預金等に係る不当契約の取締に関する法律
法令番号: 法律第136号
公布年月日: 昭和32年5月27日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

最近、金融機関において導入預金と呼ばれる特殊な預金の受け入れが行われ、金融機関の経営破綻を招く事例が発生している。導入預金とは、預金者や預金仲介者が特別な利益を得る目的で、預金を担保とせずに金融機関に特定の第三者への融資を行わせるものである。これは預金契約の本旨に反し金融秩序を乱すものだが、現行法では効果的な取り締まりができない。そこで、預金者・仲介者による不当な預金契約の締結を禁止し、違反者への罰則を設けることで、金融秩序の維持を図るため本法案を提出する。なお、金融制度調査会からも取締法規の制定が適当との答申を受けている。

参照した発言:
第26回国会 参議院 大蔵委員会 第27号

審議経過

第26回国会

参議院
(昭和32年4月5日)
(昭和32年4月11日)
衆議院
(昭和32年4月23日)
(昭和32年4月26日)
参議院
(昭和32年5月7日)
衆議院
(昭和32年5月15日)
(昭和32年5月15日)
参議院
(昭和32年5月16日)
(昭和32年5月17日)
(昭和32年5月18日)
(昭和32年5月18日)
衆議院
(昭和32年5月19日)
参議院
(昭和32年5月19日)
預金等に係る不当契約の取締に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十二年五月二十七日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 石井光次郎
法律第百三十六号
預金等に係る不当契約の取締に関する法律
(定義)
第一条 この法律において「金融機関」とは、銀行、信託会社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会その他預金等の受入及び資金の融通を業とする者をいう。
2 この法律において「預金等」とは、預金、貯金、定期積金、相互銀行法(昭和二十六年法律第百九十九号)第二条第一項第一号に規定する掛金及び信託業法(大正十一年法律第六十五号)第九条に規定する契約による金銭信託をいう。
3 この法律において「特別の金銭上の利益」とは、利息、手数料、礼金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、預金等をする者が当該預金等に関し次に掲げるもののほかに受ける金銭上の利益をいう。
一 臨時金利調整法(昭和二十二年法律第百八十一号)第二条の規定により定められた最高限度の金利による利息(定期積金にあつては、その契約に係る給付金額から払込金の金額の合計額を控除した金額に相当するもの)及び配当
二 相互銀行法第三条の規定による免許を受ける際に認められ、又は同法第九条第三号の規定によりその変更について認可を受けた最高限度の掛金の利廻による利益(掛金契約に係る給付金額から掛金の金額の合計額を控除した金額に相当するものをいう。)
三 割増金附貯蓄の取扱に関する法律(昭和二十三年法律第百四十三号)第二条第二項に規定する割増金附貯蓄につき受ける割増金
(預金等に係る不当契約の禁止)
第二条 金融機関に預金等をする者は、当該預金等に関し、特別の金銭上の利益を得る目的で、特定の第三者と通じ、当該金融機関を相手方として、当該預金等に係る債権を担保として提供することなく、当該金融機関がその者の指定する特定の第三者に対し資金の融通をし、又は当該第三者のために債務の保証をすべき旨を約してはならない。
2 金融機関に預金等をすることについて媒介をする者は、当該預金等に関し、当該預金等をする者に特別の金銭上の利益を得させる目的で、特定の第三者と通じ、又は自己のために、当該金融機関を相手方として、当該預金等に係る債権を担保として提供することなく、当該金融機関がその者の指定する特定の第三者若しくは自己に対し資金の融通をし、又はその者の指定する特定の第三者若しくは自己のために債務の保証をすべき旨を約してはならない。
第三条 金融機関は、預金等をし、又はその媒介をする者で前条第一項又は第二項に規定する目的を有するものを相手方として、当該預金等に係る債権を担保とすることなく、これらの規定に規定する旨を約してはならない。
(罰則)
第四条 次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二条の規定に違反した者
二 いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、第二条の規定の禁止を免かれる行為をした者
第五条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした金融機関の役員又は職員は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条の規定に違反したとき。
二 いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、第三条の規定の禁止を免かれる行為をしたとき。
2 金融機関の役員又は職員は、第三条に規定する旨を約した場合には、その相手方が第二条第一項又は第二項に規定する目的を有することを知らなかつたことを理由として、前項の処罰を免かれることができない。ただし、その知らなかつたことについて過失のないことの証明があつたときは、この限りでない。
3 前項の場合において、同項に規定する目的を有することを知らなかつたことについて過失があるにとどまるときは、情状によりその刑を免除することができる。
第六条 法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、法人又は人の業務又は財産に関して前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
2 前項の規定により法人でない社団又は財団を処罰する場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 石井光次郎