第一條 この法律において、「新法」とは、刑事訴訟法を改正する法律(昭和二十三年法律第百三十一号)による改正後の刑事訴訟法をいい、「旧法」とは、從前の刑事訴訟法(大正十一年法律第七十五号)をいい、「應急措置法」とは、日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七十六号)をいう。
第二條 新法施行前に公訴の提起があつた事件については、新法施行後も、なお旧法及び應急措置法による。
第三條 前條の事件については、前條の規定にかかわらず、新法第五十三條の規定を適用する。但し、新法施行前に終結した被告事件の訴訟記録については、その保存状態、閲覽のための設備その他の事情によりこれを閲覽させることが著しく困難なときは、新法施行後六箇月間に限り、その閲覽を許さないことができる。
第四條 新法施行の際まだ公訴が提起されていない事件については、新法を適用する。但し、新法施行前に旧法及び應急措置法によつて生じた効力を妨げない。
2 前項但書の場合において、旧法又は應急措置法によつてした訴訟手続で新法にこれに相當する規定のあるものは、これを新法によつてしたものとみなす。
第五條 前條の事件について、被告人からあらかじめ書面で辯護人を必要としない旨の申出があつたときは、簡易裁判所においては、新法施行の日から一年間は、新法第二百八十九條の規定にかかわらず、辯護人がなくても開廷することができる。
第六條 第四條の事件について、新法施行前から進行を始めた法定の期間及び訴訟行爲をすべき者の住居又は事務所の所在地と裁判所所在地との距離に從つて法定の期間に加えるべき期間については、新法施行後も、なお旧法及び應急措置法による。
第七條 第四條の事件について、新法施行前に旧法により過料に処すべき行爲をした者の処罰については、新法施行後も、なお旧法による。
第八條 新法施行前に旧法第二百五十五條の規定により裁判官の命じた鑑定については、新法施行後も、なお旧法による。
第九條 新法施行前に公訴を提起しない処分をした事件については、新法第二百六十二條第二項中「第二百六十條の通知を受けた日から七日以内に、」とあるのは、「新法施行の日から一箇月以内に、」と読み替えるものとする。
第十條 新法第四十六條の規定により訴訟関係人から裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求する場合の費用の額は、當分の間、その謄本又は抄本の用紙一枚につき五円とする。第二條の事件について旧法第五十三條の規定により請求する場合についても、同様である。
2 前項の費用は、収入印紙で納めさせることができる。
第十一條 新法第五十三條第四項の規定による訴訟記録閲覽の手数料は、當分の間、一件につき一回十円とする。
第十二條 新法施行の際現に係属している私訴については、民事訴訟法を適用する。但し、旧法及び應急措置法によつて生じた効力を妨げない。
第十三條 この法律に定めるものを除く外、新法施行の際現に裁判所に係属している事件の処理に関し必要な事項は、裁判所の規則の定めるところによる。
第十四條 衆議院議員選挙法(大正十四年法律第四十七号)第百四十一條ノ二(参議院議員選挙法〔昭和二十二年法律第十一号〕第七十五條において例による場合並びに地方自治法〔昭和二十二年法律第六十七号〕第六十八條第三項及び政治資金規正法〔昭和二十三年法律第百九十四号〕第四十六條において準用する場合を含む。)の適用については、旧法中私訴に関する規定は、新法施行後も、なおその効力を有する。この場合において、旧法第五百六十九條及び第五百九十五條中に引用されている旧法の規定で、これに相當する新法の規定のあるものは、新法の規定が引用されているものとする。
第十五條 刑事訴訟費用法(大正十年法律第六十八号)の一部を次のように改正する。
第一條中「及通事」を「、通譯人及飜譯人」に、「止宿料」を「宿泊料」に改め、「豫審又ハ」を削り、同條に次の一号を加える。
三 刑事訴訟法第三十八條ノ規定ニ依リ辯護人ニ給スヘキ日當、旅費、宿泊料及報酬
第二條中「豫審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改める。
第三條第一項中「及通事」を「、通譯人及飜譯人」に、「豫審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改め、同條第二項を次のように改める。
鑑定料、通譯料、飜譯料及鑑定人、通譯人又ハ飜譯人ニ対シ辨償スヘキ立替金ノ額ハ裁判所又ハ受託裁判官ノ相當ト認ムル所ニ依ル
第四條中「及通事」を「、通譯人及飜譯人」に、「豫審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改める。
第五條中「及通事ノ止宿料」を「、通譯人及飜譯人ノ宿泊料」に、「豫審判事、受託判事又ハ裁判所」を「裁判所又ハ受託裁判官」に改める。
第六條中「及通事」を「、通譯人及飜譯人」に、「止宿料」を「宿泊料」に改め、「豫審ニ付テハ其ノ終結前公判ニ付テハ」を削る。
第七條を次のように改める。
第七條 刑事訴訟法第三十八條ノ規定ニ依リ辯護人ニ給スヘキ日當、旅費及宿泊料ニ付テハ第三條乃至前條ノ規定ヲ準用ス但シ辯護人カ期日ニ出頭シ又ハ取調若ハ処分ニ立会ヒタル場合ニ限ル
同法第三十八條ノ規定ニヨリ辯護人ニ給スヘキ報酬ノ額ハ裁判所ノ相當ト認ムル所ニ依ル
第十六條 訴訟費用等臨時措置法(昭和十九年法律第二号)の一部を次のように改正する。
第三條中「刑事訴訟費用法第三條」及び「刑事訴訟費用法第四條」の下に「(同法第七條第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)」を加え、「民事訴訟費用法第十二條及刑事訴訟費用法第五條ノ止宿料」を「民事訴訟費用法第十二條ノ止宿料及刑事訴訟費用法第五條ノ宿泊料(同法第七條第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)」に改める。
第十七條 司法警察事務上巡査に於て警部代理方(明治十四年司法省布達甲第五号)及び裁判言渡の謄本等を求むる者費用上納額(明治十四年司法省布達甲第七号)は、廃止する。