(療養給付)
第一条 政府は、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号。以下「特別保護法」という。)第十一条(同法第十三条において準用する場合を含む。)の規定により療養を受け又は療養に必要な費用の支給を受ける者のうち、同法第十一条第一項に規定する期間が経過しても、なお療養を必要とする都道府県労働基準局長が認定した者に対しては、当分の間、療養給付として、必要な療養を行い又は必要な療養の費用に相当する額を支給する。
2 前項の療養の範囲は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第七十五条第二項の規定による療養の範囲による。
(傷病手当)
第二条 政府は、前条の規定により療養給付を受ける者が、同条に規定する療養のため、労働することができず、かつ、賃金を受けない場合においては、その者に対して、その療養の期間につき傷病手当を支給する。
2 前項の傷病手当の額は、当該傷病手当の支給を受ける者が特別保護法第十一条第一項に規定する期間の経過する直前において、同法第十二条(同法第十三条において準用する場合を含む。)の規定により受けていた休業給付の額に相当する額とする。
3 労働基準法第七十六条第二項及び第三項の規定は、前項の傷病手当の額について準用する。
(国庫の負担)
第三条 国庫は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関して必要な費用の十分の八を負担する。
(負担金の徴収)
第四条 政府は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関して必要な費用に充てるため、粉じん作業(特別保護法第二条第一項に規定する粉じん作業をいう。)に労働者を従事させる事業等の事業主から負担金を徴収する。
2 前項の負担金は、特別保護法の定めるところにより、同法第十五条に規定する負担金とあわせて徴収する。
3 特別保護法第十六条の規定は、第一項の場合に準用する。
(不服の申立等)
第五条 第一条に規定する都道府県労働基準局長の認定を拒否された者は、医師の診断書及び労働省令で定める書面を添え、書面をもつて、当該都道府県労働基準局長を経由して労働大臣に不服の申立をすることができる。
2 労働大臣は、前項の規定による不服の申立があつた場合において、その申立が理由があると認めるときは、申立の日から六十日以内に、療養を必要とする旨の認定をしなければならない。
3 前項の場合には、特別保護法第三十一条第四項の規定を準用する。
第六条 特別保護法第三十二条及び第三十六条の規定は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関する決定についての審査の請求に関して準用する。
(労働大臣及び都道府県労働基準局長の権限)
第七条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関する処分並びにこれらに関する審査に関し必要があると認めるときは、これらに係る事業の事業主に報告をさせ、又は当該職員に、その事業の事業場に立ち入り、関係者に質問させ及び帳薄書類を検査させることができる。
2 前項の場合において、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(公課の禁止)
第八条 租税その他の公課は、この法律の規定により支給を受けた金品を標準として課することができない。
2 この法律の規定による療養給付及び傷病手当に関する書類には、印紙税を課さない。
(差押の禁止等)
第九条 この法律の規定による療養給付及び傷病手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(時効)
第十条 この法律の規定による療養給付及び傷病手当の支給を受ける権利並びに負担金を徴収し、又は還付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。
2 前項の時効の中断、停止その他の事項に関しては、民法(明治二十九年法律第八十九号)の時効に関する規定を準用する。
(罰則)
第十一条 第七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五千円以下の罰金に処する。
第十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し同条の罰金刑を科する。
(政府の義務)
第十三条 政府は、けい肺及び外傷性せき髄障害にかかつた労働者の保護措置について根本的検討を加え、昭和三十四年十二月三十一日までに、特別保護法の改正に関する法律案を国会に提出しなければならない。