(目的)
第一条 この法律は、保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「保険会社等」とは、保険業法(昭和十四年法律第四十一号)第一条第一項若しくは外国保険事業者に関する法律(昭和二十四年法律第百八十四号)第三条第一項の規定により損害保険事業を営むことにつき免許を受けた者又は他の法律に基づき火災に係る共済事業を行なう法人で大蔵大臣の指定するものをいう。
2 この法律において「地震保険契約」とは、次に掲げる要件を備える損害保険契約(火災に係る共済契約を含む。以下同じ)をいう。
一 居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること。
二 地震若しくは噴火又はこれらによる津波(以下「地震等」という。)を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による全損(経済的に全損と認められるものを含む。)のみをてん補すること。
四 保険金額は、附帯される損害保険契約の保険金額の百分の三十に相当する額(その額が政令で定める金額をこえるときは、当該金額)とすること。ただし、特別の事情があるときは、政令で定めるところにより、これに代わるべき金額とすることができること。
3 この法律において「保険」、「保険金」又は「保険責任」とあるのは、共済契約については、それぞれ「共済」、「共済金」又は「共済責任」と読み替えるものとする。
(政府の再保険)
第三条 政府は、地震保険契約によつて保険会社等が負う保険責任を再保険する保険会社等を相手方として、再保険契約を締結することができる。
2 前項の再保険契約は、契約の相手方ごとに、一回の地震等によりその相手方に係るすべての地震保険契約によつて支払われるべき保険金の合計額が政令で定める金額をこえる場合に、そのこえる金額につき政令で定める区分ごとの割合により支払うべきことを約するものとする。
3 一回の地震等により政府が支払うべき再保険金の総額は、毎年度、国会の議決を経た金額をこえない範囲内のものでなければならない。
4 七十二時間以内に生じた二以上の地震等は、一括して一回の地震等とみなす。ただし、被災地域が全く重複しない場合は、この限りでない。
(保険金の削減)
第四条 前条第一項の規定による政府の再保険契約に係るすべての地震保険契約によつて支払われるべき保険金の総額が、一回の地震等につき、当該再保険契約により保険会社等のすべてが負担することとなる金額と同条第三項の規定による政府の負担限度額との合計額をこえることとなる場合には、保険会社等は、政令で定めるところにより、その支払べき保険金を削減することができる。
(保険料率及び再保険料率)
第五条 政府の再保険に係る地震保険契約の保険料率は、収支の償う範囲内においてできる限り低いものでなければならない。
2 政府の再保険事業に係る再保険料率は、長期的に再保険料収入が再保険金を償うように合理的に定めなければならない。
(審査の申立て)
第六条 保険会社等は、政府の再保険に関する事項につき不服があるときは、大蔵大臣に対し、審査を申し立てることができる。
2 前項の規定による審査の申立てがあつたときは、大蔵大臣は、地震保険審査会の審査を経て裁決する。
3 第一項の審査の申立ては、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。
(地震保険審査会)
第七条 大蔵省に、附属機関として、政令で定めるところにより、地震保険審査会を置くことができる。
2 地震保険審査会は、前条第二項の規定によりその権限に属する事項を処理するほか、再保険金を支払うべき事態が生じた場合において、大蔵大臣の諮問に応じ、当該再保険金の額及び第四条の保険金の削減に係る事項に関し調査審議する。
3 前二項に定めるもののほか、地震保険審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(国の措置)
第八条 政府は、地震保険契約による保険金の支払のため特に必要があるときは、保険会社等に対し、資金のあつせん又は融通に努めるものとする。
(報告及び検査)
第九条 大蔵大臣は、この法律に規定する政府の再保険事業の健全な経営を確保するため必要があると認めるときは、地震保険契約に係る事業を行なう保険会社等に対し、その事業に関し報告をさせ、又はその職員に当該保険会社等の事務所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(実施規定)
第十条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、大蔵省令で定める。
(罰則)
第十一条 第九条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。
2 保険会社等の代表者又は代理人、使用人その他の従業者がその保険会社等の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その保険会社等に対しても同項の刑を科する。