第四十三條 滿期ニ於テ支拂ナキトキハ所持人ハ裏書人、振出人其ノ他ノ債務者ニ對シ其ノ遡求權ヲ行フコトヲ得左ノ場合ニ於テハ滿期前ト雖モ亦同ジ
二 引受ヲ爲シタル若ハ爲サザル支拂人ノ破產ノ場合、其ノ支拂停止ノ場合又ハ其ノ財產ニ對スル强制執行ガ效ヲ奏セザル場合
三 引受ノ爲ノ呈示ヲ禁ジタル手形ノ振出人ノ破產ノ場合
第四十四條 引受又ハ支拂ノ拒絕ハ公正證書(引受拒絕證書又ハ支拂拒絕證書)ニ依リ之ヲ證明スルコトヲ要ス
引受拒絕證書ハ引受ノ爲ノ呈示期間內ニ之ヲ作ラシムルコトヲ要ス第二十四條第一項ニ規定スル場合ニ於テ期間ノ末日ニ第一ノ呈示アリタルトキハ拒絕證書ハ其ノ翌日之ヲ作ラシムルコトヲ得
確定日拂、日附後定期拂又ハ一覽後定期拂ノ爲替手形ノ支拂拒絕證書ハ爲替手形ノ支拂ヲ爲スベキ日又ハ之ニ次グ二取引日內ニ之ヲ作ラシムルコトヲ要ス一覽拂ノ手形ノ支拂拒絕證書ハ引受拒絕證書ノ作成ニ關シテ前項ニ規定スル條件ニ從ヒ之ヲ作ラシムルコトヲ要ス
引受拒絕證書アルトキハ支拂ノ爲ノ呈示及支拂拒絕證書ヲ要セズ
引受ヲ爲シタル若ハ爲サザル支拂人ガ支拂ヲ停止シタル場合又ハ其ノ財產ニ對スル强制執行ガ效ヲ奏セザル場合ニ於テハ所持人ハ支拂人ニ對シ手形ノ支拂ノ爲ノ呈示ヲ爲シ且拒絕證書ヲ作ラシメタル後ニ非ザレバ其ノ遡求權ヲ行フコトヲ得ズ
引受ヲ爲シタル若ハ爲サザル支拂人ガ破產ノ宣吿ヲ受ケタル場合又ハ引受ノ爲ノ呈示ヲ禁ジタル手形ノ振出人ガ破產ノ宣吿ヲ受ケタル場合ニ於テ所持人ガ其ノ遡求權ヲ行フニハ破產決定書ヲ提出スルヲ以テ足ル
第四十五條 所持人ハ拒絕證書作成ノ日ニ次グ又ハ無費用償還文句アル場合ニ於テハ呈示ノ日ニ次グ四取引日內ニ自己ノ裏書人及振出人ニ對シ引受拒絕又ハ支拂拒絕アリタルコトヲ通知スルコトヲ要ス各裏書人ハ通知ヲ受ケタル日ニ次グ二取引日內ニ前ノ通知者全員ノ名稱及宛所ヲ示シテ自己ノ受ケタル通知ヲ自己ノ裏書人ニ通知シ順次振出人ニ及ブモノトス此ノ期間ハ各其ノ通知ヲ受ケタル時ヨリ進行ス
前項ノ規定ニ從ヒ爲替手形ノ署名者ニ通知ヲ爲ストキハ同一期間內ニ其ノ保證人ニ同一ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
裏書人ガ其ノ宛所ヲ記載セズ又ハ其ノ記載ガ讀ミ難キ場合ニ於テハ其ノ裏書人ノ直接ノ前者ニ通知スルヲ以テ足ル
通知ヲ爲スベキ者ハ如何ナル方法ニ依リテモ之ヲ爲スコトヲ得單ニ爲替手形ヲ返付スルニ依リテモ亦之ヲ爲スコトヲ得
通知ヲ爲スベキ者ハ適法ノ期間內ニ通知ヲ爲シタルコトヲ證明スルコトヲ要ス此ノ期間內ニ通知ヲ爲ス書面ヲ郵便ニ付シタル場合ニ於テハ其ノ期間ヲ遵守シタルモノト看做ス
前項ノ期間內ニ通知ヲ爲サザル者ハ其ノ權利ヲ失フコトナシ但シ過失ニ因リテ生ジタル損害アルトキハ爲替手形ノ金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ其ノ賠償ノ責ニ任ズ
第四十六條 振出人、裏書人又ハ保證人ハ證券ニ記載シ且署名シタル「無費用償還」、「拒絕證書不要」ノ文句其ノ他之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ニ依リ所持人ニ對シ其ノ遡求權ヲ行フ爲ノ引受拒絕證書又ハ支拂拒絕證書ノ作成ヲ免除スルコトヲ得
前項ノ文言ハ所持人ニ對シ法定期間內ニ於ケル爲替手形ノ呈示及通知ノ義務ヲ免除スルコトナシ期間ノ不遵守ハ所持人ニ對シ之ヲ援用スル者ニ於テ其ノ證明ヲ爲スコトヲ要ス
振出人ガ第一項ノ文言ヲ記載シタルトキハ一切ノ署名者ニ對シ其ノ效力ヲ生ズ裏書人又ハ保證人ガ之ヲ記載シタルトキハ其ノ裏書人又ハ保證人ニ對シテノミ其ノ效力ヲ生ズ振出人ガ此ノ文言ヲ記載シタルニ拘ラズ所持人ガ拒絕證書ヲ作ラシメタルトキハ其ノ費用ハ所持人之ヲ負擔ス裏書人又ハ保證人ガ此ノ文言ヲ記載シタル場合ニ於テ拒絕證書ノ作成アリタルトキハ一切ノ署名者ヲシテ其ノ費用ヲ償還セシムルコトヲ得
第四十七條 爲替手形ノ振出、引受、裏書又ハ保證ヲ爲シタル者ハ所持人ニ對シ合同シテ其ノ責ニ任ズ
所持人ハ前項ノ債務者ニ對シ其ノ債務ヲ負ヒタル順序ニ拘ラズ各別又ハ共同ニ請求ヲ爲スコトヲ得
爲替手形ノ署名者ニシテ之ヲ受戾シタルモノモ同一ノ權利ヲ有ス
債務者ノ一人ニ對スル請求ハ他ノ債務者ニ對スル請求ヲ妨ゲズ旣ニ請求ヲ受ケタル者ノ後者ニ對シテモ亦同ジ
第四十八條 所持人ハ遡求ヲ受クル者ニ對シ左ノ金額ヲ請求スルコトヲ得
一 引受又ハ支拂アラザリシ爲替手形ノ金額及利息ノ記載アルトキハ其ノ利息
滿期前ニ遡求權ヲ行フトキハ割引ニ依リ手形金額ヲ減ズ其ノ割引ハ所持人ノ住所地ニ於ケル遡求ノ日ノ公定割引率(銀行率)ニ依リ之ヲ計算ス
第四十九條 爲替手形ヲ受戾シタル者ハ其ノ前者ニ對シ左ノ金額ヲ請求スルコトヲ得
二 前號ノ金額ニ對シ年六分ノ率ニ依リ計算シタル支拂ノ日以後ノ利息
第五十條 遡求ヲ受ケタル又ハ受クベキ債務者ハ支拂ト引換ニ拒絕證書、受取ヲ證スル記載ヲ爲シタル計算書及爲替手形ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
爲替手形ヲ受戾シタル裏書人ハ自己及後者ノ裏書ヲ抹消スルコトヲ得
第五十一條 一部引受ノ後ニ遡求權ヲ行フ場合ニ於テ引受アラザリシ手形金額ノ支拂ヲ爲ス者ハ其ノ支拂ノ旨ヲ手形ニ記載スルコト及受取證書ヲ交付スルコトヲ請求スルコトヲ得又所持人ハ爾後ノ遡求ヲ爲スコトヲ得シムル爲手形ノ證明謄本及拒絕證書ヲ交付スルコトヲ要ス
第五十二條 遡求權ヲ有スル者ハ反對ノ記載ナキ限リ其ノ前者ノ一人ニ宛テ一覽拂トシテ振出シ且其ノ者ノ住所ニ於テ支拂フベキ新手形(戾手形)ニ依リ遡求ヲ爲スコトヲ得
戾手形ハ第四十八條及第四十九條ニ規定スル金額ノ外其ノ戾手形ノ仲立料及印紙稅ヲ含ム
所持人ガ戾手形ヲ振出ス場合ニ於テハ其ノ金額ハ本手形ノ支拂地ヨリ前者ノ住所地ニ宛テ振出ス一覽拂ノ爲替手形ノ相場ニ依リ之ヲ定ム裏書人ガ戾手形ヲ振出ス場合ニ於テハ其ノ金額ハ戾手形ノ振出人ガ其ノ住所地ヨリ前者ノ住所地ニ宛テ振出ス一覽拂手形ノ相場ニ依リ之ヲ定ム
第五十三條 左ノ期間ガ經過シタルトキハ所持人ハ裏書人、振出人其ノ他ノ債務者ニ對シ其ノ權利ヲ失フ但シ引受人ニ對シテハ此ノ限ニ在ラズ
三 無費用償還文句アル場合ニ於ケル支拂ノ爲ノ呈示期間
振出人ノ記載シタル期間內ニ引受ノ爲ノ呈示ヲ爲サザルトキハ所持人ハ支拂拒絕及引受拒絕ニ因ル遡求權ヲ失フ但シ其ノ記載ノ文言ニ依リ振出人ガ引受ノ擔保義務ノミヲ免レントスル意思ヲ有シタルコトヲ知リ得ベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
裏書ニ呈示期間ノ記載アルトキハ其ノ裏書人ニ限リ之ヲ援用スルコトヲ得
第五十四條 法定ノ期間內ニ於ケル爲替手形ノ呈示又ハ拒絕證書ノ作成ガ避クベカラザル障碍(國ノ法令ニ依ル禁制其ノ他ノ不可抗力)ニ因リテ妨ゲラレタルトキハ其ノ期間ヲ伸長ス
所持人ハ自己ノ裏書人ニ對シ遲滯ナク其ノ不可抗力ヲ通知シ且爲替手形又ハ補箋ニ其ノ通知ヲ記載シ日附ヲ附シテ之ニ署名スルコトヲ要ス其ノ他ニ付テハ第四十五條ノ規定ヲ準用ス
不可抗力ガ止ミタルトキハ所持人ハ遲滯ナク引受又ハ支拂ノ爲手形ヲ呈示シ且必要アルトキハ拒絕證書ヲ作ラシムルコトヲ要ス
不可抗力ガ滿期ヨリ三十日ヲ超エテ繼續スルトキハ呈示又ハ拒絕證書ノ作成ヲ要セズシテ遡求權ヲ行フコトヲ得
一覽拂又ハ一覽後定期拂ノ爲替手形ニ付テハ三十日ノ期間ハ呈示期間ノ經過前ト雖モ所持人ガ其ノ裏書人ニ不可抗力ノ通知ヲ爲シタル日ヨリ進行ス一覽後定期拂ノ爲替手形ニ付テハ三十日ノ期間ニ爲替手形ニ記載シタル一覽後ノ期間ヲ加フ
所持人又ハ所持人ガ手形ノ呈示若ハ拒絕證書ノ作成ヲ委任シタル者ニ付テノ單純ナル人的事由ハ不可抗力ヲ構成スルモノト認メズ