有価証券業取締法
法令番号: 法律第三十二號
公布年月日: 昭和13年3月29日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル有價證券業取締法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十八日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
商工大臣 吉野信次
法律第三十二號
有價證券業取締法
第一條 本法ニ於テ有價證券業トハ取引所ニ依ラザル有價證券ノ賣買又ハ其ノ媒介ヲ爲ス營業ヲ謂フ但シ銀行、信託會社及有價證券割賦販賣業者ノ營ムモノハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ有價證券ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 有價證券業ヲ營マントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
第三條 前條ノ免許ノ年限ハ五年トス
第四條 第二條ノ免許ヲ受クル者ハ免許料ヲ納ムベシ
前項ノ免許料ノ金額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ第二條ノ免許ヲ受クルコトヲ得ズ
一 破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
二 禁錮以上ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後三年ヲ經過スルニ至ル迄ノ者
三 取引所ノ會員又ハ取引員ニシテ除名セラレ除名ノ日ヨリ三年ヲ經過セザルモノ
四 第六條第二項又ハ第十四條ノ規定ニ依リ免許ヲ取消サレ取消ノ日ヨリ三年ヲ經過セザル者
五 營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セザル未成年者又ハ禁治產者ニシテ其ノ法定代理人ガ前各號ノ一ニ該當スルモノ
六 法人ニシテ其ノ業務ヲ執行スル役員中第一號乃至第四號ノ一ニ該當スル者アルモノ
第六條 第二條ノ免許ヲ受ケタル者(有價證券業者)前條第一號乃至第三號、第五號又ハ第六號ニ該當スルニ至リタルトキハ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
主務大臣ハ不正ノ手段ニ依リ第二條ノ免許ヲ受ケタル者アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第七條 有價證券業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ營業保證金ヲ供託スベシ
前項ノ營業保證金ハ主務大臣ノ認許シタル有價證券ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第八條 有價證券業者ト其ノ業務ニ關シ取引ヲ爲シタル者ハ其ノ取引ニ關シ生ジタル債權ニ關シ前條ノ營業保證金ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第九條 有價證券業者ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一 商號ヲ變更セントスルトキ
二 支店其ノ他ノ營業所又ハ代理店ヲ設置セントスルトキ
三 本店其ノ他ノ營業所ノ位置ヲ變更セントスルトキ
第十條 有價證券業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ營業ニ關スル帳簿ヲ備ヘ必要ナル事項ヲ之ニ記載スベシ
第十一條 有價證券業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ業務報吿書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第十二條 行政官廳必要アリト認ムルトキハ有價證券業者ニ對シ其ノ業務若ハ財產ニ關スル報吿ヲ命ジ又ハ當該官吏ヲシテ有價證券業者ノ營業所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十三條 行政官廳ハ有價證券業者ノ業務又ハ財產ノ狀況ニ依リ之ト取引ヲ爲ス者ノ利益ヲ保護スル爲必要アリト認ムルトキハ業務ヲ停止シ又ハ制限シ、財產ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十四條 有價證券業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ主務大臣ハ第二條ノ免許ヲ取消シ又ハ業務ヲ停止シ若ハ制限スルコトヲ得
一 業務ニ關シ詐僞ノ行爲ヲ以テ他人ヨリ金錢若ハ有價證券ノ交付ヲ受ケタルトキ又ハ業務ニ關シ他人ニ交付スベキ金錢若ハ有價證券ヲ不正ニ領得シタルトキ
二 業務ニ關シ差金ノ授受ヲ目的トスル行爲ヲ爲シタルトキ
三 本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキ
第十五條 第二條ノ規定ニ違反シ免許ヲ受ケズシテ有價證券業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 有價證券業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第九條ノ規定ニ依リ認可ヲ受クベキ事項ヲ認可ヲ受ケズシテ爲シタルトキ
二 第十條ノ規定ニ依ル帳簿ヲ備ヘズ又ハ之ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタルトキ
三 第十一條ノ規定ニ依ル業務報吿書ノ提出ヲ爲サズ又ハ之ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタルトキ
四 第十二條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタルトキ又ハ同條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキ
五 第十三條又ハ第十四條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
第十七條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十八條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十九條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ有價證券業ヲ營ム者又ハ其ノ營業ヲ相續ニ因リテ承繼シタル者ハ本法施行ノ日ヨリ六月ヲ限リ第二條ノ規定ニ拘ラズ其ノ事業ヲ營ムコトヲ得
前項ノ者前項ノ期間內ニ第二條ノ免許ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ對スル免許又ハ不免許ノ處分ノ日迄亦前項ニ同ジ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル有価証券業取締法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十八日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
商工大臣 吉野信次
法律第三十二号
有価証券業取締法
第一条 本法ニ於テ有価証券業トハ取引所ニ依ラザル有価証券ノ売買又ハ其ノ媒介ヲ為ス営業ヲ謂フ但シ銀行、信託会社及有価証券割賦販売業者ノ営ムモノハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ有価証券ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 有価証券業ヲ営マントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
第三条 前条ノ免許ノ年限ハ五年トス
第四条 第二条ノ免許ヲ受クル者ハ免許料ヲ納ムベシ
前項ノ免許料ノ金額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ第二条ノ免許ヲ受クルコトヲ得ズ
一 破産者ニシテ復権ヲ得ザルモノ
二 禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後三年ヲ経過スルニ至ル迄ノ者
三 取引所ノ会員又ハ取引員ニシテ除名セラレ除名ノ日ヨリ三年ヲ経過セザルモノ
四 第六条第二項又ハ第十四条ノ規定ニ依リ免許ヲ取消サレ取消ノ日ヨリ三年ヲ経過セザル者
五 営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セザル未成年者又ハ禁治産者ニシテ其ノ法定代理人ガ前各号ノ一ニ該当スルモノ
六 法人ニシテ其ノ業務ヲ執行スル役員中第一号乃至第四号ノ一ニ該当スル者アルモノ
第六条 第二条ノ免許ヲ受ケタル者(有価証券業者)前条第一号乃至第三号、第五号又ハ第六号ニ該当スルニ至リタルトキハ免許ハ其ノ効力ヲ失フ
主務大臣ハ不正ノ手段ニ依リ第二条ノ免許ヲ受ケタル者アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第七条 有価証券業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ営業保証金ヲ供託スベシ
前項ノ営業保証金ハ主務大臣ノ認許シタル有価証券ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第八条 有価証券業者ト其ノ業務ニ関シ取引ヲ為シタル者ハ其ノ取引ニ関シ生ジタル債権ニ関シ前条ノ営業保証金ニ付他ノ債権者ニ先チ弁済ヲ受クルノ権利ヲ有ス
第九条 有価証券業者ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一 商号ヲ変更セントスルトキ
二 支店其ノ他ノ営業所又ハ代理店ヲ設置セントスルトキ
三 本店其ノ他ノ営業所ノ位置ヲ変更セントスルトキ
第十条 有価証券業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ営業ニ関スル帳簿ヲ備ヘ必要ナル事項ヲ之ニ記載スベシ
第十一条 有価証券業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ業務報告書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第十二条 行政官庁必要アリト認ムルトキハ有価証券業者ニ対シ其ノ業務若ハ財産ニ関スル報告ヲ命ジ又ハ当該官吏ヲシテ有価証券業者ノ営業所其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務若ハ財産ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十三条 行政官庁ハ有価証券業者ノ業務又ハ財産ノ状況ニ依リ之ト取引ヲ為ス者ノ利益ヲ保護スル為必要アリト認ムルトキハ業務ヲ停止シ又ハ制限シ、財産ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十四条 有価証券業者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ主務大臣ハ第二条ノ免許ヲ取消シ又ハ業務ヲ停止シ若ハ制限スルコトヲ得
一 業務ニ関シ詐偽ノ行為ヲ以テ他人ヨリ金銭若ハ有価証券ノ交付ヲ受ケタルトキ又ハ業務ニ関シ他人ニ交付スベキ金銭若ハ有価証券ヲ不正ニ領得シタルトキ
二 業務ニ関シ差金ノ授受ヲ目的トスル行為ヲ為シタルトキ
三 本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキ
第十五条 第二条ノ規定ニ違反シ免許ヲ受ケズシテ有価証券業ヲ営ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 有価証券業者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第九条ノ規定ニ依リ認可ヲ受クベキ事項ヲ認可ヲ受ケズシテ為シタルトキ
二 第十条ノ規定ニ依ル帳簿ヲ備ヘズ又ハ之ニ虚偽ノ記載ヲ為シタルトキ
三 第十一条ノ規定ニ依ル業務報告書ノ提出ヲ為サズ又ハ之ニ虚偽ノ記載ヲ為シタルトキ
四 第十二条ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタルトキ又ハ同条ノ規定ニ依ル当該官吏ノ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキ
五 第十三条又ハ第十四条ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
第十七条 法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十八条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十九条 前二条ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処スルコトヲ得ズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ有価証券業ヲ営ム者又ハ其ノ営業ヲ相続ニ因リテ承継シタル者ハ本法施行ノ日ヨリ六月ヲ限リ第二条ノ規定ニ拘ラズ其ノ事業ヲ営ムコトヲ得
前項ノ者前項ノ期間内ニ第二条ノ免許ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ対スル免許又ハ不免許ノ処分ノ日迄亦前項ニ同ジ