日本肥料株式会社法
法令番号: 法律第百一號
公布年月日: 昭和15年4月8日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル日本肥料株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年四月六日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
農林大臣 島田俊雄
法律第百一號
日本肥料株式會社法
第一條 日本肥料株式會社ハ肥料ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第二條 日本肥料株式會社ノ資本ハ五千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條 日本肥料株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ政府ノ許可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラズ日本肥料株式會社ノ株主ト爲ルコトヲ得
第四條 政府ハ二千五百萬圓ヲ限リ日本肥料株式會社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第五條 日本肥料株式會社ニ非ザルモノハ日本肥料株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第六條 日本肥料株式會社ニ役員トシテ理事長副理事長各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
理事長ハ日本肥料株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代埋シ理事長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ日本肥料株式會社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ日本肥料株式會社ノ業務ヲ監査ス
第七條 理事長及副理事長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ選擧シタル候補者中ヨリ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
肥料業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本肥料株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 理事長、副理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 日本肥料株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 肥料ノ買入及販賣
二 肥料ノ輸出、輸入、移出及移入
三 肥料ノ製造、肥料製造事業ニ對スル投資其ノ他肥料ノ供給確保上必要ナル事業
四 其ノ他肥料ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業
前項ノ肥料ハ硫酸アンモニア、石灰窒素、過燐酸石灰、カリ塩及命令ヲ以テ定ムル其ノ他ノ肥料トス
第一項第三號又ハ第四號ニ揭グル事業ヲ營マントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十條 日本肥料株式會社ハ前條ノ肥料以外ノ肥料ノ配給統制事業ヲ行フ株式會社ニ對シ政府ノ認可ヲ受ケ投資スルコトヲ得
第十一條 政府第九條ノ肥料ノ供給確保上必要アリト認ムルトキハ日本肥料株式會社ニ對シ肥料ノ製造業者ト協議ノ上其ノ製造工場ノ經營ノ管理ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十二條 日本肥料株式會社ハ拂込ミタル株金額ノ五倍ヲ限リ肥料債券ヲ發行スルコトヲ得
肥料債券ヲ發行スル場合ニ於テハ商法第三百四十三條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三條 肥料債券ヲ發行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十四條 政府ハ肥料債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第十五條 肥料債券ハ無記名式トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト爲スコトヲ得
第十六條 肥料債券ノ所有者ハ日本肥料株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第十七條 日本肥料株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第十八條 日本肥料株式會社ハ拂込ミタル株金額ニ對シ勅令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ得ズ
第十九條 日本肥料株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本肥料株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第二十條 政府ハ日本肥料株式會社ノ業務ヲ監督ス
第二十一條 日本肥料株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十二條 日本肥料株式會社ノ定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十三條 日本肥料株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十四條 日本肥料株式會社ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外政府ノ認可ヲ受ケタル價格ニ依ルニ非ザレバ第九條ノ肥料ノ買入、販賣、輸出、輸入、移出又ハ移入ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十五條 政府必要アリト認ムルトキハ日本肥料株式會社ニ對シ第九條ノ肥料ノ配給統制上又ハ供給確保上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
政府ハ日本肥料株式會社ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 政府ハ日本肥料株式會社監理官ヲ置キ日本肥料株式會社ノ業務ヲ監視セシム
日本肥料株式會社監理官ハ何時ニテモ日本肥料株式會社ノ帳簿書類、金庫其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本肥料株式會社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本肥料株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本肥料株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十七條 政府日本肥料株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十八條 重要肥料業統制法第十條第一項ノ規定ハ日本肥料株式會社ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二十九條 日本肥料株式會社ハ第九條ノ肥料ノ價格ノ調整ヲ圖ル爲命令ノ定ムル所ニ依リ價格平衡資金ヲ設定スベシ
前項ノ規定ニ依リ價格平衡資金ニ繰入レタル金額ハ法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第三十條 第九條ノ肥料ニシテ主務大臣ノ指定スルモノノ製造業者及其ノ肥料ノ取扱ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造又ハ取扱ニ係ル肥料ヲ日本肥料株式會社ニ賣渡スベシ
前項ノ肥料ノ取扱ヲ爲ス者ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
政府ハ第一項ニ揭グル者ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 第二十五條第一項ノ規定ニ依ル命令又ハ第二十四條若ハ前條第一項ノ規定ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條 第三十條第三項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條第三項ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者亦前項ニ同ジ
第三十三條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十一條又ハ前條第一項ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十四條 第三十一條及第三十二條第一項ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五條 日本肥料株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ理事長又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副理事長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第九條第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第十二條第一項ノ規定ニ違反シ肥料債券ヲ發行シタルトキ
四 第二十五條第二項ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
日本肥料株式會社ノ理事長、副理事長又ハ理事第八條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十六條 第五條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第三十七條 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條 日本硫安株式會社及臨時肥料配給統制法第一條第一項ノ規定ニ依リ過燐酸石灰ノ配給統制上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ゼラレタル株式會社(燐酸肥料配給株式會社)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三條ニ定ムル株主總會ノ決議ヲ以テ日本肥料株式會社ト爲ルコトヲ得
日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社前項ノ決議ヲ爲シタルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十九條 前條ノ認可ヲ爲シタルトキハ政府ハ設立委員ヲ命ジ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ヲ日本肥料株式會社ト爲ス爲ニ必要ナル事務ヲ處理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ日本硫安株式會社ノ取締役中ヨリ、少クトモ二人ハ燐酸肥料配給株式會社ノ取締役中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ノ取締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ會社ノ常務ニ屬セザル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第四十條 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四十一條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總株式ヨリ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ノ株式ニ引當テラルベキ株式竝ニ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十二條 株式申込證ニハ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事項ノ外定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第四十三條 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十四條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各新株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
第四十五條 前條ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十六條 創立總會ニ於テハ第七條ノ規定ニ準ジ理事ノ候補者ノ選擧及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十七條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本肥料株式會社理事長ニ引渡スベシ
第四十八條 日本肥料株式會社ノ成立ニ因リ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ハ之ニ吸收セラルルモノトシ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ノ權利義務ハ日本肥料株式會社ニ於テ之ヲ承繼ス
第四十九條 前條ノ規定ニ依リ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ガ日本肥料株式會社ト爲リタルトキハ法人稅法、營業稅法及臨時利得稅法ノ適用ニ關シテハ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ト看做シ日本肥料株式會社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人ト看做ス
日本肥料株式會社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ拂込株金額中日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ノ拂込株金額ニ相當スル部分ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第五十條 第三十八條乃至前條ニ規定スルモノヲ除クノ外日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式會社ガ日本肥料株式會社ト爲ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一條 第三十八條第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ效力ヲ生ゼザル場合ニ於テ日本肥料株式會社ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十二條 第五條ノ規定施行ノ際現ニ日本肥料株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規定施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第五條ノ規定ハ前項ノ期間內同項ニ揭グル者ニ之ヲ適用セズ
第五十三條 
登錄稅法第六條第一項第十一號中「硫安債券」ヲ「肥料債券」ニ改ム
第五十四條 硫酸アンモニア增產及配給統制法中左ノ通改正ス
第六條ヲ削リ第七條ヲ第六條トス
第八條ヲ第七條トシ同條第二項中「日本硫安株式會社」ヲ「日本肥料株式會社」ニ改ム
第九條乃至第三十七條ヲ削ル
第三十八條ヲ第八條トシ同條中「第八條」ヲ「前條」ニ改ム
第三十九條ヲ削ル
第四十條ヲ第九條トシ同條中「本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ」ヲ「前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキ」ニ改ム
第四十一條ヲ第十條トシ同條中「本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則」ヲ「第八條ノ罰則」ニ改ム
第四十二條乃至第四十四條ヲ削ル
第五十五條 前條ノ規定施行前硫酸アンモニア增產及配給統制法ノ罰則ヲ適用スベキ行爲アリタルトキハ同條ノ規定施行後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル日本肥料株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年四月六日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
農林大臣 島田俊雄
法律第百一号
日本肥料株式会社法
第一条 日本肥料株式会社ハ肥料ノ需給ノ円滑及価格ノ公正ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第二条 日本肥料株式会社ノ資本ハ五千万円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 日本肥料株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人又ハ外国法人ニ属セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ政府ノ許可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラズ日本肥料株式会社ノ株主ト為ルコトヲ得
第四条 政府ハ二千五百万円ヲ限リ日本肥料株式会社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金払込ハ其ノ他ノ株式ノ株金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第五条 日本肥料株式会社ニ非ザルモノハ日本肥料株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第六条 日本肥料株式会社ニ役員トシテ理事長副理事長各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
理事長ハ日本肥料株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代埋シ理事長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ日本肥料株式会社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ日本肥料株式会社ノ業務ヲ監査ス
第七条 理事長及副理事長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主総会ニ於テ選挙シタル候補者中ヨリ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
肥料業ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本肥料株式会社ノ役員ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八条 理事長、副理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九条 日本肥料株式会社ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 肥料ノ買入及販売
二 肥料ノ輸出、輸入、移出及移入
三 肥料ノ製造、肥料製造事業ニ対スル投資其ノ他肥料ノ供給確保上必要ナル事業
四 其ノ他肥料ノ需給ノ円滑及価格ノ公正ヲ図ル為必要ナル事業
前項ノ肥料ハ硫酸アンモニア、石灰窒素、過燐酸石灰、カリ塩及命令ヲ以テ定ムル其ノ他ノ肥料トス
第一項第三号又ハ第四号ニ掲グル事業ヲ営マントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十条 日本肥料株式会社ハ前条ノ肥料以外ノ肥料ノ配給統制事業ヲ行フ株式会社ニ対シ政府ノ認可ヲ受ケ投資スルコトヲ得
第十一条 政府第九条ノ肥料ノ供給確保上必要アリト認ムルトキハ日本肥料株式会社ニ対シ肥料ノ製造業者ト協議ノ上其ノ製造工場ノ経営ノ管理ヲ為スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十二条 日本肥料株式会社ハ払込ミタル株金額ノ五倍ヲ限リ肥料債券ヲ発行スルコトヲ得
肥料債券ヲ発行スル場合ニ於テハ商法第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三条 肥料債券ヲ発行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十四条 政府ハ肥料債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ニ付保証スルコトヲ得
第十五条 肥料債券ハ無記名式トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト為スコトヲ得
第十六条 肥料債券ノ所有者ハ日本肥料株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
第十七条 日本肥料株式会社ハ毎営業年度ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第十八条 日本肥料株式会社ハ払込ミタル株金額ニ対シ勅令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ利益ノ配当ヲ為スコトヲ得ズ
第十九条 日本肥料株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
日本肥料株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第二十条 政府ハ日本肥料株式会社ノ業務ヲ監督ス
第二十一条 日本肥料株式会社借入金ヲ為サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十二条 日本肥料株式会社ノ定款ノ変更、利益金ノ処分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十三条 日本肥料株式会社ハ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第二十四条 日本肥料株式会社ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外政府ノ認可ヲ受ケタル価格ニ依ルニ非ザレバ第九条ノ肥料ノ買入、販売、輸出、輸入、移出又ハ移入ヲ為スコトヲ得ズ
第二十五条 政府必要アリト認ムルトキハ日本肥料株式会社ニ対シ第九条ノ肥料ノ配給統制上又ハ供給確保上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
政府ハ日本肥料株式会社ニ対シ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第二十六条 政府ハ日本肥料株式会社監理官ヲ置キ日本肥料株式会社ノ業務ヲ監視セシム
日本肥料株式会社監理官ハ何時ニテモ日本肥料株式会社ノ帳簿書類、金庫其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
日本肥料株式会社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本肥料株式会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本肥料株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十七条 政府日本肥料株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十八条 重要肥料業統制法第十条第一項ノ規定ハ日本肥料株式会社ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二十九条 日本肥料株式会社ハ第九条ノ肥料ノ価格ノ調整ヲ図ル為命令ノ定ムル所ニ依リ価格平衡資金ヲ設定スベシ
前項ノ規定ニ依リ価格平衡資金ニ繰入レタル金額ハ法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第三十条 第九条ノ肥料ニシテ主務大臣ノ指定スルモノノ製造業者及其ノ肥料ノ取扱ヲ為ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造又ハ取扱ニ係ル肥料ヲ日本肥料株式会社ニ売渡スベシ
前項ノ肥料ノ取扱ヲ為ス者ノ範囲ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
政府ハ第一項ニ掲グル者ニ対シ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ為スコトヲ得
第三十一条 第二十五条第一項ノ規定ニ依ル命令又ハ第二十四条若ハ前条第一項ノ規定ニ違反シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十二条 第三十条第三項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十条第三項ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者亦前項ニ同ジ
第三十三条 法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第三十一条又ハ前条第一項ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十四条 第三十一条及第三十二条第一項ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五条 日本肥料株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ理事長又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副理事長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第九条第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ営ミタルトキ
三 第十二条第一項ノ規定ニ違反シ肥料債券ヲ発行シタルトキ
四 第二十五条第二項ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
日本肥料株式会社ノ理事長、副理事長又ハ理事第八条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第三十六条 第五条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第三十七条 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八条 日本硫安株式会社及臨時肥料配給統制法第一条第一項ノ規定ニ依リ過燐酸石灰ノ配給統制上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ゼラレタル株式会社(燐酸肥料配給株式会社)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三条ニ定ムル株主総会ノ決議ヲ以テ日本肥料株式会社ト為ルコトヲ得
日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社前項ノ決議ヲ為シタルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十九条 前条ノ認可ヲ為シタルトキハ政府ハ設立委員ヲ命ジ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ヲ日本肥料株式会社ト為ス為ニ必要ナル事務ヲ処理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ日本硫安株式会社ノ取締役中ヨリ、少クトモ二人ハ燐酸肥料配給株式会社ノ取締役中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ノ取締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ会社ノ常務ニ属セザル行為ヲ為スコトヲ得ズ
第四十条 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四十一条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総株式ヨリ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ノ株式ニ引当テラルベキ株式並ニ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十二条 株式申込証ニハ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ規定スル事項ノ外定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第四十三条 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ政府ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第四十四条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各新株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
第四十五条 前条ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第四十六条 創立総会ニ於テハ第七条ノ規定ニ準ジ理事ノ候補者ノ選挙及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十七条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本肥料株式会社理事長ニ引渡スベシ
第四十八条 日本肥料株式会社ノ成立ニ因リ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ハ之ニ吸収セラルルモノトシ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ノ権利義務ハ日本肥料株式会社ニ於テ之ヲ承継ス
第四十九条 前条ノ規定ニ依リ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ガ日本肥料株式会社ト為リタルトキハ法人税法、営業税法及臨時利得税法ノ適用ニ関シテハ日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ト看做シ日本肥料株式会社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人ト看做ス
日本肥料株式会社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ払込株金額中日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ノ払込株金額ニ相当スル部分ニ付テハ登録税ヲ課セズ
第五十条 第三十八条乃至前条ニ規定スルモノヲ除クノ外日本硫安株式会社及燐酸肥料配給株式会社ガ日本肥料株式会社ト為ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一条 第三十八条第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ効力ヲ生ゼザル場合ニ於テ日本肥料株式会社ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十二条 第五条ノ規定施行ノ際現ニ日本肥料株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ同条ノ規定施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第五条ノ規定ハ前項ノ期間内同項ニ掲グル者ニ之ヲ適用セズ
第五十三条 
登録税法第六条第一項第十一号中「硫安債券」ヲ「肥料債券」ニ改ム
第五十四条 硫酸アンモニア増産及配給統制法中左ノ通改正ス
第六条ヲ削リ第七条ヲ第六条トス
第八条ヲ第七条トシ同条第二項中「日本硫安株式会社」ヲ「日本肥料株式会社」ニ改ム
第九条乃至第三十七条ヲ削ル
第三十八条ヲ第八条トシ同条中「第八条」ヲ「前条」ニ改ム
第三十九条ヲ削ル
第四十条ヲ第九条トシ同条中「本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ」ヲ「前条ノ違反行為ヲ為シタルトキ」ニ改ム
第四十一条ヲ第十条トシ同条中「本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ適用スベキ罰則」ヲ「第八条ノ罰則」ニ改ム
第四十二条乃至第四十四条ヲ削ル
第五十五条 前条ノ規定施行前硫酸アンモニア増産及配給統制法ノ罰則ヲ適用スベキ行為アリタルトキハ同条ノ規定施行後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス