郵便年金令
法令番号: 勅令第四百三十四號
公布年月日: 昭和14年7月3日
法令の形式: 勅令
朕郵便年金令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年七月一日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
厚生大臣 廣瀨久忠
勅令第四百三十四號
郵便年金令
第一條 郵便年金ハ左ノ五種トス
一 卽時終身年金
二 据置終身年金
三 保證期間附卽時終身年金
四 保證期間附据置終身年金
五 定期年金
第二條 卽時終身年金ニ在リテハ年金契約ノ效力發生シタル日ヨリ年金受取人ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支拂ヲ爲スモノトス
卽時終身年金ニ在リテハ郵便年金法第十四條第一項ノ返還金ヲ支拂ハザルコトヲ約スルコトヲ得
第三條 据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ガ年金支拂開始年齡ニ達シタル日ヨリ其ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支拂ヲ爲スモノトス
前項ノ年金支拂開始年齡ハ五十歲、五十五歲、六十歲又ハ六十五歲トス
第四條 保證期間附卽時終身年金ニ在リテハ年金契約ノ效力發生シタル日ヨリ年金受取人ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支拂ヲ爲スノ外一定ノ保證期間內ニ年金受取人死亡シタルトキハ其ノ殘存期間遺族ニ繼續シテ年金ノ支拂ヲ爲スモノトス
前項ノ保證期間ハ年金契約ノ效力發生シタル日ヨリ十五年、二十年又ハ三十年トス
第五條 保證期間附据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ガ年金支拂開始年齡ニ達シタル日ヨリ其ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支拂ヲ爲スノ外一定ノ保證期間內ニ年金受取人死亡シタルトキハ其ノ殘存期間遺族ニ繼續シテ年金ノ支拂ヲ爲スモノトス
前項ノ年金支拂開始年齡ハ五十歲、五十五歲、六十歲又ハ六十五歲トス
第一項ノ保證期間ハ年金受取人ガ前項ノ年金支拂開始年齡ニ達シタル日ヨリ二十年トス
第六條 定期年金ニ在リテハ年金受取人ガ年金支拂開始年齡ニ達シタル日ヨリ一定ノ期間年金受取人ノ生存中年金ノ支拂ヲ爲スモノトス
前項ノ年金支拂開始年齡ハ十二歲、十五歲、十七歲又ハ二十歲トス
第一項ノ期間ハ年金受取人ガ前項ノ年金支拂開始年齡ニ達シタル日ヨリ五年又ハ十年トス
第七條 郵便年金法第二條第二項ノ遺族ハ年金受取人ノ配偶者、子、父、母、孫、祖父、祖母及兄弟姉妹ニシテ年金受取人ノ死亡當時ヨリ引續キ之ト同一戶籍內ニ在ル者竝ニ年金受取人ノ戶主トス
年金繼續受取人タルベキ者ノ順位ハ前項ニ揭グル順位ニ依リ同一順位者間ニ在リテハ其ノ順位ハ左ノ各號ノ規定ニ依ル
一 年金受取人ノ家督相續人又ハ戶主ハ之ヲ他ノ者ヨリ先ニス
二 男ハ之ヲ女ヨリ先ニス
三 子又ハ孫ニ付テハ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニシ嫡出子、庶子及私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
四 前二號ニ揭グル事項ニ付相同ジ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
年金受取人ハ年金支拂開始期ニ達シタル後ニ於テ前項ノ規定ニ依ル年金繼續受取人タルベキ者ノ順位ヲ變更シ之ヲ政府ニ通知スルコトヲ得
前項ノ通知アリタルトキハ年金繼續受取人タルベキ者ノ順位ハ第二項ノ規定ニ拘ラズ其ノ變更セラレタル順位トス
第八條 新ニ年金受取人タルコトヲ得ル者ノ年齡ハ左ノ區別ニ依ル
一 卽時終身年金 四十歲以上八十歲以下
二 据置終身年金 十二歲以上六十歲以下
三 保證期間ヲ十五年又ハ二十年トスル保證期間附卽時終身年金 四十歲以上七十五歲以下
四 保證期間ヲ三十年トスル保證期間附卽時終身年金 二十歲以上四十歲未滿
五 保證期間附据置終身年金 十二歲以上六十歲以下
六 定期年金 一歲以上十八歲以下
保證期間ヲ三十年トスル保證期間附卽時終身年金ニ在リテハ新ニ年金受取人タルコトヲ得ル者ハ寡婦又ハ厚生大臣ノ定ムル癈疾者トス
第九條 年金契約ヲ爲シタル後年金受取人ノ年齡ニ付錯誤アルコトヲ發見シタル場合ニ於テ郵便年金法第五條ノ掛金拂込ノ日ノ年齡ガ當該年金ニ付前條第一項各號ニ規定スル範圍內ナルトキハ當初ヨリ其ノ年齡ニ基キテ年金契約ヲ爲シタルモノト看做シ年金額ヲ更正ス其ノ年齡ガ當該年金ニ付前條第一項各號ニ規定スル最低ノ年齡ニ達セザルトキハ其ノ最低ノ年齡ニ達シタル日ニ於テ年金契約ノ效力發生シタルモノト看做シ年金額ヲ更正ス
前項ノ規定ニ依リ年金額ヲ更正スル場合ニ於テ其ノ金額ガ郵便年金法第三條ニ規定スル制限ヲ超ユルトキハ當初ヨリ最高ノ年金額ニ基キテ年金契約ヲ爲シタルモノト看做ス
第十條 掛金ノ算定ニ關シテハ年金受取人ノ年齡ハ出生ノ月ヨリ年金契約申込ノ月迄月ヲ以テ計算シ一年未滿ノ端數ヲ生ジタルトキハ其ノ端數ガ七月以上ナルトキハ之ヲ一年ニ切上ゲ六月以下ナルトキハ之ヲ切捨ツ
第三條、第五條及第六條ノ年金支拂開始年齡ハ年金受取人ガ年金契約申込ノ日ニ於テ前項ノ規定ニ依リ算出シタル年齡ニ達シタルモノト看做シ之ヲ計算ス
第十一條 掛金ノ拂込ハ一時拂、分割拂及隨時拂トス
掛金一時拂ニ在リテハ年金契約ノ申込ト同時ニ掛金ノ全額ヲ拂込ムベキモノトス
掛金分割拂ニ在リテハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ年掛、半年掛、三月掛又ハ月掛ノ區別ニ從ヒ一定ノ掛金ヲ拂込ムモノトシ其ノ第一囘分ハ年金契約ノ申込ト同時ニ之ヲ拂込ムベキモノトス
掛金隨時拂ニ在リテハ年金支拂ノ事由發生スル迄隨時ニ掛金ノ拂込ヲ爲シ年金ノ額ヲ增加スルコトヲ得ルモノトシ其ノ第一囘分ハ年金契約ノ申込ト同時ニ之ヲ拂込ムベキモノトス
第十二條 掛金隨時拂ニ依ル第二囘以後ノ掛金ノ算定ニ關シテハ年金受取人ノ年齡ハ第十條第一項ノ規定ニ依リ算出シタル年齡ニ契約申込ノ月ノ翌月ヨリ掛金拂込ノ月迄ノ經過月數ヲ加ヘ之ヲ計算ス
前項ノ場合ニ於テ一年未滿ノ端數ヲ生ジタルトキハ其ノ計算ニ付テハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依ル
第十三條 掛金ハ左ノ基礎ニ依リ計算ス
一 卽時終身年金及据置終身年金ニ在リテハ明治四十五年內閣統計局ノ發表シタル第二表ノ死亡率ヨリ男子ハ男子死亡率ノ二割ヲ、女子ハ女子死亡率ノ三割ヲ減ジテ作成シタル死亡生殘表
保證期間附卽時終身年金及保證期間附据置終身年金ニ在リテハ昭和十一年內閣統計局ノ發表シタル第五囘生命表ノ死亡率ヨリ男子ハ男子死亡率ノ二割ヲ、女子ハ女子死亡率ノ三割ヲ減ジテ作成シタル死亡生殘表
定期年金ニ在リテハ昭和十一年內閣統計局ノ發表シタル第五囘生命表ノ男子死亡率ヨリ其ノ二割ヲ減ジテ作成シタル死亡生殘表
二 掛金一時拂ナルトキハ市場ニ於ケル公債ノ時價ニ準ジ厚生大臣ノ定ムル豫定利率
掛金分割拂ナルトキハ年三分五厘ノ豫定利率
掛金隨時拂ナルトキハ各掛金拂込ノ當時ニ於ケル掛金一時拂ノ豫定利率
年金受取人ノ爲ニ積立ツベキ金額ハ前項ノ基礎ニ依リ純保險料式ヲ以テ之ヲ計算ス
第十四條 同一事業主ニ使用セラルル者ニ付又ハ同一事業主ニ使用セラルル者ノ中厚生大臣ノ定ムル勤務ノ場所、勤務ノ種類、勤務者ノ種別等ノ標準ニ依リ區分セラルル者ニ付其ノ七割以上ニシテ十人以上ノ者ヲ各左ノ各號ニ該當スル年金契約ノ年金受取人ト爲シ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ掛金ヲ一括シテ拂込ム場合ニ於テハ掛金ノ一割以下ノ割引ヲ爲スコトヲ得
一 年金ノ種類ハ保證期間附据置終身年金ナルコト
二 掛金ノ拂込ハ隨時拂ナルコト
三 年金ノ額ハ年額六百圓以下ナルコト
同一ノ官署、公署又ハ學校ニ勤務スル者ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ同一事業主ニ使用セラルル者ト看做ス
第十五條 年金ハ年金支拂ノ事由發生シタル日ヨリ三月每ニ各其ノ經過シタル期間分ヲ支拂フ
前項ノ期間ノ中途ニ於テ年金受取人死亡シタルトキハ其ノ期間ニ付テハ月割ヲ以テ計算シ死亡ノ日ヲ含ム月割分迄ヲ支拂フ
保證期間附卽時終身年金又ハ保證期間附据置終身年金ノ保證期間內ニ年金受取人死亡シ又ハ其ノ殘存期間內ニ年金繼續受取人死亡シ若ハ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラズ第一項ノ規定ニ依リ計算シタル期間分ノ年金ヲ第七條ノ規定ニ依リ新ニ年金繼續受取人ト爲リタル者ニ支拂フ
第十六條 郵便年金法第十四條第一項ノ返還金ハ返還金ヲ支拂ハザルコトヲ約シタル卽時終身年金、保證期間附卽時終身年金及年金支拂開始期ニ達シタル保證期間附据置終身年金ヲ除クノ外左ノ區別ニ依リ之ヲ支拂フ
一 年金受取人死亡シタル場合
卽時終身年金、据置終身年金及定期年金ニ在リテハ死亡ノ日迄ノ拂込掛金(拂込ムベキモノヲ含ム)ノ額但シ支拂ヒタル年金(支拂フベキモノヲ含ム)アルトキハ其ノ金額ヲ差引キタル殘額
保證期間附据置終身年金ニ在リテハ死亡ノ日迄ノ拂込掛金(狒込ムベキモノヲ含ム)ノ額ニ之ニ對スル複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額
二 年金契約解除セラレタル場合
据置終身年金及定期年金ニ在リテハ契約解除ノ日迄ノ拂込掛金(拂込ムベキモノヲ含ム)ノ額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
保證期間附据置終身年金ニ在リテハ契約解除ノ日迄ノ拂込掛金(拂込ムベキモノヲ含ム)ノ額ニ之ニ對スル複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
三 年金契約變更セラレタル場合
据置終身年金及定期年金ニ在リテハ契約變更ノ日迄ノ拂込掛金(拂込ムベキモノヲ含ム)ノ額ヨリ變更後ノ契約ニ付當初ヨリ變更ノ日迄ニ拂込ムベカリシ掛金ノ額ヲ差引キタル殘額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
保證期間附据置終身年金ニ在リテハ契約變更ノ日迄ノ拂込掛金(拂込ムベキモノヲ含ム)ノ額ニ之ニ對スル複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額ヨリ變更後ノ契約ニ付當初ヨリ變更ノ日迄ニ拂込ムベカリシ掛金ノ額ニ複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額ヲ差引キタル殘額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ拂込掛金(拂込ムベキモノヲ含ム)ガ半年掛、三月掛又ハ月掛ニ依リ拂込マレタルモノナルトキハ之ヲ各當該年金契約ニ對スル年掛掛金ノ二分ノ一、四分ノ一又ハ十二分ノ一宛拂込マレタルモノト看做ス
第一項ニ規定スルモノヲ除クノ外同項ノ利息ノ計算ニ關シ必要ナル事項ハ厚生大臣之ヲ定ム
厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ年金契約ノ效力發生後一定ノ期間ヲ經過セザル契約ニ付テハ第一項ノ返還金ヲ支拂ハザルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ未ダ拂込ヲ爲サザル掛金ハ之ヲ拂込ムコトヲ要セズ
第十七條 郵便年金法第十七條第一項ノ規定ニ依リ支拂フベキ特別返還金ノ額ハ左ノ區別ニ依ル
一 卽時終身年金(返還金ヲ支拂ハザルコトヲ約シタル卽時終身年金ヲ除ク)、据置終身年金、定期年金及年金支拂開始期ニ達セザル保證期間附据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ノ爲ニ積立テタル金額ヨリ前條第一項第一號ノ規定ニ依ル返還金ノ額ヲ差引キタル殘額ノ百分ノ九十
二 返還金ヲ支拂ハザルコトヲ約シタル卽時終身年金ニ在リテハ年金受取人ノ爲ニ積立テタル金額ノ百分ノ八十
三 保證期間附卽時終身年金及年金支拂開始期ニ達シタル保證期間附据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ノ爲ニ積立テタル金額ヨリ保證期間ノ內未ダ經過セザル部分ニ對シ支拂フベキ年金ニ付旣ニ拂込ミタル掛金ノ計算ノ基礎ト爲リタル豫定利率ヲ以テ算出シタル現價ヲ差引キタル殘額ノ百分ノ九十
第十八條 郵便年金法第十七條第一項ノ期間ハ負傷又ハ發病後三年トス
郵便年金法第十七條第一項ノ戰鬪ニ準ズベキ公務ハ戰地又ハ事變地ニ於ケル敵對行動ニ關聯スル公務及戰地外又ハ事變地外ニ於ケル生命ノ危險ヲ感ズベキ事情ノ下ニ在ル戰務トス
郵便年金法第十七條第一項ノ遺族ハ年金受取人ノ配偶者、子、父、母、孫、祖父、祖母及兄弟姉妹ニシテ年金受取人ノ死亡當時之ト同一戶籍內ニ在ル者竝ニ年金受取人ノ戶主トス
第七條第二項ノ規定ハ特別返還金受取人タルベキ者ノ順位ニ之ヲ準用ス
第十九條 郵便年金ノ契約上ノ權利義務ニ關スル事項ニ付テハ保險院簡易保險局長之ヲ專行ス
前項ノ事項ニ關スル民事訴訟ニ付テハ保險院簡易保險局長又ハ其ノ指定シタル保險院簡易保險局ノ官吏國ヲ代表ス
附 則
本令ハ昭和十四年法律第四十七號施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行前ノ年金契約ニシテ第三項ノ据置終身年金以外ノ年金契約ニ本令ヲ適用スルニハ左ノ各號ノ規定ニ從フ
一 拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保シタル卽時終身年金ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ返還金ヲ支拂フコトヲ約シタル卽時終身年金ト看做ス
二 拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保セザル卽時終身年金ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ返還金ヲ支拂ハザルコトヲ約シタル卽時終身年金ト看做ス
三 拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保シタル据置終身年金ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ第三條ノ据置終身年金ト看做ス
四 拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保シタル年金契約ニ於ケル返還スベキ拂込掛金又ハ拂込掛金ノ受取人ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ郵便年金法第十四條ノ返還金又ハ返還金受取人ト看做ス
本令施行前ノ年金契約ニシテ拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保セザル据置終身年金ニ付テハ第十八條ノ規定ニ依ルノ外仍從前ノ規定ニ依ル
前項ノ据置終身年金ニ付テハ郵便年金法第十七條第一項ノ規定ニ依リ支拂フベキ特別返還金ノ額ハ年金受取人ノ爲ニ積立テタル金額ノ百分ノ八十トス但シ未ダ拂込マザル掛金アルトキハ之ヲ控除シタル殘額トス
朕郵便年金令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年七月一日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
厚生大臣 広瀬久忠
勅令第四百三十四号
郵便年金令
第一条 郵便年金ハ左ノ五種トス
一 即時終身年金
二 据置終身年金
三 保証期間附即時終身年金
四 保証期間附据置終身年金
五 定期年金
第二条 即時終身年金ニ在リテハ年金契約ノ効力発生シタル日ヨリ年金受取人ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支払ヲ為スモノトス
即時終身年金ニ在リテハ郵便年金法第十四条第一項ノ返還金ヲ支払ハザルコトヲ約スルコトヲ得
第三条 据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ガ年金支払開始年齢ニ達シタル日ヨリ其ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支払ヲ為スモノトス
前項ノ年金支払開始年齢ハ五十歳、五十五歳、六十歳又ハ六十五歳トス
第四条 保証期間附即時終身年金ニ在リテハ年金契約ノ効力発生シタル日ヨリ年金受取人ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支払ヲ為スノ外一定ノ保証期間内ニ年金受取人死亡シタルトキハ其ノ残存期間遺族ニ継続シテ年金ノ支払ヲ為スモノトス
前項ノ保証期間ハ年金契約ノ効力発生シタル日ヨリ十五年、二十年又ハ三十年トス
第五条 保証期間附据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ガ年金支払開始年齢ニ達シタル日ヨリ其ノ死亡ニ至ル迄年金ノ支払ヲ為スノ外一定ノ保証期間内ニ年金受取人死亡シタルトキハ其ノ残存期間遺族ニ継続シテ年金ノ支払ヲ為スモノトス
前項ノ年金支払開始年齢ハ五十歳、五十五歳、六十歳又ハ六十五歳トス
第一項ノ保証期間ハ年金受取人ガ前項ノ年金支払開始年齢ニ達シタル日ヨリ二十年トス
第六条 定期年金ニ在リテハ年金受取人ガ年金支払開始年齢ニ達シタル日ヨリ一定ノ期間年金受取人ノ生存中年金ノ支払ヲ為スモノトス
前項ノ年金支払開始年齢ハ十二歳、十五歳、十七歳又ハ二十歳トス
第一項ノ期間ハ年金受取人ガ前項ノ年金支払開始年齢ニ達シタル日ヨリ五年又ハ十年トス
第七条 郵便年金法第二条第二項ノ遺族ハ年金受取人ノ配偶者、子、父、母、孫、祖父、祖母及兄弟姉妹ニシテ年金受取人ノ死亡当時ヨリ引続キ之ト同一戸籍内ニ在ル者並ニ年金受取人ノ戸主トス
年金継続受取人タルベキ者ノ順位ハ前項ニ掲グル順位ニ依リ同一順位者間ニ在リテハ其ノ順位ハ左ノ各号ノ規定ニ依ル
一 年金受取人ノ家督相続人又ハ戸主ハ之ヲ他ノ者ヨリ先ニス
二 男ハ之ヲ女ヨリ先ニス
三 子又ハ孫ニ付テハ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニシ嫡出子、庶子及私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
四 前二号ニ掲グル事項ニ付相同ジ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
年金受取人ハ年金支払開始期ニ達シタル後ニ於テ前項ノ規定ニ依ル年金継続受取人タルベキ者ノ順位ヲ変更シ之ヲ政府ニ通知スルコトヲ得
前項ノ通知アリタルトキハ年金継続受取人タルベキ者ノ順位ハ第二項ノ規定ニ拘ラズ其ノ変更セラレタル順位トス
第八条 新ニ年金受取人タルコトヲ得ル者ノ年齢ハ左ノ区別ニ依ル
一 即時終身年金 四十歳以上八十歳以下
二 据置終身年金 十二歳以上六十歳以下
三 保証期間ヲ十五年又ハ二十年トスル保証期間附即時終身年金 四十歳以上七十五歳以下
四 保証期間ヲ三十年トスル保証期間附即時終身年金 二十歳以上四十歳未満
五 保証期間附据置終身年金 十二歳以上六十歳以下
六 定期年金 一歳以上十八歳以下
保証期間ヲ三十年トスル保証期間附即時終身年金ニ在リテハ新ニ年金受取人タルコトヲ得ル者ハ寡婦又ハ厚生大臣ノ定ムル廃疾者トス
第九条 年金契約ヲ為シタル後年金受取人ノ年齢ニ付錯誤アルコトヲ発見シタル場合ニ於テ郵便年金法第五条ノ掛金払込ノ日ノ年齢ガ当該年金ニ付前条第一項各号ニ規定スル範囲内ナルトキハ当初ヨリ其ノ年齢ニ基キテ年金契約ヲ為シタルモノト看做シ年金額ヲ更正ス其ノ年齢ガ当該年金ニ付前条第一項各号ニ規定スル最低ノ年齢ニ達セザルトキハ其ノ最低ノ年齢ニ達シタル日ニ於テ年金契約ノ効力発生シタルモノト看做シ年金額ヲ更正ス
前項ノ規定ニ依リ年金額ヲ更正スル場合ニ於テ其ノ金額ガ郵便年金法第三条ニ規定スル制限ヲ超ユルトキハ当初ヨリ最高ノ年金額ニ基キテ年金契約ヲ為シタルモノト看做ス
第十条 掛金ノ算定ニ関シテハ年金受取人ノ年齢ハ出生ノ月ヨリ年金契約申込ノ月迄月ヲ以テ計算シ一年未満ノ端数ヲ生ジタルトキハ其ノ端数ガ七月以上ナルトキハ之ヲ一年ニ切上ゲ六月以下ナルトキハ之ヲ切捨ツ
第三条、第五条及第六条ノ年金支払開始年齢ハ年金受取人ガ年金契約申込ノ日ニ於テ前項ノ規定ニ依リ算出シタル年齢ニ達シタルモノト看做シ之ヲ計算ス
第十一条 掛金ノ払込ハ一時払、分割払及随時払トス
掛金一時払ニ在リテハ年金契約ノ申込ト同時ニ掛金ノ全額ヲ払込ムベキモノトス
掛金分割払ニ在リテハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ年掛、半年掛、三月掛又ハ月掛ノ区別ニ従ヒ一定ノ掛金ヲ払込ムモノトシ其ノ第一回分ハ年金契約ノ申込ト同時ニ之ヲ払込ムベキモノトス
掛金随時払ニ在リテハ年金支払ノ事由発生スル迄随時ニ掛金ノ払込ヲ為シ年金ノ額ヲ増加スルコトヲ得ルモノトシ其ノ第一回分ハ年金契約ノ申込ト同時ニ之ヲ払込ムベキモノトス
第十二条 掛金随時払ニ依ル第二回以後ノ掛金ノ算定ニ関シテハ年金受取人ノ年齢ハ第十条第一項ノ規定ニ依リ算出シタル年齢ニ契約申込ノ月ノ翌月ヨリ掛金払込ノ月迄ノ経過月数ヲ加ヘ之ヲ計算ス
前項ノ場合ニ於テ一年未満ノ端数ヲ生ジタルトキハ其ノ計算ニ付テハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依ル
第十三条 掛金ハ左ノ基礎ニ依リ計算ス
一 即時終身年金及据置終身年金ニ在リテハ明治四十五年内閣統計局ノ発表シタル第二表ノ死亡率ヨリ男子ハ男子死亡率ノ二割ヲ、女子ハ女子死亡率ノ三割ヲ減ジテ作成シタル死亡生残表
保証期間附即時終身年金及保証期間附据置終身年金ニ在リテハ昭和十一年内閣統計局ノ発表シタル第五回生命表ノ死亡率ヨリ男子ハ男子死亡率ノ二割ヲ、女子ハ女子死亡率ノ三割ヲ減ジテ作成シタル死亡生残表
定期年金ニ在リテハ昭和十一年内閣統計局ノ発表シタル第五回生命表ノ男子死亡率ヨリ其ノ二割ヲ減ジテ作成シタル死亡生残表
二 掛金一時払ナルトキハ市場ニ於ケル公債ノ時価ニ準ジ厚生大臣ノ定ムル予定利率
掛金分割払ナルトキハ年三分五厘ノ予定利率
掛金随時払ナルトキハ各掛金払込ノ当時ニ於ケル掛金一時払ノ予定利率
年金受取人ノ為ニ積立ツベキ金額ハ前項ノ基礎ニ依リ純保険料式ヲ以テ之ヲ計算ス
第十四条 同一事業主ニ使用セラルル者ニ付又ハ同一事業主ニ使用セラルル者ノ中厚生大臣ノ定ムル勤務ノ場所、勤務ノ種類、勤務者ノ種別等ノ標準ニ依リ区分セラルル者ニ付其ノ七割以上ニシテ十人以上ノ者ヲ各左ノ各号ニ該当スル年金契約ノ年金受取人ト為シ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ掛金ヲ一括シテ払込ム場合ニ於テハ掛金ノ一割以下ノ割引ヲ為スコトヲ得
一 年金ノ種類ハ保証期間附据置終身年金ナルコト
二 掛金ノ払込ハ随時払ナルコト
三 年金ノ額ハ年額六百円以下ナルコト
同一ノ官署、公署又ハ学校ニ勤務スル者ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ同一事業主ニ使用セラルル者ト看做ス
第十五条 年金ハ年金支払ノ事由発生シタル日ヨリ三月毎ニ各其ノ経過シタル期間分ヲ支払フ
前項ノ期間ノ中途ニ於テ年金受取人死亡シタルトキハ其ノ期間ニ付テハ月割ヲ以テ計算シ死亡ノ日ヲ含ム月割分迄ヲ支払フ
保証期間附即時終身年金又ハ保証期間附据置終身年金ノ保証期間内ニ年金受取人死亡シ又ハ其ノ残存期間内ニ年金継続受取人死亡シ若ハ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラズ第一項ノ規定ニ依リ計算シタル期間分ノ年金ヲ第七条ノ規定ニ依リ新ニ年金継続受取人ト為リタル者ニ支払フ
第十六条 郵便年金法第十四条第一項ノ返還金ハ返還金ヲ支払ハザルコトヲ約シタル即時終身年金、保証期間附即時終身年金及年金支払開始期ニ達シタル保証期間附据置終身年金ヲ除クノ外左ノ区別ニ依リ之ヲ支払フ
一 年金受取人死亡シタル場合
即時終身年金、据置終身年金及定期年金ニ在リテハ死亡ノ日迄ノ払込掛金(払込ムベキモノヲ含ム)ノ額但シ支払ヒタル年金(支払フベキモノヲ含ム)アルトキハ其ノ金額ヲ差引キタル残額
保証期間附据置終身年金ニ在リテハ死亡ノ日迄ノ払込掛金(狒込ムベキモノヲ含ム)ノ額ニ之ニ対スル複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額
二 年金契約解除セラレタル場合
据置終身年金及定期年金ニ在リテハ契約解除ノ日迄ノ払込掛金(払込ムベキモノヲ含ム)ノ額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
保証期間附据置終身年金ニ在リテハ契約解除ノ日迄ノ払込掛金(払込ムベキモノヲ含ム)ノ額ニ之ニ対スル複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
三 年金契約変更セラレタル場合
据置終身年金及定期年金ニ在リテハ契約変更ノ日迄ノ払込掛金(払込ムベキモノヲ含ム)ノ額ヨリ変更後ノ契約ニ付当初ヨリ変更ノ日迄ニ払込ムベカリシ掛金ノ額ヲ差引キタル残額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
保証期間附据置終身年金ニ在リテハ契約変更ノ日迄ノ払込掛金(払込ムベキモノヲ含ム)ノ額ニ之ニ対スル複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額ヨリ変更後ノ契約ニ付当初ヨリ変更ノ日迄ニ払込ムベカリシ掛金ノ額ニ複利計算ニ依ル年二分ノ利息ヲ加ヘタル額ヲ差引キタル残額ノ百分ノ九十以上ニシテ厚生大臣ノ定ムル額
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ払込掛金(払込ムベキモノヲ含ム)ガ半年掛、三月掛又ハ月掛ニ依リ払込マレタルモノナルトキハ之ヲ各当該年金契約ニ対スル年掛掛金ノ二分ノ一、四分ノ一又ハ十二分ノ一宛払込マレタルモノト看做ス
第一項ニ規定スルモノヲ除クノ外同項ノ利息ノ計算ニ関シ必要ナル事項ハ厚生大臣之ヲ定ム
厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ年金契約ノ効力発生後一定ノ期間ヲ経過セザル契約ニ付テハ第一項ノ返還金ヲ支払ハザルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ未ダ払込ヲ為サザル掛金ハ之ヲ払込ムコトヲ要セズ
第十七条 郵便年金法第十七条第一項ノ規定ニ依リ支払フベキ特別返還金ノ額ハ左ノ区別ニ依ル
一 即時終身年金(返還金ヲ支払ハザルコトヲ約シタル即時終身年金ヲ除ク)、据置終身年金、定期年金及年金支払開始期ニ達セザル保証期間附据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ノ為ニ積立テタル金額ヨリ前条第一項第一号ノ規定ニ依ル返還金ノ額ヲ差引キタル残額ノ百分ノ九十
二 返還金ヲ支払ハザルコトヲ約シタル即時終身年金ニ在リテハ年金受取人ノ為ニ積立テタル金額ノ百分ノ八十
三 保証期間附即時終身年金及年金支払開始期ニ達シタル保証期間附据置終身年金ニ在リテハ年金受取人ノ為ニ積立テタル金額ヨリ保証期間ノ内未ダ経過セザル部分ニ対シ支払フベキ年金ニ付既ニ払込ミタル掛金ノ計算ノ基礎ト為リタル予定利率ヲ以テ算出シタル現価ヲ差引キタル残額ノ百分ノ九十
第十八条 郵便年金法第十七条第一項ノ期間ハ負傷又ハ発病後三年トス
郵便年金法第十七条第一項ノ戦闘ニ準ズベキ公務ハ戦地又ハ事変地ニ於ケル敵対行動ニ関連スル公務及戦地外又ハ事変地外ニ於ケル生命ノ危険ヲ感ズベキ事情ノ下ニ在ル戦務トス
郵便年金法第十七条第一項ノ遺族ハ年金受取人ノ配偶者、子、父、母、孫、祖父、祖母及兄弟姉妹ニシテ年金受取人ノ死亡当時之ト同一戸籍内ニ在ル者並ニ年金受取人ノ戸主トス
第七条第二項ノ規定ハ特別返還金受取人タルベキ者ノ順位ニ之ヲ準用ス
第十九条 郵便年金ノ契約上ノ権利義務ニ関スル事項ニ付テハ保険院簡易保険局長之ヲ専行ス
前項ノ事項ニ関スル民事訴訟ニ付テハ保険院簡易保険局長又ハ其ノ指定シタル保険院簡易保険局ノ官吏国ヲ代表ス
附 則
本令ハ昭和十四年法律第四十七号施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行前ノ年金契約ニシテ第三項ノ据置終身年金以外ノ年金契約ニ本令ヲ適用スルニハ左ノ各号ノ規定ニ従フ
一 払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ留保シタル即時終身年金ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ返還金ヲ支払フコトヲ約シタル即時終身年金ト看做ス
二 払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ留保セザル即時終身年金ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ返還金ヲ支払ハザルコトヲ約シタル即時終身年金ト看做ス
三 払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ留保シタル据置終身年金ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ第三条ノ据置終身年金ト看做ス
四 払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ留保シタル年金契約ニ於ケル返還スベキ払込掛金又ハ払込掛金ノ受取人ハ本令施行ノ日ヨリ之ヲ郵便年金法第十四条ノ返還金又ハ返還金受取人ト看做ス
本令施行前ノ年金契約ニシテ払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ留保セザル据置終身年金ニ付テハ第十八条ノ規定ニ依ルノ外仍従前ノ規定ニ依ル
前項ノ据置終身年金ニ付テハ郵便年金法第十七条第一項ノ規定ニ依リ支払フベキ特別返還金ノ額ハ年金受取人ノ為ニ積立テタル金額ノ百分ノ八十トス但シ未ダ払込マザル掛金アルトキハ之ヲ控除シタル残額トス