肥料価格安定等臨時措置法
法令番号: 法律第138号
公布年月日: 昭和39年7月2日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

昭和29年制定の臨時肥料需給安定法及び硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の失効に伴い、新たな肥料対策として本法を提案する。現在、肥料工業の合理化により生産能力が増大し、内需充足後の4割以上を輸出に向けており、価格も低下している。このため、従来の需給計画策定や価格公定などの国による統制的措置は不要となった。今後は内需確保を基本に、輸出の適切な調整と価格の低位安定を図ることが重要である。本法では、内需優先の確保措置、価格安定のための業者間の自主的取り決め、一手輸出体制の維持等を定める。なお、本法は5年以内に廃止する時限立法である。

参照した発言:
第46回国会 衆議院 本会議 第22号

審議経過

第46回国会

衆議院
(昭和39年4月9日)
(昭和39年4月10日)
参議院
(昭和39年4月22日)
(昭和39年4月23日)
衆議院
(昭和39年5月14日)
(昭和39年5月19日)
(昭和39年5月20日)
(昭和39年5月21日)
(昭和39年5月26日)
(昭和39年5月27日)
(昭和39年5月29日)
参議院
(昭和39年6月5日)
(昭和39年6月16日)
(昭和39年6月23日)
(昭和39年6月25日)
(昭和39年6月26日)
(昭和39年6月26日)
(昭和39年6月26日)
肥料価格安定等臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十九年七月二日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百三十八号
肥料価格安定等臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、肥料の価格の安定を図るため、その取引を適正かつ円滑にするのに必要な措置を講じ、あわせて肥料の輸出を調整するため、その輸出体制を整備し、もつて農業及び肥料工業の健全な発展に資することを目的とする。
(価格取決め)
第二条 硫酸アンモニアその他価格の安定を図ることが特に必要であると認められる肥料であつて政令で定めるもの(以下「特定肥料」という。)の生産業者及び販売業者(第五条の輸出会社を除き、特定肥料を生産業者から直接買い入れるものに限る。以下第四条までにおいて同じ。)は、その双方又はいずれか一方がそれぞれ共同して、締結の日の十五日前までに農林大臣及び通商産業大臣に届け出て、特定肥料の価格について、取決めを締結することができる。
2 農林大臣及び通商産業大臣は、前項の規定による届出があつた場合において、届出に係る取決めが次の各号に適合するものでないと認めるときは、その取決めの締結前に、その取決めを締結しようとする者に対し、その取決めの変更を命じ、又はその締結を禁止しなければならない。
一 農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。
二 不当に差別的でないこと。
三 その取決めに参加し、又はその取決めから脱退することを不当に制限しないこと。
四 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。
五 その取決めを締結しようとする者の当該特定肥料の生産額及び国内向け販売額(生産業者から直接買い入れた当該特定肥料の国内向け販売額に限る。以下同じ。)がそれぞれ当該特定肥料の生産額の総額及び国内向け販売額の総額に対し相当の比率を占めていること。
3 農林大臣及び通商産業大臣は、第一項の規定による届出に係る取決めが前項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その取決めを締結している者に対し、その変更又は廃止を命じなければならない。
4 第一項の規定による届出に係る取決めを締結している者は、その取決めを廃止したときは、遅滞なく、その旨を農林大臣及び通商産業大臣に届け出なければならない。
(資料の交付等)
第三条 特定肥料の生産業者及び販売業者は、前条第一項の取決めを締結しようとするときは、農林大臣及び通商産業大臣に対し、その取決めの締結のため必要な資料の交付を求めることができる。
2 農林大臣及び通商産業大臣は、前項の規定により資料の交付を求められた場合において、前条第一項の取決めの締結を促進するため必要があると認めるときは、当該生産業者及び販売業者に対し、当該資料を交付する。
3 農林大臣及び通商産業大臣は、必要があると認めるときは、特定肥料の生産業者及び販売業者に対し、前条第一項の取決めの締結に関し必要な勧奨又は助言を行なうものとする。
(調停)
第四条 農林大臣及び通商産業大臣は、特定肥料の生産業者及び販売業者が第二条第一項の取決めの締結について相当期間にわたり努力したにもかかわらずその取決めを締結することができず、その双方又はいずれか一方から申請があつた場合において、特に必要があると認めるときは、調停を行なうものとする。
(日本硫安輸出株式会社)
第五条 昭和二十九年八月十日に設立された日本硫安輸出株式会社(以下「輸出会社」という。)は、硫酸アンモニアその他アンモニア系窒素肥料であつて政令で定めるもの(以下「硫安」という。)の輸出に関する事業を経営することを目的とする株式会社とする。
(商号の使用制限)
第六条 輸出会社以外の者は、その商号中に日本硫安輸出株式会社という文字を使用してはならない。
(事業の範囲)
第七条 輸出会社は、次の事業を営むものとする。
一 輸出用の硫安の譲受け
二 硫安の輸出
三 輸出業者に対する輸出用の硫安の譲渡し
四 前三号の事業に附帯する事業
(譲受計画の承認)
第八条 輸出会社は、硫安の譲受計画を定め、通商産業大臣の承認を受けなければならない。
2 前項の承認は、政令で定めるところにより農林大臣及び通商産業大臣が定めるアンモニア系窒素肥料の需給見通しに基づいてしなければならない。
3 通商産業大臣は、第一項の承認をしようとするときは、農林大臣の同意を得なければならない。
4 農林大臣及び通商産業大臣は、第二項の需給見通しを定めたときは、遅滞なく、これを関係者に通知しなければならない。
(定款の変更等)
第九条 輸出会社の定款の変更、合併及び解散の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(監督)
第十条 通商産業大臣は、輸出会社に対し、その業務の適正な運営を確保するため特に必要があると認めるときは、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(輸出会社に譲り渡すべき硫安に関する取決め)
第十一条 硫安の生産業者は、第八条第一項の承認があつた後において、締結の日の十五日前までに通商産業大臣に届け出て、輸出会社に譲り渡すべき硫安に関し、数量、取引方法その他の事項について取決めを締結することができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による届出があつた場合において、届出に係る取決めが次の各号に適合するものでないと認めるときは、その取決めの締結前に、その取決めを締結しようとする者に対し、その取決めの変更を命じ、又はその締結を禁止しなければならない。
一 不当に差別的でないこと。
二 その取決めに参加し、又はその取決めから脱退することを不当に制限しないこと。
三 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。
3 通商産業大臣は、第一項の規定による届出に係る取決めが前項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その取決めを締結している者に対し、その変更又は廃止を命じなければならない。
4 第一項の規定による届出に係る取決めを締結している者は、その取決めを廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(輸出の制限)
第十二条 輸出会社以外の者は、輸出会社から譲り受けたものでなければ、硫安を輸出してはならない。
(流用の禁止)
第十三条 輸出する目的で輸出会社から硫安を譲り受けた者は、当該硫安を輸出以外の用に供してはならない。ただし、輸出会社に譲り渡す場合は、この限りでない。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)
第十四条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第二条第一項又は第十一条第一項の規定による届出に係る取決め及びこれに基づいてする行為並びに輸出会社の行なう正当な行為には、適用しない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 不公正な取引方法を用いるとき。
二 第二条第二項若しくは第三項又は第十一条第二項若しくは第三項の規定による処分に違反したとき。
三 次条第五項の規定による公示があつた後一月を経過したとき。(同条第三項又は第四項の規定による請求に応じ、第二条第二項若しくは第三項又は第十一条第二項若しくは第三項の規定による処分があつた場合を除く。)
(公正取引委員会との関係)
第十五条 農林大臣及び通商産業大臣は、第二条第一項若しくは第四項の規定による届出を受理し、又は同条第二項若しくは第三項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、公正取引委員会にその旨を通知しなければならない。
2 通商産業大臣は、第十一条第一項若しくは第四項の規定による届出を受理し、又は同条第二項若しくは第三項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、公正取引委員会にその旨を通知しなければならない。
3 公正取引委員会は、第二条第一項の規定による届出に係る取決めが同条第二項第二号から第五号までの各号に適合せず、又は同項第二号から第五号までの各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、農林大臣及び通商産業大臣に対し、同項又は同条第三項の規定による処分をすべき旨を請求することができる。
4 公正取引委員会は、第十一条第一項の規定による届出に係る取決めが同条第二項各号に適合せず、又は同項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、通商産業大臣に対し、同項又は同条第三項の規定による処分をすべき旨を請求することができる。
5 公正取引委員会は、前二項の規定による請求をしたときは、遅滞なく、その旨を官報に公示しなければならない。
(報告及び検査)
第十六条 農林大臣又は通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、肥料の生産業者若しくは販売業者(輸出会社を除く。)に対し必要な事項の報告を求め、又はその職員に、肥料の生産業者の事務所、工場若しくは倉庫に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、輸出会社に対しその業務の状況に関する報告を求め、又はその職員に、輸出会社の事務所若しくは倉庫に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 前二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
4 第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(罰則)
第十七条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条の規定に違反して硫安を輸出した者
二 第十三条の規定に違反して硫安を輸出以外の用に供した者
第十八条 第十六条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。
第十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。
第二十条 第十条の規定による命令に違反した場合には、その違反行為をした輸出会社の取締役は、三万円以下の過料に処する。
第二十一条 第六条の規定に違反して商号中に日本硫安輸出株式会社という文字を使用した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
1 この法律は、昭和三十九年八月一日から施行する。ただし、第二条、第三条、第十四条並びに第十五条第一項、第三項及び第五項の規定は、公布の日から施行する。
2 この法律は、施行の日から五年以内に廃止するものとする。
3 第六条、第十二条、第十三条、第十七条及び第二十一条の規定は、この法律の廃止前に輸出会社が解散したときは、その解散の時に、その効力を失う。ただし、その時までにした行為に対する罰則の適用については、これらの規定は、その時以後も、なおその効力を有する。
4 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第十一号を次のように改める。
十一 肥料価格安定等臨時措置法(昭和三十九年法律第百三十八号)の施行に関する事務で農林省の所掌に属するものを処理すること。
5 経済企画庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十三号)の一部を次のように改正する。
第十四条第一項の表中肥料審議会の項を削る。
6 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第十一条第一項第二号の次に次の一号を加える。
二の二 肥料価格安定等臨時措置法(昭和三十九年法律第百三十八号)の施行に関する事務で通商産業省の所掌に属するものを処理すること。
第十一条第二項中「前項第二号に掲げる事務及び」を「前項第二号及び第二号の二に掲げる事務並びに」に改める。
内閣総理大臣 池田勇人
農林大臣 赤城宗徳
通商産業大臣臨時代理 国務大臣 田中角栄