義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法
法令番号: 法律第157号
公布年月日: 昭和29年6月3日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

教育基本法第八条は、政治的教養の尊重と特定政党支持・反対のための政治教育の禁止を定めているが、とりわけ国民教育の基本である義務教育では政治的中立の確保が重要である。本法案は、義務教育諸学校における教育を党派的勢力の不当な影響から守り、教育の政治的中立確保と教育職員の自主性擁護を目的とする。具体的には、特定政党の政治的勢力の増減を目的として、教職員団体の組織・活動を利用し、教育職員に対して児童生徒への特定政党支持・反対の教育を教唆・扇動することを禁止する。違反者には一年以下の懲役または三万円以下の罰金を科し、所轄機関の請求により論ずることとする。

参照した発言:
第19回国会 衆議院 本会議 第12号

審議経過

第19回国会

衆議院
(昭和29年2月24日)
参議院
(昭和29年2月24日)
(昭和29年2月25日)
衆議院
(昭和29年2月26日)
(昭和29年3月1日)
(昭和29年3月3日)
(昭和29年3月5日)
参議院
(昭和29年3月9日)
(昭和29年3月11日)
衆議院
(昭和29年3月12日)
(昭和29年3月13日)
参議院
(昭和29年3月13日)
衆議院
(昭和29年3月15日)
(昭和29年3月16日)
参議院
(昭和29年3月16日)
衆議院
(昭和29年3月17日)
(昭和29年3月18日)
(昭和29年3月19日)
(昭和29年3月19日)
(昭和29年3月20日)
(昭和29年3月20日)
(昭和29年3月25日)
(昭和29年3月26日)
(昭和29年3月26日)
参議院
(昭和29年4月1日)
(昭和29年4月2日)
(昭和29年4月6日)
(昭和29年4月8日)
(昭和29年4月9日)
(昭和29年4月12日)
(昭和29年4月13日)
(昭和29年4月15日)
(昭和29年4月16日)
(昭和29年4月19日)
(昭和29年4月21日)
(昭和29年4月22日)
(昭和29年4月23日)
(昭和29年4月24日)
(昭和29年4月27日)
(昭和29年4月28日)
(昭和29年4月30日)
(昭和29年5月14日)
(昭和29年5月14日)
衆議院
(昭和29年5月29日)
(昭和29年6月15日)
参議院
(昭和29年6月15日)
義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年六月三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百五十七号
義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の精神に基き、義務教育諸学校における教育を党派的勢力の不当な影響又は支配から守り、もつて義務教育の政治的中立を確保するとともに、これに従事する教育職員の自主性を擁護することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「義務教育諸学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校又は盲学校、ろう学校若しくは養護学校の小学部若しくは中学部をいう。
2 この法律において「教育職員」とは、校長(盲学校、ろう学校又は養護学校の小学部又は中学部にあつては、当該部の属する盲学校、ろう学校又は養護学校の校長とする。)、教諭、助教諭又は講師をいう。
(特定の政党を支持させる等の教育の教唆及びせん動の禁止)
第三条 何人も、教育を利用し、特定の政党その他の政治的団体(以下「特定の政党等」という。)の政治的勢力の伸長又は減退に資する目的をもつて、学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体(その団体を主たる構成員とする団体を含む。)の組織又は活動を利用し、義務教育諸学校に勤務する教育職員に対し、これらの者が、義務教育諸学校の児童又は生徒に対して、特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。
(罰則)
第四条 前条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
(処罰の請求)
第五条 前条の罪は、当該教育職員が勤務する義務教育諸学校の設置者の区別に応じ、左の各号に掲げるものの請求を待つて論ずる。
一 国立の義務教育諸学校にあつては、当該学校が附属して設置される国立大学(当該学校が国立大学の学部に附属して設置される場合には、当該国立大学)の学長
二 公立の義務教育諸学校にあつては、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会(当該地方公共団体が、特別区である場合には都の教育委員会、地方公共団体の組合であつてこれに教育委員会が置かれていないものである場合には当該学校を所管するその執行機関)
三 私立の義務教育諸学校にあつては、当該学校を所轄する都道府県知事
2 前項の請求の手続は、政令で定める。
附 則
この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行し、当分の間、その効力を有する。
法務大臣 加藤鐐五郎
文部大臣 大達茂雄
内閣総理大臣 吉田茂