第一條 政府ハ國民體力ノ向上ヲ圖ル爲本法ノ定ムル所ニ依リ國民ノ體力ヲ管理ス
前項ノ管理トハ國民ノ體力ヲ檢査シ其ノ向上ニ付指導其ノ他必要ナル措置ヲ爲スヲ謂フ
第二條 本法ニ於テ被管理者ト稱スルハ本法施行地內ニ居住地(一定ノ居住地ナキ者ニ付テハ命令ヲ以テ定ムル地トス以下之ニ同ジ)ヲ有スル帝國臣民タル未成年者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當セザルモノヲ謂フ
一 陸海軍軍人ニシテ現役中ノモノ(未ダ入營セザル者及歸休下士官兵ヲ除ク)又ハ戰時若ハ事變ニ際シ召集中ノモノ
第三條 本法ニ於テ保護者ト稱スルハ被管理者ニ對シ親權ヲ行フ者(親權ヲ行フ者ナキトキハ後見人又ハ後見人ノ職務ヲ行フ者)ニシテ本法施行地內ニ居住地ヲ有スルモノヲ謂フ
第四條 被管理者ニシテ其ノ年十一月三十日ニ於テ年齡二十年ニ達セザルモノハ本法ノ定ムル所ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要ス
保護者ハ前項ノ被管理者ヲシテ體力檢査ヲ受ケシムル義務ヲ負フ但シ被管理者ヲ敎育、監護又ハ使用ノ目的ヲ以テ寄寓セシムル者アル場合ハ其ノ者ニ於テ其ノ義務ヲ負フ
第五條 市町村長ハ前條第一項ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要スル被管理者ニシテ其ノ市町村內ニ居住地ヲ有スルモノノ體力檢査ヲ行フベシ但シ事務所、商店、工場、事業場等ノ事業主又ハ管理人ニシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ヨリ體力檢査ヲ行フコトヲ命ゼラレタルモノハ其ノ事務所、商店、工場、事業場等ニ使用セラルル被管理者ニシテ同條同項ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要スルモノノ體力檢査ヲ行フベシ
勅令ヲ以テ定ムル學校又ハ幼稚園ニ在學又ハ在園スル被管理者ニシテ前條第一項ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要スルモノノ體力檢査ハ前項ノ規定ニ拘ラズ當該學校長又ハ園長之ヲ行フベシ
第六條 第四條第二項ノ規定ニ依ル義務者ハ被管理者ノ氏名、生年月日其ノ他命令ヲ以テ定ムル事項ヲ被管理者ノ居住地ノ市町村長ニ屆出ヅベシ但シ前條第二項ノ被管理者ニ關シテハ此ノ限ニ在ラズ
第七條 本法ニ定ムルモノノ外體力檢査ノ項目、時期、方法、結果ノ報吿其ノ他體力檢査ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 被管理者體力檢査ヲ受ケタルトキハ本人又ハ保護者ニ對シ體力手帳ヲ交付ス
體力手帳ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被管理者若ハ保護者又ハ被管理者若ハ保護者タリシ者ニ於テ之ヲ保存シ體力檢査其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合ニ之ヲ提示スベシ
前二項ニ定ムルモノノ外體力手帳ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 檢診、療養ノ指導其ノ他體力管理ニ關スル醫務ニ從事セシムル爲國民體力管理醫ヲ置ク
醫師又ハ齒科醫師ハ正當ノ事由ナクシテ國民體力管理醫タルコトヲ拒ムコトヲ得ズ
本法ニ定ムルモノノ外國民體力管理醫ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 國民體力管理醫ハ體力檢査ニ於テ被管理者ヲ檢診シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ本人又ハ第四條第二項ノ規定ニ依ル義務者ニ對シ被管理者ノ體力向上ニ關スル指導ヲ爲スベシ
第十一條 地方長官ハ體力檢査ニ基キ必要アリト認ムルトキハ被管理者ニ付本人又ハ保護者ニ對シ國又ハ公共團體ノ體力向上施設ノ利用、就業ノ場所又ハ時間ノ制限、業務ノ變更其ノ他ノ體力向上ニ關スル指示ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ被管理者ヲ使用スル者ニ對シテモ之ヲ爲スコトヲ得
第十二條 地方長官ハ體力檢査ニ基キ必要アリト認ムルトキハ主務大臣ノ指定スル疾病ニ罹レル被管理者ニ付本人又ハ保護者ニ對シ療養ニ關スル處置ヲ命ズルコトヲ得但シ官立ノ學校又ハ公立若ハ私立ノ大學、專門學校、實業專門學校、高等學校若ハ之ニ準ズベキ學校ニ在學又ハ在園スル被管理者ニ關シテハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ處置ヲ命ゼラレタル者貧困ノ爲其ノ義務ヲ履行スルコト能ハザルトキハ地方長官ハ其ノ者ノ申請ニ依リ國民體力管理醫ニ就キ療養ノ指導ヲ受ケシムルコトヲ得
第十三條 國又ハ道府縣ノ事業ニ使用セラルル被管理者ニ關シ第五條第一項及第十條乃至前條ノ規定ヲ適用シ難キ事項ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
監獄、矯正院、少年敎護院其ノ他勅令ヲ以テ定ムル施設ニ在ル被管理者ニ關シ第四條第二項、第五條第一項、第六條、第八條第一項第二項及第十條乃至前條ノ規定ヲ適用シ難キ事項ニ付亦前項ニ同ジ
第十四條 被管理者ヲ使用スル者ハ體力檢査ノ結果ヲ不當ニ援用シテ被管理者ニ對シ不利益ナル取扱ヲ爲スコトヲ得ズ
第十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條第一項但書ノ規定ニ依ル地方長官ノ命令ニ違反シ體力檢査ヲ行ハザル者
二 被管理者、保護者又ハ第四條第二項但書ノ規定ニ依ル義務者ノ義務履行ヲ妨ゲタル者
第十七條 事業主又ハ管理人ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第十五條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十八條 第十五條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十九條 體力檢査其ノ他體力管理ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者其ノ職務上知得シタル人ノ祕密ヲ故ナク漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十條 本法ノ罰則ハ國、道府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニハ之ヲ適用セズ
第二十一條 町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中町村ニ關スル規定ハ町村ニ準ズベキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス