朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル庶民金庫法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 賀屋興宣
內務大臣 末次信正
法律第五十八號
庶民金庫法
第一章 總則
第一條 庶民金庫ハ庶民金融ノ圓滑ヲ圖ルコトヲ目的トス
庶民金庫ハ法人トス
第二條 庶民金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
庶民金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第三條 庶民金庫ハ銀行、無盡會社及產業組合法第一條第四項ノ規定ニ依リ手形ノ割引又ハ貯金ノ取扱ヲ爲ス信用組合(以下金融機關ト總稱ス)ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシムルコトヲ得
庶民金庫ハ金融機關ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
金融機關ハ庶民金庫ノ貸付ヲ代理シタル場合ニ於テハ庶民金庫ニ對シ債務者ノ爲ニ命令ノ定ムル所ニ依リ債務ノ保證ヲ爲スコトヲ得
第四條 庶民金庫ノ資本金ハ千萬圓トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第五條 政府ハ千萬圓ヲ庶民金庫ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ國債證券ヲ交付シテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ大藏大臣之ヲ定ム
第六條 庶民金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資產ニ關スル事項
五 役員及會議ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 庶民債券ノ發行ニ關スル事項
八 會計ニ關スル事項
九 公吿ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更スルコトヲ得
第七條 庶民金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第八條 庶民金庫ニハ所得稅及營業收益稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ庶民金庫ノ事業ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 庶民金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 庶民金庫ニ非ザル者ハ庶民金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 役員
第十一條 庶民金庫ニ理事長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十二條 理事長ハ庶民金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ庶民金庫ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ庶民金庫ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ庶民金庫ノ業務ヲ監査ス
第十三條 理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
庶民金庫ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間庶民金庫ノ理事長、理事及監事ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
理事長及理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第十四條 理事長及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ從タル事務所ノ業務ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十五條 理事長及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 庶民金庫ニ評議員若干人ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要ナル事項ニ付理事長ノ諮問ニ應ジ必要アルトキハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二年トス
第三章 業務
第十七條 庶民金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一 割賦償還又ハ定期償還ノ方法ニ依ル小口貸付
二 金融機關ニ對スル小口貸付資金ノ融通
三 金融機關ノ爲ニスル小口貸付ノ損失補償
四 庶民金庫ト前各號ノ取引ヲ爲ス者ノ預金ノ受入
五 前各號ノ業務ニ附帶スル事業
第十八條 庶民金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 國債、地方債又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有價證券ノ取得ヲ爲スコト
二 大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト爲スコト
第四章 庶民債券
第十九條 庶民金庫ハ拂込資本金額ノ十倍ヲ限リ庶民債券ヲ發行スルコトヲ得但シ其ノ貸付金及所有ニ係ル有價證券ノ現在高ヲ超過スルコトヲ得ズ
第二十條 庶民債券ハ額面金額五十圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコトヲ得
庶民債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第二十一條 庶民金庫ハ庶民債券借換ノ爲一時第十九條ノ制限ニ依ラズ庶民債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ庶民債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊庶民債券ヲ償還スベシ
第二十二條 政府ハ庶民債券ニ付額面金額現在高最高一億圓ヲ限リ其ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
政府ガ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證シタル庶民債券ノ借換ノ爲前條ノ規定ニ依リ庶民債券ヲ發行スル場合ニ在リテハ其ノ庶民債券分ニ付テハ前項ノ制限ヲ超ユルコトヲ得
第二十三條 庶民債券ハ賣出ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第二十四條 庶民金庫ニ於テ庶民債券ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十五條 庶民債券ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十六條 所得稅法、資本利子稅法及有價證券移轉稅法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ庶民債券ニ之ヲ準用ス
第二十七條 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外庶民債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 會計
第二十八條 庶民金庫ノ事業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第二十九條 庶民金庫ノ剩餘金ハ之ヲ配當セズ
第三十條 庶民金庫ハ設立ノ時及每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
債權者ハ業務時間內何時ニテモ前項ニ揭グル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第六章 監督
第三十一條 庶民金庫ハ大藏大臣之ヲ監督ス
第三十二條 庶民金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第三十三條 庶民金庫ハ每事業年度ノ初ニ於テ貸付利率、融通利率及補償料ノ最高限度其ノ他貸付、融通及補償ニ關スル條件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第三十四條 主務大臣ハ庶民金庫ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十五條 主務大臣ハ特ニ庶民金庫監理官ヲ置キ庶民金庫ノ業務ヲ監視セシム
第三十六條 庶民金庫監理官ハ何時ニテモ庶民金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
庶民金庫監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ庶民金庫ニ命ジテ業務及財產ノ狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
庶民金庫監理官ハ庶民金庫ノ諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十七條 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第七章 罰則
第三十八條 左ノ場合ニ於テハ庶民金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタルトキ
三 第十八條ノ規定ニ違反シ業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
四 第十九條又ハ第二十一條第二項ノ規定ニ違反シ庶民債券ノ發行ヲ爲シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
五 主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
六 第三十六條ノ規定ニ依ル庶民金庫監理官ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報吿ヲ爲サザルトキ
第三十九條 左ノ場合ニ於テハ庶民金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 第三十條ノ規定ニ違反シ書類ヲ備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ事由ナクシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
第四十條 第十條ノ規定ニ違反シ庶民金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
第四十一條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第四十二條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三條 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ庶民金庫ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第四十四條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十五條 定款ニ付主務大臣ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資ノ拂込ヲ禀請スベシ
第四十六條 政府ノ出資ノ拂込アリタルトキハ庶民金庫ハ之ニ因リテ成立ス此ノ場合ニ於テハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ庶民金庫理事長ニ引繼グベシ
第四十七條 政府ハ第五條ノ規定ニ依リ交付スル爲昭和十三年度ニ於テ額面千萬圓ヲ限リ三分半利附公債ヲ發行スルコトヲ得
第四十八條 第十條ノ規定ハ本法施行前ヨリ行政官廳ノ許可又ハ認可ヲ受ケ使用スル名稱ニハ之ヲ適用セズ
第四十九條 
登錄稅法第十九條第七號中「產業組合中央會」ノ下ニ「、庶民金庫」ヲ、「產業組合法」ノ下ニ「、庶民金庫法」ヲ加へ同條ニ左ノ一號ヲ加フ
十八 庶民金庫ノ業務ノ用ニ供スル不動產ニ關スル登記
第五十條 
印紙稅法第五條中第六號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
六ノ二 庶民金庫ノ業務ニ關スル證書帳簿及庶民債券
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル庶民金庫法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 賀屋興宣
内務大臣 末次信正
法律第五十八号
庶民金庫法
第一章 総則
第一条 庶民金庫ハ庶民金融ノ円滑ヲ図ルコトヲ目的トス
庶民金庫ハ法人トス
第二条 庶民金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
庶民金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第三条 庶民金庫ハ銀行、無尽会社及産業組合法第一条第四項ノ規定ニ依リ手形ノ割引又ハ貯金ノ取扱ヲ為ス信用組合(以下金融機関ト総称ス)ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシムルコトヲ得
庶民金庫ハ金融機関ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
金融機関ハ庶民金庫ノ貸付ヲ代理シタル場合ニ於テハ庶民金庫ニ対シ債務者ノ為ニ命令ノ定ムル所ニ依リ債務ノ保証ヲ為スコトヲ得
第四条 庶民金庫ノ資本金ハ千万円トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第五条 政府ハ千万円ヲ庶民金庫ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ国債証券ヲ交付シテ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第六条 庶民金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資産ニ関スル事項
五 役員及会議ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 庶民債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ変更スルコトヲ得
第七条 庶民金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第八条 庶民金庫ニハ所得税及営業収益税ヲ課セズ
北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ庶民金庫ノ事業ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第九条 庶民金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 庶民金庫ニ非ザル者ハ庶民金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 役員
第十一条 庶民金庫ニ理事長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十二条 理事長ハ庶民金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ庶民金庫ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ庶民金庫ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ庶民金庫ノ業務ヲ監査ス
第十三条 理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
庶民金庫ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間庶民金庫ノ理事長、理事及監事ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
理事長及理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第十四条 理事長及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ従タル事務所ノ業務ニ関シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十五条 理事長及理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六条 庶民金庫ニ評議員若干人ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務経営ニ関スル重要ナル事項ニ付理事長ノ諮問ニ応ジ必要アルトキハ之ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ二年トス
第三章 業務
第十七条 庶民金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一 割賦償還又ハ定期償還ノ方法ニ依ル小口貸付
二 金融機関ニ対スル小口貸付資金ノ融通
三 金融機関ノ為ニスル小口貸付ノ損失補償
四 庶民金庫ト前各号ノ取引ヲ為ス者ノ預金ノ受入
五 前各号ノ業務ニ附帯スル事業
第十八条 庶民金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ余裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 国債、地方債又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有価証券ノ取得ヲ為スコト
二 大蔵省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト為スコト
第四章 庶民債券
第十九条 庶民金庫ハ払込資本金額ノ十倍ヲ限リ庶民債券ヲ発行スルコトヲ得但シ其ノ貸付金及所有ニ係ル有価証券ノ現在高ヲ超過スルコトヲ得ズ
第二十条 庶民債券ハ額面金額五十円以上トシ無記名利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト為スコトヲ得
庶民債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十一条 庶民金庫ハ庶民債券借換ノ為一時第十九条ノ制限ニ依ラズ庶民債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ庶民債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧庶民債券ヲ償還スベシ
第二十二条 政府ハ庶民債券ニ付額面金額現在高最高一億円ヲ限リ其ノ元本ノ償還及利息ノ支払ヲ保証スルコトヲ得
政府ガ元本ノ償還及利息ノ支払ヲ保証シタル庶民債券ノ借換ノ為前条ノ規定ニ依リ庶民債券ヲ発行スル場合ニ在リテハ其ノ庶民債券分ニ付テハ前項ノ制限ヲ超ユルコトヲ得
第二十三条 庶民債券ハ売出ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十四条 庶民金庫ニ於テ庶民債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十五条 庶民債券ノ消滅時効ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十六条 所得税法、資本利子税法及有価証券移転税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ庶民債券ニ之ヲ準用ス
第二十七条 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外庶民債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 会計
第二十八条 庶民金庫ノ事業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第二十九条 庶民金庫ノ剰余金ハ之ヲ配当セズ
第三十条 庶民金庫ハ設立ノ時及毎事業年度ノ初ニ於テ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
債権者ハ業務時間内何時ニテモ前項ニ掲グル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第六章 監督
第三十一条 庶民金庫ハ大蔵大臣之ヲ監督ス
第三十二条 庶民金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ剰余金ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ
第三十三条 庶民金庫ハ毎事業年度ノ初ニ於テ貸付利率、融通利率及補償料ノ最高限度其ノ他貸付、融通及補償ニ関スル条件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第三十四条 主務大臣ハ庶民金庫ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第三十五条 主務大臣ハ特ニ庶民金庫監理官ヲ置キ庶民金庫ノ業務ヲ監視セシム
第三十六条 庶民金庫監理官ハ何時ニテモ庶民金庫ノ業務及財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
庶民金庫監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ庶民金庫ニ命ジテ業務及財産ノ状況ヲ報告セシムルコトヲ得
庶民金庫監理官ハ庶民金庫ノ諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十七条 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第七章 罰則
第三十八条 左ノ場合ニ於テハ庶民金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ百円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ営ミタルトキ
三 第十八条ノ規定ニ違反シ業務上ノ余裕金ヲ運用シタルトキ
四 第十九条又ハ第二十一条第二項ノ規定ニ違反シ庶民債券ノ発行ヲ為シ又ハ償還ヲ為サザルトキ
五 主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
六 第三十六条ノ規定ニ依ル庶民金庫監理官ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報告ヲ為サザルトキ
第三十九条 左ノ場合ニ於テハ庶民金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ十円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ基キテ発スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 第三十条ノ規定ニ違反シ書類ヲ備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ又ハ正当ノ事由ナクシテ其ノ閲覧ヲ拒ミタルトキ
第四十条 第十条ノ規定ニ違反シ庶民金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ十円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
第四十一条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前三条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第四十二条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三条 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ庶民金庫ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第四十四条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十五条 定款ニ付主務大臣ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク出資ノ払込ヲ禀請スベシ
第四十六条 政府ノ出資ノ払込アリタルトキハ庶民金庫ハ之ニ因リテ成立ス此ノ場合ニ於テハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ庶民金庫理事長ニ引継グベシ
第四十七条 政府ハ第五条ノ規定ニ依リ交付スル為昭和十三年度ニ於テ額面千万円ヲ限リ三分半利附公債ヲ発行スルコトヲ得
第四十八条 第十条ノ規定ハ本法施行前ヨリ行政官庁ノ許可又ハ認可ヲ受ケ使用スル名称ニハ之ヲ適用セズ
第四十九条 
登録税法第十九条第七号中「産業組合中央会」ノ下ニ「、庶民金庫」ヲ、「産業組合法」ノ下ニ「、庶民金庫法」ヲ加へ同条ニ左ノ一号ヲ加フ
十八 庶民金庫ノ業務ノ用ニ供スル不動産ニ関スル登記
第五十条 
印紙税法第五条中第六号ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
六ノ二 庶民金庫ノ業務ニ関スル証書帳簿及庶民債券