第一條 この勅令は、地代及び家賃を統制して、國民生活の安定を圖ることを目的とする。
第二條 この勅令において、地代とは、建物を所有する目的で賃借せられ、又は地上權を設定せられた土地(以下借地といふ。)の借賃又は地代をいひ、家賃とは、賃借せられた建物又は建物の一部(以下借家といふ。)の借賃をいふ。
第三條 借地又は借家の貸主(以下貸主といふ。)は借地又は借家について、停止統制額又は認可統制額を超えて、地代又は家賃の額を契約し、又は受領することができない。
第四條 昭和二十一年九月三十日(以下指定期日といふ。)において、昭和十五年勅令第六百七十八號地代家賃統制令第三條第一項各號に揭げる地代又は家賃(同令第四條第二項、第六條第二項、第七條第二項、第八條及び第二十二條の規定により同令第三條第一項各號に揭げる地代又は家賃とみなされるものを含む。)があつた借地又は借家については、指定期日における地代又は家賃の額を以て、その地代又は家賃の停止統制額とする。
前項の規定は、建物の一部についての家賃には、これを適用しない。
第五條 物價廳長官は、家賃の停止統制額が公正でないものについては、都道府縣、市又は市及びその隣接町村の區域を指定して、借家の建築時期に應じて、家賃の停止統制額に乘ずべき修正率を定めることができる。
前項の場合には、その借家については、修正率を家賃の停止統制額に乘じて得た額(この額が物價廳長官の定める額を超える場合には物價廳長官の定める額)を、その家賃の停止統制額とする。
第一項の區域及び修正率竝びに前項の物價廳長官の定める額の決定は、吿示によつて、これをなす。
第六條 地代又は家賃について停止統制額のない場合に、當該借地又は借家の貸主は、この勅令施行後最初に地代又は家賃の額を契約しようとするときは、閣令の定めるところにより、その額について地方長官の認可を受けなければならない。第四條第二項に規定する家賃であつて昭和二十一年十月一日以後のものについても、また同樣である。
前項の規定により認可された地代又は家賃の額は、これをその地代又は家賃の認可統制額とする。
物價廳長官は、地方長官に、第一項の規定による認可の基準を指示する。
地方長官は、前項の基準により、第一項の認可をしなければならない。
第一項の規定は、地代又は家賃について、裁判、裁判上の和解又は調停によつてその額が定められた場合には、これを適用しない。
第七條 貸主は、左の各號の一に該當する事由がある場合には、閣令の定めるところにより、地代又は家賃の停止統制額又は認可統制額の增額の認可を、地方長官に申請することができる。
一 借地又は借家について著しい改良工事がなされたとき。
二 地代又は家賃の停止統制額について、貸主と借地又は借家の借主(以下借主といふ。)との間に緣故その他特別の關係があつたため、地代又は家賃の額が著しく低額であるとき。
前項の規定により認可された額は、これをその地代又は家賃についての認可統制額とする。
第八條 地方長官は、左の各號の一に該當する場合には、閣令の定めるところにより、職權又は借主の申請により、地代又は家賃の停止統制額又は認可統制額を減額することができる。
一 附近類似の借地又は借家の地代又は家賃の額に比較して、地代又は家賃の額が著しく高額であるとき。
二 貸主が、借地又は借家の維持に必要な措置を怠る等の事由により、借地又は借家が不良となつたとき。
前條第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第九條 地方長官は、必要があると認めるときは、第六條乃至前條の認可をなす場合に、認可申請の內容を變更して認可をなし、又は認可に制限若しくは條件を附することができる。
第十條 地代又は家賃について、裁判、裁判上の和解又は調停によつてその額が定められた場合には、その額は、これをその地代又は家賃についての認可統制額とする。
第十一條 第三條、第四條及び第六條乃至前條の規定は、敷金、修繕費に關する負擔、疊、建具その他の造作に關する負擔、下宿屋、共同住宅その他これに類する借家における共益費の負擔、地代又は家賃の支拂條件及び借主が貸主に給付する權利金その他の財產上の利益に關する條件について、これを準用する。
第十二條 貸主は、如何なる名義があつても、第三條の規定(前條において準用する場合を含む。)による禁止を免れる行爲をすることはできない。
第十三條 貸主は、地代又は家賃として金錢以外のものを、受領する契約をし、又は受領することはできない。
第十四條 貸主は、閣令の定めるところにより、その借地又は借家のある地の市町村長を經由して、地代又は家賃の停止統制額又は認可統制額を、地方長官に屆け出なければならない。
前項の屆出があつた場合には、市町村長は、遲滯なく、市役所又は町村役場に備へつけた地代又は家賃の臺帳にこれを記入し、公衆の閱覽に供しなければならない。
第十五條 地方長官は、第七條及び第八條の規定による認可をする場合には、都道府縣地代家賃審査會の意見を聽かなければならない。
都道府縣地代家賃審査會に關する規程は、別にこれを定める。
第十六條 地方長官は、必要があると認めるときは、貸主に對し、地代若しくは家賃に關する帳簿の作成を命じ、又は下宿屋、共同住宅その他これに類する借家につき、家賃その他の條件を借家の見易い箇所に揭示すべきことを命ずることができる。
第十七條 地方長官は、必要があると認めるときは、借地又は借家に關して、貸主若しくは借主に報吿させ、又は當該官吏に借地、借家その他の場所に臨檢させ、その狀況若しくは借地、借家の契約書、帳簿その他の物件を檢査させることができる。
第十八條 左の各號の一に該當する者は、これを五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處する。
一 第三條の規定(第十一條において準用する場合を含む。)に違反した者
二 第六條第一項の規定(第十一條において準用する場合を含む。)による認可を受けないで、地代又は家賃の額を契約し、又は受領した者
前項の罪を犯した者には、情狀に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第十九條 第十三條の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
第二十條 左の各號の一に該當する者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 第十四條第一項の規定に違反し、屆出をせず、又は虛僞の屆出をした者
二 第十六條の規定による命令に違反し、帳簿を作成せず、若しくは帳簿に虛僞の記載をなし、又は揭示をせず、若しくは虛僞の揭示をした者
三 第十七條の規定による報吿をせず、又は虛僞の報吿をした者
四 第十七條の規定による檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
第二十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に關し第十八條第一項、第十九條又は前條第一號乃至第三號の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に對しても、各本條の罰金刑を科する。
第二十二條 この勅令で、市、市役所又は市町村長とあるのは、東京都の區のある區域、京都市、大阪市、橫濱市、神戶市及び名古屋市においては、夫々區、區役所又は區長とする。
第二十三條 この勅令は、國又は都道府縣が貸主である借地又は借家については、これを適用しない。