戦時金融金庫法
法令番号: 法律第三十二號
公布年月日: 昭和17年2月20日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル戰時金融金庫法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月十九日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
法律第三十二號
戰時金融金庫法
第一章 總則
第一條 戰時金融金庫ハ戰時ニ際シ生產擴充及產業再編成等ノ爲必要ナル資金ニシテ他ノ金融機關等ヨリ供給ヲ受クルコト困難ナルモノヲ供給シ併セテ有價證券ノ市價安定ヲ圖ルコトヲ目的トス
戰時金融金庫ハ法人トス
第二條 戰時金融金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
戰時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置シ又ハ銀行其ノ他主務大臣ノ指定スル者ヲシテ業務ノ一部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第三條 戰時金融金庫ノ資本金ハ三億圓トシ之ヲ三百萬口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ百圓トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第四條 戰時金融金庫ハ出資ニ對シ出資證券ヲ發行ス
出資證券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 政府ハ二億圓ヲ限リ戰時金融金庫ニ出資スルコトヲ得
前項ノ出資ハ國債證券ヲ交付シテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第六條 戰時金融金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ戰時金融金庫ニ拂込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ對抗スルコトヲ得ズ
第七條 出資者ハ戰時金融金庫ノ承認ヲ經テ其ノ持分ヲ讓渡スコトヲ得
第八條 拂込ヲ怠リタル出資者ニ對シ戰時金融金庫ガ一月以上ノ相當ノ期間ヲ定メ拂込ノ請求ヲ爲シタルニ拘ラズ出資者ガ拂込ヲ爲サザルトキハ戰時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ出資者ノ持分ヲ處分スルコトヲ得
戰時金融金庫ハ持分ノ處分ニ依リテ得タル金額ヨリ滯納金額及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ額ヲ控除シタル金額ヲ從前ノ出資者ニ拂戾スコトヲ要ス
持分ノ處分ニ依リテ得タル金額ガ滯納金額ニ滿タザル場合ニ於テハ戰時金融金庫ハ從前ノ出資者ニ對シ不足額ノ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ戰時金融金庫ガ損害賠償及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間內ニ拂込ヲ爲サザルトキハ戰時金融金庫ハ其ノ出資者ニ對シ二週間內ニ出資證券ヲ戰時金融金庫ニ提出スベキ旨ヲ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資證券ハ其ノ效力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ戰時金融金庫ハ遲滯ナク失效シタル出資證券ノ番號竝ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公吿スルコトヲ要ス
第九條 戰時金融金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資產ニ關スル事項
五 役員ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 戰時金融債券ノ發行ニ關スル事項
八 會計ニ關スル事項
九 公吿ノ方法
定款ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十條 戰時金融金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十一條 戰時金融金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 戰時金融金庫ニ非ザル者ハ戰時金融金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 職員
第十三條 戰時金融金庫ニ役員トシテ總裁副總裁各一人、理事五人以上、監事二人以上及評議員若干人ヲ置ク
第十四條 總裁ハ戰時金融金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ戰時金融金庫ヲ代表シ總裁ヲ輔佐シテ戰時金融金庫ノ業務ヲ掌理シ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ戰時金融金庫ヲ代表シ總裁及副總裁ヲ輔佐シテ戰時金融金庫ノ業務ヲ掌理シ總裁及副總裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁及副總裁共ニ缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ戰時金融金庫ノ業務ヲ監査ス
評議員ハ戰時金融金庫ノ業務ニ關スル重要事項ニ付總裁ノ諮問ニ應ジ又ハ總裁ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
總裁ハ主務大臣ノ定ムル事項ニ付テハ評議員ニ諮問スルコトヲ要ス
第十五條 總裁、副總裁、理事、監事及評議員ハ政府之ヲ命ズ
總裁、副總裁及理事ノ任期ハ四年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第十六條 總裁、副總裁及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ從タル事務所ノ業務ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十七條 總裁、副總裁及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八條 戰時金融金庫ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
前項ノ職員ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 業務
第十九條 戰時金融金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一 國家緊要產業ヲ營ム者又ハ政府ノ方針ニ基キ未動遊休設備(產業設備ニシテ未完成又ハ遊休ノ狀態ニ在ルモノヲ謂フ)ヲ保有シ、重要物資ヲ貯藏シ若ハ事業ノ整備ヲ爲ス者ニ對スル出資
二 前號ニ揭グル者ニ對スル資金ノ融通
三 第一號ニ揭グル者ノ爲ニスル債務ノ引受又ハ保證
四 第一號ニ揭グル者ノ發行スル社債(特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル法人ニシテ會社ニ非ザルモノノ發行スル債券ヲ含ム)ノ應募又ハ引受
五 市價安定ノ爲ニスル有價證券ノ賣買及保有
六 前各號ノ業務ニ附帶スル業務
戰時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ業務ノ外戰時金融金庫ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得
第四章 戰時金融債券
第二十條 戰時金融金庫ハ拂込資本金額ノ十倍ヲ限リ戰時金融債券ヲ發行スルコトヲ得
第二十一條 戰時金融債券ハ額面金額五十圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト爲スコトヲ得
戰時金融債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第二十二條 戰時金融金庫ハ戰時金融債券借換ノ爲一時第二十條ノ制限ニ依ラズ戰時金融債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ戰時金融債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊戰時金融債券ヲ償還スベシ
第二十三條 政府ハ戰時金融債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
第二十四條 戰時金融金庫ニ於テ戰時金融債券ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十五條 戰時金融債券ノ消滅時效ハ元本ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十六條 所得稅法及有價證券移轉稅法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ戰時金融債券ニ之ヲ準用ス
第二十七條 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外戰時金融債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 會計及補助
第二十八條 戰時金融金庫ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第二十九條 戰時金融金庫ハ設立ノ時及每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
第三十條 戰時金融金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 國債又ハ地方債ノ取得
二 大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金
第三十一條 戰時金融金庫剩餘金ノ處分ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十二條 戰時金融金庫ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ剩餘金中ヨリ準備金ノ積立ヲ爲スベシ
第三十三條 戰時金融金庫ノ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザルトキ(剩餘金額ナキトキ及損失ヲ生ジタルトキヲ含ム)ハ政府ハ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ
每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
前條ノ準備金中損失ノ塡補又ハ配當準備ノ爲積立テタル金額ハ後事業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ剩餘金ト看做ス
第三十四條 戰時金融金庫ハ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額(前條第二項ノ規定ニ依リ償還ニ充ツベキ金額アルトキハ之ヲ控除シタル殘額トス以下同ジ)ガ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過セザルトキハ政府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
戰時金融金庫ハ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザル場合ニ於テ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ政府ニ配當スベシ
第三十五條 第十九條第一項第一號又ハ第四號ノ規定ニ依ル出資又ハ社債(特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル法人ニシテ會社ニ非ザルモノノ發行スル債券ヲ含ム以下本條ニ於テ同ジ)ノ保有ヨリ生ズル戰時金融金庫ノ甲種ノ配當利子所得ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ分類所得稅ヲ課セズ戰時金融金庫ガ同條第二項ノ規定ニ依リ出資又ハ社債ノ保有ヲ爲ス場合ニ於テ之ヨリ生ズル甲種ノ配當利子所得ニ付亦同ジ
第三十六條 戰時金融金庫ガ第三十三條第一項ノ規定ニ依リ受クル補給金ハ命令ノ定ムル所ニ依リ法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ益金ニ算入セズ
第六章 監督
第三十七條 戰時金融金庫ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十八條 主務大臣ハ戰時金融金庫ノ目的達成上必要アリト認ムルトキハ必要ナル業務ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十九條 戰時金融金庫ハ業務開始ノ際業務ノ方法ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第四十條 主務大臣ハ戰時金融金庫ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十一條 主務大臣ハ戰時金融金庫監理官ヲ置キ戰時金融金庫ノ業務ヲ監視セシム
第四十二條 戰時金融金庫監理官ハ何時ニテモ戰時金融金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
戰時金融金庫監理官ハ何時ニテモ戰時金融金庫ニ命ジ業務及財產ノ狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
戰時金融金庫監理官ハ戰時金融金庫ノ諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第四十三條 戰時金融金庫ノ役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第七章 雜則
第四十四條 戰時金融金庫ガ第十九條ノ規定ニ依ル業務ニ因リテ受ケタル損失ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ及其ノ額ハ特別融通損失審査會之ヲ決定ス
第四十五條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル者ヨリ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
一 戰時金融金庫ヨリ出資又ハ資金ノ融通ヲ受ケタル者
二 戰時金融金庫ニ依リ債務ヲ引受ケラレ又ハ債務ヲ保證セラレタル債務者
三 戰時金融金庫ニ依リ應募セラレ又ハ引受ケラレタル社債ノ發行者
第八章 罰則
第四十六條 前條ノ規定ニ違反シ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前項前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前項ノ罰金刑ヲ科ス
第四十七條 左ノ場合ニ於テハ戰時金融金庫ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ行ヒタルトキ
三 第二十條又ハ第二十二條第二項ノ規定ニ違反シ戰時金融債券ノ發行ヲ爲シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
四 第三十條ノ規定ニ違反シ業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
五 主務大臣ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
六 第四十二條ノ規定ニ依ル戰時金融金庫監理官ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報吿ヲ爲サザルトキ
第四十八條 左ノ場合ニ於テハ戰時金融金庫ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 第二十九條ノ規定ニ依ル書類ヲ備置カザルトキ又ハ其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ
第四十九條 第十二條ノ規定ニ違反シ戰時金融金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第五十條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一條 政府ハ設立委員ヲ命ジ戰時金融金庫ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第五十二條 日本協同證券株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三條ニ定ムル株主總會ノ決議ヲ以テ戰時金融金庫ニ吸收セラルルコトヲ得
日本協同證券株式會社前項ノ決議ヲ爲シタルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十三條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十四條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總出資ヨリ政府ニ割當ツベキ出資及日本協同證券株式會社ノ株式ニ引當ツベキ出資ヲ控除シタル殘餘ノ出資ニ付出資者ヲ募集スベシ
前項ノ出資ノ引當ハ日本協同證券株式會社ノ株式二株ニ付戰時金融金庫ノ半額拂込濟出資一口ノ割合ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第五十五條 設立委員ハ前條第一項ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク日本協同證券株式會社ノ株式ニ引當ツベキ出資以外ノ出資ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
第五十六條 前條第二項ノ拂込完了シタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ戰時金融金庫總裁ニ引渡スベシ
戰時金融金庫總裁前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ總裁、副總裁、理事及監事ノ全員ハ設立ノ登記ヲ爲スベシ
戰時金融金庫ハ前項ノ登記ヲ爲スニ因リテ成立ス
第五十七條 戰時金融金庫ノ成立ニ因リ日本協同證券株式會社ハ之ニ吸收セラルルモノトシ日本協同證券株式會社ノ權利義務ハ戰時金融金庫ニ於テ之ヲ承繼ス
第五十八條 日本協同證券株式會社ノ株式ヲ目的トスル質權其ノ他ノ權利ハ其ノ株式ニ對シ引當テラレタル出資ノ持分ノ上ニ存在ス
第五十九條 第五十七條ノ規定ニ依ル日本協同證券株式會社ヨリ戰時金融金庫ヘノ有價證券ノ移轉ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ課セズ
第六十條 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外戰時金融金庫ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條 第五十二條第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ效力ヲ生ゼザル場合ニ於テハ戰時金融金庫ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二條 登錄稅法中左ノ通改正ス
第四條ノ二 戰時金融金庫カ戰時金融債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘシ
一 戰時金融債券ノ拂込 拂込金額 千分ノ一
二 登記事項ノ變更、消滅又ハ廢止 每一件 金十圓
從タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各號ノ登記ヲ受クルトキハ每一件金二圓ノ登錄稅ヲ納ムヘシ
第十九條第七號中「庶民金庫、」ノ下ニ「戰時金融金庫、」ヲ、「庶民金庫法、」ノ下ニ「戰時金融金庫法、」ヲ加フ
第六十三條 印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第六號ノ三ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
六ノ三ノ二 戰時金融債券及戰時金融金庫ノ發スル出資證券
第六十四條 有價證券業取締法中左ノ通改正ス
第一條中「及有價證券割賦販賣業者」ヲ「、有價證券割賦販賣業者及戰時金融金庫」ニ改ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル戦時金融金庫法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月十九日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第三十二号
戦時金融金庫法
第一章 総則
第一条 戦時金融金庫ハ戦時ニ際シ生産拡充及産業再編成等ノ為必要ナル資金ニシテ他ノ金融機関等ヨリ供給ヲ受クルコト困難ナルモノヲ供給シ併セテ有価証券ノ市価安定ヲ図ルコトヲ目的トス
戦時金融金庫ハ法人トス
第二条 戦時金融金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
戦時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ設置シ又ハ銀行其ノ他主務大臣ノ指定スル者ヲシテ業務ノ一部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第三条 戦時金融金庫ノ資本金ハ三億円トシ之ヲ三百万口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ百円トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第四条 戦時金融金庫ハ出資ニ対シ出資証券ヲ発行ス
出資証券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 政府ハ二億円ヲ限リ戦時金融金庫ニ出資スルコトヲ得
前項ノ出資ハ国債証券ヲ交付シテ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第六条 戦時金融金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ戦時金融金庫ニ払込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ズ
第七条 出資者ハ戦時金融金庫ノ承認ヲ経テ其ノ持分ヲ譲渡スコトヲ得
第八条 払込ヲ怠リタル出資者ニ対シ戦時金融金庫ガ一月以上ノ相当ノ期間ヲ定メ払込ノ請求ヲ為シタルニ拘ラズ出資者ガ払込ヲ為サザルトキハ戦時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ出資者ノ持分ヲ処分スルコトヲ得
戦時金融金庫ハ持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ヨリ滞納金額及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ額ヲ控除シタル金額ヲ従前ノ出資者ニ払戻スコトヲ要ス
持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ガ滞納金額ニ満タザル場合ニ於テハ戦時金融金庫ハ従前ノ出資者ニ対シ不足額ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ戦時金融金庫ガ損害賠償及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ為スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間内ニ払込ヲ為サザルトキハ戦時金融金庫ハ其ノ出資者ニ対シ二週間内ニ出資証券ヲ戦時金融金庫ニ提出スベキ旨ヲ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資証券ハ其ノ効力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ戦時金融金庫ハ遅滞ナク失効シタル出資証券ノ番号並ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公告スルコトヲ要ス
第九条 戦時金融金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資産ニ関スル事項
五 役員ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 戦時金融債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
定款ノ変更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第十条 戦時金融金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十一条 戦時金融金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 戦時金融金庫ニ非ザル者ハ戦時金融金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 職員
第十三条 戦時金融金庫ニ役員トシテ総裁副総裁各一人、理事五人以上、監事二人以上及評議員若干人ヲ置ク
第十四条 総裁ハ戦時金融金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ戦時金融金庫ヲ代表シ総裁ヲ輔佐シテ戦時金融金庫ノ業務ヲ掌理シ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ戦時金融金庫ヲ代表シ総裁及副総裁ヲ輔佐シテ戦時金融金庫ノ業務ヲ掌理シ総裁及副総裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁及副総裁共ニ欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ戦時金融金庫ノ業務ヲ監査ス
評議員ハ戦時金融金庫ノ業務ニ関スル重要事項ニ付総裁ノ諮問ニ応ジ又ハ総裁ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
総裁ハ主務大臣ノ定ムル事項ニ付テハ評議員ニ諮問スルコトヲ要ス
第十五条 総裁、副総裁、理事、監事及評議員ハ政府之ヲ命ズ
総裁、副総裁及理事ノ任期ハ四年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第十六条 総裁、副総裁及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ従タル事務所ノ業務ニ関シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十七条 総裁、副総裁及理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八条 戦時金融金庫ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス
前項ノ職員ノ範囲ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 業務
第十九条 戦時金融金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一 国家緊要産業ヲ営ム者又ハ政府ノ方針ニ基キ未動遊休設備(産業設備ニシテ未完成又ハ遊休ノ状態ニ在ルモノヲ謂フ)ヲ保有シ、重要物資ヲ貯蔵シ若ハ事業ノ整備ヲ為ス者ニ対スル出資
二 前号ニ掲グル者ニ対スル資金ノ融通
三 第一号ニ掲グル者ノ為ニスル債務ノ引受又ハ保証
四 第一号ニ掲グル者ノ発行スル社債(特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル法人ニシテ会社ニ非ザルモノノ発行スル債券ヲ含ム)ノ応募又ハ引受
五 市価安定ノ為ニスル有価証券ノ売買及保有
六 前各号ノ業務ニ附帯スル業務
戦時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ業務ノ外戦時金融金庫ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得
第四章 戦時金融債券
第二十条 戦時金融金庫ハ払込資本金額ノ十倍ヲ限リ戦時金融債券ヲ発行スルコトヲ得
第二十一条 戦時金融債券ハ額面金額五十円以上トシ無記名利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト為スコトヲ得
戦時金融債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十二条 戦時金融金庫ハ戦時金融債券借換ノ為一時第二十条ノ制限ニ依ラズ戦時金融債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ戦時金融債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧戦時金融債券ヲ償還スベシ
第二十三条 政府ハ戦時金融債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ヲ保証スルコトヲ得
第二十四条 戦時金融金庫ニ於テ戦時金融債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十五条 戦時金融債券ノ消滅時効ハ元本ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十六条 所得税法及有価証券移転税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ戦時金融債券ニ之ヲ準用ス
第二十七条 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外戦時金融債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 会計及補助
第二十八条 戦時金融金庫ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第二十九条 戦時金融金庫ハ設立ノ時及毎事業年度ノ初ニ於テ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
第三十条 戦時金融金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ余裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 国債又ハ地方債ノ取得
二 大蔵省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金
第三十一条 戦時金融金庫剰余金ノ処分ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十二条 戦時金融金庫ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ剰余金中ヨリ準備金ノ積立ヲ為スベシ
第三十三条 戦時金融金庫ノ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザルトキ(剰余金額ナキトキ及損失ヲ生ジタルトキヲ含ム)ハ政府ハ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ
毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
前条ノ準備金中損失ノ填補又ハ配当準備ノ為積立テタル金額ハ後事業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配当シ得ベキ剰余金ト看做ス
第三十四条 戦時金融金庫ハ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額(前条第二項ノ規定ニ依リ償還ニ充ツベキ金額アルトキハ之ヲ控除シタル残額トス以下同ジ)ガ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過セザルトキハ政府ノ出資ニ対シ剰余金ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
戦時金融金庫ハ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザル場合ニ於テ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ政府ニ配当スベシ
第三十五条 第十九条第一項第一号又ハ第四号ノ規定ニ依ル出資又ハ社債(特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル法人ニシテ会社ニ非ザルモノノ発行スル債券ヲ含ム以下本条ニ於テ同ジ)ノ保有ヨリ生ズル戦時金融金庫ノ甲種ノ配当利子所得ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ分類所得税ヲ課セズ戦時金融金庫ガ同条第二項ノ規定ニ依リ出資又ハ社債ノ保有ヲ為ス場合ニ於テ之ヨリ生ズル甲種ノ配当利子所得ニ付亦同ジ
第三十六条 戦時金融金庫ガ第三十三条第一項ノ規定ニ依リ受クル補給金ハ命令ノ定ムル所ニ依リ法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ益金ニ算入セズ
第六章 監督
第三十七条 戦時金融金庫ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十八条 主務大臣ハ戦時金融金庫ノ目的達成上必要アリト認ムルトキハ必要ナル業務ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ変更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十九条 戦時金融金庫ハ業務開始ノ際業務ノ方法ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第四十条 主務大臣ハ戦時金融金庫ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第四十一条 主務大臣ハ戦時金融金庫監理官ヲ置キ戦時金融金庫ノ業務ヲ監視セシム
第四十二条 戦時金融金庫監理官ハ何時ニテモ戦時金融金庫ノ業務及財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
戦時金融金庫監理官ハ何時ニテモ戦時金融金庫ニ命ジ業務及財産ノ状況ヲ報告セシムルコトヲ得
戦時金融金庫監理官ハ戦時金融金庫ノ諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第四十三条 戦時金融金庫ノ役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ政府ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第七章 雑則
第四十四条 戦時金融金庫ガ第十九条ノ規定ニ依ル業務ニ因リテ受ケタル損失ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ及其ノ額ハ特別融通損失審査会之ヲ決定ス
第四十五条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各号ニ掲グル者ヨリ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
一 戦時金融金庫ヨリ出資又ハ資金ノ融通ヲ受ケタル者
二 戦時金融金庫ニ依リ債務ヲ引受ケラレ又ハ債務ヲ保証セラレタル債務者
三 戦時金融金庫ニ依リ応募セラレ又ハ引受ケラレタル社債ノ発行者
第八章 罰則
第四十六条 前条ノ規定ニ違反シ報告ヲ為サズ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シテ前項前段ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ亦前項ノ罰金刑ヲ科ス
第四十七条 左ノ場合ニ於テハ戦時金融金庫ノ総裁、副総裁、理事又ハ監事ヲ千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ行ヒタルトキ
三 第二十条又ハ第二十二条第二項ノ規定ニ違反シ戦時金融債券ノ発行ヲ為シ又ハ償還ヲ為サザルトキ
四 第三十条ノ規定ニ違反シ業務上ノ余裕金ヲ運用シタルトキ
五 主務大臣ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
六 第四十二条ノ規定ニ依ル戦時金融金庫監理官ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報告ヲ為サザルトキ
第四十八条 左ノ場合ニ於テハ戦時金融金庫ノ総裁、副総裁、理事又ハ監事ヲ五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 第二十九条ノ規定ニ依ル書類ヲ備置カザルトキ又ハ其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
第四十九条 第十二条ノ規定ニ違反シ戦時金融金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第五十条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一条 政府ハ設立委員ヲ命ジ戦時金融金庫ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第五十二条 日本協同証券株式会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三条ニ定ムル株主総会ノ決議ヲ以テ戦時金融金庫ニ吸収セラルルコトヲ得
日本協同証券株式会社前項ノ決議ヲ為シタルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十三条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十四条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総出資ヨリ政府ニ割当ツベキ出資及日本協同証券株式会社ノ株式ニ引当ツベキ出資ヲ控除シタル残余ノ出資ニ付出資者ヲ募集スベシ
前項ノ出資ノ引当ハ日本協同証券株式会社ノ株式二株ニ付戦時金融金庫ノ半額払込済出資一口ノ割合ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
第五十五条 設立委員ハ前条第一項ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク日本協同証券株式会社ノ株式ニ引当ツベキ出資以外ノ出資ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
第五十六条 前条第二項ノ払込完了シタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ戦時金融金庫総裁ニ引渡スベシ
戦時金融金庫総裁前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ総裁、副総裁、理事及監事ノ全員ハ設立ノ登記ヲ為スベシ
戦時金融金庫ハ前項ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第五十七条 戦時金融金庫ノ成立ニ因リ日本協同証券株式会社ハ之ニ吸収セラルルモノトシ日本協同証券株式会社ノ権利義務ハ戦時金融金庫ニ於テ之ヲ承継ス
第五十八条 日本協同証券株式会社ノ株式ヲ目的トスル質権其ノ他ノ権利ハ其ノ株式ニ対シ引当テラレタル出資ノ持分ノ上ニ存在ス
第五十九条 第五十七条ノ規定ニ依ル日本協同証券株式会社ヨリ戦時金融金庫ヘノ有価証券ノ移転ニ付テハ有価証券移転税ヲ課セズ
第六十条 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外戦時金融金庫ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一条 第五十二条第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ効力ヲ生ゼザル場合ニ於テハ戦時金融金庫ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二条 登録税法中左ノ通改正ス
第四条ノ二 戦時金融金庫カ戦時金融債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムヘシ
一 戦時金融債券ノ払込 払込金額 千分ノ一
二 登記事項ノ変更、消滅又ハ廃止 毎一件 金十円
従タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各号ノ登記ヲ受クルトキハ毎一件金二円ノ登録税ヲ納ムヘシ
第十九条第七号中「庶民金庫、」ノ下ニ「戦時金融金庫、」ヲ、「庶民金庫法、」ノ下ニ「戦時金融金庫法、」ヲ加フ
第六十三条 印紙税法中左ノ通改正ス
第五条第六号ノ三ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
六ノ三ノ二 戦時金融債券及戦時金融金庫ノ発スル出資証券
第六十四条 有価証券業取締法中左ノ通改正ス
第一条中「及有価証券割賦販売業者」ヲ「、有価証券割賦販売業者及戦時金融金庫」ニ改ム