保険募集の取締に関する法律
法令番号: 法律第百七十一号
公布年月日: 昭和23年7月15日
法令の形式: 法律
保險募集の取締に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月十五日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百七十一号
保險募集の取締に関する法律
(目的)
第一條 この法律は、生命保險募集人及び損害保險代理店並びに募集を行う生命保險会社の役員及び使用人の登録をなし、それらの者の行う募集を取り締り、もつて保險契約者の利益を保護し、あわせて保險事業の健全な発達に資することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「生命保險募集人」とは、生命保險会社の委託を受けて、その保險会社のために生命保險契約の締結の媒介をなす者で、その保險会社の役員又は使用人でないものをいう。
2 この法律において「損害保險代理店」とは、損害保險会社の委託を受けて、その保險会社のために損害保險契約の締結の代理をなす者で、その保險会社の役員又は使用人でないものをいう。
3 この法律において「募集」とは、保險契約の締結の代理又は媒介をなすことをいう。
4 この法律において「委託保險会社」とは、募集を委託した保險会社をいう。
5 この法律において「募集文書図画」とは、新聞廣告、印刷物、看板その他募集のため又は募集を容易ならしめるため使用せられる一切の文書図画をいう。
(登録)
第三條 生命保險募集人又は損害保險代理店は、この法律の定めるところにより、登録を受けなければならない。
2 前項の規定により登録を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した登録申請書を大藏大臣に提出し、且つ、政令の定めるところにより登録手数料を納めなければならない。
一 氏名、商号又は名称
二 住所又は事務所の所在地
三 委託保險会社の商号又は名称
四 他に業務を行つている場合はその業務の種類
3 前項の登録の申請書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 委託契約書
二 申請者及び法定代理人の履歴書及び戸籍謄本
4 申請者が法人又は法人でない社團若しくは財團であるときは、前項第二号に掲げる書類に代えて、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 定款
二 代表者又は管理人の氏名及び住所を記載した書面
三 命令をもつて定める株主又は出資者の氏名又は名称及びその有する株式の数又はその者のなした出資の金額を記載した書面
四 直前事業年度の貸借対照表及び損益計算書
(登録簿)
第四條 生命保險募集人登録簿及び損害保險代理店登録簿は、大藏省に、これを備えなければならない。
2 大藏大臣は、前條の規定による登録の申請があつた場合においては、第五條の規定に該当する場合を除く外、直ちに、前項の生命保險募集人登録簿又は損害保險代理店登録簿に、左に掲げる事項を登録しなければならない。
一 氏名、商号又は名称
二 住所又は事務所の所在地
三 委託保險会社の商号又は名称
四 登録年月日
五 その他登録に関し必要な事項
(登録の拒否)
第五條 大藏大臣は、第三條の規定による登録の申請があつた場合において、申請者が左の各号の一に該当するとき又は登録申請書若しくはその添附書類のうち重要な事項について虚僞の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、申請者につき事実を調査した後、その登録を拒否しなければならない。
一 破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑又はこの法律により罰金の刑に処せられ、その執行の終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの者
三 この法律の規定により登録を取り消され、その取消の日から五年を経過するまでの者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 法人又は法人でない社團若しくは財團でその役員又は代表者若しくは管理人のうち第一号から第三号までの規定の一に該当するもののあるもの
六 募集に関して收受した保險料を他に流用し、又はこれに準ずる行爲をなし、その他募集に関して著しく不適当な行爲をなしたもの
2 前項の規定による登録の拒否は、その理由を記載した文書をもつて、これをなさなければならない。
(登録の拒否の通知)
第六條 大藏大臣は、前條の規定によりその登録を拒否した場合においては、遅滯なく、その旨を申請者に通知しなければならない。
(変更届出)
第七條 生命保險募集人又は損害保險代理店は、第三條第二項に掲げる事項又は同條第三項第一号若しくは第四項第一号に掲げる書類に記載せられた事項について変更があつたときは、遅滯なく、その旨を大藏大臣に届け出なければならない。
(生命保險募集人又は損害保險代理店の役員又は使用人の届出)
第八條 生命保險募集人又は損害保險代理店が役員(代表権を有しない役員をいう。第十條及び第十六條の場合を除き、以下同じ。)及び使用人に募集を行わせる場合においては、その者の氏名及び住所を大藏大臣に届け出なければならない。その届け出た事項に変更を生じたときも、同樣である。
(募集を行うことができる者)
第九條 保險会社の役員、使用人又は第四條第二項の規定により登録された生命保險募集人若しくは損害保險代理店でないものは、募集を行うことができない。
(生命保險募集人の行爲の制限)
第十條 生命保險会社は、他の生命保險会社の委託を受けている生命保險募集人に対して、募集を委託してはならない。
2 生命保險募集人は、他の生命保險会社の役員又は使用人を兼ね、又は他の生命保險会社の委託を受けて募集を行うことができない。
(委託保險会社の賠償責任)
第十一條 委託保險会社は、生命保險募集人又は損害保險代理店が募集につき保險契約者に加えた損害を賠償する責に任ずる。但し、会社が生命保險募集人の委託をなすにつき相当の注意をなし、且つ、損害の防止につとめたときは、この限りでない。
2 前項の規定は、会社から生命保險募集人又は損害保險代理店に対する求償権の行使を妨げない。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四條の規定は、第一項の請求権について、これを準用する。
(損害保險代理店の保險料保管方法)
第十二條 損害保險代理店は、委託保險会社のために收受した保險料を保管する場合においては、自己の財産と明確に区分しなければならない。
2 前項の保險料の保管に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
(生命保險募集人又は損害保險代理店の原簿)
第十三條 委託保險会社は、命令の定めるところにより、生命保險募集人又は損害保險代理店に関する原簿を、その本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは從たる事務所に備え置かなければならない。
2 利害関係人は、必要があるときは、委託保險会社に対して、前項の原簿の縦覽を求めることができる。
(募集文書図画)
第十四條 保險会社の役員、使用人又は生命保險募集人若しくは損害保險代理店が使用する募集文書図画には、それらの者の所属する保險会社若しくは委託保險会社の商号若しくは名称又は生命保險募集人若しくは損害保險代理店の氏名、商号若しくは名称を記載しなければならない。
(募集文書図画の記載禁止事項)
第十五條 募集文書図画に保險会社の資産及び負債に関する事項を記載する場合においては、保險業法(昭和十四年法律第四十一号)第八十二條第一項の規定により大藏大臣に提出した書類に記載された事項と異なる内容のものを記載してはならない。
2 募集文書図画には、保險会社の將來における利益の配当又は剩余金の分配についての予想に関する事項を記載してはならない。
3 前二項の規定は、放送、映画、演説その他の方法により、募集のため又は募集を容易ならしめるため、保險会社の資産及び負債に関する事項並びに將來の利益の配当又は剩余金の分配についての予想に関する事項を、不特定の者に知らせる場合に、これを準用する。
(締結又は募集に関する禁止行爲)
第十六條 保險会社の役員、使用人又は生命保險募集人若しくは損害保險代理店は、保險契約の締結又は募集に関して、左に掲げる行爲をなしてはならない。
一 保險契約者又は被保險者に対して、不実のことを告げ、若しくは保險契約の契約條項の一部につき比較した事項を告げ、又は保險契約の契約條項のうち重要な事項を告げない行爲
二 保險契約者又は被保險者が保險会社に対して重要な事実を告げるのを妨げ、又は告げないことをすすめる行爲
三 保險契約者又は被保險者が保險会社に対して重要な事項につき不実のことを告げることをすすめる行爲
四 保險契約者又は被保險者に対して特別の利益の提供を約し、又は保險料の割引、割戻その他特別の利益を提供する行爲
2 前項第四号の規定は、保險会社が保險業法第一條第二項に掲げる書類に基いて行う場合は、これを適用しない。
(自己代理店の禁止)
第十七條 損害保險代理店は、その主たる目的として、自己又は自己が雇用せられている者を保險契約者又は被保險者とする保險契約を募集してはならない。
2 損害保險代理店の募集した自己又は自己が雇用せられている者を保險契約者又は被保險者とする保險契約の保險料の累計額が、当該損害保險代理店の募集した保險契約の保險料の累計額の百分の五十をこえることとなつたときは、当該損害保險代理店は、前項の規定の適用については、これを自己又は自己が雇用せられている者を保險契約者又は被保險者とする保險契約を募集することをその主たる目的としたものとみなす。
(手数料の支拂禁止)
第十八條 保險会社は、その役員及び使用人又は第四條の規定により登録された生命保險募集人若しくは損害保險代理店に対する場合を除く外、募集の委託をなし、又は募集に関して手数料、報酬その他の対價を支拂つてはならない。
2 第十六條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
3 生命保險募集人又は損害保險代理店は、第八條の規定により届け出た役員若しくは使用人又は第四條の規定により登録された生命保險募集人若しくは損害保險代理店に対する場合を除く外、募集を行わせ、若しくはその委託をなし、又は募集に関して手数料、報酬その他の対價を支拂つてはならない。
(報告及び檢査)
第十九條 大藏大臣は、生命保險募集人又は損害保險代理店に対して、その使用する文書図画の呈示を命じ、その業務に関する報告書の提出を命じ、若しくはその文書図画の使用に関し必要な命令をなし、又はその職員をしてその帳簿書類その他の物件を檢査させることができる。この場合において、その職員は、その身分を示す証票を携帶し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(違法行爲に対する措置)
第二十條 大藏大臣は、生命保險募集人又は損害保險代理店が左の各号の一に該当すると認めたときは、期間を指定してその業務の停止を命じ、又はその登録の取消の処分をなすことができる。
一 この法律又は他の法令に基いて発する大藏大臣の命令に違反したとき。
二 その他募集に関して著しく不適当な行爲をなしたと認められるとき。
2 前項の規定により業務の停止を命じ、又は登録の取消の処分をなそうとするときは、大藏大臣は、当該生命保險募集人又は損害保險代理店にあらかじめその旨を通知し、それらの者又はその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を與えるため大藏大臣の指定する職員をして聽聞させなければならない。
3 大藏大臣は、第五條第一項第六号に規定する事実を調査するため通知をなし、又は前項の規定による通知をなしてから二月を経過してもその者から答弁がないときは、登録を拒否し、期間を指定してその業務の停止を命じ、又はその登録の取消の処分をなすことができる。
4 第五條第二項の規定は、第一項又は第三項の規定による業務の停止、登録の取消又は登録の拒否について、これを準用する。
5 大藏大臣は、生命保險募集人又は損害保險代理店が第五條第一号、第二号、第四号若しくは第五号の規定の一に該当するに至つたとき又は第一項若しくは第二項の規定により登録の取消の処分をなしたときは、直ちに、その登録を抹消しなければならない。
(募集を行う役員又は使用人の登録)
第二十一條 第三條から第八條までの規定並びに第十九條及び前條の規定は、生命保險会社の役員又は使用人で当該会社のために募集を行う者について、これを準用する。この場合において、これらの規定中「生命保險募集人」とあるのは「募集を行う役員又は使用人」と、第四條第一項中「生命保險募集人登録簿」とあるのは「役員使用人登録簿」と読み替えるものとする。
第二十二條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第九條の規定に違反した者
二 第十條第二項の規定に違反した者
三 第十五條の規定に違反した者
四 第十六條の規定に違反した者
五 第十八條第三項の規定に違反して募集を行わせ、又はその委託をなした者
六 第二十條の規定による業務の停止の命令に違反して保險契約の募集を行つた者
2 前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第二十三條 第十條第一項の違反があつたとき又は第十八條第一項の規定に違反して募集の委託をなしたときは、その違反行爲をなした生命保險会社の代表者、代理人、使用人その他の從業者を一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十四條 左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第十二條第一項の規定に違反した者
二 第十二條第二項の規定による命令に違反した者
第二十五條 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第十四條の規定に違反した者
二 第十九條(第二十一條において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による命令に違反した者
三 第十九條の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十六條 第二十一條において準用する第三條第一項の規定による登録を受けることを怠つた者は、これを五千円以下の過料に処する。
第二十七條 法人(法人でない社團又は財團で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が法人又は人の業務に関して第二十二條から第二十五條までの違反行爲をなしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
2 前項の規定により法人でない社團又は財團を処罰する場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行爲につきその社團又は財團を代表する外、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
1 この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、第三條(第二十一條において準用する場合を含む。)の規定は、この法律施行の日から三月を経過した日から、第九條及び第十八條の規定は、この法律施行の日から六月を経過した日から、これを施行する。
2 この法律施行の際、生命保險募集人若しくは損害保險代理店である者又は生命保險会社のために募集を行う役員若しくは使用人である者は、この法律施行の日から六月以内に、第三條(第二十一條において準用する場合を含む。)の規定による登録の申請をなさなければならない。
大藏大臣 北村徳太郎
内閣総理大臣 芦田均
保険募集の取締に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月十五日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百七十一号
保険募集の取締に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、生命保険募集人及び損害保険代理店並びに募集を行う生命保険会社の役員及び使用人の登録をなし、それらの者の行う募集を取り締り、もつて保険契約者の利益を保護し、あわせて保険事業の健全な発達に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「生命保険募集人」とは、生命保険会社の委託を受けて、その保険会社のために生命保険契約の締結の媒介をなす者で、その保険会社の役員又は使用人でないものをいう。
2 この法律において「損害保険代理店」とは、損害保険会社の委託を受けて、その保険会社のために損害保険契約の締結の代理をなす者で、その保険会社の役員又は使用人でないものをいう。
3 この法律において「募集」とは、保険契約の締結の代理又は媒介をなすことをいう。
4 この法律において「委託保険会社」とは、募集を委託した保険会社をいう。
5 この法律において「募集文書図画」とは、新聞広告、印刷物、看板その他募集のため又は募集を容易ならしめるため使用せられる一切の文書図画をいう。
(登録)
第三条 生命保険募集人又は損害保険代理店は、この法律の定めるところにより、登録を受けなければならない。
2 前項の規定により登録を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した登録申請書を大蔵大臣に提出し、且つ、政令の定めるところにより登録手数料を納めなければならない。
一 氏名、商号又は名称
二 住所又は事務所の所在地
三 委託保険会社の商号又は名称
四 他に業務を行つている場合はその業務の種類
3 前項の登録の申請書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 委託契約書
二 申請者及び法定代理人の履歴書及び戸籍謄本
4 申請者が法人又は法人でない社団若しくは財団であるときは、前項第二号に掲げる書類に代えて、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 定款
二 代表者又は管理人の氏名及び住所を記載した書面
三 命令をもつて定める株主又は出資者の氏名又は名称及びその有する株式の数又はその者のなした出資の金額を記載した書面
四 直前事業年度の貸借対照表及び損益計算書
(登録簿)
第四条 生命保険募集人登録簿及び損害保険代理店登録簿は、大蔵省に、これを備えなければならない。
2 大蔵大臣は、前条の規定による登録の申請があつた場合においては、第五条の規定に該当する場合を除く外、直ちに、前項の生命保険募集人登録簿又は損害保険代理店登録簿に、左に掲げる事項を登録しなければならない。
一 氏名、商号又は名称
二 住所又は事務所の所在地
三 委託保険会社の商号又は名称
四 登録年月日
五 その他登録に関し必要な事項
(登録の拒否)
第五条 大蔵大臣は、第三条の規定による登録の申請があつた場合において、申請者が左の各号の一に該当するとき又は登録申請書若しくはその添附書類のうち重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、申請者につき事実を調査した後、その登録を拒否しなければならない。
一 破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑又はこの法律により罰金の刑に処せられ、その執行の終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの者
三 この法律の規定により登録を取り消され、その取消の日から五年を経過するまでの者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 法人又は法人でない社団若しくは財団でその役員又は代表者若しくは管理人のうち第一号から第三号までの規定の一に該当するもののあるもの
六 募集に関して収受した保険料を他に流用し、又はこれに準ずる行為をなし、その他募集に関して著しく不適当な行為をなしたもの
2 前項の規定による登録の拒否は、その理由を記載した文書をもつて、これをなさなければならない。
(登録の拒否の通知)
第六条 大蔵大臣は、前条の規定によりその登録を拒否した場合においては、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない。
(変更届出)
第七条 生命保険募集人又は損害保険代理店は、第三条第二項に掲げる事項又は同条第三項第一号若しくは第四項第一号に掲げる書類に記載せられた事項について変更があつたときは、遅滞なく、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。
(生命保険募集人又は損害保険代理店の役員又は使用人の届出)
第八条 生命保険募集人又は損害保険代理店が役員(代表権を有しない役員をいう。第十条及び第十六条の場合を除き、以下同じ。)及び使用人に募集を行わせる場合においては、その者の氏名及び住所を大蔵大臣に届け出なければならない。その届け出た事項に変更を生じたときも、同様である。
(募集を行うことができる者)
第九条 保険会社の役員、使用人又は第四条第二項の規定により登録された生命保険募集人若しくは損害保険代理店でないものは、募集を行うことができない。
(生命保険募集人の行為の制限)
第十条 生命保険会社は、他の生命保険会社の委託を受けている生命保険募集人に対して、募集を委託してはならない。
2 生命保険募集人は、他の生命保険会社の役員又は使用人を兼ね、又は他の生命保険会社の委託を受けて募集を行うことができない。
(委託保険会社の賠償責任)
第十一条 委託保険会社は、生命保険募集人又は損害保険代理店が募集につき保険契約者に加えた損害を賠償する責に任ずる。但し、会社が生命保険募集人の委託をなすにつき相当の注意をなし、且つ、損害の防止につとめたときは、この限りでない。
2 前項の規定は、会社から生命保険募集人又は損害保険代理店に対する求償権の行使を妨げない。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四条の規定は、第一項の請求権について、これを準用する。
(損害保険代理店の保険料保管方法)
第十二条 損害保険代理店は、委託保険会社のために収受した保険料を保管する場合においては、自己の財産と明確に区分しなければならない。
2 前項の保険料の保管に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
(生命保険募集人又は損害保険代理店の原簿)
第十三条 委託保険会社は、命令の定めるところにより、生命保険募集人又は損害保険代理店に関する原簿を、その本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所に備え置かなければならない。
2 利害関係人は、必要があるときは、委託保険会社に対して、前項の原簿の縦覧を求めることができる。
(募集文書図画)
第十四条 保険会社の役員、使用人又は生命保険募集人若しくは損害保険代理店が使用する募集文書図画には、それらの者の所属する保険会社若しくは委託保険会社の商号若しくは名称又は生命保険募集人若しくは損害保険代理店の氏名、商号若しくは名称を記載しなければならない。
(募集文書図画の記載禁止事項)
第十五条 募集文書図画に保険会社の資産及び負債に関する事項を記載する場合においては、保険業法(昭和十四年法律第四十一号)第八十二条第一項の規定により大蔵大臣に提出した書類に記載された事項と異なる内容のものを記載してはならない。
2 募集文書図画には、保険会社の将来における利益の配当又は剰余金の分配についての予想に関する事項を記載してはならない。
3 前二項の規定は、放送、映画、演説その他の方法により、募集のため又は募集を容易ならしめるため、保険会社の資産及び負債に関する事項並びに将来の利益の配当又は剰余金の分配についての予想に関する事項を、不特定の者に知らせる場合に、これを準用する。
(締結又は募集に関する禁止行為)
第十六条 保険会社の役員、使用人又は生命保険募集人若しくは損害保険代理店は、保険契約の締結又は募集に関して、左に掲げる行為をなしてはならない。
一 保険契約者又は被保険者に対して、不実のことを告げ、若しくは保険契約の契約条項の一部につき比較した事項を告げ、又は保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為
二 保険契約者又は被保険者が保険会社に対して重要な事実を告げるのを妨げ、又は告げないことをすすめる行為
三 保険契約者又は被保険者が保険会社に対して重要な事項につき不実のことを告げることをすすめる行為
四 保険契約者又は被保険者に対して特別の利益の提供を約し、又は保険料の割引、割戻その他特別の利益を提供する行為
2 前項第四号の規定は、保険会社が保険業法第一条第二項に掲げる書類に基いて行う場合は、これを適用しない。
(自己代理店の禁止)
第十七条 損害保険代理店は、その主たる目的として、自己又は自己が雇用せられている者を保険契約者又は被保険者とする保険契約を募集してはならない。
2 損害保険代理店の募集した自己又は自己が雇用せられている者を保険契約者又は被保険者とする保険契約の保険料の累計額が、当該損害保険代理店の募集した保険契約の保険料の累計額の百分の五十をこえることとなつたときは、当該損害保険代理店は、前項の規定の適用については、これを自己又は自己が雇用せられている者を保険契約者又は被保険者とする保険契約を募集することをその主たる目的としたものとみなす。
(手数料の支払禁止)
第十八条 保険会社は、その役員及び使用人又は第四条の規定により登録された生命保険募集人若しくは損害保険代理店に対する場合を除く外、募集の委託をなし、又は募集に関して手数料、報酬その他の対価を支払つてはならない。
2 第十六条第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
3 生命保険募集人又は損害保険代理店は、第八条の規定により届け出た役員若しくは使用人又は第四条の規定により登録された生命保険募集人若しくは損害保険代理店に対する場合を除く外、募集を行わせ、若しくはその委託をなし、又は募集に関して手数料、報酬その他の対価を支払つてはならない。
(報告及び検査)
第十九条 大蔵大臣は、生命保険募集人又は損害保険代理店に対して、その使用する文書図画の呈示を命じ、その業務に関する報告書の提出を命じ、若しくはその文書図画の使用に関し必要な命令をなし、又はその職員をしてその帳簿書類その他の物件を検査させることができる。この場合において、その職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(違法行為に対する措置)
第二十条 大蔵大臣は、生命保険募集人又は損害保険代理店が左の各号の一に該当すると認めたときは、期間を指定してその業務の停止を命じ、又はその登録の取消の処分をなすことができる。
一 この法律又は他の法令に基いて発する大蔵大臣の命令に違反したとき。
二 その他募集に関して著しく不適当な行為をなしたと認められるとき。
2 前項の規定により業務の停止を命じ、又は登録の取消の処分をなそうとするときは、大蔵大臣は、当該生命保険募集人又は損害保険代理店にあらかじめその旨を通知し、それらの者又はその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を与えるため大蔵大臣の指定する職員をして聴聞させなければならない。
3 大蔵大臣は、第五条第一項第六号に規定する事実を調査するため通知をなし、又は前項の規定による通知をなしてから二月を経過してもその者から答弁がないときは、登録を拒否し、期間を指定してその業務の停止を命じ、又はその登録の取消の処分をなすことができる。
4 第五条第二項の規定は、第一項又は第三項の規定による業務の停止、登録の取消又は登録の拒否について、これを準用する。
5 大蔵大臣は、生命保険募集人又は損害保険代理店が第五条第一号、第二号、第四号若しくは第五号の規定の一に該当するに至つたとき又は第一項若しくは第二項の規定により登録の取消の処分をなしたときは、直ちに、その登録を抹消しなければならない。
(募集を行う役員又は使用人の登録)
第二十一条 第三条から第八条までの規定並びに第十九条及び前条の規定は、生命保険会社の役員又は使用人で当該会社のために募集を行う者について、これを準用する。この場合において、これらの規定中「生命保険募集人」とあるのは「募集を行う役員又は使用人」と、第四条第一項中「生命保険募集人登録簿」とあるのは「役員使用人登録簿」と読み替えるものとする。
第二十二条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第九条の規定に違反した者
二 第十条第二項の規定に違反した者
三 第十五条の規定に違反した者
四 第十六条の規定に違反した者
五 第十八条第三項の規定に違反して募集を行わせ、又はその委託をなした者
六 第二十条の規定による業務の停止の命令に違反して保険契約の募集を行つた者
2 前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第二十三条 第十条第一項の違反があつたとき又は第十八条第一項の規定に違反して募集の委託をなしたときは、その違反行為をなした生命保険会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者を一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十四条 左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第十二条第一項の規定に違反した者
二 第十二条第二項の規定による命令に違反した者
第二十五条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第十四条の規定に違反した者
二 第十九条(第二十一条において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による命令に違反した者
三 第十九条の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十六条 第二十一条において準用する第三条第一項の規定による登録を受けることを怠つた者は、これを五千円以下の過料に処する。
第二十七条 法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務に関して第二十二条から第二十五条までの違反行為をなしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
2 前項の規定により法人でない社団又は財団を処罰する場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表する外、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
1 この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、第三条(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定は、この法律施行の日から三月を経過した日から、第九条及び第十八条の規定は、この法律施行の日から六月を経過した日から、これを施行する。
2 この法律施行の際、生命保険募集人若しくは損害保険代理店である者又は生命保険会社のために募集を行う役員若しくは使用人である者は、この法律施行の日から六月以内に、第三条(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による登録の申請をなさなければならない。
大蔵大臣 北村徳太郎
内閣総理大臣 芦田均