第一條 政府ノ認可ヲ受ケ本法施行後五年以內ニ於テ政府ノ指定スル期間內ニ命令ノ定ムル硫酸アンモニア製造設備ノ新設又ハ增設ヲ爲シタル硫酸アンモニア製造業者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ設備完成ノ年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ設備ヲ以テ營ム硫酸アンモニア製造業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
前項ノ硫酸アンモニア製造業者其ノ設備完成前其ノ設備ノ一部ヲ以テ硫酸アンモニア製造業ヲ營ム場合ニ於テモ其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス但シ前項ノ規定ニ依ル期間內ニ設備ヲ完成セザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二條 北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラレタル硫酸アンモニア製造業者ニハ其ノ免除セラレタル事業ニ對シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第三條 硫酸アンモニア製造業ヲ繼續スル者又ハ其ノ事業ヲ繼續スルモノト認ムベキ事實アル者ハ前事業者ガ本法ニ依ル所得稅及營業收益稅免除期間內ニ在ルトキハ其ノ期間ヲ承繼ス
第四條 第一條第一項ニ規定スル硫酸アンモニア製造業ノ爲必要ナル器具又ハ機械ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ五年間勅令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
第五條 第一條第一項ニ規定スル硫酸アンモニア製造業ハ土地收用法第二條ノ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業トシ同法ヲ適用ス
第六條 硫酸アンモニア製造業者タル株式會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第七條 硫酸アンモニア製造業者タル株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲商法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存スル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 政府公益上必要アリト認ムルトキハ硫酸アンモニア製造業者ニ對シ硫酸アンモニア製造設備ノ增設又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ硫酸アンモニア製造業者ノ行フ硫酸アンモニア製造事業ニ依リ硫酸アンモニアノ供給ヲ確保スルコト困難ナリト認ムルトキハ日本硫安株式會社ニ對シ硫酸アンモニア製造設備ノ新設、增設又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前二項ノ規定ニ依リ爲シタル命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第九條 政府公益上必要アリト認ムルトキハ日本硫安株式會社ニ對シ硫酸アンモニアノ配給統制上又ハ供給確保上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十條 硫酸アンモニア製造業者及命令ヲ以テ定ムル硫酸アンモニアノ取扱ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造又ハ取扱ニ係ル硫酸アンモニアヲ日本硫安株式會社ニ賣渡スベシ
第十一條 政府ハ硫酸アンモニア製造業者又ハ前條ニ規定スル硫酸アンモニアノ取扱ヲ爲ス者ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第十二條 日本硫安株式會社ハ硫酸アンモニアノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第十三條 日本硫安株式會社ノ資本ハ一千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第十四條 日本硫安株式會社ハ株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第十五條 日本硫安株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第十六條 日本硫安株式會社ニ非ザルモノハ日本硫安株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第十七條 日本硫安株式會社ニ取締役五人以上及監査役二人以上ヲ置ク
取締役ハ株主總會ニ於テ選擧シタル候補者中ヨリ政府之ヲ命ズ
第十八條 日本硫安株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
三 硫酸アンモニアノ製造其ノ他硫酸アンモニアノ供給確保上必要ナル事業但シ硫酸アンモニアノ製造ハ硫酸アンモニア製造業者ノ行フ硫酸アンモニア製造事業ニ依リ硫酸アンモニアノ供給ヲ確保スルコト困難ナリト認メラルル場合ニ限ル
四 其ノ他硫酸アンモニアノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業
前項第三號又ハ第四號ニ揭グル事業ヲ營マントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十九條 日本硫安株式會社ハ拂込ミタル株金額ノ五倍ヲ限リ硫安債券ヲ發行スルコトヲ得
硫安債券ヲ發行スル場合ニ於テハ商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第二十條 硫安債券ヲ發行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十一條 政府ハ硫安債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第二十二條 硫安債券ハ無記名式トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト爲スコトヲ得
第二十三條 硫安債券ノ所有者ハ日本硫安株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第二十四條 日本硫安株式會社ハ社債借換ノ爲一時第十九條ノ制限ニ依ラズ硫安債券ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ發行後一月以內ニ其ノ社債總額ニ相當スル舊硫安債券ヲ償還スベシ
第二十五條 日本硫安株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第二十六條 日本硫安株式會社ハ拂込ミタル株金額ニ對シ勅令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十八條 日本硫安株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十九條 日本硫安株式會社ノ定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第三十條 日本硫安株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第三十一條 日本硫安株式會社ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外政府ノ認可ヲ受ケタル價格ニ依ルニ非ザレバ硫酸アンモニアノ買入、販賣、輸出、輸入、移出又ハ移入ヲ爲スコトヲ得ズ
第三十二條 政府ハ日本硫安株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第三十三條 政府ハ日本硫安株式會社監理官ヲ置キ日本硫安株式會社ノ業務ヲ監視セシム
第三十四條 日本硫安株式會社監理官ハ何時ニテモ日本硫安株式會社ノ帳簿書類、金庫其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本硫安株式會社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本硫安株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本硫安株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十五條 政府日本硫安株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第三十六條 重要肥料業統制法第十條第一項ノ規定ハ日本硫安株式會社ニ付テハ之ヲ適用セズ
第三十七條 第九條ノ規定ニ依ル命令又ハ第十條若ハ第三十一條ノ規定ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十八條 第八條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條 第十一條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條 人又ハ法人ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第四十一條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第四十二條 左ノ場合ニ於テハ日本硫安株式會社ノ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ百圓以上二千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十八條第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第十九條ノ規定ニ違反シ硫安債券ヲ發行シタルトキ
四 第二十四條ノ規定ニ違反シ硫安債券ノ償還ヲ爲サザルトキ
第四十三條 第十六條ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ過料ニ處ス
第四十四條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料ニ之ヲ準用ス