農会法
法令番号: 法律第四十號
公布年月日: 大正11年4月12日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル農會法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年四月十一日
內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
農商務大臣 男爵 山本達雄
法律第四十號
農會法
第一條 農會ハ農業ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第二條 農會ハ法人トス
第三條 農會ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
一 農業ノ指導奬勵ニ關スル施設
二 農業ニ從事スル者ノ福利增進ニ關スル施設
三 農業ニ關スル硏究及調査
四 農業ニ關スル紛議ノ調停又ハ仲裁
五 其ノ他農業ノ改良發達ヲ圖ルニ必要ナル事業
第四條 農會ハ營利事業ヲ爲スコトヲ得ス
第五條 農會ハ農業ニ關スル事項ニ付行政廳ニ建議スルコトヲ得
農會ハ行政廳ノ諮問ニ對シ答申スヘシ
第六條 行政官廳ハ農會ニ對シ農業ニ關スル報告書ノ提出及農業ニ關スル事項ノ調查ヲ命スルコトヲ得
第七條 政府ハ農會ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第八條 農會ハ町村農會、市農會、郡農會、道府縣農會及帝國農會トス
第九條 農會ノ地區ハ町村農會ニ在リテハ町村又ハ町村組合、市農會ニ在リテハ市、郡農會ニ在リテハ郡又ハ島司ヲ置キタル島嶼、道府縣農會ニ在リテハ道府縣、帝國農會ニ在リテハ內地ノ區域ニ依ル
特別ノ事由アルトキハ農會ノ地區ハ前項ノ區域ニ依ラサルコトヲ得
第一項ノ區域ニ增減アリタルトキハ其ノ區域ヲ地區トスル農會ノ地區モ亦之ニ應シテ增減アリタルモノトス
町村カ市ト爲リタルトキハ其ノ町村ノ區域ヲ地區トスル町村農會ハ市農會ト爲リタルモノトス
第十條 農會ノ名稱ニハ町若ハ村農會、市農會、郡農會、道、府若ハ縣農會又ハ帝國農會ナル文字ヲ用井ルヘシ但シ農會ノ地區カ町、村、市、郡、道、府又ハ縣ノ區域ニ依ラサルトキハ其ノ名稱中ニ此等ノ區域ヲ示スヘキ文字ヲ用井サルコトヲ得
本法ニ依リ設立シタル農會ニ非サレハ其ノ名稱中ニ前項ニ揭クル文字ヲ用井ルコトヲ得ス
第十一條 農會ハ町村農會及市農會ニ在リテハ國、公共團體及命令ヲ以テ規定シタル者ヲ除クノ外其ノ地區內ノ耕地、牧場又ハ原野ヲ所有スル者及其ノ地區內ニ於テ農業ヲ營ム者、郡農會ニ在リテハ其ノ地區內ノ町村農會、道府縣農會ニ在リテハ其ノ地區內ノ市農會、郡農會及郡農會ノ會員ニ非サル町村農會、帝國農會ニ在リテハ道府縣農會ヲ以テ其ノ會員トス
第十二條 農會ヲ設立セムトスルトキハ其ノ地區內ノ會員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ會則ヲ議定シ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
町村農會及市農會ニ在リテハ前項ノ同意ヲ爲シタル者ノ所有シ又ハ占有スル其ノ地區內ノ耕地、牧場及原野ノ面積ハ私用ニ供スル其ノ地區內ノ耕地、牧場及原野ノ面積ノ二分ノ一以上ナルコトヲ要ス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テハ此ノ條件ニ依ラサルコトヲ得
第十三條 郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ヲ設立セムトスルトキハ其ノ農會ノ會員タルヘキ農會ハ其ノ總會ニ於テ創立委員各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ但シ道府縣農會ヲ設立スル場合ニ於テ郡農會ノ會員ニ非サル町村農會カ選任スル創立委員ノ選出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十四條 町村農會及市農會ノ創立總會ニ於テハ其ノ會員タル資格ヲ有スル者ノ中ヨリ其ノ役員竝其ノ組織スヘキ農會ノ議員及豫備議員ト爲ルヘキ者ヲ、其ノ他ノ農會ノ創立總會ニ於テハ其ノ創立委員中ヨリ其ノ役員竝其ノ組織スヘキ農會ノ議員及豫備議員ト爲ルヘキ者ヲ選任スヘシ但シ第二十七條第二項但書及第三項ノ規定ハ此ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十五條 農會ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時成立ス
第十六條 農會成立シタルトキハ其ノ地區內ノ會員タル資格ヲ有スル者ハ總テ之ニ加入シタルモノト看做ス但シ行政官廳カ特別ノ事由ニ依リ加入ノ必要ナシト認メタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第十七條 農會ニ總會ヲ置ク
總會ハ町村農會及市農會ニ在リテハ會長副會長及會員、其ノ他ノ農會ニ在リテハ會長副會長議員及特別議員ヲ以テ之ヲ組織ス
郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ノ議員ハ其ノ農會ノ會員タル農會ニ於テ各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ但シ郡農會ノ會員ニ非サル町村農會カ選任スル議員ノ選出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
郡農會、道府縣農會及帝國農會ノ設立ノ場合ニ於テハ創立委員其ノ農會ノ議員ト爲ル
第十八條 郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ノ會員タル農會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫備議員各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ
豫備議員ハ議員事故アルトキハ之ヲ代理シ議員闕ケタルトキハ議員ト爲ル
前條第三項但書ノ規定ハ豫備議員ニ付之ヲ準用ス
第十九條 行政官廳ハ農業ニ關スル學識經驗アル者ヲ郡農會、道府縣農會又ハ帝國農會ノ特別議員ニ任命スルコトヲ得
特別議員ノ員數ハ議員定數ノ三分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第二十條 左ニ揭クル事項ハ總會ノ議決ヲ經ヘシ
一 收支豫算
二 經費ノ分賦收入方法
三 事業報告及收支決算
四 借入金
五 基本財產ノ造成、管理及處分
六 會則ノ變更
七 役員、議員及豫備議員ノ選任及解任
八 第十二條第一項、第二十四條第二項及第三十五條ノ同意
前項第一號、第二號、第四號及第六號ニ揭クル事項ノ決議ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第二十一條 總會ハ會長之ヲ招集ス
總會ヲ組織スル者ハ其ノ總數ノ三分ノ一以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タル事項及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シ總會ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
會長正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後十四日以內ニ總會ヲ招集セサルトキハ請求者ハ行政官廳ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依リ總會ヲ招集スルコト能ハサルトキハ行政官廳ハ會員又ハ議員若ハ特別議員ヲ指定シテ總會ヲ招集セシムルコトヲ得
第二十二條 總會ノ議長ハ會長、會長事故アルトキハ副會長ヲ以テ之ニ充ツ會長及副會長共ニ事故アルトキ又ハ前條第三項若ハ第四項ノ場合ニ於テハ出席者ノ互選ニ依リ議長ヲ定ム
第二十三條 總會ノ議事ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外出席者ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十四條 會則ノ變更ハ總會ニ於テ之ヲ組織スル者半數以上出席シ出席者ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス
會則ノ變更カ地區ノ增減ニ關スルトキハ前項ノ規定ニ依ル議決ノ外新ニ編入セラレ又ハ削除セラルヘキ區域內ノ會員タル資格ヲ有スル者又ハ會員ノ三分ノ二以上ノ同意アルコトヲ要ス
第二十五條 總會ノ議決ヲ經ヘキ事項ニシテ輕微ナルモノニ付テハ會則ノ定ムル所ニ依リ書面ヲ以テ其ノ總會ヲ組織スル者ノ意見ヲ徵シ總會ノ議決ニ代フルコトヲ得但シ町村農會及市農會ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十六條 町村農會及市農會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ總代會ヲ置キ總會ニ代フルコトヲ得
總代會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ會員ノ選擧シタル總代ヲ以テ之ヲ組織ス
總會ニ關スル規定ハ總代會ニ付之ヲ準用ス
第二十七條 農會ニ左ノ役員ヲ置ク
會長 一人
副會長 一人
評議員 數人
役員ハ町村農會及市農會ニ在リテハ會員中ヨリ、其ノ他ノ農會ニ在リテハ議員及特別議員中ヨリ之ヲ選任ス但シ會長及副會長ハ其ノ他ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ妨ケス
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第二十八條 會長ハ農會ヲ代表シ會務ヲ總理ス
副會長ハ會長ヲ補佐シ會長事故アルトキ其ノ職務ヲ代埋ス
副會長ハ會則ノ定ムル所ニ依リ會長ノ職務ノ一部ヲ分掌スルコトヲ得
評議員ハ會長ノ諮問ニ應シ竝會務執行及財產ノ狀況ヲ監查ス
第二十九條 總會ノ議決ヲ經ヘキ事項ニシテ臨時急施ヲ要シ總會ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルモノハ會長之ヲ專決處分スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ會長ハ次ノ總會ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第三十條 農會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員ニ對シ經費ヲ分賦シ及過怠金ヲ徵收スルコトヲ得
町村農會及市農會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ物件ヲ以テ經費ノ負擔ヲ爲サシムルコトヲ得
町村農會及市農會ノ經費又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ其ノ會長ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ農會ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項ニ規定スル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノノ徵收金ニ次キ其ノ時效ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
經費ノ分賦又ハ過怠金ノ徵收ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ異議ノ申立、訴願及行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 農會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ使用料及手數料ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ使用料及手數料ノ徵收ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二條 行政官廳ハ農會ニ對シ會務ニ關スル報告ヲ爲サシメ、會務執行又ハ財產ノ狀況ヲ檢查シ、會則收支豫算又ハ經費ノ分賦收入方法ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十三條 農會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員タル農會ニ對シ農業ニ關スル報告書ノ提出及農業ニ關スル事項ノ調查ヲ爲サシムルコトヲ得
第三十四條 行政官廳ハ農會ノ決議又ハ役員ノ行爲カ法令若ハ會則ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員若ハ特別議員ヲ解任シ、議員豫備議員若ハ總代ノ改選ヲ命シ、農會ノ事業ヲ停止シ又ハ農會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
第三十五條 農會解散又ハ合併ヲ爲サムトスルトキハ其ノ會員ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得、道府縣農會ニ在リテハ尙其ノ會員タル郡農會及市農會ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得且合併ノ場合ニ於テハ會則ヲ議定シ事由ヲ具シ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
農會分割ヲ爲サムトスルトキハ前項ノ規定ニ準スル同意ノ外分割ノ各農會ノ會員又ハ會員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得農會ノ權利義務ノ限度ヲ定メ且會則ヲ議定シ事由ヲ具シ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
第十二條第二項、第十三條乃至第十五條及第十七條第四項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六條 合併後存續スル農會又ハ合併ニ因リテ設立シタル農會ハ合併ニ因リテ消滅シタル農會ノ權利義務ヲ承繼ス
分割ニ因リテ設立シタル農會ハ前條ノ規定ニ依リテ定リタル限度ニ於テ從前ノ農會ノ權利義務ヲ承繼ス
第三十七條 農會ハ解散ノ後ト雖淸算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍存續スルモノト看做ス
第三十八條 農會解散シタルトキハ會長及副會長ヲ以テ其ノ淸算人トス但シ會則ニ別段ノ規定アルトキ又ハ總會ニ於テ選任シタル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ淸算人タル者ナキトキハ行政官廳淸算人ヲ選任ス淸算人闕ケタルトキ亦同シ
第三十九條 淸算人ハ農會ヲ代表シ淸算ヲ爲スニ必要ナル一切ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有ス
淸算方法及財產處分ニ付テハ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
第四十條 行政官廳必要ト認ムルトキハ淸算方法及財產處分ノ變更ヲ命シ又ハ淸算人ヲ解任スルコトヲ得
第四十一條 本法ニ於テ市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノトシ郡トアルハ北海道ニ在リテハ北海道廳支廳長管轄區域トス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十二年法律第百三號農會法ハ之ヲ廢止ス
明治三十二年法律第百三號農會法ニ依リ設立シ本法施行ノ際現ニ存スル農會ハ之ヲ本法ニ依リ設立シタルモノト看做ス
本法施行ノ際現ニ前項ノ農會ノ役員、議員、豫備議員又ハ特別議員ノ職ニ在ル者ハ其ノ任期中仍其ノ職ニ在ルモノトス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル農会法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年四月十一日
内閣総理大臣 子爵 高橋是清
農商務大臣 男爵 山本達雄
法律第四十号
農会法
第一条 農会ハ農業ノ改良発達ヲ図ルヲ以テ目的トス
第二条 農会ハ法人トス
第三条 農会ハ其ノ目的ヲ達スル為左ノ事業ヲ行フ
一 農業ノ指導奨励ニ関スル施設
二 農業ニ従事スル者ノ福利増進ニ関スル施設
三 農業ニ関スル研究及調査
四 農業ニ関スル紛議ノ調停又ハ仲裁
五 其ノ他農業ノ改良発達ヲ図ルニ必要ナル事業
第四条 農会ハ営利事業ヲ為スコトヲ得ス
第五条 農会ハ農業ニ関スル事項ニ付行政庁ニ建議スルコトヲ得
農会ハ行政庁ノ諮問ニ対シ答申スヘシ
第六条 行政官庁ハ農会ニ対シ農業ニ関スル報告書ノ提出及農業ニ関スル事項ノ調査ヲ命スルコトヲ得
第七条 政府ハ農会ニ対シ予算ノ範囲内ニ於テ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第八条 農会ハ町村農会、市農会、郡農会、道府県農会及帝国農会トス
第九条 農会ノ地区ハ町村農会ニ在リテハ町村又ハ町村組合、市農会ニ在リテハ市、郡農会ニ在リテハ郡又ハ島司ヲ置キタル島嶼、道府県農会ニ在リテハ道府県、帝国農会ニ在リテハ内地ノ区域ニ依ル
特別ノ事由アルトキハ農会ノ地区ハ前項ノ区域ニ依ラサルコトヲ得
第一項ノ区域ニ増減アリタルトキハ其ノ区域ヲ地区トスル農会ノ地区モ亦之ニ応シテ増減アリタルモノトス
町村カ市ト為リタルトキハ其ノ町村ノ区域ヲ地区トスル町村農会ハ市農会ト為リタルモノトス
第十条 農会ノ名称ニハ町若ハ村農会、市農会、郡農会、道、府若ハ県農会又ハ帝国農会ナル文字ヲ用井ルヘシ但シ農会ノ地区カ町、村、市、郡、道、府又ハ県ノ区域ニ依ラサルトキハ其ノ名称中ニ此等ノ区域ヲ示スヘキ文字ヲ用井サルコトヲ得
本法ニ依リ設立シタル農会ニ非サレハ其ノ名称中ニ前項ニ掲クル文字ヲ用井ルコトヲ得ス
第十一条 農会ハ町村農会及市農会ニ在リテハ国、公共団体及命令ヲ以テ規定シタル者ヲ除クノ外其ノ地区内ノ耕地、牧場又ハ原野ヲ所有スル者及其ノ地区内ニ於テ農業ヲ営ム者、郡農会ニ在リテハ其ノ地区内ノ町村農会、道府県農会ニ在リテハ其ノ地区内ノ市農会、郡農会及郡農会ノ会員ニ非サル町村農会、帝国農会ニ在リテハ道府県農会ヲ以テ其ノ会員トス
第十二条 農会ヲ設立セムトスルトキハ其ノ地区内ノ会員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立総会ヲ開キ会則ヲ議定シ行政官庁ノ認可ヲ受クヘシ
町村農会及市農会ニ在リテハ前項ノ同意ヲ為シタル者ノ所有シ又ハ占有スル其ノ地区内ノ耕地、牧場及原野ノ面積ハ私用ニ供スル其ノ地区内ノ耕地、牧場及原野ノ面積ノ二分ノ一以上ナルコトヲ要ス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テハ此ノ条件ニ依ラサルコトヲ得
第十三条 郡農会、道府県農会又ハ帝国農会ヲ設立セムトスルトキハ其ノ農会ノ会員タルヘキ農会ハ其ノ総会ニ於テ創立委員各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ但シ道府県農会ヲ設立スル場合ニ於テ郡農会ノ会員ニ非サル町村農会カ選任スル創立委員ノ選出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十四条 町村農会及市農会ノ創立総会ニ於テハ其ノ会員タル資格ヲ有スル者ノ中ヨリ其ノ役員並其ノ組織スヘキ農会ノ議員及予備議員ト為ルヘキ者ヲ、其ノ他ノ農会ノ創立総会ニ於テハ其ノ創立委員中ヨリ其ノ役員並其ノ組織スヘキ農会ノ議員及予備議員ト為ルヘキ者ヲ選任スヘシ但シ第二十七条第二項但書及第三項ノ規定ハ此ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十五条 農会ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時成立ス
第十六条 農会成立シタルトキハ其ノ地区内ノ会員タル資格ヲ有スル者ハ総テ之ニ加入シタルモノト看做ス但シ行政官庁カ特別ノ事由ニ依リ加入ノ必要ナシト認メタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第十七条 農会ニ総会ヲ置ク
総会ハ町村農会及市農会ニ在リテハ会長副会長及会員、其ノ他ノ農会ニ在リテハ会長副会長議員及特別議員ヲ以テ之ヲ組織ス
郡農会、道府県農会又ハ帝国農会ノ議員ハ其ノ農会ノ会員タル農会ニ於テ各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ但シ郡農会ノ会員ニ非サル町村農会カ選任スル議員ノ選出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
郡農会、道府県農会及帝国農会ノ設立ノ場合ニ於テハ創立委員其ノ農会ノ議員ト為ル
第十八条 郡農会、道府県農会又ハ帝国農会ノ会員タル農会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ予備議員各一人ヲ其ノ役員中ヨリ選任スヘシ
予備議員ハ議員事故アルトキハ之ヲ代理シ議員闕ケタルトキハ議員ト為ル
前条第三項但書ノ規定ハ予備議員ニ付之ヲ準用ス
第十九条 行政官庁ハ農業ニ関スル学識経験アル者ヲ郡農会、道府県農会又ハ帝国農会ノ特別議員ニ任命スルコトヲ得
特別議員ノ員数ハ議員定数ノ三分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第二十条 左ニ掲クル事項ハ総会ノ議決ヲ経ヘシ
一 収支予算
二 経費ノ分賦収入方法
三 事業報告及収支決算
四 借入金
五 基本財産ノ造成、管理及処分
六 会則ノ変更
七 役員、議員及予備議員ノ選任及解任
八 第十二条第一項、第二十四条第二項及第三十五条ノ同意
前項第一号、第二号、第四号及第六号ニ掲クル事項ノ決議ハ行政官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第二十一条 総会ハ会長之ヲ招集ス
総会ヲ組織スル者ハ其ノ総数ノ三分ノ一以上ノ同意ヲ得テ会議ノ目的タル事項及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シ総会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
会長正当ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後十四日以内ニ総会ヲ招集セサルトキハ請求者ハ行政官庁ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依リ総会ヲ招集スルコト能ハサルトキハ行政官庁ハ会員又ハ議員若ハ特別議員ヲ指定シテ総会ヲ招集セシムルコトヲ得
第二十二条 総会ノ議長ハ会長、会長事故アルトキハ副会長ヲ以テ之ニ充ツ会長及副会長共ニ事故アルトキ又ハ前条第三項若ハ第四項ノ場合ニ於テハ出席者ノ互選ニ依リ議長ヲ定ム
第二十三条 総会ノ議事ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外出席者ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十四条 会則ノ変更ハ総会ニ於テ之ヲ組織スル者半数以上出席シ出席者ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス
会則ノ変更カ地区ノ増減ニ関スルトキハ前項ノ規定ニ依ル議決ノ外新ニ編入セラレ又ハ削除セラルヘキ区域内ノ会員タル資格ヲ有スル者又ハ会員ノ三分ノ二以上ノ同意アルコトヲ要ス
第二十五条 総会ノ議決ヲ経ヘキ事項ニシテ軽微ナルモノニ付テハ会則ノ定ムル所ニ依リ書面ヲ以テ其ノ総会ヲ組織スル者ノ意見ヲ徴シ総会ノ議決ニ代フルコトヲ得但シ町村農会及市農会ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十六条 町村農会及市農会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ総代会ヲ置キ総会ニ代フルコトヲ得
総代会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ会員ノ選挙シタル総代ヲ以テ之ヲ組織ス
総会ニ関スル規定ハ総代会ニ付之ヲ準用ス
第二十七条 農会ニ左ノ役員ヲ置ク
会長 一人
副会長 一人
評議員 数人
役員ハ町村農会及市農会ニ在リテハ会員中ヨリ、其ノ他ノ農会ニ在リテハ議員及特別議員中ヨリ之ヲ選任ス但シ会長及副会長ハ其ノ他ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ妨ケス
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ行政官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第二十八条 会長ハ農会ヲ代表シ会務ヲ総理ス
副会長ハ会長ヲ補佐シ会長事故アルトキ其ノ職務ヲ代埋ス
副会長ハ会則ノ定ムル所ニ依リ会長ノ職務ノ一部ヲ分掌スルコトヲ得
評議員ハ会長ノ諮問ニ応シ並会務執行及財産ノ状況ヲ監査ス
第二十九条 総会ノ議決ヲ経ヘキ事項ニシテ臨時急施ヲ要シ総会ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルモノハ会長之ヲ専決処分スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ会長ハ次ノ総会ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第三十条 農会ハ会則ノ定ムル所ニ依リ其ノ会員ニ対シ経費ヲ分賦シ及過怠金ヲ徴収スルコトヲ得
町村農会及市農会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ物件ヲ以テ経費ノ負担ヲ為サシムルコトヲ得
町村農会及市農会ノ経費又ハ過怠金ヲ滞納スル者アル場合ニ於テ其ノ会長ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス此ノ場合ニ於テ農会ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項ニ規定スル徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノノ徴収金ニ次キ其ノ時効ニ付テハ市町村税ノ例ニ依ル
経費ノ分賦又ハ過怠金ノ徴収ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ異議ノ申立、訴願及行政訴訟ヲ為スコトヲ得
第三十一条 農会ハ会則ノ定ムル所ニ依リ使用料及手数料ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ使用料及手数料ノ徴収ニ関シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二条 行政官庁ハ農会ニ対シ会務ニ関スル報告ヲ為サシメ、会務執行又ハ財産ノ状況ヲ検査シ、会則収支予算又ハ経費ノ分賦収入方法ノ変更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第三十三条 農会ハ会則ノ定ムル所ニ依リ其ノ会員タル農会ニ対シ農業ニ関スル報告書ノ提出及農業ニ関スル事項ノ調査ヲ為サシムルコトヲ得
第三十四条 行政官庁ハ農会ノ決議又ハ役員ノ行為カ法令若ハ会則ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員若ハ特別議員ヲ解任シ、議員予備議員若ハ総代ノ改選ヲ命シ、農会ノ事業ヲ停止シ又ハ農会ノ解散ヲ命スルコトヲ得
第三十五条 農会解散又ハ合併ヲ為サムトスルトキハ其ノ会員ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得、道府県農会ニ在リテハ尚其ノ会員タル郡農会及市農会ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得且合併ノ場合ニ於テハ会則ヲ議定シ事由ヲ具シ行政官庁ノ認可ヲ受クヘシ
農会分割ヲ為サムトスルトキハ前項ノ規定ニ準スル同意ノ外分割ノ各農会ノ会員又ハ会員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得農会ノ権利義務ノ限度ヲ定メ且会則ヲ議定シ事由ヲ具シ行政官庁ノ認可ヲ受クヘシ
第十二条第二項、第十三条乃至第十五条及第十七条第四項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六条 合併後存続スル農会又ハ合併ニ因リテ設立シタル農会ハ合併ニ因リテ消滅シタル農会ノ権利義務ヲ承継ス
分割ニ因リテ設立シタル農会ハ前条ノ規定ニ依リテ定リタル限度ニ於テ従前ノ農会ノ権利義務ヲ承継ス
第三十七条 農会ハ解散ノ後ト雖清算ノ目的ノ範囲内ニ於テハ仍存続スルモノト看做ス
第三十八条 農会解散シタルトキハ会長及副会長ヲ以テ其ノ清算人トス但シ会則ニ別段ノ規定アルトキ又ハ総会ニ於テ選任シタル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ清算人タル者ナキトキハ行政官庁清算人ヲ選任ス清算人闕ケタルトキ亦同シ
第三十九条 清算人ハ農会ヲ代表シ清算ヲ為スニ必要ナル一切ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス
清算方法及財産処分ニ付テハ行政官庁ノ認可ヲ受クヘシ
第四十条 行政官庁必要ト認ムルトキハ清算方法及財産処分ノ変更ヲ命シ又ハ清算人ヲ解任スルコトヲ得
第四十一条 本法ニ於テ市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノトシ郡トアルハ北海道ニ在リテハ北海道庁支庁長管轄区域トス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十二年法律第百三号農会法ハ之ヲ廃止ス
明治三十二年法律第百三号農会法ニ依リ設立シ本法施行ノ際現ニ存スル農会ハ之ヲ本法ニ依リ設立シタルモノト看做ス
本法施行ノ際現ニ前項ノ農会ノ役員、議員、予備議員又ハ特別議員ノ職ニ在ル者ハ其ノ任期中仍其ノ職ニ在ルモノトス