米穀法施行令
法令番号: 勅令第百七十號
公布年月日: 昭和6年6月30日
法令の形式: 勅令
朕米穀法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年六月三十日
內閣總理大臣 男爵 若槻禮次郞
外務大臣 男爵 幣原喜重郞
大藏大臣 井上準之助
內務大臣 安達謙藏
農林大臣 町田忠治
拓務大臣 原脩次郞
商工大臣 櫻內幸雄
勅令第百七十號
米穀法施行令
第一條 米穀法第三條ノ規定ニ依ル米穀ノ輸入又ハ輸出ノ許可ハ內地ニ於テハ農林大臣、朝鮮ニ於テハ朝鮮總督、臺灣ニ於テハ臺灣總督、樺太ニ於テハ樺太廳長官之ヲ行フ
朝鮮總督、臺灣總督及樺太廳長官ハ豫メ農林大臣ト議シ每年許可ニ依リ輸入セラルベキ米穀ノ數量ヲ定ム其ノ數量ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ米穀法第三條ノ規定ニ依ル許可ハ之ヲ受クルコトヲ要セズ
一 通商航海條約ニ別段ノ定アルトキ
二 政府ガ米穀法ニ依リ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲ス場合ニ於テ其ノ委託ヲ受ケ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ
三 船用品タル米穀、標本米其ノ他之ニ準ズベキ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ前項第三號ニ規定スル米穀ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 米穀法第四條ノ最低價格ハ米穀生產費ト米價指數ノ物價指數ニ對スル割合ノ趨勢ニ依リ算出シタル價格(率勢米價)ノ下値二割ニ相當スル價格トノ範圍內ニ於テ適當ト認ムル價格ニ依リ之ヲ定ム
第四條 米穀法第四條ノ最高價格ハ家計費ヲ基礎トシテ算出シタル價格(家計米價)ト率勢米價ノ上値二割ニ相當スル價格トノ範圍內ニ於テ適當ト認ムル價格ニ依リ之ヲ定ム
第五條 米穀法第五條ノ米穀生產費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年調查シタル各農家ノ玄米一石當生產費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ玄米一石當生產費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル費用ノ合計額ヨリ副收入ノ金額ヲ控除シタルモノヲ米穀收量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
一 種籾代
二 肥料代
三 勞賃
四 畜力費
五 諸材料費
六 農舍費
七 農具費
八 租稅其ノ他ノ公課
九 土地資本利子
十 小作料
前項各號ニ揭グル事項、副收入及米穀收量ノ調查方法ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條 第四條ノ家計米價ハ命令ノ定ムル所ニ依リ白米一石當價格ヲ玄米一石當價格ニ換算シテ之ヲ定ム
前項ノ白米一石當價格ハ命令ノ定ムル所ニ從ヒ每年調查シタル各世帶ノ家計費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ニ依リ算定スル平均家計費中ノ米代ト平均家計費中ノ副食物費、嗜好品費、交際費、修養娛樂費、旅行費及貯金額ノ合計額ニ別ニ吿示スル割合ヲ乘ジタル額トノ合計額ヲ平均一世帶當白米消費量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
第七條 率勢米價ノ算出ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 米穀法第四條ノ最低價格及最高價格ハ每年十二月ニ之ヲ決定ス
第九條 經濟狀況ノ異常ナル變動ニ因リ物價ノ變動著シキ場合ニ於テハ最低價格及最高價格ハ第三條及第四條ノ規定ニ準ジテ之ヲ改定スルコトヲ得
九月一日以後米穀ノ需給狀況ニ著シキ變動ヲ生ジタル場合又ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テハ最低價格ハ率勢米價ノ下値二割ニ相當スル價格ヲ以テ之ヲ改定スルコトヲ得
第十條 最低價格又ハ最高價格ヲ決定又ハ改定シタル場合ニ於テハ之ヲ吿示ス
第十一條 主務大臣ハ米穀法第五條ノ米穀生產費及家計費ヲ調查スル爲道府縣、市町村及市町村長ニ對シ調查上必要ナル事務ヲ行フベキコトヲ命ジ竝ニ適當ト認ムル者ニ對シ記帳及報吿ヲ命ズルコトヲ得
第十二條 米穀法第四條第二項ノ市場ハ農林大臣之ヲ指定ス
米穀法第四條第一項ノ米價ハ命令ノ定ムル所ニ從ヒ農林大臣ノ指定スル銘柄及等級ニ該當スル內地米ニシテ前項ノ市場ニ於テ每日取引セラレタルモノノ相場ニ依リ之ヲ定ム
第十三條 前條第一項ノ規定ニ依リ指定シタル市場ノ開設者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ市場ニ於テ取引セラレタル米穀ノ相場及數量ヲ農林大臣ニ報吿スベシ
第十四條 日本銀行ハ卸賣物價ニ關スル調查ノ結果ヲ每月農林大臣ニ報吿スベシ
第十五條 米穀ノ買換ヲ行フ場合ニ於ケル賣渡及買入ハ同時期ニ於テ之ヲ行フ但シ八月ヨリ十月迄ノ間ニ於テ賣渡ヲ行ヒ新米ノ出廻期ニ於テ買入ヲ行フ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本令ハ昭和六年法律第三十一號施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和三年勅令第二十二號ハ之ヲ廢止ス
本令施行前昭和三年勅令第二十二號ノ規定ニ依リ爲シタル許可ハ米穀法第三條ノ規定ニ依リ之ヲ爲シタルモノト看做ス
當分ノ內第三條及第四條ノ規定ニ拘ラズ米穀法第四條ノ最低價格ハ率勢米價ノ下値二割ニ相當スル價格ニ依リ、同條ノ最高價格ハ率勢米價ノ上値二割ニ相當スル價格ニ依リ之ヲ定ム
米穀法第四條ノ最低價格及最高價格ハ昭和六年ニ限リ七月及十二月ニ之ヲ決定ス
朕米穀法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年六月三十日
内閣総理大臣 男爵 若槻礼次郎
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
大蔵大臣 井上準之助
内務大臣 安達謙蔵
農林大臣 町田忠治
拓務大臣 原脩次郎
商工大臣 桜内幸雄
勅令第百七十号
米穀法施行令
第一条 米穀法第三条ノ規定ニ依ル米穀ノ輸入又ハ輸出ノ許可ハ内地ニ於テハ農林大臣、朝鮮ニ於テハ朝鮮総督、台湾ニ於テハ台湾総督、樺太ニ於テハ樺太庁長官之ヲ行フ
朝鮮総督、台湾総督及樺太庁長官ハ予メ農林大臣ト議シ毎年許可ニ依リ輸入セラルベキ米穀ノ数量ヲ定ム其ノ数量ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ米穀法第三条ノ規定ニ依ル許可ハ之ヲ受クルコトヲ要セズ
一 通商航海条約ニ別段ノ定アルトキ
二 政府ガ米穀法ニ依リ米穀ノ買入又ハ売渡ヲ為ス場合ニ於テ其ノ委託ヲ受ケ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ
三 船用品タル米穀、標本米其ノ他之ニ準ズベキ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ前項第三号ニ規定スル米穀ノ範囲ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 米穀法第四条ノ最低価格ハ米穀生産費ト米価指数ノ物価指数ニ対スル割合ノ趨勢ニ依リ算出シタル価格(率勢米価)ノ下値二割ニ相当スル価格トノ範囲内ニ於テ適当ト認ムル価格ニ依リ之ヲ定ム
第四条 米穀法第四条ノ最高価格ハ家計費ヲ基礎トシテ算出シタル価格(家計米価)ト率勢米価ノ上値二割ニ相当スル価格トノ範囲内ニ於テ適当ト認ムル価格ニ依リ之ヲ定ム
第五条 米穀法第五条ノ米穀生産費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎年調査シタル各農家ノ玄米一石当生産費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ玄米一石当生産費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各号ニ掲グル費用ノ合計額ヨリ副収入ノ金額ヲ控除シタルモノヲ米穀収量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
一 種籾代
二 肥料代
三 労賃
四 畜力費
五 諸材料費
六 農舎費
七 農具費
八 租税其ノ他ノ公課
九 土地資本利子
十 小作料
前項各号ニ掲グル事項、副収入及米穀収量ノ調査方法ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六条 第四条ノ家計米価ハ命令ノ定ムル所ニ依リ白米一石当価格ヲ玄米一石当価格ニ換算シテ之ヲ定ム
前項ノ白米一石当価格ハ命令ノ定ムル所ニ従ヒ毎年調査シタル各世帯ノ家計費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ニ依リ算定スル平均家計費中ノ米代ト平均家計費中ノ副食物費、嗜好品費、交際費、修養娯楽費、旅行費及貯金額ノ合計額ニ別ニ告示スル割合ヲ乗ジタル額トノ合計額ヲ平均一世帯当白米消費量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
第七条 率勢米価ノ算出ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 米穀法第四条ノ最低価格及最高価格ハ毎年十二月ニ之ヲ決定ス
第九条 経済状況ノ異常ナル変動ニ因リ物価ノ変動著シキ場合ニ於テハ最低価格及最高価格ハ第三条及第四条ノ規定ニ準ジテ之ヲ改定スルコトヲ得
九月一日以後米穀ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ジタル場合又ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テハ最低価格ハ率勢米価ノ下値二割ニ相当スル価格ヲ以テ之ヲ改定スルコトヲ得
第十条 最低価格又ハ最高価格ヲ決定又ハ改定シタル場合ニ於テハ之ヲ告示ス
第十一条 主務大臣ハ米穀法第五条ノ米穀生産費及家計費ヲ調査スル為道府県、市町村及市町村長ニ対シ調査上必要ナル事務ヲ行フベキコトヲ命ジ並ニ適当ト認ムル者ニ対シ記帳及報告ヲ命ズルコトヲ得
第十二条 米穀法第四条第二項ノ市場ハ農林大臣之ヲ指定ス
米穀法第四条第一項ノ米価ハ命令ノ定ムル所ニ従ヒ農林大臣ノ指定スル銘柄及等級ニ該当スル内地米ニシテ前項ノ市場ニ於テ毎日取引セラレタルモノノ相場ニ依リ之ヲ定ム
第十三条 前条第一項ノ規定ニ依リ指定シタル市場ノ開設者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ市場ニ於テ取引セラレタル米穀ノ相場及数量ヲ農林大臣ニ報告スベシ
第十四条 日本銀行ハ卸売物価ニ関スル調査ノ結果ヲ毎月農林大臣ニ報告スベシ
第十五条 米穀ノ買換ヲ行フ場合ニ於ケル売渡及買入ハ同時期ニ於テ之ヲ行フ但シ八月ヨリ十月迄ノ間ニ於テ売渡ヲ行ヒ新米ノ出廻期ニ於テ買入ヲ行フ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本令ハ昭和六年法律第三十一号施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和三年勅令第二十二号ハ之ヲ廃止ス
本令施行前昭和三年勅令第二十二号ノ規定ニ依リ為シタル許可ハ米穀法第三条ノ規定ニ依リ之ヲ為シタルモノト看做ス
当分ノ内第三条及第四条ノ規定ニ拘ラズ米穀法第四条ノ最低価格ハ率勢米価ノ下値二割ニ相当スル価格ニ依リ、同条ノ最高価格ハ率勢米価ノ上値二割ニ相当スル価格ニ依リ之ヲ定ム
米穀法第四条ノ最低価格及最高価格ハ昭和六年ニ限リ七月及十二月ニ之ヲ決定ス