第一條 本法ニ於テ電氣事業ト稱スルハ左ニ揭グルモノヲ謂フ
二 一般運送ノ用ニ供スル鐵道又ハ軌道ノ動力ニ電氣ヲ使用スル事業
第二條 本法ニ於テ電氣工作物ト稱スルハ電氣ノ供給又ハ使用ノ爲施設スル水路、貯水池、器具、機械、電線路其ノ他ノ工作物ニシテ電氣事業ノ用ニ供スルモノヲ謂フ
前項ニ於テ電線路ト稱スルハ電氣ノ傳送ニ用フル電氣導體及之ヲ支持シ又ハ保藏スル工作物ヲ謂フ
第三條 電氣事業ヲ營マントスル者ハ左ノ書類ヲ具シ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
電氣事業者前項ノ書類ニ揭グル事項中重要ナルモノヲ變更セントスルトキハ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四條 電氣事業者ハ主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申請シ、工事ニ着手シ及其ノ事業ヲ開始スベシ
主務大臣ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項ノ期間ノ伸長ヲ許可スルコトヲ得
第五條 電氣事業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ工事ヲ施行シ又ハ電氣工作物ヲ使用スルコトヲ得ズ
第六條 電氣事業者ハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ他人ノ土地ニ立入リ電氣工作物ノ施設ニ關スル調查若ハ測量ヲ爲シ又ハ工事ノ爲他人ノ土地ニ立入ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ少クトモ五日前ニ市町村長ニ其ノ日時及場所ヲ通知シ市町村長ハ之ヲ吿示シ又ハ其ノ旨ヲ土地ノ占有者ニ通知スベシ
電氣事業者ハ電氣工作物ノ修理又ハ巡視ノ爲必要アルトキハ其ノ工作物ヲ施設シタル他人ノ土地又ハ建造物ニ立入ルコトヲ得但シ日沒ヨリ日出迄ノ間ニ於テハ危險急迫ノ場合ニ非ザレバ占有者ノ意ニ反シテ邸宅又ハ建造物ニ立入ルコトヲ得ズ
第七條 電氣事業者ハ必要アルトキハ電線路ノ施設又ハ保守ニ障害ヲ及ボスベキ植物ヲ伐除シ又ハ移植スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ植物ノ所有者ト協議スベシ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ之ヲ伐除シ又ハ移植スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ豫メ其ノ旨ヲ植物ノ所有者ニ通知スベシ
危險急迫ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ前項ノ規定ニ拘ラズ直ニ植物ヲ伐除シ又ハ移植スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ遲滯ナク其ノ旨ヲ行政官廳ニ屆出デ且植物ノ所有者ニ通知スベシ
第八條 電氣事業者ハ道路、橋梁、溝渠、河川、堤防其ノ他公共ノ用ニ供セラルル土地ノ地上又ハ地中ニ電線路ヲ施設スル必要アルトキハ其ノ效用ヲ妨ゲザル限度ニ於テ其ノ管理者ノ許可ヲ受ケテ之ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ管理者ノ定ムル所ニ依リ使用料ヲ納ムベシ
管理者正當ノ事由ナクシテ第一項ノ許可ヲ拒ミタルトキ又ハ管理者ノ定メタル使用料ノ額ヲ不相當ナリトスルトキハ主務大臣ハ電氣事業者ノ申請ニ依リ使用ヲ許可シ又ハ使用料ノ額ヲ定ムルコトヲ得
前三項ノ規定ハ道路法ニ依ル道路及其ノ附屬物竝ニ道路法第七條ノ規定ニ依リ同法ノ規定ヲ準用スル道路及其ノ附屬物ト爲ルベキモノニ關シテハ之ヲ適用セズ
第九條 電氣事業者ハ必要アルトキハ現在ノ使用方法ヲ妨ゲザル限度ニ於テ他人ノ地上ノ空間若ハ地中ニ電線路ヲ施設シ又ハ建造物ノ存在セザル他人ノ土地ニ電線ノ支持物ヲ建設スルコトヲ得
電氣事業者前項ノ規定ニ依リ他人ノ土地ヲ使用セントスル場合ニ於テハ其ノ所有者及占有者ト協議スベシ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ其ノ使用ノ範圍ヲ定メ豫メ地方長官ノ許可ヲ受ケテ其ノ工事ニ着手スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ少クトモ五日前ニ其ノ旨ヲ土地ノ所有者及占有者ニ通知スベシ
第十條 第六條、第七條及前條ノ場合ニ於テ現ニ生ジタル損失ハ電氣事業者之ヲ補償スベシ
前項ノ補償金額ハ當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ許可ヲ爲シタル行政官廳之ヲ裁定ス裁定ニ不服アル者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
行政官廳ハ必要アリト認ムルトキハ電氣事業者ヲシテ損失ノ補償ニ充ツベキ金額ヲ供託セシムルコトヲ得
第十一條 電線路ヲ施設シタル土地ノ近接地又ハ第九條ノ規定ニ依リ電線路ヲ施設シタル土地ノ所有者又ハ占有者ハ土地ノ使用方法ヲ變更スル爲必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ電氣事業者ニ對シ障害ノ豫防又ハ除却ニ必要ナル方法ヲ施スコトヲ請求スルコトヲ得
前項ノ工事ニ要スル費用ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外電氣事業者ノ負擔トス但シ其ノ工事ヲ爲シタル後正當ノ事由ナクシテ豫定ノ變更ヲ爲サザルトキハ請求者ノ負擔トス
第十二條 電氣事業者ハ地中電氣工作物ヲ施設スル場合ニ於テ他人ニ屬スル地中電氣工作物ノ位置ヲ變更スル必要アルトキハ當該工作物ノ效用ヲ妨ゲザル限度ニ於テ其ノ位置ヲ變更シ又ハ其ノ工作物ノ所有者ヲシテ其ノ變更ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ電氣事業者ハ工作物ノ所有者ト協議スベシ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十三條 電氣工作物相互間及電氣工作物ト其ノ他ノ工作物トノ間ニ於ケル障害防止ノ爲必要ナル施設ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 前二條ニ規定スル工事又ハ施設ニ關スル費用ノ負擔、損失ノ補償其ノ他ノ事項ハ命令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス
電氣工作物ト其ノ他ノ工作物トノ間ニ關スル裁定中負擔金額又ハ補償金額ニ付不服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十五條 電氣事業者ハ正當ノ事由アルニ非ザレバ電氣ノ供給ヲ拒ムコトヲ得ズ
電燈ノ光度、供給點ニ於テ保持スベキ電壓、周波數、電氣工作物其ノ他供給業務ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 電氣事業者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ供給事業ノ全部又ハ一部ヲ休止シ又ハ廢止スルコトヲ得ズ
第一條第一號又ハ第三號ノ電氣事業會社ノ解散ノ決議又ハ總社員ノ同意ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十七條 電氣事業者電氣料金其ノ他供給條件ヲ設定シ又ハ變更セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ電氣事業者ニ對シ電氣料金其ノ他供給條件ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十八條 第一條第一號又ハ第三號ノ電氣事業會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル電氣工作物施設ノ費用ニ充ツル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第十九條 第一條第一號又ハ第三號ノ電氣事業會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル電氣工作物施設ノ費用ニ充ツル爲商法第二百條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存スル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十條 電氣事業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主任技術者ヲ選任シ技術ニ關スル事項ヲ擔任セシムベシ
主務大臣ハ主任技術者ガ其ノ職務ヲ怠リ又ハ其ノ職務ヲ行フニ當リ不當ナル行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ解任ヲ命ズルコトヲ得
第二十一條 第一條第一號又ハ第三號ノ電氣事業會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ他ノ事業ヲ營ムコトヲ得ズ
第二十二條 電氣事業ノ會計ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十三條 行政官廳ハ電氣事業者ニ對シ電氣工作物及其ノ工事竝ニ業務及財產ノ狀況ニ關シ檢查ヲ爲シ又ハ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
主務大臣ハ電氣工作物及其ノ工事、業務竝ニ會計ニ關シ電氣事業者ニ對シ改築、改善其ノ他監督上必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第二十四條 主務大臣ハ公益上必要アリト認ムル場合ニ於テハ電氣設備ノ效用ヲ增進シ又ハ電氣ノ需給ヲ調節スル爲電氣事業者ニ對シ電氣工作物ノ施設、變更若ハ共用、電氣ノ流用又ハ工事ニ關スル期間ノ伸縮ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ因リ必要ヲ生ジタル工事費用ノ負擔其ノ他ノ事項ハ關係電氣事業者ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十五條 電氣事業者ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ讓渡スコトヲ得ズ
電氣事業者ガ電氣事業ニ屬スルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ設定シタル工場財團ノ競落人電氣事業者ナルトキハ當然其ノ事業ヲ承繼ス
第二十六條 電氣事業會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ合併ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十七條 左ノ場合ニ於テハ第三條ノ許可ハ當該範圍ニ付其ノ效力ヲ失フ
一 指定ノ期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申請セズ、工事ニ着手セズ又ハ事業ヲ開始セザルトキ
三 供給事業ノ全部又ハ一部ニ付廢止ノ許可ヲ受ケタルトキ
第二十八條 主務大臣ハ左ノ場合ニ於テ第三條ノ許可ノ全部若ハ一部ヲ取消シ又ハ會社ノ取締役其ノ他ノ役員ノ改任ヲ命ズルコトヲ得
一 電氣事業者ガ法令若ハ法令ニ基キテ爲ス處分又ハ許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ違反シタルトキ
二 電氣事業者ガ其ノ供給區域內ノ一部分ニ供給ヲ開始シタル後久シキニ亙リ其ノ殘餘部分ニ對シ電線路其ノ他供給上必要ナル設備ヲ爲サザルトキ
主務大臣ハ前項第一號ノ場合ニ電氣事業者ノ計算ニ於テ他ノ電氣事業者ヲシテ必要ナル施設又ハ事業ノ管理ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十九條 國ハ公益上ノ必要ニ因リ第一條第一號又ハ第三號ノ事業ヲ買收スルコトヲ得
公共團體ハ公益上ノ必要ニ因リ主務大臣ノ許可ヲ受ケテ前項ノ事業ノ買收ヲ爲スコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ事業ノ一部ヲ買收セラルルニ因リテ殘存事業ノ全部又ハ一部ニ付事業ヲ繼續スルコト能ハザルトキハ電氣事業者ハ國又ハ公共團體ニ對シ殘存事業ノ全部又ハ一部ノ買收ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依ル買收價格、買收範圍其ノ他買收ノ條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス
前項ノ裁定中買收價格ニ付不服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十條 第一條ニ揭グル事業ヲ除クノ外電氣施設ヲ爲スモノニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ニ規定スルモノノ中重要ナル產業又ハ公共ノ利益ト爲ルベキ事業ノ爲電氣ヲ供給又ハ使用スル事業ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ヲ準用ス
第三十一條 國ニ於テ電氣事業ヲ營マントスルトキハ當該官廳ハ主務大臣ト協議スベシ第三條第二項ノ事項ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
國ニ於テ營ム電氣事業ニ關シテハ第三條乃至第五條、第十五條乃至第二十三條、第二十五條乃至前條及第三十五條乃至第三十八條ノ規定ヲ適用セズ
第三十二條 第二十四條第一項又ハ第二十八條第一項ノ規定ニ依ル命令又ハ處分其ノ他電氣事業ニ關スル重要事項ニ付主務大臣ノ諮問ニ應ズル爲電氣委員會ヲ置ク
第三十三條 電氣工作物ヲ損壞シ、之ニ物品ヲ接觸シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ電氣ノ供給又ハ使用ヲ妨害シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條 電氣事業者ノ承諾ヲ得ズシテ濫ニ電氣工作物ノ施設ヲ變更シタル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第三十五條 本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ許可若ハ認可ヲ受ケテ爲スベキ事項ヲ之ヲ受ケズシテ爲シタル者又ハ第十七條第二項若ハ第二十四條第一項ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十六條 電氣事業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
二 正當ノ事由ナクシテ第二十三條ノ規定ニ依ル檢查ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ其ノ他行政官廳ノ命ジタル事項ヲ爲サザルトキ
第三十七條 電氣事業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十八條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ電氣事業者ニ適用スベキ罰則ハ電氣事業者法人ナルトキハ取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ