朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル遊興飮食稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
法律第四十一號
遊興飮食稅法
第一條 料理店、貸席、旅館其ノ他命令ヲ以テ定ムル類似ノ場所ニ於ケル遊興及飮食ニハ本法ニ依リ遊興飮食稅ヲ課ス
第二條 遊興飮食稅ノ稅率ハ遊興飮食ノ料金ノ百分ノ十五トス但シ藝妓ノ花代ニ付テハ料金ノ百分ノ三十トス
前項ノ遊興飮食ノ料金ハ前條ニ規定スル場所ノ經營者ガ遊興又ハ飮食ヲ爲シタル者ヨリ其ノ遊興又ハ飮食ニ付領收スベキ金額ヲ謂フ
遊興飮食ノ料金ノ算定ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 遊興飮食ノ料金ガ一人一囘三圓ニ滿タザル場合ニハ遊興飮食稅ヲ課セズ但シ左ニ揭グル料金ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
一 藝妓ノ花代及藝妓ノ花代ヲ伴フ遊興飮食ノ料金
二 藝妓ノ花代ニ類スル料金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ
三 命令ヲ以テ定ムル料理店ニ於ケル遊興飮食ノ料金
前項ノ一人一囘ノ料金ノ計算ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 遊興飮食稅ハ第一條ニ規定スル場所ノ經營者ヨリ之ヲ徵收ス
第五條 第一條ニ規定スル場所ノ經營者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每月分ノ遊興飮食料金ヲ記載シタル申吿書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スベシ但シ經營ヲ廢止シタル場合ニ於テハ直ニ之ヲ提出スベシ
申吿書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申吿ヲ不相當ト認メタルトキハ政府ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
第六條 遊興飮食稅ハ每月分ヲ翌月末迄ニ納付スベシ但シ經營ヲ廢止シタル場合ニ於テハ直ニ之ヲ納付スベシ
第七條 第一條ニ規定スル場所ノ經營者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每月分ノ遊興飮食料金中其ノ月ニ於テ領收セザルモノニ對スル稅金ヲ其ノ料金ヲ領收シタル月ノ翌月末日迄ニ納付スルコトヲ得但シ其ノ經營ヲ廢止シタル場合ニ於テ未ダ納付セザル稅金アルトキハ直ニ之ヲ納付スベシ
前項ノ規定ニ依リ未ダ稅金ヲ納付セザル料金ニシテ領收スルコト能ハザルニ至リタルモノニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ遊興飮食稅ヲ免除ス
第八條 第一條ニ規定スル場所ヲ經營セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ豫メ政府ニ申吿スベシ之ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第九條 第一條ニ規定スル場合ノ經營者及經營者ト經營上取引關係アル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ業務ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載スベシ
前項ニ規定スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ業務ニ關シ必要ナル事項ヲ政府ニ申吿スベシ
第十條 收稅官吏ハ前條第一項ニ規定スル者ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ其ノ業務ニ關スル帳簿書類ヲ檢査スルコトヲ得
第十一條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ遊興飮食稅ヲ逋脫シ又ハ逋脫セントシタル者ハ其ノ逋脫シ又ハ逋脫セントシタル稅金ノ五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ罰金額ガ二十圓ニ滿タザルトキハ之ヲ二十圓トス
第十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第五條第一項ノ規定ニ依ル申吿ヲ怠リ又ハ詐リタル者
二 政府ニ申吿セズシテ第一條ニ規定スル場所ヲ經營シタル者
前項第二號ニ規定スル者ニ付テハ直ニ其ノ遊興飮食稅ヲ徵收ス
第十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第九條第一項ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隱匿シタル者
二 第九條第二項ノ規定ニ依ル申吿ヲ怠リ又ハ詐リタル者
三 第十條ノ規定ニ依ル收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第十四條 第十一條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
第十五條 第二條ニ規定スル場所ノ經營者又ハ經營者ト經營上取引關係アル者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ經營者又ハ經營者ト經營上取引關係アル者ヲ處罰ス
第十六條 北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ遊興飮食稅ノ課稅標準タル料金ニ對シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第十七條 政府ハ第一條ニ規定スル場所ノ經營者ノ組織スル團體ニ對シ徵稅上必要ナル設備ヲ爲シ又ハ徵收事務ノ補助ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ前項ノ團體ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ交付スルコトヲ得
附 則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
支那事變特別稅法第五十二條ノ二ニ規定スル場所ヲ經營スル者ニシテ同法ニ依リ其ノ旨ヲ申吿シタルモノハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申吿シタルモノト看做ス
支那事變特別稅法第六十二條ノ二第一項ノ規定ニ依リ爲シタル命令ハ之ヲ第十七條第一項ノ規定ニ依リ爲シタル命令ト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル遊興飲食税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
法律第四十一号
遊興飲食税法
第一条 料理店、貸席、旅館其ノ他命令ヲ以テ定ムル類似ノ場所ニ於ケル遊興及飲食ニハ本法ニ依リ遊興飲食税ヲ課ス
第二条 遊興飲食税ノ税率ハ遊興飲食ノ料金ノ百分ノ十五トス但シ芸妓ノ花代ニ付テハ料金ノ百分ノ三十トス
前項ノ遊興飲食ノ料金ハ前条ニ規定スル場所ノ経営者ガ遊興又ハ飲食ヲ為シタル者ヨリ其ノ遊興又ハ飲食ニ付領収スベキ金額ヲ謂フ
遊興飲食ノ料金ノ算定ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 遊興飲食ノ料金ガ一人一回三円ニ満タザル場合ニハ遊興飲食税ヲ課セズ但シ左ニ掲グル料金ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
一 芸妓ノ花代及芸妓ノ花代ヲ伴フ遊興飲食ノ料金
二 芸妓ノ花代ニ類スル料金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ
三 命令ヲ以テ定ムル料理店ニ於ケル遊興飲食ノ料金
前項ノ一人一回ノ料金ノ計算ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 遊興飲食税ハ第一条ニ規定スル場所ノ経営者ヨリ之ヲ徴収ス
第五条 第一条ニ規定スル場所ノ経営者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎月分ノ遊興飲食料金ヲ記載シタル申告書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スベシ但シ経営ヲ廃止シタル場合ニ於テハ直ニ之ヲ提出スベシ
申告書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相当ト認メタルトキハ政府ハ其ノ課税標準額ヲ決定ス
第六条 遊興飲食税ハ毎月分ヲ翌月末迄ニ納付スベシ但シ経営ヲ廃止シタル場合ニ於テハ直ニ之ヲ納付スベシ
第七条 第一条ニ規定スル場所ノ経営者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎月分ノ遊興飲食料金中其ノ月ニ於テ領収セザルモノニ対スル税金ヲ其ノ料金ヲ領収シタル月ノ翌月末日迄ニ納付スルコトヲ得但シ其ノ経営ヲ廃止シタル場合ニ於テ未ダ納付セザル税金アルトキハ直ニ之ヲ納付スベシ
前項ノ規定ニ依リ未ダ税金ヲ納付セザル料金ニシテ領収スルコト能ハザルニ至リタルモノニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ遊興飲食税ヲ免除ス
第八条 第一条ニ規定スル場所ヲ経営セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ予メ政府ニ申告スベシ之ヲ廃止セントスルトキ亦同ジ
第九条 第一条ニ規定スル場合ノ経営者及経営者ト経営上取引関係アル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ業務ニ関スル事項ヲ帳簿ニ記載スベシ
前項ニ規定スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ業務ニ関シ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スベシ
第十条 収税官吏ハ前条第一項ニ規定スル者ニ対シ質問ヲ為シ又ハ其ノ業務ニ関スル帳簿書類ヲ検査スルコトヲ得
第十一条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ遊興飲食税ヲ逋脱シ又ハ逋脱セントシタル者ハ其ノ逋脱シ又ハ逋脱セントシタル税金ノ五倍ニ相当スル罰金ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ罰金額ガ二十円ニ満タザルトキハ之ヲ二十円トス
第十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第五条第一項ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ又ハ詐リタル者
二 政府ニ申告セズシテ第一条ニ規定スル場所ヲ経営シタル者
前項第二号ニ規定スル者ニ付テハ直ニ其ノ遊興飲食税ヲ徴収ス
第十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第九条第一項ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隠匿シタル者
二 第九条第二項ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ又ハ詐リタル者
三 第十条ノ規定ニ依ル収税官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第十四条 第十一条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ
第十五条 第二条ニ規定スル場所ノ経営者又ハ経営者ト経営上取引関係アル者ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ経営者又ハ経営者ト経営上取引関係アル者ヲ処罰ス
第十六条 北海道、府県、市町村其ノ他ノ公共団体ハ遊興飲食税ノ課税標準タル料金ニ対シ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
第十七条 政府ハ第一条ニ規定スル場所ノ経営者ノ組織スル団体ニ対シ徴税上必要ナル設備ヲ為シ又ハ徴収事務ノ補助ヲ為スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ前項ノ団体ニ対シ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ交付スルコトヲ得
附 則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
支那事変特別税法第五十二条ノ二ニ規定スル場所ヲ経営スル者ニシテ同法ニ依リ其ノ旨ヲ申告シタルモノハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申告シタルモノト看做ス
支那事変特別税法第六十二条ノ二第一項ノ規定ニ依リ為シタル命令ハ之ヲ第十七条第一項ノ規定ニ依リ為シタル命令ト看做ス