外国為替管理法
法令番号: 法律第二十八號
公布年月日: 昭和8年3月29日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル外國爲替管理法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月二十八日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
大藏大臣 高橋是淸
商工大臣 男爵 中島久萬吉
拓務大臣 永井柳太郞
法律第二十八號
外國爲替管理法
第一條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ニ揭グル取引又ハ行爲ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得
一 外國通貨又ハ外國爲替ノ取得又ハ處分
二 通貨、金地金、金ノ合金若ハ金ヲ主タル材料トスル物ノ輸出又ハ金貨幣ノ鑄潰又ハ毀傷
三 外國ニ對スル送金ニシテ前二號ニ包含スル方法ニ依ラザルモノ
四 外國ニ於テ爲シタル委託ニ基キ本邦內ニ於テ爲ス支拂
五 外國爲替相場ノ取極
六 外國通貨ヲ以テ表示スル證券、債權又ハ債務ノ取得又ハ處分
七 信用狀ノ發行又ハ取得
八 外國居住者ニ信用ヲ與フル行爲
九 證券ノ輸出又ハ輸入
十 價額ノ全部又ハ一部ニ付外國爲替ヲ取組マザル貨物ノ輸出
第二條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ禁止又ハ制限ニ關係アル事項ニ付報吿ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢查ヲ行フコトヲ得
第三條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ外國爲替ニ關スル取引ヲ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル者ヲ相手方トスル場合ニ限定スルコトヲ得
第四條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金地金、外國通貨、外國爲替又ハ外國通貨ヲ以テ表示スル證券若ハ債權ヲ有スル者ニ對シ自ラ之ヲ處分スベキコト又ハ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル者ニ賣却スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ指定スル者ニ賣却スベキコトヲ命ジタル場合ノ賣却價額ハ外貨評價委員會ノ定ムル所ニ依ル
外貨評價委員會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 第一條又ハ第三條ノ規定ニ基キテ發スル命令ヲ以テ規定スル取引又ハ行爲ノ禁止又ハ制限ニ違反シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス但シ當該取引又ハ行爲ノ目的物ノ價額ノ三倍ガ一萬圓ヲ超ユルトキハ罰金ハ當該價額ノ三倍以下トス
前條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ依ル金地金其ノ他ヲ處分シ又ハ賣却スベキ旨ノ政府ノ命ニ從ハザル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ當該金地金其ノ他ノ價額ノ二倍以下ノ罰金ニ處ス
第二條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違反シ報吿ヲ爲サズ、虛僞ノ報吿ヲ爲シ、帳簿其ノ他ノ檢查ヲ拒ミ又ハ帳簿書類ノ隱蔽不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ依リ檢查ヲ妨ゲタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ政府ニ提出スル許可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者亦同ジ
第六條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前條ノ罰金刑ヲ科ス
第七條 本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ付亦同ジ
第八條 本法ノ施行ニ關スル重要事項ニ付主務大臣ノ諮問ニ應ズル爲外國爲替管理委員會ヲ置ク
外國爲替管理委員會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
資本逃避防止法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前舊法ノ罰則ヲ適用スベカリシ行爲ニ付テハ仍舊法ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル外国為替管理法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月二十八日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
大蔵大臣 高橋是清
商工大臣 男爵 中島久万吉
拓務大臣 永井柳太郎
法律第二十八号
外国為替管理法
第一条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ニ掲グル取引又ハ行為ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得
一 外国通貨又ハ外国為替ノ取得又ハ処分
二 通貨、金地金、金ノ合金若ハ金ヲ主タル材料トスル物ノ輸出又ハ金貨幣ノ鋳潰又ハ毀傷
三 外国ニ対スル送金ニシテ前二号ニ包含スル方法ニ依ラザルモノ
四 外国ニ於テ為シタル委託ニ基キ本邦内ニ於テ為ス支払
五 外国為替相場ノ取極
六 外国通貨ヲ以テ表示スル証券、債権又ハ債務ノ取得又ハ処分
七 信用状ノ発行又ハ取得
八 外国居住者ニ信用ヲ与フル行為
九 証券ノ輸出又ハ輸入
十 価額ノ全部又ハ一部ニ付外国為替ヲ取組マザル貨物ノ輸出
第二条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前条ノ禁止又ハ制限ニ関係アル事項ニ付報告ヲ徴シ又ハ帳簿其ノ他ノ検査ヲ行フコトヲ得
第三条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ外国為替ニ関スル取引ヲ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル者ヲ相手方トスル場合ニ限定スルコトヲ得
第四条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金地金、外国通貨、外国為替又ハ外国通貨ヲ以テ表示スル証券若ハ債権ヲ有スル者ニ対シ自ラ之ヲ処分スベキコト又ハ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル者ニ売却スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ指定スル者ニ売却スベキコトヲ命ジタル場合ノ売却価額ハ外貨評価委員会ノ定ムル所ニ依ル
外貨評価委員会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 第一条又ハ第三条ノ規定ニ基キテ発スル命令ヲ以テ規定スル取引又ハ行為ノ禁止又ハ制限ニ違反シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス但シ当該取引又ハ行為ノ目的物ノ価額ノ三倍ガ一万円ヲ超ユルトキハ罰金ハ当該価額ノ三倍以下トス
前条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ依ル金地金其ノ他ヲ処分シ又ハ売却スベキ旨ノ政府ノ命ニ従ハザル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ当該金地金其ノ他ノ価額ノ二倍以下ノ罰金ニ処ス
第二条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ違反シ報告ヲ為サズ、虚偽ノ報告ヲ為シ、帳簿其ノ他ノ検査ヲ拒ミ又ハ帳簿書類ノ隠蔽不実ノ申立其ノ他ノ方法ニ依リ検査ヲ妨ゲタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ政府ニ提出スル許可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虚偽ノ記載ヲ為シタル者亦同ジ
第六条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シテ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ亦前条ノ罰金刑ヲ科ス
第七条 本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ本法施行地外ニ於テ為シタル行為ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ本法施行地外ニ於テ為シタル行為ニ付亦同ジ
第八条 本法ノ施行ニ関スル重要事項ニ付主務大臣ノ諮問ニ応ズル為外国為替管理委員会ヲ置ク
外国為替管理委員会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
資本逃避防止法ハ之ヲ廃止ス
本法施行前旧法ノ罰則ヲ適用スベカリシ行為ニ付テハ仍旧法ニ依ル