朕關東州所得稅令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年六月二十五日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
勅令第二百八十九號
關東州所得稅令
第一條 關東州ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本令ニ依リ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條 前條ノ規定ニ該當セザル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
一 關東州ニ資產又ハ營業ヲ有スルトキ
二 關東州ニ於テ公債、社債又ハ銀行預金(東洋拓殖株式會社ノ預金ヲ含ム)ノ利子支拂ヲ受クルトキ
三 關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配當、剩餘金ノ分配又ハ利益若ハ剩餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ヲ受クルトキ
第三條 所得稅ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス但シ復與貯蓄債券ノ利子ニハ之ヲ課セズ
第一種
甲 法人ノ普通所得
乙 法人ノ超過所得
丙 法人ノ淸算所得
第二種
甲 關東州ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債又ハ銀行預金(東洋拓殖株式會社ノ預金ヲ含ム)ノ利子
乙 第一條ノ規定ニ該當セザル者ノ關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當、剩餘金ノ分配又ハ利益若ハ剩餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與
第三種
第二種ニ屬セザル個人ノ所得
第四條 法人ノ普通所得ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ保險會社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剩餘金ニ依ル
前項ノ規定ニ依リ法人ノ普通所得ヲ計算スル場合ニ於テハ國債ノ利子額中其ノ國債ヲ所有シタル期間ノ利子額百分ノ七十ニ相當スル金額ヲ申請ニ依リ其ノ普通所得ヨリ控除ス
第二條ノ規定ニ依リ納稅義務アル法人ノ普通所得ハ關東州ニ於ケル資產又ハ營業ニ付前二項ノ規定ニ準ジ之ヲ計算ス
法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第五條 法人ノ普通所得ガ當該事業年度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ超過所得トス
第六條 法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
第七條 第二條ノ規定ニ依リ納稅義務アル法人又ハ所得稅ヲ課スベキ所得ト其ノ他ノ所得(第四條第二項ノ控除額ヲ含ム)トヲ有スル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ滿洲國駐箚特命全權大使ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八條 本令ニ於テ積立金トハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハズ法人ノ普通所得中其ノ留保シタルモノヲ謂フ
第九條 法人解散シタル場合ニ於テ其ノ殘餘財產ノ價額ガ解散當時ノ拂込株式金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ淸算所得トス
法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員ガ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額及金錢ノ總額ガ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ合併當時ノ拂込株式金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ淸算所得ト看做ス
第四條第二項ノ規定ハ法人ノ淸算所得ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第十條 合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ所得ニ付所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第十一條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ガ所得稅法施行地、朝鮮、臺灣、樺太又ハ關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ト合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ガ關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スルトキハ前條ノ規定ヲ準用ス
第十二條 第二種ノ所得ハ其ノ支拂ヲ受クベキ金額ニ依ル
第十三條 第三種ノ所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 營業ニ非ザル貸金ノ利子竝ニ第二種ノ所得ニ屬セザル公債、社債及預金ノ利子ハ前年中ノ收入金額
二 山林ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
三 賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額
四 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額(無記名株式ノ配當ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分ノ二ヲ控除シタル金額
五 俸給、給料、歲費、年金、恩給及此等ノ性質ヲ有スル給與ハ前年中ノ收入金額但シ前年一月一日ヨリ引續キ支給ヲ受ケタルニ非ザルモノニ付テハ其ノ年ノ豫算年額
六 前各號以外ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額但シ前年一月一日ヨリ引續キ有シタルニ非ザル資產、營業又ハ職業ノ所得ニ付テハ其ノ年ノ豫算年額
株式ノ消却ニ因リ支拂ヲ受クル金額又ハ退社ニ因リ持分ノ拂戾トシテ受クル金額ガ其ノ株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ法人ヨリ受クル利益ノ配當ト看做ス
第一項第一號、第二號及第四號ノ所得ニ付テハ被相續人ノ所得ハ之ヲ相續人ノ所得ト看做シ第六號ノ所得ニ付テハ相續シタル資產又ハ營業ハ相續人ガ引續キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十四條 前條ノ規定ニ依リ算出シタル所得總額一萬四千圓以下ナルトキハ其ノ所得中勤勞所得(前條第一項第三號及第五號ノ所得)ニ付左ノ金額ヲ控除ス
一 所得總額七千圓以下ナルトキハ勤勞所得ノ十分ノ二
二 所得總額中勤勞所得以外ノ所得七千圓以上ナルトキハ勤勞所得ノ十分ノ一
三 所得總額七千圓ヲ超エ勤勞所得以外ノ所得七千圓未滿ナルトキハ勤勞所得中勤勞所得以外ノ所得ト合算シテ七千圓ニ達スル迄ノ金額ノ十分ノ二、其ノ他ノ金額ノ十分ノ一
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
第十五條 前二條ノ規定ニ依リ算出シタル所得總額三千圓以下ナルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ其ノ年三月一日現在ノ同居ノ戶主及家族中年齡十八歲未滿若ハ六十歲以上ノ者又ハ不具癈疾者一人ニ付百圓ヲ控除ス但シ第二條ノ規定ニ依ル納稅義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ金額ハ大使ノ定ムル所ニ依リ納稅義務者ノ一人又ハ數人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト山林以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三項ノ規定ニ依ル控除ハ先ヅ山林以外ノ所得ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ山林ノ所得ニ及ブ
第一項ノ不具癈疾者ハ大使之ヲ定ム
第十六條 自己、戶主若ハ家族又ハ其ノ相續人ヲ保險金受取人トスル生命保險契約ノ爲ニ拂込ミタル保險料ハ年額二百圓ヲ限リ大使ノ定ムル所ニ依リ本人ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ之ヲ控除ス但シ第二條ノ規定ニ依ル納稅義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條 左ニ揭グル者ニハ所得稅ヲ課セズ
一 大使ノ指定スル公共團體
二 關東州裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル民法第三十四條ノ規定ニ依リ設立シタル法人其ノ他之ニ類スルモノニシテ大使ノ指定スルモノ
第十八條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ第一種甲及乙竝ニ第二種乙ノ所得ニ付テハ所得稅ヲ課セズ
第十九條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第二種乙ノ所得ニ付テハ所得稅ヲ課セズ
所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所ヲ有スル個人又ハ關東州ニ住所ヲ有セズシテ所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第三種ノ所得ニ付テハ左ニ揭グル場合ヲ除クノ外所得稅ヲ課セズ
一 關東州ニ住所ヲ有スル者所得金額決定後所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所ヲ移轉シタルトキ
二 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所ヲ有スル者所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依ル所得金額決定前關東州ニ住所ヲ移轉シタルトキ
三 關東州、所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル者ノ住所又ハ居所ニ付前二號ニ準ズベキ事由ノ生ジタルトキ
第二十條 第三種ノ所得ニシテ左ノ各號ニ該當スルモノニハ所得稅ヲ課セズ
一 軍人從軍中ノ俸給及手當
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給
三 旅費、學資金及法定扶養料
四 郵便貯金、金融組合預金及銀行貯蓄預金ノ利子
五 營利ノ事業ニ屬セザル一時ノ所得
六 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依リ第二種ノ所得トシテ所得稅ヲ課スル所得
七 日本ノ國籍ヲ有セザル者ノ關東州、所得稅法施行地、朝鮮、臺灣及樺太外ニ於ケル資產、營業又ハ職業ヨリ生ズル所得
第二十一條 大使ノ指定スル重要物產ノ製造業ヲ營ム者ニハ大使ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生ズル所得ニ付所得稅ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ所得稅ノ免除ヲ受クル重要物產ノ製造業ノ承繼又ハ其ノ承繼ト認ムベキ事實アリタル場合ニ於テ其ノ業務ニ付所得稅ヲ免除スル期間殘存スルトキハ現營業者ハ其ノ殘存期間ヲ承繼ス
第二十二條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於テ所得稅ヲ免除スル各當該地ノ製造業ヨリ生ズル所得ニ付テハ大使ノ定ムル所ニ依リ所得稅ヲ免除ス
第二十三條 關東州ニ住所ヲ有セザル外國人又ハ外國法人ニハ外國ノ船籍ヲ有スル船舶ノ所得ニ付所得稅ヲ免除ス但シ其ノ船籍國ガ日本船舶ノ所得ニ付同樣ノ免稅ヲ爲サザル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十四條 第三種ノ所得ハ千五百圓ニ滿タザルトキハ所得稅ヲ課セズ第十四條乃至第十六條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲シタル爲千五百圓ニ滿タザルニ至リタルトキ亦同ジ
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
第二十五條 第一種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 普通所得
關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人 百分ノ六
關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人 百分ノ九
乙 超過所得
超過所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
普通所得金額中資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ四
同百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ十
同百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ二十
丙 淸算所得
淸算所得金額ヲ左ノ如ク區分シ各稅率ヲ適用ス
積立金又ハ本令ニ依リ所得稅ヲ課セラレザル所得ヨリ成ル金額 百分ノ三
其ノ他ノ金額 百分ノ九
法人ガ各事業年度ニ於テ納付シタル第二種ノ所得ニ對スル所得稅額ハ大使ノ定ムル所ニ依リ當該事業年度ノ第一種ノ所得ニ對スル所得稅額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ第二種ノ所得ニ對スル所得稅ハ第一種ノ所得計算上之ヲ損金ニ算入セズ
前二項ノ規定ハ法人ノ淸算所得ニ對スル所得稅ニ付之ヲ準用ス
前三項ノ規定ハ法人ノ所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ノ法令ニ依リ納付シタル第二種ノ所得ニ對スル所得稅額ニ付之ヲ準用ス
第二十六條 同族會社ガ各事業年度ニ於テ留保シタル金額中左ノ各號ノ一ニ該當スル金額アルトキハ政府ハ其ノ事業年度ノ普通所得ヲ年額ニ換算シタル金額中五萬圓以下ノ金額ニ百分ノ八、五萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ十二、十萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ十六、五十萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十、百萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十五ヲ乘ジタル合計金額ノ普通所得年額ニ對スル割合ヲ求メ之ヲ稅率トシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル金額(各號共ニ該當スル場合ニハ其ノ多額ナル一方)ニ付適用シテ算出シタル稅額ヲ普通所得ニ對スル所得稅ニ加算スルコトヲ得
一 事業年度ノ普通所得中留保シタル金額ガ其ノ事業年度ニ於ケル普通所得ノ十分ノ三ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額
二 事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ノ普通所得中留保シタル金額ノ合計ガ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額但シ其ノ事業年度末ニ於ケル積立金ガ拂込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ヲ超過スル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ之ヲ控除ス
本令ニ於テ同族會社トハ株主又ハ社員ノ一人及之ト親族、使用人等特殊ノ關係アル者ノ株式金額又ハ出資金額ノ合計ガ其ノ法人ノ株式金額又ハ出費金額ノ二分ノ一以上ニ相當スル法人ヲ謂フ
第二十七條 第二種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 國債ノ利子 百分ノ一・五
其ノ他 百分ノ三
乙 百分ノ五
第二十八條 第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ山林ノ所得ハ山林以外ノ所得ト之ヲ區分シ其ノ所得ヲ五分シタル金額ニ對シ此ノ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ其ノ稅額トス
千五百圓以下ノ金額 百分ノ〇・六
千五百圓ヲ超ユル金額 百分ノ一・五
二千圓ヲ超ユル金額 百分ノ二
三千圓ヲ超ユル金額 百分ノ三
五千圓ヲ超ユル金額 百分ノ四
七千圓ヲ超ユル金額 百分ノ五
一萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ六・五
一萬五千圓ヲ超ユル金額 百分ノ八
二萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ九・五
三萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十一
四萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十三
五萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十五
七萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十七
十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十九
二十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十一
五十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十三
百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
二百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十七
三百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ三十
四百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ三十三
前項ノ場合ニ於テ戶主及其ノ同居家族ノ所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ對シ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ所得金額ニ案分シテ各其ノ稅額ヲ定ム戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得金額ニ付亦同ジ
第二十九條 第一種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ財產目錄、貸借對照表、損益計算書又ハ淸算若ハ合併ニ關スル計算書竝ニ第四條乃至第九條ノ規定ニ依リ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附シ其ノ所得ヲ政府ニ申吿スベシ但シ關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ハ關東州ニ於ケル資產又ハ營業ニ關スル損益ヲ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附スベシ
前項ノ規定ハ第一種ノ所得ニ付所得稅ヲ課セラルベキ法人ニ付其ノ所得ナキ場合ニ之ヲ準用ス
第四條第二項ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ第一項ノ申吿ト同時ニ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スベシ
第三十條 第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ每年三月十五日迄ニ所得ノ種類及金額ヲ詳記シ政府ニ申吿スベシ
第十五條又ハ第十六條ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ前項ノ申吿ト同時ニ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スベシ
第三十一條 第一種ノ所得金額ハ第二十九條ノ申吿ニ依リ、申吿ナキトキ又ハ申吿ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定シ第三種ノ所得金額ハ所得調査委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員會閉會後第三種ノ所得ノ決定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ決定ヲ爲スベカリシ年ノ翌年以後ニ於ケル所得調査委員會ニ諮問シ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調査委員會閉會後第三種ノ所得ヲ有スル者納稅義務アルコトヲ申出デ又ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコトヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
第三十二條 各民政署所轄內ニ所得調査委員會ヲ置ク
所得調査委員會ハ會長及調査委員ヲ以テ之ヲ組織ス
會長ハ民政署長ヲ以テ之ニ充ツ
調査委員ノ定數ハ大使之ヲ定ム
第三十三條 調査委員ハ所得調査委員會ノ屬スル區域內ニ居住シ前年第三種ノ所得稅ヲ納メ其ノ年第三十條第一項ノ申吿ヲ爲シタル者ニ就キ關東州廳長官之ヲ命ズ
前項ノ場合ニ於テ被相續人ノ爲シタル納稅又ハ申吿ハ其ノ相續人ノ納稅又ハ申吿ト看做ス
第三十四條 調査委員ノ任期ハ二年トス但シ補缺ノ調査委員ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
第三十五條 調査委員左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
一 第三種ノ所得ニ付納稅義務ヲ有セザルニ至リタルトキ
二 所得調査委員會ノ屬スル區域內ニ居住セザルニ至リタルトキ
調査委員職務ヲ怠リ又ハ體面ヲ汚損スル行爲アリタルトキハ關東州廳長官ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第三十六條 調査委員ニハ大使ノ定ムル所ニ依リ手當及旅費ヲ給ス
第三十七條 所得調査委員會ノ議事ニ關スル事項ハ大使之ヲ定ム
第三十八條 七月十五日迄ニ所得調査委員會成立セザルトキ又ハ諮問事項ヲ議了セザルトキハ政府ハ直ニ所得金額ヲ決定ス
第三十九條 關東州ニ於テ利子支拂ヲ爲スベキ公債又ハ社債ヲ募集シタル者ハ遲滯ナク其ノ公債又ハ社債ニ付左ノ事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スベシ
一 公債又ハ社債ノ名稱及其ノ總額
二 利子支拂期限及利率
三 償還ノ方法及期限
四 數囘ニ分チテ拂込ヲ爲サシムルトキハ其ノ拂込ノ金額及時期
第四十條 第三種ノ所得ニ屬スル俸給、給料、歲費、年金、恩給、賞與若ハ此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支拂ヲ爲ス者又ハ利益若ハ利息ノ配當若ハ剩餘金ノ分配ヲ爲ス法人ハ大使ノ定ムル所ニ依リ支拂調書ヲ政府ニ提出スベシ
前項ノ支拂調書ヲ提出シタル者ニ對シテハ大使ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第四十一條 稅務官吏ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者、納稅義務アリト認ムル者又ハ前條ノ支拂調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問シ又ハ其ノ所得若ハ支拂ニ關スル帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第四十二條 稅務官吏ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者又ハ納稅義務アリト認ムル者ニ金錢又ハ物品ヲ支拂フノ義務ヲ有スト認ムル者ニ對シ其ノ金額、數量、價格又ハ支拂期日ニ付質問スルコトヲ得
第四十三條 第三十一條若ハ第三十八條ノ規定ニ依リ第一種若ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキ又ハ第二十六條ノ規定ニ依リ稅額ヲ加算シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知スベシ
關東州ニ住所若ハ居所又ハ營業所ヲ有セザル納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サザルトキハ前項ノ通知ハ公吿ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公吿ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第四十四條 納稅義務者前條ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額又ハ加算稅額ニ對シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第四十五條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ所得審査委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審査委員會ハ前條第一項ノ請求ヲ爲シタル者ニ對シ其ノ所得ニ關スル事實ヲ質問スルコトヲ得
第四十六條 所得審査委員會ハ關東州廳ニ之ヲ置ク
所得審査委員會ハ會長及審査委員六人ヲ以テ之ヲ組織ス
會長ハ關東州廳高等官中ヨリ大使之ヲ命ズ
審査委員ハ關東州廳高等官中ヨリ三人、調査委員中ヨリ三人ヲ大使ニ於テ命ズ
所得審査委員會ノ議事ニ關スル事項ハ大使之ヲ定ム
第四十七條 調査委員中ヨリ命ゼラレタル審査委員ニハ大使ノ定ムル所ニ依リ日當及旅費ヲ給ス
第四十八條 第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者第十三條第一項第五號及第六號ノ所得金額二分ノ一以上ヲ減損シタルトキハ政府ニ所得金額ノ更訂ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ翌年一月三十一日ヲ過ギタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
所得金額決定後相續、贈與又ハ營業承繼ニ因リ所得金額ヲ減損シタル場合ニハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第四十九條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ所得金額ヲ査覈シ二分ノ一以上ノ減損アルトキハ之ヲ更訂ス
第五十條 第一種ノ所得ニ付テハ事業年度每ニ所得稅ヲ徵收ス但シ淸算所得ニ付テハ淸算又ハ合併ノ際之ヲ徵收ス
第二種ノ所得ニ付テハ其ノ金額支拂ノ際支拂者其ノ所得稅ヲ徵收シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第三種ノ所得ニ付テハ所得稅ノ年額ヲ三分シ左ノ三期ニ於テ之ヲ徵收ス但シ納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サズシテ關東州外ニ住所又ハ居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ所得稅ヲ徵收スルコトヲ得
第一期 其ノ年八月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年十一月一日ヨリ三十日限
第三期 翌年二月一日ヨリ末日限
第五十一條 前條第二項ノ規定ニ依リ徵收スベキ所得稅ヲ徵收セザルトキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セザルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ支拂者ヨリ徵收ス
第五十二條 法人解散シタル場合ニ於テ淸算所得ニ對スル所得稅又ハ前條ノ規定ニ依リ徵收セラルル稅金ヲ納付セズシテ殘餘財產ヲ分配シタルトキハ其ノ稅金ニ付淸算人連帶シテ納稅ノ義務アルモノトス
第五十三條 第四十八條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ更訂處分ノ確定スルニ至ル迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第五十四條 第三種ノ所得ニ付二以上ノ民政署所轄內ニ於テ所得金額ノ決定アリタルトキハ政府ハ納稅義務者ノ住所地以外、住所ナキトキハ居所地以外ニ於ケル所得金額ノ決定ヲ取消スベシ
第五十五條 第一種及第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ納稅義務者ノ住所地、住所ナキトキハ居所地又ハ營業所ノ所在地ヲ以テ納稅地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申吿シテ居所地ニ於テ所得稅ヲ納ムルコトヲ得
關東州ニ住所及居所又ハ營業所ナキ者ハ納稅地ヲ定メ政府ニ申吿スベシ申吿ナキトキハ政府其ノ納稅地ヲ指定ス
第五十六條 納稅義務者納稅地ニ現住セザルトキ又ハ營業所ナキトキハ其ノ所得ノ申吿、納稅其ノ他所得稅ニ關スル一切ノ事項ヲ處理セシムル爲納稅管理人ヲ定メ政府ニ申吿スベシ關東州外ニ住所、居所又ハ營業所ヲ移サントスルトキ亦同ジ
第五十七條 同族會社ノ行爲又ハ計算ニシテ其ノ所得又ハ株主社員若ハ之ト親族、使用人等特殊ノ關係アル者ノ所得ニ付所得稅逋脫ノ目的アリト認メラルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行爲又ハ計算ニ拘ラズ政府ハ其ノ認ムル所ニ依リ此等ノ者ノ所得金額ヲ計算スルコトヲ得
第五十八條 本令ニ於テハ法人ニ非ザル社團モ亦之ヲ法人ト看做ス
前項ノ社團其ノ財產ヲ以テ所得稅ヲ完納スルコト能ハザルトキハ其ノ稅金ニ付社員連帶シテ納稅ノ義務アルモノトス
第五十九條 大使ハ本令ニ定ムルモノノ外所得稅ニ關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
附 則
第六十條 本令ハ昭和十二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二種甲ノ所得ニシテ支拂期ノ本令施行前ニ屬スルモノ及第二種乙ノ所得ニシテ本令施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度ニ屬スルモノニ付テハ本令ヲ適用セズ
第三種ノ所得ニ付テハ昭和十二年分所得稅ヨリ本令ヲ適用ス
第六十一條 昭和十二年分及同十三年分ノ第三種ノ所得中所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依リ本令施行ノ日ノ前日迄ニ第二種乙ノ所得トシテ所得稅ヲ課セラレタル所得アル場合ニ於テハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ニ付納付シタル稅額ヲ第二十八條ノ規定ニ依リ計算シタル稅額ヨリ控除シタル殘額ヲ以テ其ノ年分ノ所得稅額トス
第六十二條 昭和十二年分ニ限リ第二十八條及前條ノ規定ニ依リ算出シタル第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ其ノ半額ヲ以テ稅額トシ第五十條第三項中三分シトアルハ二分シトシ三期トアルハ二期トシ其ノ納期ハ左ノ通トス
第一期 其ノ年十二月一日ヨリ二十八日限
第二期 翌年二月一日ヨリ末日限
第六十三條 昭和十二年分ノ第三種ノ所得ニ對スル所得稅ニ限リ第十五條中三月一日トアルハ七月一日、第三十條中三月十五日トアルハ八月三十一日、第三十八條中七月十五日トアルハ十一月十五日トス
第六十四條 本令施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度ノ所得及本令施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ル淸算所得ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第六十五條 昭和十二年中ニ命ズベキ調査委員ハ所得調査委員會ノ屬スル區域內ニ居住シ其ノ年第三十條第一項ノ規定ニ依ル申吿ヲ爲シタル者ニ就キ關東州廳長官之ヲ命ズ
前項ノ規定ニ依リ命ゼラレタル調査委員ノ任期ハ昭和十四年五月三十一日ヲ以テ終了ス
第六十六條 本令施行前關東州ニ於テ利子支拂ヲ爲スベキ公債又ハ社債ヲ發行シタル者ハ本令施行後遲滯ナク第三十九條第一號乃至第四號ニ規定スル事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スベシ
第六十七條 法人ニ非ザル社團ノ超過所得ニ對スル稅率ハ當分ノ內第二十五條中百分ノ四トアルハ百分ノ二、百分ノ十トアルハ百分ノ五、百分ノ二十トアルハ百分ノ十トス
第六十八條 法人ニ非ザル社團ノ所得ニ對スル所得稅ノ賦課ニ付テハ當分ノ內第二十六條ノ規定ヲ適用セズ
第六十九條 南滿洲鐵道附屬地ニ於テ公債、社債又ハ銀行預金(東洋拓殖株式會社ノ預金ヲ含ム)ノ利子支拂ヲ爲ス者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ關東州ニ居住スル者ニ對スル支拂調書ヲ政府ニ提出スベシ
第四十條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
稅務官吏ハ第一項ノ支拂調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問シ又ハ其ノ支拂ニ關スル帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
朕関東州所得税令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年六月二十五日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
勅令第二百八十九号
関東州所得税令
第一条 関東州ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本令ニ依リ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第二条 前条ノ規定ニ該当セザル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
一 関東州ニ資産又ハ営業ヲ有スルトキ
二 関東州ニ於テ公債、社債又ハ銀行預金(東洋拓殖株式会社ノ預金ヲ含ム)ノ利子支払ヲ受クルトキ
三 関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配当、剰余金ノ分配又ハ利益若ハ剰余金ノ処分タル賞与若ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ヲ受クルトキ
第三条 所得税ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス但シ復与貯蓄債券ノ利子ニハ之ヲ課セズ
第一種
甲 法人ノ普通所得
乙 法人ノ超過所得
丙 法人ノ清算所得
第二種
甲 関東州ニ於テ支払ヲ受クル公債、社債又ハ銀行預金(東洋拓殖株式会社ノ預金ヲ含ム)ノ利子
乙 第一条ノ規定ニ該当セザル者ノ関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当、剰余金ノ分配又ハ利益若ハ剰余金ノ処分タル賞与若ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与
第三種
第二種ニ属セザル個人ノ所得
第四条 法人ノ普通所得ハ各事業年度ノ総益金ヨリ総損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ保険会社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剰余金ニ依ル
前項ノ規定ニ依リ法人ノ普通所得ヲ計算スル場合ニ於テハ国債ノ利子額中其ノ国債ヲ所有シタル期間ノ利子額百分ノ七十ニ相当スル金額ヲ申請ニ依リ其ノ普通所得ヨリ控除ス
第二条ノ規定ニ依リ納税義務アル法人ノ普通所得ハ関東州ニ於ケル資産又ハ営業ニ付前二項ノ規定ニ準ジ之ヲ計算ス
法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第五条 法人ノ普通所得ガ当該事業年度ノ資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ超過所得トス
第六条 法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル払込株式金額、出資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
第七条 第二条ノ規定ニ依リ納税義務アル法人又ハ所得税ヲ課スベキ所得ト其ノ他ノ所得(第四条第二項ノ控除額ヲ含ム)トヲ有スル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ満洲国駐箚特命全権大使ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八条 本令ニ於テ積立金トハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハズ法人ノ普通所得中其ノ留保シタルモノヲ謂フ
第九条 法人解散シタル場合ニ於テ其ノ残余財産ノ価額ガ解散当時ノ払込株式金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ清算所得トス
法人合併ヲ為シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員ガ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ払込済金額又ハ出資金額及金銭ノ総額ガ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ合併当時ノ払込株式金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ清算所得ト看做ス
第四条第二項ノ規定ハ法人ノ清算所得ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第十条 合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ所得ニ付所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第十一条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ガ所得税法施行地、朝鮮、台湾、樺太又ハ関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ト合併ヲ為シタル場合ニ於テ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ガ関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スルトキハ前条ノ規定ヲ準用ス
第十二条 第二種ノ所得ハ其ノ支払ヲ受クベキ金額ニ依ル
第十三条 第三種ノ所得ハ左ノ各号ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 営業ニ非ザル貸金ノ利子並ニ第二種ノ所得ニ属セザル公債、社債及預金ノ利子ハ前年中ノ収入金額
二 山林ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
三 賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ収入金額
四 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ収入金額(無記名株式ノ配当ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分ノ二ヲ控除シタル金額
五 俸給、給料、歳費、年金、恩給及此等ノ性質ヲ有スル給与ハ前年中ノ収入金額但シ前年一月一日ヨリ引続キ支給ヲ受ケタルニ非ザルモノニ付テハ其ノ年ノ予算年額
六 前各号以外ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額但シ前年一月一日ヨリ引続キ有シタルニ非ザル資産、営業又ハ職業ノ所得ニ付テハ其ノ年ノ予算年額
株式ノ消却ニ因リ支払ヲ受クル金額又ハ退社ニ因リ持分ノ払戻トシテ受クル金額ガ其ノ株式ノ払込済金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ法人ヨリ受クル利益ノ配当ト看做ス
第一項第一号、第二号及第四号ノ所得ニ付テハ被相続人ノ所得ハ之ヲ相続人ノ所得ト看做シ第六号ノ所得ニ付テハ相続シタル資産又ハ営業ハ相続人ガ引続キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十四条 前条ノ規定ニ依リ算出シタル所得総額一万四千円以下ナルトキハ其ノ所得中勤労所得(前条第一項第三号及第五号ノ所得)ニ付左ノ金額ヲ控除ス
一 所得総額七千円以下ナルトキハ勤労所得ノ十分ノ二
二 所得総額中勤労所得以外ノ所得七千円以上ナルトキハ勤労所得ノ十分ノ一
三 所得総額七千円ヲ超エ勤労所得以外ノ所得七千円未満ナルトキハ勤労所得中勤労所得以外ノ所得ト合算シテ七千円ニ達スル迄ノ金額ノ十分ノ二、其ノ他ノ金額ノ十分ノ一
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
第十五条 前二条ノ規定ニ依リ算出シタル所得総額三千円以下ナルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ其ノ年三月一日現在ノ同居ノ戸主及家族中年齢十八歳未満若ハ六十歳以上ノ者又ハ不具廃疾者一人ニ付百円ヲ控除ス但シ第二条ノ規定ニ依ル納税義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ金額ハ大使ノ定ムル所ニ依リ納税義務者ノ一人又ハ数人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト山林以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三項ノ規定ニ依ル控除ハ先ヅ山林以外ノ所得ニ付之ヲ為シ不足アルトキハ山林ノ所得ニ及ブ
第一項ノ不具廃疾者ハ大使之ヲ定ム
第十六条 自己、戸主若ハ家族又ハ其ノ相続人ヲ保険金受取人トスル生命保険契約ノ為ニ払込ミタル保険料ハ年額二百円ヲ限リ大使ノ定ムル所ニ依リ本人ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ之ヲ控除ス但シ第二条ノ規定ニ依ル納税義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十七条 左ニ掲グル者ニハ所得税ヲ課セズ
一 大使ノ指定スル公共団体
二 関東州裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル民法第三十四条ノ規定ニ依リ設立シタル法人其ノ他之ニ類スルモノニシテ大使ノ指定スルモノ
第十八条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ第一種甲及乙並ニ第二種乙ノ所得ニ付テハ所得税ヲ課セズ
第十九条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第二種乙ノ所得ニ付テハ所得税ヲ課セズ
所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所ヲ有スル個人又ハ関東州ニ住所ヲ有セズシテ所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第三種ノ所得ニ付テハ左ニ掲グル場合ヲ除クノ外所得税ヲ課セズ
一 関東州ニ住所ヲ有スル者所得金額決定後所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所ヲ移転シタルトキ
二 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所ヲ有スル者所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依ル所得金額決定前関東州ニ住所ヲ移転シタルトキ
三 関東州、所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル者ノ住所又ハ居所ニ付前二号ニ準ズベキ事由ノ生ジタルトキ
第二十条 第三種ノ所得ニシテ左ノ各号ニ該当スルモノニハ所得税ヲ課セズ
一 軍人従軍中ノ俸給及手当
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給
三 旅費、学資金及法定扶養料
四 郵便貯金、金融組合預金及銀行貯蓄預金ノ利子
五 営利ノ事業ニ属セザル一時ノ所得
六 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依リ第二種ノ所得トシテ所得税ヲ課スル所得
七 日本ノ国籍ヲ有セザル者ノ関東州、所得税法施行地、朝鮮、台湾及樺太外ニ於ケル資産、営業又ハ職業ヨリ生ズル所得
第二十一条 大使ノ指定スル重要物産ノ製造業ヲ営ム者ニハ大使ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生ズル所得ニ付所得税ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ所得税ノ免除ヲ受クル重要物産ノ製造業ノ承継又ハ其ノ承継ト認ムベキ事実アリタル場合ニ於テ其ノ業務ニ付所得税ヲ免除スル期間残存スルトキハ現営業者ハ其ノ残存期間ヲ承継ス
第二十二条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於テ所得税ヲ免除スル各当該地ノ製造業ヨリ生ズル所得ニ付テハ大使ノ定ムル所ニ依リ所得税ヲ免除ス
第二十三条 関東州ニ住所ヲ有セザル外国人又ハ外国法人ニハ外国ノ船籍ヲ有スル船舶ノ所得ニ付所得税ヲ免除ス但シ其ノ船籍国ガ日本船舶ノ所得ニ付同様ノ免税ヲ為サザル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十四条 第三種ノ所得ハ千五百円ニ満タザルトキハ所得税ヲ課セズ第十四条乃至第十六条ノ規定ニ依ル控除ヲ為シタル為千五百円ニ満タザルニ至リタルトキ亦同ジ
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
第二十五条 第一種ノ所得ニ対スル所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 普通所得
関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人 百分ノ六
関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人 百分ノ九
乙 超過所得
超過所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
普通所得金額中資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ四
同百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ十
同百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ二十
丙 清算所得
清算所得金額ヲ左ノ如ク区分シ各税率ヲ適用ス
積立金又ハ本令ニ依リ所得税ヲ課セラレザル所得ヨリ成ル金額 百分ノ三
其ノ他ノ金額 百分ノ九
法人ガ各事業年度ニ於テ納付シタル第二種ノ所得ニ対スル所得税額ハ大使ノ定ムル所ニ依リ当該事業年度ノ第一種ノ所得ニ対スル所得税額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ第二種ノ所得ニ対スル所得税ハ第一種ノ所得計算上之ヲ損金ニ算入セズ
前二項ノ規定ハ法人ノ清算所得ニ対スル所得税ニ付之ヲ準用ス
前三項ノ規定ハ法人ノ所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ノ法令ニ依リ納付シタル第二種ノ所得ニ対スル所得税額ニ付之ヲ準用ス
第二十六条 同族会社ガ各事業年度ニ於テ留保シタル金額中左ノ各号ノ一ニ該当スル金額アルトキハ政府ハ其ノ事業年度ノ普通所得ヲ年額ニ換算シタル金額中五万円以下ノ金額ニ百分ノ八、五万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ十二、十万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ十六、五十万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十、百万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十五ヲ乗ジタル合計金額ノ普通所得年額ニ対スル割合ヲ求メ之ヲ税率トシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル金額(各号共ニ該当スル場合ニハ其ノ多額ナル一方)ニ付適用シテ算出シタル税額ヲ普通所得ニ対スル所得税ニ加算スルコトヲ得
一 事業年度ノ普通所得中留保シタル金額ガ其ノ事業年度ニ於ケル普通所得ノ十分ノ三ニ相当スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額
二 事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ノ普通所得中留保シタル金額ノ合計ガ其ノ事業年度末ニ於ケル払込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ニ相当スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額但シ其ノ事業年度末ニ於ケル積立金ガ払込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ヲ超過スル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ之ヲ控除ス
本令ニ於テ同族会社トハ株主又ハ社員ノ一人及之ト親族、使用人等特殊ノ関係アル者ノ株式金額又ハ出資金額ノ合計ガ其ノ法人ノ株式金額又ハ出費金額ノ二分ノ一以上ニ相当スル法人ヲ謂フ
第二十七条 第二種ノ所得ニ対スル所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 国債ノ利子 百分ノ一・五
其ノ他 百分ノ三
乙 百分ノ五
第二十八条 第三種ノ所得ニ対スル所得税ハ所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ山林ノ所得ハ山林以外ノ所得ト之ヲ区分シ其ノ所得ヲ五分シタル金額ニ対シ此ノ税率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ其ノ税額トス
千五百円以下ノ金額 百分ノ〇・六
千五百円ヲ超ユル金額 百分ノ一・五
二千円ヲ超ユル金額 百分ノ二
三千円ヲ超ユル金額 百分ノ三
五千円ヲ超ユル金額 百分ノ四
七千円ヲ超ユル金額 百分ノ五
一万円ヲ超ユル金額 百分ノ六・五
一万五千円ヲ超ユル金額 百分ノ八
二万円ヲ超ユル金額 百分ノ九・五
三万円ヲ超ユル金額 百分ノ十一
四万円ヲ超ユル金額 百分ノ十三
五万円ヲ超ユル金額 百分ノ十五
七万円ヲ超ユル金額 百分ノ十七
十万円ヲ超ユル金額 百分ノ十九
二十万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十一
五十万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十三
百万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
二百万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十七
三百万円ヲ超ユル金額 百分ノ三十
四百万円ヲ超ユル金額 百分ノ三十三
前項ノ場合ニ於テ戸主及其ノ同居家族ノ所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ対シ税率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ所得金額ニ案分シテ各其ノ税額ヲ定ム戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得金額ニ付亦同ジ
第二十九条 第一種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ財産目録、貸借対照表、損益計算書又ハ清算若ハ合併ニ関スル計算書並ニ第四条乃至第九条ノ規定ニ依リ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附シ其ノ所得ヲ政府ニ申告スベシ但シ関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ハ関東州ニ於ケル資産又ハ営業ニ関スル損益ヲ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附スベシ
前項ノ規定ハ第一種ノ所得ニ付所得税ヲ課セラルベキ法人ニ付其ノ所得ナキ場合ニ之ヲ準用ス
第四条第二項ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ第一項ノ申告ト同時ニ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スベシ
第三十条 第三種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ毎年三月十五日迄ニ所得ノ種類及金額ヲ詳記シ政府ニ申告スベシ
第十五条又ハ第十六条ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ前項ノ申告ト同時ニ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スベシ
第三十一条 第一種ノ所得金額ハ第二十九条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定シ第三種ノ所得金額ハ所得調査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員会閉会後第三種ノ所得ノ決定ニ付脱漏アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ決定ヲ為スベカリシ年ノ翌年以後ニ於ケル所得調査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調査委員会閉会後第三種ノ所得ヲ有スル者納税義務アルコトヲ申出デ又ハ納税義務者所得金額ノ増加アルコトヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
第三十二条 各民政署所轄内ニ所得調査委員会ヲ置ク
所得調査委員会ハ会長及調査委員ヲ以テ之ヲ組織ス
会長ハ民政署長ヲ以テ之ニ充ツ
調査委員ノ定数ハ大使之ヲ定ム
第三十三条 調査委員ハ所得調査委員会ノ属スル区域内ニ居住シ前年第三種ノ所得税ヲ納メ其ノ年第三十条第一項ノ申告ヲ為シタル者ニ就キ関東州庁長官之ヲ命ズ
前項ノ場合ニ於テ被相続人ノ為シタル納税又ハ申告ハ其ノ相続人ノ納税又ハ申告ト看做ス
第三十四条 調査委員ノ任期ハ二年トス但シ補欠ノ調査委員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
第三十五条 調査委員左ノ各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
一 第三種ノ所得ニ付納税義務ヲ有セザルニ至リタルトキ
二 所得調査委員会ノ属スル区域内ニ居住セザルニ至リタルトキ
調査委員職務ヲ怠リ又ハ体面ヲ汚損スル行為アリタルトキハ関東州庁長官ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第三十六条 調査委員ニハ大使ノ定ムル所ニ依リ手当及旅費ヲ給ス
第三十七条 所得調査委員会ノ議事ニ関スル事項ハ大使之ヲ定ム
第三十八条 七月十五日迄ニ所得調査委員会成立セザルトキ又ハ諮問事項ヲ議了セザルトキハ政府ハ直ニ所得金額ヲ決定ス
第三十九条 関東州ニ於テ利子支払ヲ為スベキ公債又ハ社債ヲ募集シタル者ハ遅滞ナク其ノ公債又ハ社債ニ付左ノ事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スベシ
一 公債又ハ社債ノ名称及其ノ総額
二 利子支払期限及利率
三 償還ノ方法及期限
四 数回ニ分チテ払込ヲ為サシムルトキハ其ノ払込ノ金額及時期
第四十条 第三種ノ所得ニ属スル俸給、給料、歳費、年金、恩給、賞与若ハ此等ノ性質ヲ有スル給与ノ支払ヲ為ス者又ハ利益若ハ利息ノ配当若ハ剰余金ノ分配ヲ為ス法人ハ大使ノ定ムル所ニ依リ支払調書ヲ政府ニ提出スベシ
前項ノ支払調書ヲ提出シタル者ニ対シテハ大使ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第四十一条 税務官吏ハ調査上必要アルトキハ納税義務者、納税義務アリト認ムル者又ハ前条ノ支払調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問シ又ハ其ノ所得若ハ支払ニ関スル帳簿物件ヲ検査スルコトヲ得
第四十二条 税務官吏ハ調査上必要アルトキハ納税義務者又ハ納税義務アリト認ムル者ニ金銭又ハ物品ヲ支払フノ義務ヲ有スト認ムル者ニ対シ其ノ金額、数量、価格又ハ支払期日ニ付質問スルコトヲ得
第四十三条 第三十一条若ハ第三十八条ノ規定ニ依リ第一種若ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキ又ハ第二十六条ノ規定ニ依リ税額ヲ加算シタルトキハ政府ハ之ヲ納税義務者ニ通知スベシ
関東州ニ住所若ハ居所又ハ営業所ヲ有セザル納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サザルトキハ前項ノ通知ハ公告ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ七日ヲ経過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第四十四条 納税義務者前条ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額又ハ加算税額ニ対シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ為スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セズ
第四十五条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ所得審査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審査委員会ハ前条第一項ノ請求ヲ為シタル者ニ対シ其ノ所得ニ関スル事実ヲ質問スルコトヲ得
第四十六条 所得審査委員会ハ関東州庁ニ之ヲ置ク
所得審査委員会ハ会長及審査委員六人ヲ以テ之ヲ組織ス
会長ハ関東州庁高等官中ヨリ大使之ヲ命ズ
審査委員ハ関東州庁高等官中ヨリ三人、調査委員中ヨリ三人ヲ大使ニ於テ命ズ
所得審査委員会ノ議事ニ関スル事項ハ大使之ヲ定ム
第四十七条 調査委員中ヨリ命ゼラレタル審査委員ニハ大使ノ定ムル所ニ依リ日当及旅費ヲ給ス
第四十八条 第三種ノ所得ニ付納税義務アル者第十三条第一項第五号及第六号ノ所得金額二分ノ一以上ヲ減損シタルトキハ政府ニ所得金額ノ更訂ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ翌年一月三十一日ヲ過ギタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
所得金額決定後相続、贈与又ハ営業承継ニ因リ所得金額ヲ減損シタル場合ニハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第四十九条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ所得金額ヲ査覈シ二分ノ一以上ノ減損アルトキハ之ヲ更訂ス
第五十条 第一種ノ所得ニ付テハ事業年度毎ニ所得税ヲ徴収ス但シ清算所得ニ付テハ清算又ハ合併ノ際之ヲ徴収ス
第二種ノ所得ニ付テハ其ノ金額支払ノ際支払者其ノ所得税ヲ徴収シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第三種ノ所得ニ付テハ所得税ノ年額ヲ三分シ左ノ三期ニ於テ之ヲ徴収ス但シ納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サズシテ関東州外ニ住所又ハ居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ所得税ヲ徴収スルコトヲ得
第一期 其ノ年八月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年十一月一日ヨリ三十日限
第三期 翌年二月一日ヨリ末日限
第五十一条 前条第二項ノ規定ニ依リ徴収スベキ所得税ヲ徴収セザルトキ又ハ其ノ徴収シタル税金ヲ納付セザルトキハ国税徴収ノ例ニ依リ之ヲ支払者ヨリ徴収ス
第五十二条 法人解散シタル場合ニ於テ清算所得ニ対スル所得税又ハ前条ノ規定ニ依リ徴収セラルル税金ヲ納付セズシテ残余財産ヲ分配シタルトキハ其ノ税金ニ付清算人連帯シテ納税ノ義務アルモノトス
第五十三条 第四十八条第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ更訂処分ノ確定スルニ至ル迄税金ノ徴収ヲ猶予スルコトヲ得
第五十四条 第三種ノ所得ニ付二以上ノ民政署所轄内ニ於テ所得金額ノ決定アリタルトキハ政府ハ納税義務者ノ住所地以外、住所ナキトキハ居所地以外ニ於ケル所得金額ノ決定ヲ取消スベシ
第五十五条 第一種及第三種ノ所得ニ対スル所得税ハ納税義務者ノ住所地、住所ナキトキハ居所地又ハ営業所ノ所在地ヲ以テ納税地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申告シテ居所地ニ於テ所得税ヲ納ムルコトヲ得
関東州ニ住所及居所又ハ営業所ナキ者ハ納税地ヲ定メ政府ニ申告スベシ申告ナキトキハ政府其ノ納税地ヲ指定ス
第五十六条 納税義務者納税地ニ現住セザルトキ又ハ営業所ナキトキハ其ノ所得ノ申告、納税其ノ他所得税ニ関スル一切ノ事項ヲ処理セシムル為納税管理人ヲ定メ政府ニ申告スベシ関東州外ニ住所、居所又ハ営業所ヲ移サントスルトキ亦同ジ
第五十七条 同族会社ノ行為又ハ計算ニシテ其ノ所得又ハ株主社員若ハ之ト親族、使用人等特殊ノ関係アル者ノ所得ニ付所得税逋脱ノ目的アリト認メラルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行為又ハ計算ニ拘ラズ政府ハ其ノ認ムル所ニ依リ此等ノ者ノ所得金額ヲ計算スルコトヲ得
第五十八条 本令ニ於テハ法人ニ非ザル社団モ亦之ヲ法人ト看做ス
前項ノ社団其ノ財産ヲ以テ所得税ヲ完納スルコト能ハザルトキハ其ノ税金ニ付社員連帯シテ納税ノ義務アルモノトス
第五十九条 大使ハ本令ニ定ムルモノノ外所得税ニ関シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
附 則
第六十条 本令ハ昭和十二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二種甲ノ所得ニシテ支払期ノ本令施行前ニ属スルモノ及第二種乙ノ所得ニシテ本令施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度ニ属スルモノニ付テハ本令ヲ適用セズ
第三種ノ所得ニ付テハ昭和十二年分所得税ヨリ本令ヲ適用ス
第六十一条 昭和十二年分及同十三年分ノ第三種ノ所得中所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依リ本令施行ノ日ノ前日迄ニ第二種乙ノ所得トシテ所得税ヲ課セラレタル所得アル場合ニ於テハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ニ付納付シタル税額ヲ第二十八条ノ規定ニ依リ計算シタル税額ヨリ控除シタル残額ヲ以テ其ノ年分ノ所得税額トス
第六十二条 昭和十二年分ニ限リ第二十八条及前条ノ規定ニ依リ算出シタル第三種ノ所得ニ対スル所得税ハ其ノ半額ヲ以テ税額トシ第五十条第三項中三分シトアルハ二分シトシ三期トアルハ二期トシ其ノ納期ハ左ノ通トス
第一期 其ノ年十二月一日ヨリ二十八日限
第二期 翌年二月一日ヨリ末日限
第六十三条 昭和十二年分ノ第三種ノ所得ニ対スル所得税ニ限リ第十五条中三月一日トアルハ七月一日、第三十条中三月十五日トアルハ八月三十一日、第三十八条中七月十五日トアルハ十一月十五日トス
第六十四条 本令施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度ノ所得及本令施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ル清算所得ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
第六十五条 昭和十二年中ニ命ズベキ調査委員ハ所得調査委員会ノ属スル区域内ニ居住シ其ノ年第三十条第一項ノ規定ニ依ル申告ヲ為シタル者ニ就キ関東州庁長官之ヲ命ズ
前項ノ規定ニ依リ命ゼラレタル調査委員ノ任期ハ昭和十四年五月三十一日ヲ以テ終了ス
第六十六条 本令施行前関東州ニ於テ利子支払ヲ為スベキ公債又ハ社債ヲ発行シタル者ハ本令施行後遅滞ナク第三十九条第一号乃至第四号ニ規定スル事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スベシ
第六十七条 法人ニ非ザル社団ノ超過所得ニ対スル税率ハ当分ノ内第二十五条中百分ノ四トアルハ百分ノ二、百分ノ十トアルハ百分ノ五、百分ノ二十トアルハ百分ノ十トス
第六十八条 法人ニ非ザル社団ノ所得ニ対スル所得税ノ賦課ニ付テハ当分ノ内第二十六条ノ規定ヲ適用セズ
第六十九条 南満洲鉄道附属地ニ於テ公債、社債又ハ銀行預金(東洋拓殖株式会社ノ預金ヲ含ム)ノ利子支払ヲ為ス者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ関東州ニ居住スル者ニ対スル支払調書ヲ政府ニ提出スベシ
第四十条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
税務官吏ハ第一項ノ支払調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問シ又ハ其ノ支払ニ関スル帳簿物件ヲ検査スルコトヲ得