第一條 本法ハ種馬ヲ整備シ其ノ配合ヲ統制シ以テ馬ノ改良增殖ヲ圖ルコトヲ目的トス
第二條 馬ノ種付事業ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ管掌ス
北海道、府縣、畜產組合、畜產組合聯合會其ノ他政府ノ適當ト認ムル者ニ限リ前項ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ特許ヲ受ケ馬ノ種付事業ヲ行フコトヲ得
第三條 種牡馬ハ總テ國ニ於テ之ヲ所有スルモノトス但シ第七條ノ規定ニ依リ指定セラレタル種牡馬ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 政府ハ種牡馬タルベキ資質アル馬ヲ選定スル爲命令ノ定ムル所ニ依リ每年公共團體又ハ私人ノ所有(以下民有ト稱ス)ニ係ル牡馬ノ檢定ヲ行ヒ之ニ合格シタルモノヲ候補種牡馬ニ指定スルコトヲ得
第五條 政府ハ國有ノ種牡馬ヲ整備スル爲每年度豫算ノ範圍內ニ於テ所要ノ頭數ヲ限リ民有ノ候補種牡馬ヲ購買ス
第六條 政府ハ必要ニ應ジ國有ノ牡馬ヲ候補種牡馬ニ、國有ノ牡馬又ハ候補種牡馬ヲ種牡馬ニ決定ス
第七條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ノ所有スル牡馬又ハ候補種牡馬ヲ種牡馬ニ指定スルコトヲ得
第九條 種牡馬又ハ候補種牡馬ニハ去勢ヲ行フコトヲ得ズ
第十條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國有ノ種牡馬又ハ候補種牡馬ヲ北海道、府縣、畜產組合又ハ畜產組合聯合會ニシテ第二條第二項ノ特許ヲ受ケタルモノニ無償ニテ貸付スルコトヲ得
第十一條 政府必要アリト認ムルトキハ第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ニ對シ種牡馬ノ飼養管理又ハ種付ニ關スル設備ノ改善ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十二條 政府ハ第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ特許ヲ取消シ又ハ種牡馬ノ種付ニ關スル業務ヲ停止シ若ハ制限スルコトヲ得
第十三條 政府ハ優良種牝馬タルベキ資質アル馬ヲ選定スル爲命令ノ定ムル所ニ依リ每年明ケ二歲ノ民有ノ牝馬ノ檢定ヲ行ヒ之ニ合格シタルモノヲ候補優良種牝馬ニ指定スルコトヲ得
政府ハ前項ノ檢定ヲ受クル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ手當及旅費ヲ給ス
第十四條 政府必要アリト認ムルトキハ所有者又ハ命令ヲ以テ定ムル者ノ申請ニ依リ明ケ三歲以上ノ民有ノ牝馬ノ檢定ヲ行フ
政府ハ前項ノ檢定ニ合格シタル馬ヲ優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ニ指定スルコトヲ得
第十五條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ候補優良種牝馬ヲ優良種牝馬ニ指定スルコトヲ得
第十六條 政府馬ノ改良增殖ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ馬ノ配合ノ統制上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十七條 政府ハ種付ヲ爲スコト不適當ト認ムル牝馬ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ種付ヲ制限スルコトヲ得
第十八條 政府必要アリト認ムルトキハ優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ノ所有者其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ニ對シ當該馬ノ飼養管理又ハ種付ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十九條 政府ハ學術硏究ノ爲ニスル馬ノ種付ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第二十條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年度豫算ノ範圍內ニ於テ政府ノ貸付シタル種牡馬若ハ候補種牡馬ヲ飼養スル者又ハ優良種牝馬若ハ候補優良種牝馬ヲ飼養スル者ニ對シ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第二十一條 種牡馬、候補種牡馬、優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ハ政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ輸出シ又ハ移出スルコトヲ得ズ
第二十二條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年民有ノ種牡馬、候補種牡馬、優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ノ檢査ヲ行ヒ之ニ合格セザルモノニ付其ノ指定ヲ取消スコトヲ得
第二十三條 民有ノ種牡馬、候補種牡馬、優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ガ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ其ノ指定ハ效力ヲ失フ
第二十四條 市町村長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ種牡馬、候補種牡馬、優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ニ指定セラレタル馬ニ付馬籍ニ其ノ旨記載スベシ其ノ指定ヲ取消サレタル馬又ハ其ノ指定ノ效力ヲ失ヒタル馬ニ付亦同ジ
前項ノ市町村長トハ市制第六條ノ市及市制第八十二條第三項ノ市ニ在リテハ區長トシ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ町村長ニ準ズベキモノトス
第二十五條 第二十一條ノ規定ニ違反シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第二條第二項ノ特許ヲ受ケズシテ馬ノ種付事業ヲ行ヒタル者
三 第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ニシテ第十六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルモノ
四 第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ニシテ第十六條ノ規定ニ依ル處分ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルモノ
第二十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
三 第十一條ノ規定ニ依ル處分ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
四 第十二條ノ規定ニ依ル業務ノ停止又ハ制限ニ違反シタル者
第二十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第十三條第一項ノ檢定又ハ第二十二條ノ檢査ニ應ゼザル者
二 第十三條第一項ノ檢定又ハ第二十二條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
三 第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者以外ノ者ニシテ第十六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルモノ
四 第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者以外ノ者ニシテ第十六條ノ規定ニ依ル處分ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルモノ
第二十九條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第二十五條、第二十六條第二號若ハ第三號、第二十七條第一號、第二號若ハ第四號又ハ前條第一號、第三號、第五號若ハ第六號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十條 第二十五條、第二十六條第二號及第三號、第二十七條第一號、第二號及第四號竝ニ第二十八條第一號、第三號、第五號及第六號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ