恩給金庫法
法令番号: 法律第五十七號
公布年月日: 昭和13年4月1日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル恩給金庫法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 賀屋興宣
內務大臣 末次信正
法律第五十七號
恩給金庫法
第一章 總則
第一條 恩給金庫ハ法人トス
第二條 恩給金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置シ又ハ官廳其ノ他ノ機關ニ其ノ業務ノ執行ニ關スル事務ノ一部ノ取扱ヲ委託スルコトヲ得
第三條 恩給金庫ノ資本金ハ三千萬圓トシ之ヲ三十萬口ニ分チ一口ノ金額ヲ百圓トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
政府ハ五百萬圓ヲ限リ恩給金庫ニ出資スベシ
第四條 恩給金庫ハ出資ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ出資證券ヲ發行ス
第五條 恩給金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ恩給金庫ニ拂込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ對抗スルコトヲ得ズ
第六條 出資者ハ恩給金庫ノ承認ヲ經テ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得
第七條 拂込ヲ怠リタル出資者ニ對シ恩給金庫ガ一月以上ノ相當ノ期間ヲ定メ拂込ノ請求ヲ爲シタルニ拘ラズ出資者ガ拂込ヲ爲サザル場合ニ於テ持分ノ讓渡ヲ恩給金庫ノ原簿ニ登錄シタル後二年ヲ超エザル讓渡人アルトキハ恩給金庫ハ之ニ對シ期限ヲ定メ拂込ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ最モ先ニ滯納金額ノ拂込ヲ爲シタル讓渡人ハ其ノ持分ヲ取得ス
前項ノ規定ニ依ル出資者及讓渡人ノ拂込ナキトキハ恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ該持分ヲ賣却スルコトヲ得賣却ニ依リテ得タル金額ガ滯納金額ニ滿タザルトキハ從前ノ出資者ヲシテ其ノ不足額ヲ辨濟セシムルコトヲ得其ノ者ガ二週間內ニ之ヲ辨濟セザルトキハ前項ノ讓渡人ニ對シテモ其ノ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ恩給金庫ガ損害賠償及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
第八條 恩給金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資產ニ關スル事項
五 役員及會議ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 恩給債券ノ發行ニ關スル事項
八 會計ニ關スル事項
九 公吿ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更スルコトヲ得
第九條 恩給金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十條 恩給金庫ニハ所得稅及營業收益稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ恩給金庫ノ事業ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
朝鮮、臺灣、關東州、樺太及南洋群島ニ於ケル課稅ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條 恩給金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 恩給金庫ニ非ザル者ハ恩給金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 役員
第十三條 恩給金庫ニ理事長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十四條 理事長ハ恩給金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ恩給金庫ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ恩給金庫ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ恩給金庫ノ業務ヲ監査ス
第十五條 理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
恩給金庫ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間恩給金庫ノ理事長、理事及監事ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
理事長及理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第十六條 理事長及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條 恩給金庫ニ評議員二十人以內ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要事項ニ付理事長ノ諮問ニ應ジ必要アルトキハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ三年トス
第三章 業務
第十八條 恩給金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一 恩給法ニ依ル恩給ヲ擔保トスル貸付
二 勳章年金(以下單ニ年金ト稱ス)ヲ擔保トスル貸付
三 恩給法以外ノ法令(地方公共團體ノ條例ヲ含ム)ニ依ル恩給ヲ擔保トスル貸付
四 恩給及年金ノ代理受領竝ニ受領シタル金錢ノ寄託ノ引受
五 前各號ノ業務ニ附帶スル事業
第十九條 恩給ハ其ノ裁定前ト雖モ給與ヲ受クベキコトノ確實ナルモノニ付テハ之ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ爲ス貸付ノ金額ハ裁定後ニ爲ス貸付ノ標準金額ノ半額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十條 恩給金庫ハ先ヅ恩給又ハ年金ノ支給金ヲ以テ貸付金ノ元利ニ充當スベシ
前項ノ規定ニ依リ充當ヲ爲シタル殘餘ノ貸付金ニ付テハ恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ債權ヲ抛棄スルコトヲ得
第二十一條 恩給金庫ハ其ノ債權ヲ確保スル目的ヲ以テ命令ノ定ムル所ニ依リ債務者ニ代リテ恩給及年金ニ關スル請求其ノ他ノ行爲ヲ爲スコトヲ得
第二十二條 恩給金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 國債、地方債又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有價證券ノ取得ヲ爲スコト
二 大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト爲スコト
第二十三條 恩給金庫ハ資本金ノ十分ノ一以上ノ拂込アリタルトキハ其ノ業務ヲ開始スルコトヲ得
第四章 擔保ノ效力
第二十四條 擔保ニ供セラレタル恩給又ハ年金ハ恩給金庫ノミ其ノ支拂ヲ求ムルコトヲ得
第二十五條 公務員(之ニ準ズル者ヲ含ム)ガ其ノ受クル恩給又ハ年金ヲ擔保ニ供シタルトキハ其ノ效力ハ其ノ遺族ノ受クベキ恩給又ハ年金ノ上ニ及ブコトナシ
遺族ガ其ノ受クル恩給又ハ年金ヲ擔保ニ供シタルトキハ其ノ效力ハ擔保ニ供シタル者ノ後順位者ノ受クベキ恩給又ハ年金ノ上ニ及ブコトナシ
第二十六條 恩給ヲ擔保ニ供シ恩給金庫ヨリ貸付ヲ受ケタル者ハ其ノ債務ノ完濟ニ至ル迄ハ其ノ恩給ヲ受クルノ權利ヲ抛棄スルコトヲ得ズ
第二十七條 再就職其ノ他ノ事由ニ因リ恩給ガ改定若ハ更正セラレ又ハ年金ガ進級增額若ハ更正セラルル場合ニ於テ恩給金庫ガ改定、進級增額又ハ更正前ノ恩給又ハ年金ニ付擔保權ヲ有スルトキハ恩給金庫ハ當然新恩給又ハ新年金ノ上ニ擔保權ヲ有ス
第二十八條 恩給ヲ擔保ニ供シタル者再ビ就職シ恩給ヲ停止セラルル場合ニ於テハ恩給金庫ハ恩給ノ支給金ヲ以テ辨濟ヲ受クベキ金額ノ範圍內ニ於テ其ノ者ノ受クベキ俸給中ヨリ貸付金額ノ辨濟ヲ受クルコトヲ得
第二十九條 恩給又ハ年金ヲ擔保トスルニハ其ノ證書ヲ恩給金庫ニ交付スベシ但シ恩給ノ裁定前豫メ之ヲ擔保トスル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條 恩給ノ裁定前豫メ之ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲シタルトキハ恩給金庫ハ遲滯ナク裁定廳ニ其ノ要旨ヲ申吿シ置クコトヲ要ス
第三十一條 前條ノ規定ニ依ル申吿ヲ受ケタル件ニ付恩給給與ノ裁定ヲ爲シタルトキハ裁定廳ハ恩給證書ヲ恩給金庫ニ交付スベシ
第三十二條 裁定ヲ經タル恩給又ハ年金ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲シタルトキハ恩給金庫ハ遲滯ナク恩給ノ裁定廳又ハ賞勳局及支給廳ニ其ノ旨ヲ申吿スベシ擔保權ノ消滅シタルトキ亦同ジ
第三十三條 恩給金庫ニ擔保ニ供セラレタル恩給又ハ年金ニ付證書ノ再發行ヲ爲ス場合ニ於テハ新證書ハ之ヲ恩給金庫ニ交付スベシ擔保ニ供セラレタル恩給又ハ年金ヲ改定、進級增額又ハ更正スルニ當リ新ニ證書ヲ發行スル場合亦同ジ
第三十四條 本章ニ規定スルモノノ外恩給又ハ年金ノ擔保ノ實行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 恩給債券
第三十五條 恩給金庫ハ拂込資本金額ノ十五倍ヲ限リ恩給債券ヲ發行スルコトヲ得但シ其ノ貸付金及所有ニ係ル有價證券ノ現在高ヲ超過スルコトヲ得ズ
第三十六條 恩給債券ハ額面金額五十圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコトヲ得
恩給債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第三十七條 恩給金庫ハ恩給債券借換ノ爲一時第三十五條ノ制限ニ依ラズ恩給債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ恩給債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊恩給債券ヲ償還スベシ
第三十八條 恩給債券ハ賣出ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第三十九條 恩給金庫ニ於テ恩給債券ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十條 恩給債券ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第四十一條 所得稅法、資本利子稅法及有價證券移轉稅法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ恩給債券ニ之ヲ準用ス
第四十二條 本章ニ規定スルモノノ外恩給債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 會計
第四十三條 恩給金庫ノ事業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第四十四條 恩給金庫ハ每事業年度ニ於テ準備金トシテ剩餘金ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第四十五條 恩給金庫ハ成立後二十事業年度ノ間ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ政府ノ出資ニ對スル剩餘金ノ配當ヲ減額シ又ハ之ヲ爲サザルコトヲ得
第四十六條 恩給金庫ハ設立ノ時及每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
出資者及債權者ハ業務時間內何時ニテモ前項ニ揭グル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第七章 監督
第四十七條 恩給金庫ハ內閣總理大臣及大藏大臣之ヲ監督ス
第四十八條 恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第四十九條 恩給金庫ハ每事業年度ノ初ニ於テ貸付利率ノ最高限度其ノ他貸付ニ關スル條件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第五十條 主務大臣ハ恩給金庫ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五十一條 主務大臣ハ特ニ恩給金庫監理官ヲ置キ恩給金庫ノ業務ヲ監視セシム
第五十二條 恩給金庫監理官ハ何時ニテモ恩給金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
恩給金庫監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ恩給金庫ニ命ジテ業務及財產ノ狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
恩給金庫監理官ハ恩給金庫ノ諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第五十三條 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第八章 罰則
第五十四條 左ノ場合ニ於テハ恩給金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタルトキ
三 第二十二條ノ規定ニ違反シ業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
四 第三十五條又ハ第三十七條第二項ノ規定ニ違反シ恩給債券ノ發行ヲ爲シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
五 主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
六 第五十二條ノ規定ニ依ル恩給金庫監理官ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報吿ヲ爲サザルトキ
第五十五條 左ノ場合ニ於テハ恩給金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 第四十六條ノ規定ニ違反シ書類ヲ備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ事由ナクシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
第五十六條 第十二條ノ規定ニ違反シ恩給金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
第五十七條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第五十八條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ恩給金庫ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第六十條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後出資者ヲ募集スベシ
第六十一條 設立委員ハ出資者ノ募集終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
第六十二條 出資第一囘ノ拂込完了シタルトキハ出資者ノ總會ヲ招集スベシ
前項ノ總會終結シタルトキハ恩給金庫ハ之ニ因リテ成立ス此ノ場合ニ於テハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ恩給金庫理事長ニ引繼グベシ
第六十三條 本法ニ規定スルモノノ外恩給金庫設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十四條 
登錄稅法中第六條ノ二ヲ第六條ノ三トシ第六條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第六條ノ二 恩給金庫カ恩給債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘシ
一 恩給債券又ハ其ノ第二囘以後ノ拂込 每囘拂込金額 千分ノ二
二 登記事項ノ變更、消滅又ハ廢止 每一件 金十圓
從タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各號ノ登記ヲ受クルトキハ每一件金二圓ノ登錄稅ヲ納ムヘシ
第六十五條 
登錄稅法第十九條第七號中「產業組合」ノ上ニ「恩給金庫、」ヲ、「產業組合法」ノ上ニ「恩給金庫法、」ヲ加フ
第六十六條 
印紙稅法第五條中第五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五ノ二 恩給金庫ノ發スル出資證券又ハ貸付業務ニ關スル證書帳簿
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル恩給金庫法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 賀屋興宣
内務大臣 末次信正
法律第五十七号
恩給金庫法
第一章 総則
第一条 恩給金庫ハ法人トス
第二条 恩給金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ設置シ又ハ官庁其ノ他ノ機関ニ其ノ業務ノ執行ニ関スル事務ノ一部ノ取扱ヲ委託スルコトヲ得
第三条 恩給金庫ノ資本金ハ三千万円トシ之ヲ三十万口ニ分チ一口ノ金額ヲ百円トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
政府ハ五百万円ヲ限リ恩給金庫ニ出資スベシ
第四条 恩給金庫ハ出資ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ出資証券ヲ発行ス
第五条 恩給金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ恩給金庫ニ払込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ズ
第六条 出資者ハ恩給金庫ノ承認ヲ経テ其ノ持分ヲ譲渡スルコトヲ得
第七条 払込ヲ怠リタル出資者ニ対シ恩給金庫ガ一月以上ノ相当ノ期間ヲ定メ払込ノ請求ヲ為シタルニ拘ラズ出資者ガ払込ヲ為サザル場合ニ於テ持分ノ譲渡ヲ恩給金庫ノ原簿ニ登録シタル後二年ヲ超エザル譲渡人アルトキハ恩給金庫ハ之ニ対シ期限ヲ定メ払込ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ最モ先ニ滞納金額ノ払込ヲ為シタル譲渡人ハ其ノ持分ヲ取得ス
前項ノ規定ニ依ル出資者及譲渡人ノ払込ナキトキハ恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ該持分ヲ売却スルコトヲ得売却ニ依リテ得タル金額ガ滞納金額ニ満タザルトキハ従前ノ出資者ヲシテ其ノ不足額ヲ弁済セシムルコトヲ得其ノ者ガ二週間内ニ之ヲ弁済セザルトキハ前項ノ譲渡人ニ対シテモ其ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ恩給金庫ガ損害賠償及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ為スコトヲ妨ゲズ
第八条 恩給金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資産ニ関スル事項
五 役員及会議ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 恩給債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ変更スルコトヲ得
第九条 恩給金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十条 恩給金庫ニハ所得税及営業収益税ヲ課セズ
北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ恩給金庫ノ事業ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
朝鮮、台湾、関東州、樺太及南洋群島ニ於ケル課税ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 恩給金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 恩給金庫ニ非ザル者ハ恩給金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 役員
第十三条 恩給金庫ニ理事長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十四条 理事長ハ恩給金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ恩給金庫ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ恩給金庫ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ恩給金庫ノ業務ヲ監査ス
第十五条 理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
恩給金庫ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間恩給金庫ノ理事長、理事及監事ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
理事長及理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第十六条 理事長及理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十七条 恩給金庫ニ評議員二十人以内ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務経営ニ関スル重要事項ニ付理事長ノ諮問ニ応ジ必要アルトキハ之ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ三年トス
第三章 業務
第十八条 恩給金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一 恩給法ニ依ル恩給ヲ担保トスル貸付
二 勲章年金(以下単ニ年金ト称ス)ヲ担保トスル貸付
三 恩給法以外ノ法令(地方公共団体ノ条例ヲ含ム)ニ依ル恩給ヲ担保トスル貸付
四 恩給及年金ノ代理受領並ニ受領シタル金銭ノ寄託ノ引受
五 前各号ノ業務ニ附帯スル事業
第十九条 恩給ハ其ノ裁定前ト雖モ給与ヲ受クベキコトノ確実ナルモノニ付テハ之ヲ担保トシテ貸付ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ為ス貸付ノ金額ハ裁定後ニ為ス貸付ノ標準金額ノ半額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十条 恩給金庫ハ先ヅ恩給又ハ年金ノ支給金ヲ以テ貸付金ノ元利ニ充当スベシ
前項ノ規定ニ依リ充当ヲ為シタル残余ノ貸付金ニ付テハ恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ債権ヲ抛棄スルコトヲ得
第二十一条 恩給金庫ハ其ノ債権ヲ確保スル目的ヲ以テ命令ノ定ムル所ニ依リ債務者ニ代リテ恩給及年金ニ関スル請求其ノ他ノ行為ヲ為スコトヲ得
第二十二条 恩給金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ余裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 国債、地方債又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有価証券ノ取得ヲ為スコト
二 大蔵省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト為スコト
第二十三条 恩給金庫ハ資本金ノ十分ノ一以上ノ払込アリタルトキハ其ノ業務ヲ開始スルコトヲ得
第四章 担保ノ効力
第二十四条 担保ニ供セラレタル恩給又ハ年金ハ恩給金庫ノミ其ノ支払ヲ求ムルコトヲ得
第二十五条 公務員(之ニ準ズル者ヲ含ム)ガ其ノ受クル恩給又ハ年金ヲ担保ニ供シタルトキハ其ノ効力ハ其ノ遺族ノ受クベキ恩給又ハ年金ノ上ニ及ブコトナシ
遺族ガ其ノ受クル恩給又ハ年金ヲ担保ニ供シタルトキハ其ノ効力ハ担保ニ供シタル者ノ後順位者ノ受クベキ恩給又ハ年金ノ上ニ及ブコトナシ
第二十六条 恩給ヲ担保ニ供シ恩給金庫ヨリ貸付ヲ受ケタル者ハ其ノ債務ノ完済ニ至ル迄ハ其ノ恩給ヲ受クルノ権利ヲ抛棄スルコトヲ得ズ
第二十七条 再就職其ノ他ノ事由ニ因リ恩給ガ改定若ハ更正セラレ又ハ年金ガ進級増額若ハ更正セラルル場合ニ於テ恩給金庫ガ改定、進級増額又ハ更正前ノ恩給又ハ年金ニ付担保権ヲ有スルトキハ恩給金庫ハ当然新恩給又ハ新年金ノ上ニ担保権ヲ有ス
第二十八条 恩給ヲ担保ニ供シタル者再ビ就職シ恩給ヲ停止セラルル場合ニ於テハ恩給金庫ハ恩給ノ支給金ヲ以テ弁済ヲ受クベキ金額ノ範囲内ニ於テ其ノ者ノ受クベキ俸給中ヨリ貸付金額ノ弁済ヲ受クルコトヲ得
第二十九条 恩給又ハ年金ヲ担保トスルニハ其ノ証書ヲ恩給金庫ニ交付スベシ但シ恩給ノ裁定前予メ之ヲ担保トスル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第三十条 恩給ノ裁定前予メ之ヲ担保トシテ貸付ヲ為シタルトキハ恩給金庫ハ遅滞ナク裁定庁ニ其ノ要旨ヲ申告シ置クコトヲ要ス
第三十一条 前条ノ規定ニ依ル申告ヲ受ケタル件ニ付恩給給与ノ裁定ヲ為シタルトキハ裁定庁ハ恩給証書ヲ恩給金庫ニ交付スベシ
第三十二条 裁定ヲ経タル恩給又ハ年金ヲ担保トシテ貸付ヲ為シタルトキハ恩給金庫ハ遅滞ナク恩給ノ裁定庁又ハ賞勲局及支給庁ニ其ノ旨ヲ申告スベシ担保権ノ消滅シタルトキ亦同ジ
第三十三条 恩給金庫ニ担保ニ供セラレタル恩給又ハ年金ニ付証書ノ再発行ヲ為ス場合ニ於テハ新証書ハ之ヲ恩給金庫ニ交付スベシ担保ニ供セラレタル恩給又ハ年金ヲ改定、進級増額又ハ更正スルニ当リ新ニ証書ヲ発行スル場合亦同ジ
第三十四条 本章ニ規定スルモノノ外恩給又ハ年金ノ担保ノ実行ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 恩給債券
第三十五条 恩給金庫ハ払込資本金額ノ十五倍ヲ限リ恩給債券ヲ発行スルコトヲ得但シ其ノ貸付金及所有ニ係ル有価証券ノ現在高ヲ超過スルコトヲ得ズ
第三十六条 恩給債券ハ額面金額五十円以上トシ無記名利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト為スコトヲ得
恩給債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第三十七条 恩給金庫ハ恩給債券借換ノ為一時第三十五条ノ制限ニ依ラズ恩給債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ恩給債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧恩給債券ヲ償還スベシ
第三十八条 恩給債券ハ売出ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第三十九条 恩給金庫ニ於テ恩給債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十条 恩給債券ノ消滅時効ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第四十一条 所得税法、資本利子税法及有価証券移転税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ恩給債券ニ之ヲ準用ス
第四十二条 本章ニ規定スルモノノ外恩給債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 会計
第四十三条 恩給金庫ノ事業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第四十四条 恩給金庫ハ毎事業年度ニ於テ準備金トシテ剰余金ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第四十五条 恩給金庫ハ成立後二十事業年度ノ間ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ政府ノ出資ニ対スル剰余金ノ配当ヲ減額シ又ハ之ヲ為サザルコトヲ得
第四十六条 恩給金庫ハ設立ノ時及毎事業年度ノ初ニ於テ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
出資者及債権者ハ業務時間内何時ニテモ前項ニ掲グル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第七章 監督
第四十七条 恩給金庫ハ内閣総理大臣及大蔵大臣之ヲ監督ス
第四十八条 恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ剰余金ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ
第四十九条 恩給金庫ハ毎事業年度ノ初ニ於テ貸付利率ノ最高限度其ノ他貸付ニ関スル条件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第五十条 主務大臣ハ恩給金庫ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第五十一条 主務大臣ハ特ニ恩給金庫監理官ヲ置キ恩給金庫ノ業務ヲ監視セシム
第五十二条 恩給金庫監理官ハ何時ニテモ恩給金庫ノ業務及財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
恩給金庫監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ恩給金庫ニ命ジテ業務及財産ノ状況ヲ報告セシムルコトヲ得
恩給金庫監理官ハ恩給金庫ノ諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第五十三条 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第八章 罰則
第五十四条 左ノ場合ニ於テハ恩給金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ百円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ営ミタルトキ
三 第二十二条ノ規定ニ違反シ業務上ノ余裕金ヲ運用シタルトキ
四 第三十五条又ハ第三十七条第二項ノ規定ニ違反シ恩給債券ノ発行ヲ為シ又ハ償還ヲ為サザルトキ
五 主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
六 第五十二条ノ規定ニ依ル恩給金庫監理官ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報告ヲ為サザルトキ
第五十五条 左ノ場合ニ於テハ恩給金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ十円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ基キテ発スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 第四十六条ノ規定ニ違反シ書類ヲ備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ又ハ正当ノ事由ナクシテ其ノ閲覧ヲ拒ミタルトキ
第五十六条 第十二条ノ規定ニ違反シ恩給金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ十円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
第五十七条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前三条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第五十八条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九条 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ恩給金庫ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第六十条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後出資者ヲ募集スベシ
第六十一条 設立委員ハ出資者ノ募集終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク出資第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
第六十二条 出資第一回ノ払込完了シタルトキハ出資者ノ総会ヲ招集スベシ
前項ノ総会終結シタルトキハ恩給金庫ハ之ニ因リテ成立ス此ノ場合ニ於テハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ恩給金庫理事長ニ引継グベシ
第六十三条 本法ニ規定スルモノノ外恩給金庫設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十四条 
登録税法中第六条ノ二ヲ第六条ノ三トシ第六条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第六条ノ二 恩給金庫カ恩給債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムヘシ
一 恩給債券又ハ其ノ第二回以後ノ払込 毎回払込金額 千分ノ二
二 登記事項ノ変更、消滅又ハ廃止 毎一件 金十円
従タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各号ノ登記ヲ受クルトキハ毎一件金二円ノ登録税ヲ納ムヘシ
第六十五条 
登録税法第十九条第七号中「産業組合」ノ上ニ「恩給金庫、」ヲ、「産業組合法」ノ上ニ「恩給金庫法、」ヲ加フ
第六十六条 
印紙税法第五条中第五号ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
五ノ二 恩給金庫ノ発スル出資証券又ハ貸付業務ニ関スル証書帳簿