高等学校令
法令番号: 勅令第三百八十九號
公布年月日: 大正7年12月6日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ高等學校令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正七年十二月五日
內閣總理大臣 原敬
文部大臣 中橋德五郞
勅令第三百八十九號
高等學校令
第一條 高等學校ハ男子ノ高等普通敎育ヲ完成スルヲ以テ目的トシ特ニ國民道德ノ充實ニ力ムヘキモノトス
第二條 高等學校ハ官立、公立又ハ私立トス
第三條 高等學校ヲ設立スルコトヲ得ル公共團體ハ北海道及府縣トス
第四條 私立高等學校ハ財團法人タルコトヲ要ス但シ特別ノ必要ニ因リ學校經營ノミヲ目的トスル財團法人カ其ノ事業トシテ之ヲ設立スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五條 前條ノ財團法人ハ高等學校ニ必要ナル設備又ハ之ニ要スル資金及少クトモ高等學校ヲ維持スルニ足ルヘキ收入ヲ生スル基本財產ヲ有スルコトヲ要ス但シ其ノ基本財產ノ額ハ五十萬圓ヲ下ルコトヲ得ス
基本財產中前項ニ該當スルモノハ現金又ハ國債證券其ノ他文部大臣ノ定ムル有價證券トシ之ヲ供託スヘシ
第六條 公立及私立ノ高等學校ノ設立廢止ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第七條 高等學校ノ修業年限ハ七年トシ高等科三年尋常科四年トス
高等學校ハ高等科ノミヲ置クコトヲ得
第八條 高等學校高等科ヲ分チテ文科及理科トス
第九條 高等學校ニハ高等科ヲ卒リタル者ノ爲ニ專攻科ヲ置クコトヲ得其ノ修業年限ハ一年トス
專攻科ヲ卒リタル者ハ得業士ト稱スルコトヲ得
專攻科ニ關スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十條 高等學校ニハ特別ノ必要アル場合ニ於テ豫科ヲ置クコトヲ得但シ第七條第二項ノ高等學校ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
高等學校豫科ニ關スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十一條 高等學校尋常科ニ入學スルコトヲ得ル者ハ當該學校豫科ヲ修了シタル者、尋常小學校ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力アリト認メラレタル者トス
第十二條 高等學校高等科ニ入學スルコトヲ得ル者ハ當該學校尋常科ヲ修了シタル者、中學校第四學年ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力アリト認メラレタル者トス
第十三條 高等學校ノ生徒定數ハ高等科四百八十人以內尋常科三百二十人以內トシ第七條第二項ノ高等學校ニ在リテハ專攻科ヲ除キ六百人以內トス
第十四條 高等學校ニ於テハ同科同學年ノ生徒ヲ以テ學級ヲ編制スヘシ
一學級ノ生徒定數ハ四十人以內トス
第十五條 高等學校ニ於テハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ學科目ノ種類ニ從ヒ學級ノ異ナル生徒ヲ合シテ同時ニ之ヲ敎授スルコトヲ得
第十六條 高等學校ノ敎員ハ文部大臣ノ授與シタル高等學校敎員免許狀ヲ有スル者タルコトヲ要ス但シ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ免許狀ヲ有セサル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
高等學校敎員免許狀ニ關スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十七條 高等學校ノ設備、編制、學科目及其ノ程度、敎科書竝生徒ノ入學退學及懲戒、授業料入學料等ニ關スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十八條 公立及私立ノ高等學校ハ文部大臣ノ監督ニ屬ス
第十九條 文部大臣ハ公立及私立ノ高等學校ニ對シ報吿ヲ徵シ檢閱ヲ行ヒ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十條 本令ニ依ラサル學校ハ勅定規程ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外高等學校ト稱シ又ハ其ノ名稱ニ高等學校タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
附 則
本令ハ大正八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
明治二十七年勅令第七十五號高等學校令及高等中學校令ハ之ヲ廢止ス
舊令ニ依ル高等學校ハ之ヲ本令ニ依ル高等學校トス
前項ノ高等學校ニハ當分ノ內第十三條ノ規定ヲ適用セス
高等學校大學豫科ハ大正十年八月三十一日マテ之ヲ存置ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ高等学校令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正七年十二月五日
内閣総理大臣 原敬
文部大臣 中橋徳五郎
勅令第三百八十九号
高等学校令
第一条 高等学校ハ男子ノ高等普通教育ヲ完成スルヲ以テ目的トシ特ニ国民道徳ノ充実ニ力ムヘキモノトス
第二条 高等学校ハ官立、公立又ハ私立トス
第三条 高等学校ヲ設立スルコトヲ得ル公共団体ハ北海道及府県トス
第四条 私立高等学校ハ財団法人タルコトヲ要ス但シ特別ノ必要ニ因リ学校経営ノミヲ目的トスル財団法人カ其ノ事業トシテ之ヲ設立スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五条 前条ノ財団法人ハ高等学校ニ必要ナル設備又ハ之ニ要スル資金及少クトモ高等学校ヲ維持スルニ足ルヘキ収入ヲ生スル基本財産ヲ有スルコトヲ要ス但シ其ノ基本財産ノ額ハ五十万円ヲ下ルコトヲ得ス
基本財産中前項ニ該当スルモノハ現金又ハ国債証券其ノ他文部大臣ノ定ムル有価証券トシ之ヲ供託スヘシ
第六条 公立及私立ノ高等学校ノ設立廃止ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第七条 高等学校ノ修業年限ハ七年トシ高等科三年尋常科四年トス
高等学校ハ高等科ノミヲ置クコトヲ得
第八条 高等学校高等科ヲ分チテ文科及理科トス
第九条 高等学校ニハ高等科ヲ卒リタル者ノ為ニ専攻科ヲ置クコトヲ得其ノ修業年限ハ一年トス
専攻科ヲ卒リタル者ハ得業士ト称スルコトヲ得
専攻科ニ関スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十条 高等学校ニハ特別ノ必要アル場合ニ於テ予科ヲ置クコトヲ得但シ第七条第二項ノ高等学校ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
高等学校予科ニ関スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十一条 高等学校尋常科ニ入学スルコトヲ得ル者ハ当該学校予科ヲ修了シタル者、尋常小学校ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力アリト認メラレタル者トス
第十二条 高等学校高等科ニ入学スルコトヲ得ル者ハ当該学校尋常科ヲ修了シタル者、中学校第四学年ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力アリト認メラレタル者トス
第十三条 高等学校ノ生徒定数ハ高等科四百八十人以内尋常科三百二十人以内トシ第七条第二項ノ高等学校ニ在リテハ専攻科ヲ除キ六百人以内トス
第十四条 高等学校ニ於テハ同科同学年ノ生徒ヲ以テ学級ヲ編制スヘシ
一学級ノ生徒定数ハ四十人以内トス
第十五条 高等学校ニ於テハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ学科目ノ種類ニ従ヒ学級ノ異ナル生徒ヲ合シテ同時ニ之ヲ教授スルコトヲ得
第十六条 高等学校ノ教員ハ文部大臣ノ授与シタル高等学校教員免許状ヲ有スル者タルコトヲ要ス但シ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ免許状ヲ有セサル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
高等学校教員免許状ニ関スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十七条 高等学校ノ設備、編制、学科目及其ノ程度、教科書並生徒ノ入学退学及懲戒、授業料入学料等ニ関スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十八条 公立及私立ノ高等学校ハ文部大臣ノ監督ニ属ス
第十九条 文部大臣ハ公立及私立ノ高等学校ニ対シ報告ヲ徴シ検閲ヲ行ヒ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十条 本令ニ依ラサル学校ハ勅定規程ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外高等学校ト称シ又ハ其ノ名称ニ高等学校タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
附 則
本令ハ大正八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
明治二十七年勅令第七十五号高等学校令及高等中学校令ハ之ヲ廃止ス
旧令ニ依ル高等学校ハ之ヲ本令ニ依ル高等学校トス
前項ノ高等学校ニハ当分ノ内第十三条ノ規定ヲ適用セス
高等学校大学予科ハ大正十年八月三十一日マテ之ヲ存置ス