの者が当該旧慣使用林野を旧慣使用権以外の権利の目的としていないことの確認を得なければならない。
2 旧慣使用林野で所有権及び旧慣使用権以外の権利(電線路施設用地に係る権利その他の権利で農林省令で定めるものを除く。)の目的となつているもの並びに処分の制限がある旧慣使用林野で農林省令で定めるものについては、旧慣使用林野整備計画を定めることができない。
3 旧慣使用林野整備計画においては、前項の農林省令で定める権利の消滅又は当該権利の目的となつている土地についての権利の設定若しくは移転を内容とする事項を定めてはならない。
4 第四条第一項(同項第四号及び第五号を除く。)、第三項及び第四項の規定は、旧慣使用林野整備計画について準用する。この場合において、同条第一項第七号中「若しくは同号の権利が設定され又は入会権以外の権利が消滅する」とあるのは「又は同号の権利が設定される」と、同条第四項中「第一項各号」とあるのは「第二十条第四項において準用する第四条第一項各号(同項第四号及び第五号を除く。)」と読み替えるものとする。
(議会の議決等及び認可の申請)
第二十一条 市町村長は、第十九条の認可を申請しようとする場合には、当該認可の申請に係る旧慣使用林野整備計画につき当該市町村の議会の議決を経るとともに、当該旧慣使用林野整備計画において定められた事項のうち所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得させるべき旧慣使用権者に係る部分につき、それぞれ、それらの者の同意を得なければならない。
2 第五条第三項(同項第一号を除く。)及び第四項の規定は、第十九条の認可の申請について準用する。この場合において、第五条第三項第二号中「入会権に係る慣行」とあるのは「旧慣」と、「書面」とあるのは「書面並びに旧慣使用林野の一部が第二十条第二項の農林省令で定める権利の目的となつている土地である場合には、当該権利の種類及び内容を記載した書面」と、同項第三号中「第一項に規定する者」とあるのは「第二十条第一項の意見の内容を記載した書面及び同項の確認を得たことを証する書面並びに第二十一条第一項の当該市町村の議会の議決があつたことを証する書面及び同項に規定する旧慣使用権者」と、同項第四号中「入会林野の所在地」とあるのは「旧慣使用林野の全部又は一部が当該市町村の区域外にある場合には、当該旧慣使用林野の全部又は一部の所在地」と、同条第四項中「第一項の入会権者の代表者」とあるのは「第十九条の認可を申請しようとする市町村長」と読み替えるものとする。
(認可及び金銭の供託等)
第二十二条 都道府県知事は、第十九条の認可の申請があつたときは、当該申請が次の各号の一に該当する場合を除き、当該申請に係る旧慣使用林野整備計画の認可をしなければならない。
一 申請の手続又は旧慣使用林野整備計画の決定の手続若しくは内容が、法令又は法令に基づいてする行政庁の処分に違反しているとき。
二 旧慣使用林野整備計画の内容が、当該旧慣使用林野整備計画に係る土地の農林業上の利用を増進するための他の事業で国若しくは都道府県の行なうもの又はこれらの補助に係るものの効率的な実施を促進することが確実であると認められるものでないとき。
三 旧慣使用林野整備計画の内容が、当該旧慣使用林野についての旧慣からみて、一部の者に対し権利の集中その他の不当な利益をもたらすものであると認められるとき。
四 旧慣使用林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合には、当該旧慣使用林野整備計画において定める当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転の内容が、農地法第三条第二項各号の一に該当するものであるとき(同項第五号に掲げる場合であつて同項ただし書の政令で定める相当の事由があるとき、及び同法第五条第一項本文に規定する場合に該当するときを除く。)。
2 前条第二項において準用する第五条第四項の場合において、前項の規定により認可をしようとするときは、都道府県知事は、当該市町村長、農業委員会又は行政機関の意見をきかなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定により認可をしようとする場合において、当該認可をしようとする旧慣使用林野整備計画において旧慣使用権者が市町村又は財産区に対し当該認可につき次項の規定による公告のある日の翌日までに金銭を支払うべきこととされているときは、当該旧慣使用林野整備計画につき第十九条の認可を申請した市町村長に当該認可をしようとする旨の通知をするものとし、当該市町村長は、当該通知を受けたときは、遅滞なく、当該旧慣使用権者にその支払うべきこととされている金銭の供託をさせ、又は当該金銭の支払を確実に行なわせるためのその他の措置を講じなければならない。
4 都道府県知事は、第一項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告し、かつ、当該認可に係る旧慣使用林野整備計画を記載した書面を管轄登記所に送付しなければならない。
5 旧慣使用林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合において、当該旧慣使用林野整備計画につき第一項の規定による認可があつたときは、当該旧慣使用林野整備計画において定められている当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転については、農地法第三条第一項又は第五条第一項の許可があつたものとみなす。
(旧慣使用林野整備の効果等)
第二十三条 前条第四項の規定による公告があつたときは、その公告があつた旧慣使用林野整備計画の定めるところにより、その公告があつた日限りすべての旧慣使用権が消滅し、その公告があつた日の翌日において、所有権が移転し、又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定される。
2 第十三条第三項、第十四条及び第十五条の規定は、前条第四項の規定により旧慣使用林野整備計画につき認可の公告があつた場合に準用する。この場合において、第十三条第三項中「第十一条第二項本文に規定する入会権者以外の者」とあるのは「第二十二条第三項の規定により金銭の供託をさせた市町村長」と、第十四条第三項中「第十二条」とあるのは「第二十三条第一項」と、第十五条中「入会権者」とあるのは「旧慣使用権者」と読み替えるものとする。
(地方自治法の適用除外等)
第二十四条 この章の規定による旧慣使用林野整備については、地方自治法第二百三十七条第二項及び第二百三十八条の六第一項(第二百九十四条第一項においてこれらの規定によることとされる場合を含む。)並びに第二百九十六条の五第二項の規定は、適用しない。
2 旧慣使用林野整備計画について当該市町村の議会が第二十一条第一項の議決をしたときは、当該旧慣使用林野整備計画において定められている旧慣使用林野に係る権利の設定又は移転については、さらに地方自治法第九十六条第一項第六号及び第七号に掲げる事項についての同項の規定による議決(同法第二百九十五条の規定による議決を含む。)をすることを要しない。
第四章 雑則
(測量、実地調査及び簿書の閲覧等)
第二十五条 都道府県又は市町村の職員は第二章の規定による入会林野整備又は前章の規定による旧慣使用林野整備に関し、当該入会林野整備を行なおうとする入会権者は当該入会林野整備に関し、土地又は土地に定着する物件の測量又は実地調査をするため必要があるときは、その必要の限度内において、他人の土地に立ち入り、又は測量若しくは実地調査の支障となる立木竹を伐採することができる。
2 前項の入会権者が同項の行為をするには、あらかじめ、当該土地の所在地を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。
3 市町村長は、前項の許可の申請があつたときは、当該土地の占有者及び立木竹の所有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。
4 都道府県若しくは市町村の職員又は第二項の許可を受けた入会権者は、第一項の行為をする場合には、あらかじめ、当該土地の占有者又は立木竹の所有者に通知しなければならない。
5 前二項の規定による通知をすることができないか、又は困難である場合には、農林省令で定めるところにより、公告をもつて通知に代えることができる。
6 第一項の場合には、都道府県又は市町村の職員はその身分を示す証明書を、第二項の許可を受けた入会権者はその許可を受けたことを証する書面を携帯し、当該土地の占有者又は立木竹の所有者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
7 第一項の場合には、同項の都道府県若しくは市町村又は入会権者は、同項の行為によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
8 都道府県又は市町村の職員は第一項の入会林野整備又は旧慣使用林野整備に関し、当該入会林野整備を行なおうとする入会権者の代表者は当該入会林野整備に関し、当該入会林野整備又は旧慣使用林野整備に関係のある土地の所在地を管轄する登記所に対し、又はその他の官公署の長に対し、無償で必要な簿書の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付(以下「簿書の閲覧等」という。)を求めることができる。
9 第一項及び第四項から前項までの規定は、農林大臣が第十八条の規定による処理をする場合において国の職員が行なう土地若しくは土地に定着する物件の測量若しくは実施調査又は簿書の閲覧等の請求について準用する。この場合において、第七項中「同項の都道府県若しくは市町村又は入会権者」とあるのは、「国」と読み替えるものとする。
(権利取得者の義務)
第二十六条 第十二条又は第二十三条第一項の規定により所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得した者は、当該権利の目的たる土地の農林業上の利用を効率的に行なうように努めなければならない。
(登記の特例)
第二十七条 第十一条第三項の規定による公告があつた入会林野整備計画及び第二十二条第四項の規定による公告があつた旧慣使用林野整備計画に係る土地の登記については、政令で不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の特例を定めることができる。
(課税の特例)
第二十八条 第十二条又は第二十三条第一項の規定により所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得した者の当該権利の取得による経済的な収益については、租税を課さない。
(国の補助)
第二十九条 国は、政令で定めるところにより、この法律の規定により都道府県知事が行なうべき事務に要する経費の二分の一を補助する。
第五章 罰則
(罰則)
第三十条 第二十五条第一項の規定により都道府県の職員が行なう立入り又は立木竹の伐採(同条第九項において準用する同条第一項の規定により国の職員が行なうこれらの行為を含む。)を拒み、又は妨げた者は、三万円以下の罰金に処する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 第十一条第三項の規定による公告があつた入会林野整備計画又は第二十二条第四項の規定による公告があつた旧慣使用林野整備計画に係る土地に関して不動産登記法の一部を改正する等の法律(昭和三十五年法律第十四号)附則第三条第三号の規定により同法第二条の規定による廃止前の土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)の規定が適用される場合において、第二十七条中「登記」とあるのは「登記及び登録」と、「不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)」とあるのは「不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)及び不動産登記法の一部を改正する等の法律(昭和三十五年法律第十四号)第二条の規定による廃止前の土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)」とする。
3 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第九号の次に次の一号を加える。
九ノ二 入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律第十四条第二項(同法第二十三条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル土地ニ関スル登記
4 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
附則に次の一項を加える。
(入会林野整備等による土地の取得に対する不動産取得税の課税標準の特例)
95 入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律(昭和四十一年法律第百二十六号)第十二条又は第二十三条第一項の規定により土地を取得した場合における当該土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、当該取得が昭和四十四年三月三十一日までに行なわれたときに限り、当該土地の価格に当該土地を取得した時における当該土地の通常の売買価額に対する当該土地の取得に係る支払額(同法第十一条第三項の規定による公告があつた入会林野整備計画又は同法第二十二条第四項の規定による公告があつた旧慣使用林野整備計画において当該土地を取得した者がその取得により支払うべきこととされている金銭の額のうち、当該土地の取得の対価に対応する額として政令で定める額に相当する額に限る。)の割合を乗じて得た額によるものとする。
5 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十八条の二を第七十八条の三とし、第七十八条の次に次の一条を加える。
(入会林野整備等に係る土地等の現物出資による所有権等の取得登記の税率の軽減)
第七十八条の二 森林法第七十九条第一項第二号に掲げる事業を行なう森林組合又は農地法第二条第七項に規定する農業生産法人が、昭和四十一年七月一日から昭和四十四年三月三十一日までの間に、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律(昭和四十一年法律第百二十六号)第十二条又は第二十三条第一項の規定により土地の所有権、地上権、永小作権又は賃借権を取得した者からその取得に係る権利の全部又は一部の出資を受けた場合には、当該出資による所有権、地上権、永小作権又は賃借権の取得の登記については、その登記が同法第十四条第三項(同法第二十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定により行なわれるときに限り、その登記の登録税の額は、登録税法第二条第一項第三号及び第六号の規定にかかわらず、当該土地の価格の千分の六に相当する金額とする。ただし、当該地上権、永小作権又は賃借権の取得の登記の登録税にあつては、同号の規定により算出した金額が本文の規定により算出した金額に満たない場合には、この限りでない。
法務大臣 石井光次郎
大蔵大臣 福田赳夫
農林大臣 坂田英一
自治大臣 永山忠則
内閣総理大臣 佐藤栄作