朕海軍禮式令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年二月十日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
海軍大臣 男爵 齋藤實
勅令第十五號
海軍禮式令
目次
第一編
總則
第二編
敬禮
第一章
通則
第二章
各個ノ敬禮
第一節
室內ノ敬禮
第二節
室外ノ敬禮
第三章
艦船ノ敬禮
第一節
軍艦ノ敬禮
第二節
短艇ノ敬禮
第四章
軍隊ノ敬禮
第五章
衞兵及番兵ノ敬禮
第三編
儀式
第一章
儀仗兵
第二章
遙拜式
第三章
迎送式及伺候式
第四章
觀兵式
第五章
觀艦式
海軍禮式令
第一編 總則
第一條 海軍軍人艦船及軍隊ノ禮式ニ關シテハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令中軍人ト稱スルハ海軍將校同相當官兵曹長同相當官候補生准士官生徒及下士卒ヲ謂ヒ上官又ハ上級者ト稱スルハ官等等級ノ上ナル者ヲ謂ヒ同級者ト稱スルハ官等等級ノ等シキ者ヲ謂ヒ衞兵ト稱スルハ艦船部隊等ノ衞兵ヲ謂ヒ番兵ト稱スルハ衞兵ノ守所ニ在ル者ヲ謂ヒ軍隊ト稱スルハ武裝スルト否トニ關セス又人員ノ多少ニ拘ラス隊伍ヲ組ミタル軍人ノ集團ヲ謂ヒ隊長ト稱スルハ軍隊ヲ引率スル者ヲ謂フ
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ候補生ハ兵曹長同相當官ノ下准士官ノ上トシ生徒ハ准士官ノ下下士ノ上トシ其ノ敬禮ニ關シテハ士官又ハ下士ニ準ス
第三條 皇后太皇太后皇太后ニ對スル禮式ハ天皇ニ對スル禮式ニ準ス
前項以外ノ皇族ニ對スル禮式ハ公式ノ場合ニ限リ前項ノ規定ニ準ス
第四條 外國ノ元首又ハ皇族ニ對スル禮式ハ公式ノ場合ニ限リ前條ノ規定ニ準ス
第五條 文武官ノ資格ニ於ケル皇族ニ對シテハ本官職相當ノ禮式ヲ行フ外國ノ皇族ニ付亦同シ
第六條 儀式祭典等ニ參與中ノ軍人艦船又ハ軍隊ハ該式典ノ爲ニスル場合ヲ除クノ外式ノ施行中敬禮又ハ答禮ヲ行フコトナシ但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七條 上官ノ職ヲ執リ又ハ之ヲ代理スル軍人ニ對シテハ其ノ本官相當ノ禮式ヲ行フヘシ但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第八條 天皇ニ扈從スル軍人ハ敬禮ヲ行フコトナシ
職務上皇族又ハ上官ニ隨從スル軍人ハ該皇族又ハ上官カ敬禮スル場合ヲ除クノ外敬禮ヲ行フコトナシ
第九條 儀式其ノ他ニ關スル高等武官兵曹長同相當官ヲ除クノ席次ハ特ニ規定アル場合ヲ除クノ外高等官席次同日同官等任官ノ者ニ在リテハ官報揭載ノ順序ニ依ル但シ艦船部隊ニ在リテハ副長ハ艦長ノ次席ニ列スルモノトス
兵曹長同相當官ノ席次ハ少尉同相當官ノ次席トスル外前項ノ規定ニ依ル
候補生ノ席次ハ兵曹長同相當官ノ次席トスル外第一項ノ規定ニ準ス
准士官ノ席次ハ第一項ノ規定ニ準ス
生徒ノ席次ハ准士官ノ次席トス
第十條 公務上口頭ニテ他ノ軍人ヲ呼フニハ上官タルト下官タルトヲ問ハス其ノ職名ヲ以テシ又ハ氏下ニ官名ヲ附スヘシ但シ卒ヲ呼フニハ單ニ氏ヲ以テス
前項ノ場合ニ於テ面識ナキ上官ニ對スルトキハ先ツ自己ヲ紹介スヘシ
第十一條 艦船軍隊又ハ衞兵ノ禮式ハ別段ノ規定アル場合又ハ特ニ命令アル場合ヲ除クノ外午前八時ヨリ日沒迄ノ間ニ非サレハ之ヲ行ハサルヲ例トス
第十二條 陸軍軍人又ハ軍隊ニ對シテハ海軍軍人又ハ軍隊ニ對スルト同一ノ禮式ヲ行フヘシ
外國ノ軍人艦船軍隊又ハ文官ニ對シテハ特ニ規定アル場合ヲ除クノ外我海軍軍人艦船軍隊又ハ文官ニ對スルト同一ノ禮式ヲ行フヘシ但シ彼我ノ禮式ニ厚薄ノ差ヲ生シ不權衡ト認ムル場合ニハ帝國ノ威嚴ヲ損セサル限リ首席指揮官臨機ノ處置ヲ爲スコトヲ得
第十三條 儀式祭典等ニ當リ一境域內全般ニ亙ル禮式ヲ齊一ニシ且必要ナル順序等ヲ定ムルハ左ニ揭クル諸官ノ任トス
一 東京ニ在リテハ海軍大臣
二 軍港ニ在リテハ鎭守府司令長官
三 要港ニ在リテハ要港部司令官司令官ヲ置カサル要港ニ在リテハ第四號ニ依ル
四 其ノ他ノ各地ニ在リテハ所在首席將校其ノ地在勤者タルト否トヲ問ハス
軍港要港ニ在リテハ鎭守府司令長官又ハ要港部司令官ノ定メタルモノハ他ノ司令長官又ハ司令官ニ於テ官等ノ上下ヲ論セス等シク之ヲ遵守スヘシ
第十四條 受禮者ハ本令ニ依ル禮式ノ一部又ハ全部ヲ辭スルコトヲ得
第十五條 艦船ノ構造若ハ其ノ運用上又ハ演習等ノ爲本令ニ依ルコト能ハサルトキハ適宜之ヲ取捨スルコトヲ得
第十六條 本令ニ定ムルモノノ外特別ノ場合ニ行フヘキ禮式ニ關シテハ海軍大臣之ヲ定ム
第二編 敬禮
第一章 通則
第十七條 軍人「君カ代」ノ奏樂又ハ喇叭練習中ノ奏樂喇叭ヲ除クヲ聞クトキハ姿勢ヲ正スヘシ
第十八條 勅語勅諭令旨等奉讀ノ際ハ其ノ始終ニ於テ敬禮ヲ行フヘシ
第十九條 軍人ハ上官ニ對シ敬禮ヲ行ヒ上官ハ之ニ答禮シ同級者ハ互ニ敬禮ヲ交換スヘシ但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
同時ニ二人以上ノ上官ニ對スルトキハ特ニ規定アル場合ヲ除クノ外最高級ノ人ノミニ對シ敬禮ヲ行ヒ其ノ最高級ノ人ノミ答禮ヲ行フヲ例トス
敬禮ヲ行フトキハ受禮者ノ答禮畢ルヲ俟チ原姿勢ニ復スルヲ例トス
第二十條 官等等級ノ識別困難ナル場合ニ在リテハ上下ヲ論セス互ニ敬禮ヲ行フヘシ
第二十一條 軍人各個ノ敬禮ハ面識アル上官ニ對シテハ其ノ服裝ノ如何ニ關セス之ヲ行フヘシ但シ軍艦ニ於テ號笛ヲ以テスル敬禮ハ制規ノ服裝ヲ爲ス者ニ對シテノミ之ヲ行フ
第二十二條 軍人行進間敬禮ヲ行フトキハ步調ヲ執ルコトナク武裝シタルトキヲ除ク速步ニ於テ之ヲ行フ但シ至急ノ要務ヲ帶フルトキハ其ノ旨ヲ吿ケ駈步ノ儘之ヲ行フコトヲ得
第二十三條 敎練受業中ノ者ハ各個ノ敬禮ヲ行ハサルヲ例トシ又作業中ノ者ニハ監督者ニ於テ必要ニ依リ敬禮ヲ省略セシムルコトヲ得但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二章 各個ノ敬禮
第一節 室內ノ敬禮
第二十四條 室內ト稱スルハ公室、私室、事務室、會食所、應接所等ヲ謂フ但シ宮中又ハ行在所ニ在リテハ廊下モ亦室內ニ準ス
第二十五條 室內ノ敬禮ハ先ツ室外ニ於テ脫帽シ室內ニ入リ受禮者又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ對シテ停止正面シ姿勢ヲ正シテ受禮者ノ眼又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ注目シ體ノ上部ヲ約十五度前ニ傾ケ頭ヲ正シク上體ノ方向ニ保ツヘシ但シ帽ヲ手ニ持ツトキハ右手ニテ其ノ庇又ハ前部ヲ摘ミテ之ヲ垂直ニ提ケ其ノ內部ハ右股ニ對セシム
下士卒銃ヲ携フルトキニ於ケル室內ノ敬禮ハ室外ノ敬禮ニ同シ
答禮ノ方法ハ敬禮ニ準ス但シ著席者ノ答禮ハ其ノ儘體ノ上部ヲ少シク前ニ傾ケ敬禮者ニ注目スルヲ例トス
第二十六條 天皇ニ拜謁スルトキハ先ツ御室ノ外ニ於テ敬禮シタル後御室ニ入リ直ニ敬禮シ更ニ進ミテ玉座ヲ距ルコト約六步ノ所ニ於テ最敬禮ヲ爲シ畢リテ退步シ御室ノ出口ニ於テ敬禮シ御室ヲ出テ更ニ敬禮ヲ行ヒタル後退去スヘシ但シ宮中等ニ於テ特ニ規定アルモノハ之ニ從フ
最敬禮ハ不動ノ姿勢ヲ執リ先ツ天皇ニ注目シ次ニ體ノ上部ヲ約四十五度前ニ傾ケ頭ヲ正シク上體ノ方向ニ保ツ外前條第一項ニ同シ
軍艦其ノ他ニ於テ御寫眞ヲ拜スルトキノ敬禮ハ前二項ノ規定ニ準ス
第二十七條 賢所參拜其ノ他拜神ノトキハ拜禮ヲ行フヘシ
拜禮ハ神靈ニ對シ最敬禮ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ行フ
參內又ハ參殿ノ際ハ昇殿ノトキヨリ賢所參拜ノ際ハ賢所正門ニ入リタルトキヨリ脫帽シ祭典ニ參列スルトキハ祭場ニ入リタルトキヨリ又ハ式ノ施行中脫帽スヘシ
第二十八條 軍人上官ノ居室ニ入ルトキハ其ノ席ヲ距ルコト適宜ノ所ニ於テ敬禮ヲ行フヘシ上官二人以上ナルトキハ先ツ最高級ノ人ニ敬禮シ次ニ他ノ一同ニ敬禮スヘシ但シ在室者ニ主客ノ別アルトキハ先ツ主タル者ニ對シ敬禮ヲ行フヘシ其ノ居室ヲ去ルトキ亦同シ
第二十九條 上官居室ニ來ルトキハ在室者ハ起立シテ敬禮ヲ行フヘシ其ノ居室ヲ去ルトキ亦同シ但シ上官ト應對スル者ヲ除クノ外一旦敬禮ヲ行ヒタル後著席スルコトヲ得
第三十條 同級者居室ニ來リ敬禮ヲ行フトキハ在室者ハ一旦起立シテ敬禮ヲ行フヲ例トシ下級者居室ニ來リ敬禮ヲ行フトキハ著席ノ儘答禮スルヲ例トス其ノ去ルトキ亦同シ
第三十一條 士官以上ノ者下士卒ノ居室ニ入ルトキハ脫帽セサルモ妨ナシ此ノ場合ニ於ケル答禮ハ脫帽セサルトキハ擧手注目トシ脫帽スルトキハ注目トス
第三十二條 士官以上ノ者下士卒ノ居室ニ來ルトキハ最初之ヲ認メタル者「敬禮」ト呼ヒ在室者ハ皆起立シテ敬禮ヲ行ヒ入室者ノ許可アリタル後原姿勢ニ復スヘシ但シ事務室等ニ於テハ入室者ハ本條ノ敬禮ヲ省略セシムルコトヲ得敎練授業又ハ作業中ナルトキハ敎官又ハ監督者ノミ敬禮ヲ行フヲ例トス
第三十三條 軍人室內ニ於テ上官ヨリ位記勳記功記勳章辭令書證書褒狀等ヲ受クルトキハ授與者ヲ距ルコト約三步ノ所ニ於テ敬禮ヲ行ヒタル後帽ヲ左脇ニ挾ミ適宜前進シ右手ヲ以テ之ヲ受ケ左手ヲ副ヘテ披見シ畢テ左手ニ移シ適宜退步シテ原位置ニ復シ帽ヲ右手ニ移シ再ヒ敬禮ヲ行ヒ退去スヘシ
第三十四條 軍人室內ニ於テ上官ヨリ書類其ノ他ノ物件ヲ受ケ又ハ之ヲ上官ニ呈スルトキハ前條ノ規定ニ準シ右手ヲ以テ之ヲ受ケ又ハ之ヲ呈スヘシ執銃スルトキハ左手ヲ以テス若受クル所ノ物件其ノ場ニ於テ披見ヲ要スルモノナルトキハ銃ヲ立テ體ニ托シ右臂ヲ以テ之ヲ支ヘ右手ヲ副ヘテ披見スヘシ返簡又ハ領證ヲ受クヘキトキハ適宜ノ位置ニ退キ之ヲ待ツヘシ
前項ノ場合ニ於テ執銃スルトキハ立銃ノ儘敬禮ヲ行フヲ例トス
第三十五條 軍人室內ニ於テ上官ヨリ命令諭吿等ヲ受ケ又ハ上官ニ陳述ヲ爲ストキハ第三十三條ノ規定ニ準ス
第三十六條 軍人室內ニ於テ公務ノ應對ヲ爲ストキハ下級者ハ起立シテ姿勢ヲ正スヘシ但シ上官ノ許可アリタルトキハ著席スルモ妨ナシ
第三十七條 軍人室內ニ入ルトキハ徐ニ戶ヲ敲キ在室者ノ應答ヲ得テ後入室スヘシ但シ士官室事務室等ニ於テハ便宜省略スルコトヲ得
第三十八條 宴會集會等總テ公會ニ於テ上官ト同席スルトキハ上官ニ先チテ椅子ニ倚リ食卓ニ就キ食卓ヲ離レ又ハ退去スルコトナキヲ禮トス
第二節 室外ノ敬禮
第三十九條 室外ト稱スルハ屋外、諸甲板、短艇內、砲臺、砲塔、通路、廊下等ヲ謂フ
第四十條 室外ノ敬禮ハ擧手注目トス
擧手注目ハ姿勢ヲ正シ右手ヲ擧ケ右臂ヲ右斜ニ右前腕及掌ヲ一線ニ保チ五指ヲ伸シテ之ヲ接シ掌ヲ左方ニ向ケ食指ノ第三關節ヲ帽ノ右前部又ハ庇ノ右緣ニ當テ頭ヲ向ケテ受禮者ノ目又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ注目ス但シ兩手ニ物件ヲ携帶シ擔荷シ其ノ他右手ヲ擧タルコト能ハサルトキハ其ノ儘頭ヲ受禮者又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ向ケテ注目シ體ノ上部ヲ少シク前ニ傾クヘシ
答禮ノ方法ハ前二項ニ同シ但シ必要ニ依リ頭ヲ向ケ注目シ體ノ上部ヲ少シク前ニ傾ケテ擧手注目ニ代フルコトヲ得
第四十一條 將校拔劒中ノ敬禮ハ天皇ニ對スルトキ又ハ特ニ規定アル場合ニハ劒ノ敬禮ヲ行ヒ其ノ他ノ場合ニハ肩劒ニテ姿勢ヲ正シ頭ヲ向ケテ受禮者又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ注目シ體ノ上部ヲ少シク前ニ傾クヘシ答禮亦同シ
兵曹長上等兵曹拔劒中ノ敬禮ハ將校ニ準ス
將校相當官兵曹長相當官又ハ上等兵曹ニ非サル准士官ハ劒ヲ以テスル敬禮ヲ行フコトナシ
第四十二條 下士卒銃ヲ携フルトキノ敬禮ハ天皇ニ對スルトキ又ハ拜神等ノ場合ニ於テハ著劒捧銃シテ注目又ハ目迎目送ヲ行ヒ上官ニ對スル場合ニ於テハ行進中ハ頭ヲ向ケテ注目シ停止中ハ准士官以上ニ對シテハ捧銃シテ注目又ハ目迎目送ヲ行ヒ其ノ他ノ者ニ對シテハ立銃シテ姿勢ヲ正スヘシ
目迎目送ハ敬禮中受禮者又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ對シ頭ヲ向ケ注目シ其ノ適宜ノ距離ヲ行進スル間之ヲ繼續スヘシ
捧銃ノ場合ニ於ケル目迎目送ハ銃ノ操作ヲ了リタル後直ニ之ヲ始メ立銃ト共ニ正面ニ復ス立銃又ハ單ニ姿勢ヲ正シテ行フ場合亦之ニ準ス
下士卒喇叭ヲ手ニスルトキハ其ノ管口ヲ股ニ當テ前三項ノ規定ニ準シ敬禮スヘシ
第四十三條 天皇ニ奏上スルトキハ玉座ヲ距ル約六步ノ所ニ於テ敬禮シ適宜ノ距離ニ進ミテ奏上シ之ヲ終リタルトキハ玉座ヲ距ル約六步ノ所迄退步シ敬禮ヲ行ヒ退去スヘシ
第四十四條 途上ニ於テ行幸ニ遇フトキハ前驅ノ稍前ヨリ道路ノ一側ニ停止乘馬ノトキハ其ノ儘、乘車ノトキハ下乘正面シ車駕約六步前ニ近ツクトキ敬禮ヲ行ヒ約六步過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
途上ニ於テ皇族ニ遇フトキハ鹵簿ヲ用井タルトキハ前項ノ例ニ依リ之ヲ用井サルトキハ上官ニ對スルト同樣ノ敬禮ヲ行フヘシ
第四十五條 軍人互ニ行遇ヒ又ハ近傍ヲ通過スルトキハ頭ヲ受禮者ニ向ケ敬禮ヲ行フヘシ答禮亦同シ
第四十六條 軍人停止シ在ルトキ上官其ノ近傍ヲ通過スルトキハ之ニ面シ起立シテ敬禮ヲ行フヘシ
第四十七條 軍人停止シ在ル上官ノ許ニ至ルトキハ其ノ上官ヲ距ルコト約六步ノ所ニ於テ停止シ敬禮ヲ行フヘシ
第四十八條 卒番兵ノ前ヲ通過スルトキハ之ニ對シ敬禮ヲ行フヘシ
第四十九條 軍人上官ノ引率スル軍隊ニ行遇ヒ又ハ其ノ近傍ヲ通過スルトキハ其ノ隊長ニ敬禮ヲ行フヘシ但シ現ニ服務中ノ儀仗隊ニ對シテハ敬禮ヲ行ハス
第五十條 軍人軍隊ヨリ敬禮ヲ受ケタルトキハ其ノ隊長ニ答禮スヘシ
第五十一條 軍人途上ニ於テ軍人ノ葬儀ニ遇フトキハ官職等級ノ如何ヲ問ハス其ノ柩ニ對シ敬禮ヲ行フヘシ
第五十二條 軍人乘車馬ニテ上官ニ遇フトキハ其ノ儘姿勢ヲ正シ敬禮ヲ行フヘシ但シ自轉車ニ乘リ在ルトキハ單ニ注目ヲ以テ敬禮ニ換フルコトヲ得
第五十三條 軍人室外ニ於テ上官ヨリ位記勳記功記勳章辭令書證書褒狀等ヲ受クルトキ、書類其ノ他ノ物件ヲ受ケ若ハ之ヲ呈スルトキ又ハ命令諭達等ヲ受ケ若ハ陳述ヲ爲ストキハ第四十七條ノ規定ニ依リ敬禮ヲ行フノ外其ノ動作ハ第三十三條乃至第三十五條ノ規定ニ準ス
第五十四條 軍人上官ト同行スルトキハ其ノ左側又ハ後方ニ就クヲ禮トス但シ嚮導者ハ此ノ限ニ在ラス
軍人舷梯ヲ昇ルトキハ上官ヲ先ニシ降ルトキハ下官ヲ先ニス短艇ヨリ陸岸ニ上ルトキ又ハ陸岸ヨリ短艇ニ降ルトキ亦同シ
第五十五條 敬禮ヲ行フヘキ者受禮者ト遠隔シ在ル場合ト雖其ノ上官タルコトヲ識別スルトキハ必ス敬禮ヲ行フヘシ
第三章 艦船ノ敬禮
第一節 軍艦ノ敬禮
第五十六條 定時ニ於テ軍艦旗ヲ揭揚降下スルトキハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 當直將校ハ艦橋ニ在リテ軍艦旗ニ面シテ敬禮ス
二 衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ後甲板ニ整列シ軍艦旗ニ面シテ捧銃シ喇叭軍樂隊在ルトキハ軍樂譜以下之ニ傚フ「君カ代」一囘ヲ吹奏ス
三 番兵ハ軍艦旗ニ面シテ捧銃ス
四 上甲板ニ在ル者ハ軍艦旗ニ面シテ敬禮ス
五 中甲板以下ニ在ル者ハ起立シ姿勢ヲ正ス
戰時若ハ演習中又ハ總員ヲ以テスル敎練作業等ノ場合ニ在リテハ前項ノ敬禮中衞兵ノ敬禮ハ掌信號兵ノミ整列シ喇叭「君カ代」ヲ吹奏シテ之ニ代フルコトヲ得
附近陸岸ニ在ル者軍艦旗ノ揭揚降下ヲ目擊スルトキハ之ニ面シテ停止シ敬禮ヲ行フヘシ
第五十七條 軍艦初テ軍艦旗ヲ揭揚スルトキハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 艦長副長及當直將校ハ艦橋ニ、其ノ他ノ高等武官ハ後甲板ニ序列シ軍艦旗ニ面シテ敬禮ス
二 衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ後甲板ニ於テ高等武官ノ前方ニ整列シ軍艦旗ニ面シテ捧銃シ喇叭「君カ代」一囘ヲ吹奏ス
三 番兵ハ軍艦旗ニ面シテ捧銃ス
四 准士官ハ高等武官ノ後方ニ整列シ軍艦旗ニ面シテ敬禮ス
五 下士卒ハ分隊每ニ分隊長ノ指揮下ニ上甲板ニ整列シテ軍艦旗ニ面シ分隊長ハ軍艦旗ニ面シテ敬禮ス
第五十八條 軍艦除籍セラレタルトキハ軍艦旗ヲ揭揚セサルモノハ一旦之ヲ揭揚シ前條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行ヒ軍艦旗ヲ降下スヘシ
第五十九條 軍樂隊ノ乘組ミタル帝國軍艦外國軍艦ト同所ニ在泊シ定時軍艦旗ヲ揭揚降下スルトキハ我國歌ヲ奏シタル後外國海軍指揮官ノ任官順序ニ依リ逐次其ノ國歌一囘宛ヲ奏スルヲ例トス但シ外國港灣ニ在泊スルトキハ當該國ノ國歌ヲ先ニスヘシ
第六十條 帝國軍艦外國軍艦ト同所ニ在泊シ定時ノ軍艦旗揭揚降下ニ際シ外國軍艦ニ於テ奏スル我國歌ヲ聞キ又ハ我軍艦ニ於テ外國ノ國歌ヲ奏スルトキハ上甲板ニ在ル者ハ起立シテ姿勢ヲ正スヘシ
第六十一條 船舶燈臺等ヨリ軍艦ニ對シ旗章ヲ降下シテ敬禮ヲ行フトキハ軍艦ハ軍艦旗ヲ半ハ降下シテ答禮ヲ行フヘシ
第六十二條 帝國軍艦ニ對シ外國軍艦ヨリ衞兵禮式又ハ奏樂等ヲ爲シテ敬意ヲ表スルトキハ之ニ對シ相當ノ答禮ヲ行フヘシ若事情我ヨリ先ニ衞兵禮式又ハ奏樂等ヲ行フヲ適當ト認ムルトキハ指揮官ハ適宜之ヲ行フコトヲ得
衞兵禮式ハ衞兵衞兵司令(伍長)之ヲ指揮ス後甲板又ハ適宜ノ場所ニ整列シ捧銃又ハ立銃シテ之ヲ行フ
第六十三條 天皇軍艦ニ臨御ノトキハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 司令長官司令官參謀長艦長及當直將校ハ舷門ニ、他ノ高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ奉迎ス
二 尉官二名舷梯側ニ在リテ奉迎シ兵曹長上等兵曹二名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹ク
三 衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ對舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「君カ代」一囘ヲ吹奏ス
四 番兵ハ捧銃ス
五 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
六 下士卒ハ舷側又ハ甲板中部ニ整列ス
七 艦長ハ乘御ノ短艇本艦ニ近接スルトキ祝聲「萬歲」三囘以下之ニ傚フヲ唱ヘシム
第六十四條 還御ノトキハ其ノ敬禮前條ノ規定ニ準ス但シ祝聲ハ乘御ノ短艇本艦ヲ離レ禮砲ヲ行フ前之ヲ唱ヘシム
第六十五條 軍艦乘御ノ艦船ト遇ヒ又ハ其ノ近傍ニ近ツクトキハ司令長官司令官參謀長艦長副長參謀及當直將校ハ艦橋ニ、其ノ他ノ高等武官及准士官ハ上甲板ニ在リテ敬禮ヲ行ヒ衞兵衞兵司令之ヲ指揮ス及番兵ハ捧銃シ喇叭「君カ代」ヲ吹奏シ下士卒ハ舷側ニ整列シ第六十三條ノ規定ニ準シ祝聲ヲ唱フヘシ
前項ノ敬禮ハ乘御ノ艦船本艦ノ右(左)四㸃ノ所ニ來レルトキ之ヲ始メ左(右)四㸃ノ所ニ至リテ之ヲ止ム但シ距離ノ遠近ニ應シ敬禮ノ始終㸃ヲ適宜變更スルコトヲ得
乘御ノ短艇屢軍艦ノ近傍ヲ通過スル場合ニハ該艦ニ於テハ衞兵衞兵司令之ヲ指揮ス及番兵ハ捧銃シ喇叭「君カ代」一囘ヲ吹奏シ敬禮ヲ行フノ外他ノ敬禮ヲ省略スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テハ軍艦ハ必要ニ應シ航路ヲ讓リ又ハ速力ヲ加減スヘシ
第六十六條 乘御ノ短艇ニ於テハ中佐又ハ少佐指揮ヲ掌ルヘシ
第六十七條 乘御ノ艦船ハ答禮ヲ行ハス
第六十八條 第三條第二項ノ皇族公式ニ非スシテ軍艦ニ來艦ノトキハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ退艦ノトキ亦同シ
一 司令長官司令官參謀長以上ハ旗艦ニ非サルトキハ奉迎セサルモ妨ナシ艦長及當直將校ハ舷門ニ、他ノ高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ奉迎ス
二 尉官二名舷梯側ニ在リテ奉迎シ兵曹長上等兵曹二名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹ク
三 衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ對舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「君カ代」一囘ヲ吹奏ス
四 番兵ハ捧銃ス
五 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
六 下士卒ハ甲板中部ニ整列ス
第六十九條 勅使來艦スルトキハ前條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ但シ將官タル勅使ニ對シテハ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏シ其ノ他ノ勅使ニ對シテハ號笛ヲ吹キ又ハ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
第七十條 上命ニ依リ差遣セラレタル侍從武官又ハ令旨ヲ奉シ來艦スル東宮武官等ニハ其ノ本官ニ相當スル敬禮ヲ行フノ外左ノ敬禮ヲ行フヘシ退艦ノトキ亦同シ
一 司令長官司令官參謀長以上ハ旗艦ナルトキニ限ル艦長及當直將校舷門ニ出迎ス
二 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列ス
三 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
前項ノ諸官屢軍艦ヲ出入スル場合ニハ其ノ最初來艦ノトキ及最後退艦ノトキヲ除クノ外前項各號ノ敬禮ヲ省略スルヲ例トス
第七十一條 第六十三條第六十四條及前三條ノ規定ハ官衙部隊學校等ニ之ヲ準用ス但シ陸上ニ在リテハ號笛ヲ吹クコトナシ
第七十二條 司令長官又ハ司令官ニ對シテハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 初テ其ノ旗艦ニ著任シ又ハ職ヲ解キ其ノ旗艦ヲ退クトキ
(一) 司令長官司令官參謀長艦長及當直將校舷門ニ迎送ス
(二) 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ迎送ス
(三) 上等兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(四) 衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ對舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏ス
(五) 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
(六) 下士卒ハ甲板中部ニ整列ス
二 旗章ヲ揭ケ其ノ旗艦ヲ出入スルトキ
(一) 參謀長艦長參謀(副官)及當直將校舷門ニ送迎ス
(二) 上等兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(三) 衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ對舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏ス
三 旗章ヲ揭ケス其ノ旗艦ヲ出入スルトキ
(一) 參謀長艦長參謀(副官)及當直將校舷門ニ送迎ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
檢閱ノ爲麾下軍艦ニ乘艦シ又ハ該艦ヲ退クトキノ敬禮ハ第一項第一號、公務ヲ帶ヒ麾下軍艦ニ乘艦シ又ハ該艦ヲ退クトキノ敬禮ハ第二號ニ準ス
第七十三條 海軍大臣、元帥タル海軍大將又ハ海軍軍令部長ニ對シテハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 旗章ヲ揭ケ來艦シ又ハ退艦スルトキ
前條第一項第一號ノ敬禮
二 旗章ヲ揭ケス來艦シ又ハ退艦スルトキ
前條第一項第一號(一)(三)及(四)ノ敬禮但シ司令長官司令官及參謀長ノ迎送ハ旗艦ナルトキニ限ル
特命檢閱使又ハ檢閱官檢閱ノ爲來艦シ又ハ退艦スルトキノ敬禮ハ前項第一號ニ準ス
第七十四條 前二條ノ規定ニ依リ敬禮ヲ行フ場合ヲ除クノ外將官又ハ司令官タル大佐ニ對シテハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ但シ司令長官司令官及參謀長ノ迎送ハ旗艦ナルトキニ限ル
一 旗章ヲ揭ケ來艦シ又ハ退艦スルトキ
第七十二條第一項第一號(一)(三)及(四)ノ敬禮
二 旗章ヲ揭ケス來艦シ又ハ退艦スルトキ
(一) 司令長官司令官以上ハ來艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル參謀長艦長及當直將校舷門ニ迎送ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
第七十五條 將官相當官來艦シ又ハ退艦スルトキハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ但シ司令長官司令官及參謀長ノ迎送ハ旗艦ナルトキニ限ル
一 司令長官司令官參謀長以上ハ來艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル艦長及當直將校舷門ニ迎送ス
二 水兵二名舷梯側ニ立ツ
將官相當官本艦ヲ出入スルトキハ當直將校舷門ニ迎送シ水兵二名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ
第七十六條 天皇臨御ノ軍艦ニ於テハ前八條ノ敬禮ハ之ヲ行ハス
第六十八條ノ場合其ノ他特別ノ場合ニ於テ前四條ノ諸官陸續出入スルトキハ其ノ主タル者ニ對スル敬禮ヲ除クノ外其ノ他ノ敬禮ハ適宜之ヲ省略スルコトヲ得
第七十七條 艦隊參謀長ニ對シテハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 初テ旗艦ニ著任スルトキ又ハ職ヲ解キ旗艦ヲ退クトキ
(一) 參謀長艦長及當直將校舷門ニ迎送ス
(二) 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ迎送ス
(三) 上等兵曹大佐參謀長ナルトキハ兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(四) 衞兵衞兵司令(大佐參謀長ノトキハ伍長)之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ對舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏ス大佐參謀長ノトキハ喇叭ヲ吹奏セス
二 旗艦ヲ出入スルトキ
(一) 參謀(副官)及當直將校舷門ニ送迎ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
第七十八條 艦長ニ對シテハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 初テ其ノ艦ニ著任スルトキ又ハ職ヲ解キ其ノ艦ヲ退クトキ
(一) 艦長及當直將校ハ舷門ニ迎送ス
(二) 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ迎送ス
(三) 上等兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(四) 衞兵衞兵伍長之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ對舷ノ後甲板ニ整列捧銃ス
(五) 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
(六) 下士卒ハ甲板中部ニ整列ス
二 本艦ヲ出入スルトキ
(一) 副長及當直將校舷門ニ送迎ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
第七十九條 副長本艦ヲ出入スルトキハ當直將校舷門ニ送迎シ兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ艦長不在ノトキニ限ル水兵一名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ
第八十條 佐尉官同相當官本艦ヲ出入スルトキハ副直將校舷門ニ送迎シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ
第八十一條 部隊長學校長等初テ著任スルトキ又ハ職ヲ解キ退去スルトキハ第七十八條第一號ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ但シ號笛ヲ吹クコトナク又衞兵ノ敬禮ハ本編第五章ニ依ルヘシ
第八十二條 旗章ヲ揭ケ來艦シ又ハ退艦スル他艦長ニ對シテハ艦長旗艦ニ在リテハ參謀一名ヲ加フ及當直將校ハ舷門ニ迎送シ衞兵衞兵伍長之ヲ指揮スハ捧銃シ兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ驅逐隊艇隊又ハ潛水艇隊ノ司令旗章ヲ揭ケ來艦シ又ハ退艦スルトキ亦同シ
司令長官司令官ノ旗艦ニ在リテハ其ノ麾下ノ艦長又ハ司令ノ出入ニ對シ前項衞兵ノ敬禮ヲ省略スルヲ例トス
第八十三條 佐尉官同相當官來艦シ又ハ退艦スルトキハ艦長及當直將校以上ハ來艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル(副直將校)舷門ニ迎送シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ
外國海軍佐尉官ニ對シテハ前項ノ敬禮ノ外兵曹一名舷門ニ在リテ號笛ヲ吹キ其ノ艦長又ハ司令ナルトキハ衞兵衞兵伍長之ヲ指揮スハ捧銃スヘシ
第八十四條 外國駐箚ノ我大使又ハ公使公式訪問ノ爲來艦シ又ハ退艦スルトキハ將官ニ準シ第七十二條第一項第一號(一)乃至(四)ノ敬禮又ハ(一)(三)及(四)ノ敬禮ヲ行フヘシ但シ當該官ノ駐箚國內ニ限ルヲ例トス
我大使又ハ公使軍艦ニテ赴任スルトキハ其ノ最後退艦ノトキ歸朝スルトキハ最初乘艦ノトキ前項ト同一ノ敬禮ヲ行フ
第八十五條 外國駐在ノ我領事官同一地ニ二人以上ノ領事官在勤スルトキハ首席領事官ニ限ル公式訪問ノ爲來艦シ又ハ退艦スルトキハ艦長ニ準シ第八十二條ノ敬禮ヲ行フヘシ但シ當該官ノ管轄區域內ニ限ルヲ例トス
第八十六條 勅任文官公式訪問ノ爲來艦シ又ハ退艦スルトキハ司令長官司令官參謀長以上ハ來艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル艦長及當直將校舷門ニ迎送シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ
第八十七條 奏任文官公式訪問ノ爲來艦シ又ハ退艦スルトキハ艦長及當直將校以上ハ來艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル(副直將校)舷門ニ迎送シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬禮ヲ行フヘシ
第八十八條 軍艦ト軍艦又ハ軍艦ト將旗若ハ代將旗ヲ揭ケタル短艇相遇ヒ又ハ近傍ヲ通過スルトキハ左ノ敬禮ヲ行フヘシ
一 將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル軍艦ニ對シテハ他ノ軍艦ハ先ツ喇叭「氣ヲ著ケ」一囘ヲ吹キ上甲板ニ在ル者ハ該旗艦ニ面シテ姿勢ヲ正シ衞兵衞兵司令之ヲ指揮スハ捧銃シ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏シ准士官以上ハ敬禮ヲ行フヘシ
二 將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル軍艦前號ノ敬禮ヲ受ケタルトキハ喇叭「氣ヲ著ケ」一囘ヲ吹キ上甲板ニ在ル者ハ敬禮ヲ行ヒタル軍艦ニ面シ姿勢ヲ正スヘシ
三 將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル軍艦ト他ノ將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル軍艦トハ互ニ第一號ノ敬禮ヲ行フヘシ此ノ場合ニ於テハ後任將校ノ旗艦ヨリ先ニ之ヲ行フモノトス
四 將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル短艇ニ對シテハ軍艦ハ第一號ノ敬禮ヲ行フヘシ但シ將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル軍艦ハ當該將校短艇ノ當該將校ヨリ後任ナルトキニ限ル
五 軍艦ト軍艦トハ互ニ喇叭「氣ヲ著ケ」一囘ヲ吹キ上甲板ニ在ル者ハ姿勢ヲ正スヘシ此ノ場合ニ於テハ後任將校ノ乘艦ヨリ先ニ之ヲ行フ
海軍大臣旗ヲ揭ケタル艦船ニ對シテハ將旗ヲ揭ケタル軍艦又ハ短艇ニ對スルト同樣ノ敬禮ヲ行フヘシ答禮亦之ニ準ス
第八十九條 天皇乘御ノ艦船現在スル場所ニ於テハ前條ノ敬禮ハ之ヲ行ハス
前條ノ敬禮ハ編隊ニテ航行シ又ハ出港入港スルトキハ其ノ首席指揮官ノ乘艦ノミ之ヲ行ヒ其ノ他ノ軍艦ハ之ヲ行ハサルヲ例トシ編隊ニテ航行シ又ハ出港入港スル軍艦ニ對シテハ單ニ其ノ首席指揮官ノ乘艦ニ對シテノミ敬禮ヲ行フヲ例トス
第九十條 軍艦ハ第六十三條乃至第六十五條ノ場合ノ外左ノ場合ニ於テ首席指揮官ノ乘艦ニ傚ヒ登舷禮式總員舷側又ハ上甲板ニ整列スヲ行フヘシ
一 戰時若ハ事變ニ際シ又ハ遠洋航海等ノ爲出港ノ艦船ヲ見送ルトキ其ノ他必要ト認ムルトキ
二 登舷禮式ヲ受ケタルトキ
送別又ハ之ニ類スル場合ニ於テ登舷禮式ヲ行フトキハ祝聲ヲ唱ヘ又ハ帽若ハ布片ヲ振リ別意ヲ表スルコトヲ得
第九十一條 軍艦戰時又ハ演習中ハ天皇若ハ外國ノ軍艦ニ對スルトキ又ハ特別ノ場合ヲ除クノ外左ノ敬禮ヲ行ハサルヲ例トス
一 第六十八條乃至第七十三條、第七十七條及第七十八條ノ敬禮中高等武官ノ序列及准士官下士卒ノ整列
二 衞兵ノ敬禮
三 第八十八條及第八十九條ノ敬禮
第九十二條 軍艦及短艇以外ノ艦船ニ付テハ軍艦ニ關スル規定ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ艦長ニ對スル敬禮ハ驅逐艦水雷艇又ハ潛水艇ニ付テハ其ノ隊ノ司令ニ對シテノミ之ヲ行フ
第九十三條 前條ノ場合ニ於テ驅逐艦水雷艇又ハ潛水艇天皇乘御ノ艦船ト遇ヒ又ハ其ノ近傍ニ近ツクトキハ總員上甲板ニ整列シ准士官以上ハ敬禮ヲ行ヒ海軍大臣旗將旗又ハ代將旗ヲ揭ケタル艦船ト遇ヒ又ハ其ノ近傍ニ近ツクトキハ上甲板ニ在ル者ハ姿勢ヲ正シ准士官以上ハ敬禮ヲ行フヘシ
第二節 短艇ノ敬禮
第九十四條 短艇櫓艇ヲ含ムハ乘艇者ノ區分ニ從ヒ左表ニ依リ敬禮ヲ行フヘシ
敬禮者
受禮者
海軍大臣、海軍大將以下准士官以上
下士卒短艇指揮乘艇シ在ルトキト雖本欄ニ依ル
天皇
短艇
橈漕中  橈ヲ立ツ
帆走中  總帆ヲ下ス
汽走中  運轉ヲ停止ス
短艇
橈漕中
帆走中
汽走中
}同上
乘員
短艇指揮  起立敬禮
短艇長  起立敬禮
艇員  座シタル儘姿勢ヲ正シ注目ス
艇員外下士卒  起立敬禮
准士官以上  起立敬禮
乘員
短艇指揮
短艇長
艇員
艇員外下士卒
}同上
海軍大臣、海軍大將以下准士官以上
短艇
橈漕中
帆走中
汽走中
}現狀ノ儘
短艇
橈漕中  橈ヲ上ク
帆走中  現狀ノ儘
汽走中  現狀ノ儘
}但シ海軍大臣旗將旗又ハ代將旗ニ對シテハ橈ヲ立テ大帆ノシートヲ伸シ又ハ機械ノ速力ヲ緩ム
乘員
短艇指揮  起立敬禮
短艇長  起立敬禮
艇員  其ノ儘
艇員外下士卒  座シタル儘姿勢ヲ正シ注目ス
准士官以上  座シタル儘敬禮
乘員
短艇指揮
短艇長
艇員
艇員外下士卒
}同上
下士卒短艇指揮乘艇シ在ルトキト雖本項ニ依ル
短艇
短艇
橈漕中
帆走中
汽走中
}現狀ノ儘
乘員
乘員
短艇長ノミ座シタル儘敬禮
備考
一 短艇天皇乘御ノ短艇ニ遇フトキハ該艇ヲ距ルコト約三十米ノ所ニ於テ敬禮ヲ行ヒ約十米過去ル迄其ノ姿勢ヲ保チ其ノ他ノ短艇ニ遇フトキハ約十五米ノ所ニ於テ之ヲ行ヒ過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ但シ進行ヲ止メ又ハ速力ヲ緩ムルヲ危險ト認メタルトキハ進行ヲ繼續スルコトヲ得
二 櫓艇ハ本表中短艇ノ橈ヲ立テ又ハ上クヘキ場合ニハ操櫓ヲ止ムヘシ但シ風波アルトキ又ハ急速ヲ要スルトキハ注目ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
三 短艇天幕ヲ張リ起立シ能ハサルトキ又ハクラツチヲ備ヘ若ハ橈索ヲ取付ケ在リテ橈ヲ立ツルコト能ハサルトキハ本表中橈ヲ立ツヘキ場合ニ橈ヲ上ケ起立ノ場合ニ坐シタル儘姿勢ヲ正シ注目ス櫓艇ニ在リテ多人數乘艇スルトキハ首席者ノミ起立敬禮ス短艇長橈手又ハ櫓手ヲ兼ヌルトキハ特ニ短艇長ノ行フヘキ敬禮ヲ行フコトナシ
四 短艇停止間ノ敬禮ハ本表ニ準ス但シ橈艇ニシテ橈ヲ出シ在ルトキハ橈漕中橈ヲ立ツヘキ場合ニ之ヲ立ツヘシ
五 短艇他船ニ曳カレ又ハ曳船ヲ爲シ若ハ積荷ヲ爲シタルトキノ敬禮ハ本表ニ準ス但シ速力ヲ變スルコトナク橈又ハ帆ヲ以テスル敬禮ヲ行ハス
六 短艇指揮ハ相互間ノ敬禮及後任者ノ敬禮ニ對スル答禮ニハ起立セサルモノトス
七 機働艇ノ艇員ハ敬禮ノ場合ニハ定所ニ起立シ在ルヲ例トス
八 短艇葬儀ノ列中ニ在ルトキハ天皇ニ遇ヒタル場合ヲ除クノ外敬禮ヲ行ハス又短艇隊運動、軍裝艇ノ敎練及競技中ノ短艇ハ敬禮ヲ行ハサルヲ例トス
九 短艇ハ上官ノ乘艇ヲ追越サス又ハ之ニ航路ヲ讓ルヲ禮トス但シ急ヲ要スルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九十五條 短艇乘御ノ軍艦ト遇ヒ若ハ其ノ近傍ニ近ツクトキ、附近陸岸ニ於ケル車駕ニ遇フトキハ前條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ但シ帆走中ハ大帆ノ「シート」ヲ伸スヘシ
短艇定時軍艦旗ノ揭揚降下ヲ目擊スルトキ亦前項ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
短艇海軍大臣旗將旗又ハ代將旗ヲ揭クル軍艦ト遇ヒ若ハ其ノ近傍ニ近ツクトキ又ハ他ノ敬禮スヘキ人ノ近傍ニ近ツクトキ亦前條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
第九十六條 守艇員ハ准士官以上ニ對シ起立シテ天幕ヲ張リタルトキハ座シタル儘敬禮ヲ行フヘシ
守艇員ハ本艦ニ於テ「氣ヲ著ケ」ノ號音アルトキハ起立シテ姿勢ヲ正スヘシ
第九十七條 禮砲ヲ受クル者ノ乘艇ハ禮砲施行間進行ヲ停止スヘシ此ノ場合ニ於テハ橈艇ニ在リテハ禮砲ヲ始ムルト同時ニ橈ヲ上ケ終ルト同時ニ進行ヲ始ムルヲ例トス
天皇乘御ノ短艇ハ禮砲ヲ受クル間ト雖進行ヲ停止スルコトナシ
第四章 軍隊ノ敬禮
第九十八條 軍隊ノ敬禮ハ獨立スル分隊、小隊又ハ中隊ニ在リテハ各隊每ニ、大隊又ハ大隊以上ニ在リテハ停止間ハ大隊又ハ中隊每ニ、行進間ハ中隊每ニ之ヲ行フヲ例トス
軍隊敬禮ヲ爲スニハ停止間ニ在リテハ目迎目送ヲ行ヒ行進間ニ在リテハ步調ヲ執リ「頭右(左)」ノ號令ニテ受禮者又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ注目シ「直レ」ノ號令ニテ頭ヲ正面ニ復ス
前項ノ目迎目送ハ第四十二條第二項乃至第四項ノ規定ニ準シ「捧ケ銃」又ハ「頭右(左)」ノ號令ニテ之ヲ始メ「立テ銃」又ハ「直レ」ノ號令ニテ正面ニ復ス
位置ノ關係ニ依リ目迎目送ヲ爲スコト能ハサルトキハ頭ヲ受禮者又ハ敬禮ヲ受クヘキモノニ向ケ注目ヲ爲スヘシ
第九十九條 天皇ニ對スル軍隊ノ敬禮ハ停止間ニ在リテハ車駕ノ通路ニ正面シ砲隊縱隊ニ在ルトキ止ムヲ得サレハ其ノ儘行進間ニ在リテハ道路ノ一側ニ沿テ停止正面シ著劒捧銃ヲ行ヒ砲隊員ハ姿勢ヲ正ス拔劒シ在ル者ハ劒ノ敬禮、其ノ他ノ者ハ擧手注目ノ敬禮ヲ爲シ喇叭「君カ代」ヲ吹奏ス
前項ノ敬禮ハ車駕隊列ヨリ約三十步ノ所ニ來ルトキ之ヲ始メ隊列ヲ距ルコト約十五步ノ所ニ至ルマテ其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
汽車ニテ通御ノ際亦前項ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
敎練間臨御アリタルトキハ其ノ場ニ在ル最高級ノ將校ハ喇叭「氣ヲ著ケ」ヲ吹奏セシメ各隊敎練ヲ止メ其ノ位置ニ在リテ敬禮ヲ行ヒ該將校ハ車駕ノ許ニ至リ敎練ノ次第ヲ奏上ス此ノ場合ニ於テハ勅命アルカ又ハ車駕其ノ場ヲ去ルニ非サレハ敎練ヲ始ムヘカラス車駕其ノ場ヲ去ルニ方リテハ再ヒ敬禮ヲ行フヘシ
前項ノ場合ニ於テ軍隊休憩中ナルトキハ先ツ喇叭「氣ヲ著ケ」ヲ吹キ整列セシムヘシ
第百條 海軍大臣、將官又ハ司令官タル大佐ニ對スル軍隊ノ敬禮ハ停止間ニ在リテハ之ニ正面シ立銃ノ儘隊長下士以下ナルトキハ隊長ノミ捧銃ス行進間ニ在リテハ行進ノ儘敬禮ヲ爲シ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏スルノ外前第一項ノ規定ニ準シテ之ヲ行フ
前項ノ敬禮ハ受禮者隊列ヨリ約六步ノ所ニ來ルトキ之ヲ始メ隊列ヲ過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
第百一條 前條以外ノ軍人ニ對スル軍隊ノ敬禮ハ受禮者隊長ヨリ上級者ナルトキニ限リ前條ノ規定ニ準シ之ヲ行フ但シ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
前項ノ場合ニ於テ受禮者相當官ナルトキハ隊長ノミ敬禮スヘシ下士卒ノ引率スル軍隊下士卒ニ對スルトキ亦同シ但シ相當官又ハ兵曹長以下ノ引率スル軍隊該軍隊ト同系ノ准士官以上ノ上官ニ對スルトキハ前項ノ規定ニ依ル
第百二條 勅使ニ對スル軍隊ノ敬禮ハ第百條ノ規定ニ準シ之ヲ行フ但シ將官タル勅使ニ對スル場合ヲ除クノ外喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
第百三條 他ノ軍隊ニ對スル軍隊ノ敬禮ハ第百條ノ規定ニ準シ之ヲ行フ但シ喇叭ハ「皇御國」一囘ヲ吹奏スルヲ例トス
前項ノ敬禮ハ隊長ノ等級下ナル方先ニ之ヲ行ヒ同級ナルトキハ互ニ之ヲ行フヘシ但シ現ニ服務中ノ儀仗隊ニ對シテハ敬禮ヲ行ハス
上等兵曹以上ノ引率スル軍隊下士卒ノ引率スル軍隊ニ對シテハ隊長ノミ答禮ヲ行フ
第百四條 軍隊整列シタル衞兵ノ前ヲ通過スルトキハ軍隊ニ對スルト同一ノ敬禮ヲ行フ但シ下士卒ノ指揮スル衞兵ニ對シテハ隊長ノミ答禮ヲ行フ
第百五條 軍隊儀仗隊ヲ附シタル軍人ノ葬儀ニ遇フトキハ第百條ノ規定ニ準シ柩ニ對シ敬禮ヲ行フヘシ但シ死者隊長ヨリ下級ナルトキハ隊長ノミ敬禮スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
第百六條 軍隊拜神ノ禮ハ神前ニ整列シ天皇ニ對スルト同一ノ敬禮ヲ行フ
但シ喇叭ハ「國ノ鎭メ」靖國神社參拜其ノ他招魂祭ニ於ケル拜禮ニハ「水漬ク屍」一囘ヲ吹奏ス
第百七條 儀式祭典ノ爲其ノ場所ニ整列中ノ軍隊ハ該式典ノ爲ニスルノ外天皇皇族又ハ勅使ニ對シ敬禮ヲ行フ
前項皇族ニ對スル敬禮ハ公式ニ非サルトキト雖第三條第二項ノ規定ニ準ス
第百八條 武裝セサル軍隊ノ敬禮ハ武裝シタル軍隊ノ敬禮ニ準ス但シ隊長ノ敬禮ハ擧手注目トシ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
武裝シタル軍隊武裝セサル軍隊ニ對スルトキ亦前項ニ同シ但シ隊長ハ劒ノ敬禮ヲ行フ
相當官及水兵部以外ノ下士卒ノ引率スル軍隊ノ敬禮ハ武裝セサル軍隊ノ敬禮ニ同シ
第百九條 軍隊途步行進間ニ在リテハ天皇ニ對スル場合ヲ除クノ外軍隊ノ敬禮ヲ行ハス隊長ノミ敬禮ヲ行フヲ例トス但シ他ノ軍隊衞兵其ノ他敬意ヲ表スヘキ人ニ遇フトキハ軍歌喫煙等ヲ止メ靜肅ニ行進スヘシ
第百十條 軍隊行軍又ハ敎練中隊列ヲ解キ休憩シ在ルトキハ敬禮ヲ行ハサルヲ例トス
第百十一條 野外ニ於テ演習實施中ハ軍隊ノ敬禮ハ之ヲ行ハサルヲ例トス
第百十二條 軍樂隊ノ敬禮ハ左ノ各號ニ依ル
一 奏樂ヲ爲シ在ルトキハ敬禮ヲ行ハス但シ行進間ハ軍樂隊長ノミ劒ノ敬禮ニ準シ指揮杖ヲ以テ敬禮ヲ行フ
二 奏樂ヲ爲ササルトキハ武裝セサル軍隊ト同一ノ敬禮ヲ行フ
第五章 衞兵及番兵ノ敬禮
第百十三條 衞兵ノ敬禮ハ軍隊ノ敬禮ニ準ス
第百十四條 衞兵ハ天皇ニ對シテハ門外又ハ衞舍前ニ整列シ第九十九條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
第百十五條 衞兵ハ海軍大臣公務ヲ帶ヒ、特命檢閱使檢閱ノ爲、將官若ハ司令官タル大佐著任、解職若ハ檢閱巡視ノ爲又ハ將官公務ヲ帶ヒ豫報シテ其ノ所在ノ門ヲ出入スルトキハ門外又ハ衞舍前ニ整列シ第百條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
第百十六條 衞兵ハ其ノ所在ノ門ヲ出入スル軍隊ニ對シテハ門外又ハ衞舍前ニ整列シ第百三條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ但シ現ニ服務中ノ儀仗隊、下士卒ノ引率スル軍隊又ハ武裝セサル軍隊ニ對シテハ敬禮ノ爲整列スルコトナシ
第百十七條 衞兵所在ノ門ヲ出入スル准士官以上ニ對シテハ衞兵中最初ニ之ヲ認メタル者「敬禮」ト呼ヒ現在スル者起立シ姿勢ヲ正スヘシ前條但書ノ軍隊ニ對シ亦同シ
第百十八條 儀仗隊ヲ附シタル軍人ノ柩ニ對シテハ衞兵ハ門外又ハ衞舍前ニ整列シ第百五條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
第百十九條 番兵ノ敬禮ハ其ノ定位置ニ立チ受禮者約六步前ニ來ルトキ之ヲ始メ目迎目送ヲ行ヒ六步過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
第百二十條 番兵ハ天皇ニ對シテハ捧銃陸上ニ在リテハ著劒捧銃ノ敬禮ヲ行ヒ准士官以上ニ對シテハ捧銃シ下士ニ對シテハ立銃シテ姿勢ヲ正シ敬禮ヲ行ヒ卒ヨリ敬禮ヲ受クルトキハ立銃シテ姿勢ヲ正シ答禮ヲ行フヘシ
第百二十一條 番兵ハ軍艦驅逐艦水雷艇又ハ潛水艇ニ對シテハ捧銃ノ敬禮ヲ行ヒ軍隊ニ對シテハ立銃シテ姿勢ヲ正シ其ノ隊長ニ對シテハ前條ノ規定ニ準シ官等ニ相當スル敬禮ヲ行フヘシ
第百二十二條 番兵ハ軍人ノ柩ニ對シテハ其ノ官職等級ノ如何ヲ問ハス捧銃ノ敬禮ヲ行フヘシ
第百二十三條 番兵ハ艦船部隊等ノ門ヲ出入スル高等文官ニ對シテハ捧銃ノ敬禮ヲ行フ但シ受禮者ノ身分ヲ知リタルトキニ限ル
第百二十四條 番兵銃ヲ携ヘサルトキハ擧手注目ノ敬禮ヲ行フヘシ
第百二十五條 番兵ハ夜間ト雖受禮者ヲ認識シ得ルトキハ之ニ對シ敬禮ヲ行フヘシ
第百二十六條 軍艦ニ於ケル衞兵ノ敬禮ハ第三章ノ定ムル所ニ依ル
第三編 儀式
第一章 儀仗兵
第百二十七條 儀仗トシテ天皇ニ供スル軍隊ヲ儀仗兵ト稱ス特命檢閱使鎭守府司令長官要港部司令官等ニ供スルモノ亦同シ
第百二十八條 儀仗兵ヲ分テ儀仗隊及儀仗衞兵トス
儀仗隊ハ行在所官廳旅館停車場波止場等ノ間途上ニ整列シ儀仗衞兵ハ行在所又ハ旅館ノ護衞ニ任ス
第百二十九條 儀仗隊ハ左ニ揭クル場合ニ之ヲ供ス
一 天皇艦隊軍隊ノ所在地ニ著御發御ノトキ
二 特命檢閱使其ノ檢閱スヘキ艦隊軍隊ノ所在地ニ著發ノトキ
三 鎭守府司令長官又ハ要港部司令官初テ著任シ又ハ解職出發ノトキ
四 其ノ他特ニ命令アルトキ
第百三十條 儀仗衞兵ハ天皇艦隊軍隊ノ所在地ニ滯御ノ間又ハ特ニ命令アルトキ之ヲ供ス
第百三十一條 儀仗兵ハ晝夜ノ別ナク何レノ時ト雖之ヲ供ス
第百三十二條 儀仗兵ノ敬禮ハ儀仗隊ニ在リテハ軍隊、儀仗衞兵ニ在リテハ衞兵ノ敬禮法ニ依ル但シ天皇及儀仗兵ヲ供セラルル當該者ニ對シテハ夜間ト雖敬禮ヲ行フ
第百三十三條 服務中ノ儀仗兵ハ天皇ニ供スル場合ニ於テハ天皇ニ對シテノミ敬禮ヲ行ヒ其ノ他ノ場合ニ於テハ之ヲ供セラルル當該者ニ對スルノ外天皇皇族又ハ勅使ニ對シ敬禮ヲ行フ
第百七條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百三十四條 儀仗兵ノ編制ハ左ノ各號ニ依ル但シ人員此ノ編制ニ充タサルトキハ適宜之ヲ定ムルコトヲ得
一 天皇ニ供スル儀仗隊ハ一大隊トシ大佐之ヲ指揮ス
二 特命檢閱使又ハ鎭守府司令長官ニ供スル儀仗隊ハ一中隊トス
三 要港部司令官ニ供スル儀仗隊ハ一中隊二小隊ヲ以テ編制ストス
第百二十九條第四號ノ場合ニ於ケル儀仗隊ノ編制ハ特ニ之ヲ定ム
儀仗衞兵ノ人員ハ首席指揮官適宜之ヲ定ム
第百三十五條 外國ノ艦隊司令長官又ハ獨立艦隊司令官軍艦ニテ軍港又ハ要港ニ入港シ公式ニ我司令長官又ハ司令官ヲ訪問スルトキハ一中隊以內ノ儀仗隊ヲ供スルコトヲ得
第百三十六條 儀仗隊ニハ軍樂隊ヲ附スルヲ例トス
第百三十七條 海軍葬儀ニ列スル儀仗隊ニ關シテハ本令ニ定ムルモノノ外別ニ定ムル所ニ依ル
第二章 遙拜式
第百三十八條 左ニ揭クル祝祭日等其ノ他特ニ命令アル場合ニハ艦船部隊學校等ニ於テ遙拜式ヲ行フ但シ東京ニ在リテハ生徒下士卒ノミ之ヲ行フ
一月一日
元始祭
紀元節
春季皇靈祭
神武天皇祭
明治天皇祭
秋季皇靈祭
神嘗祭
天長節祝日
新嘗祭
靖國神社大祭
第百三十九條 一月一日紀元節及天長節祝日ニハ艦船ニ於テハ第五十七條ノ規定ニ準シ總員整列シテ宮城ノ方向ニ面シ敬禮ヲ行ヒ畢リテ御寫眞ヲ拜スヘシ部隊學校亦之ニ準ス地方官衙ニ在リテハ御寫眞ノミヲ拜スヘシ
第百四十條 前條以外ノ祝祭日等ニハ艦船部隊學校ニ於テハ御寫眞ヲ拜セサル外前條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ但シ喇叭ハ「國ノ鎭メ」靖國神社大祭ニハ喇叭「水漬ク屍」一囘ヲ吹奏ス
第三章 迎送式及伺候式
第百四十一條 天皇軍隊艦隊ノ所在地ニ著御發御ノトキハ迎送式及伺候式ヲ行フ特命檢閱使其ノ檢閱スヘキ軍隊艦隊ノ所在地ニ著發ノトキ又ハ司令長官若ハ司令官初テ著任シ若ハ職ヲ解キ退去スルトキ亦同シ但シ司令官ニ對スル迎送式ハ要港部司令官又ハ獨立艦隊司令官ニ對シテノミ之ヲ行フ
第百四十二條 迎送式ハ左ノ各號ニ依リ之ヲ行フヘシ但シ迎送者ハ第一號ノ場合ニ於テハ天皇ニ對シテノミ敬禮ヲ行ヒ其ノ他ノ場合ニ於テハ之ヲ受クル者ニ對スルノ外第百七條第二項ノ規定ニ準シ天皇皇族又ハ勅使ニ對シ敬禮ヲ行フ
一 天皇ニ對シテハ所在准士官以上及約半數ノ下士卒武裝ヲ爲サス道路ノ側方ニ整列シテ奉迎奉送ス
二 特命檢閱使ニ對シテハ所在准士官以上適宜ノ場所ニ整列シテ迎送ス
三 鎭守府司令長官又ハ要港部司令官ニ對シテハ所在麾下准士官以上及約半數ノ下士卒第一號ニ準シ迎送ス
四 艦隊司令長官又ハ司令官ニ對シテハ其ノ旗艦以外ノ麾下ノ各艦長及各艦士官室士官、士官次室士官、准士官總代各一名其ノ旗艦ニ參集シ對舷ニ整列シテ第七十二條第一項第一號ノ諸員ト共ニ迎送ス
海路ニ於テハ前項各號ノ外艦艇若干隻ヲ港外ニ派遣シテ迎送セシムルコトヲ得
第百四十三條 伺候式ハ左ノ各號ニ依リ之ヲ行フヘシ
一 天皇ニ對シテハ所在士官以上行在所又ハ乘御ノ艦船ニ奉伺ス
二 特命檢閱使ニ對シテハ所在士官以上艦船官廳又ハ旅館ニ伺候ス
三 司令長官又ハ司令官ニ對シテハ所在麾下士官以上旗艦官廳又ハ旅館ニ伺候ス
第百四十四條 迎送式及伺候式ハ天皇ニ對スル場合ヲ除クノ外晝間之ヲ行フヲ例トス
第百四十五條 伺候式ハ之ヲ受クル者ノ著後又ハ出發前二十四時間以內ニ之ヲ行フヲ例トス
第百四十六條 天皇ニ奉伺スルトキハ拜謁ヲ賜ハル場合ヲ除クノ外掛官ノ指定ニ從ヒ署名簿ニ自己ノ官爵氏名ヲ書シ退出スヘシ
特命檢閱使司令長官又ハ司令官ノ艦船官廳又ハ旅館ニ伺候スルトキハ對謁スルヲ例トス但シ受禮者之ヲ辭スルトキハ官職氏名ヲ記シタル名刺ヲ出シ其ノ意ヲ通シ退去スヘシ
第百四十七條 對謁ノ場合ニ於テハ特ニ對話陳述ヲ要スルニ非サレハ敬禮ヲ行ヒタル後直ニ退去スヘシ
第四章 觀兵式
第百四十八條 觀兵式ハ特命檢閱使檢閱ノ爲又ハ司令長官若ハ司令官麾下陸戰隊ノ軍容ヲ閱スル爲其ノ他特ニ命令アルトキ之ヲ行フ
觀兵式ヲ閱スル將校ヲ觀閱官ト稱ス
第百四十九條 觀閱官式場ニ來ル稍前ニ於テ陸戰隊指揮官ハ喇叭「氣ヲ著ケ」ヲ吹奏セシメ大隊長ハ著劒ノ號令ヲ下ス
第百五十條 觀閱官臨場スルトキハ陸戰隊指揮官之ヲ迎ヘテ劒ノ敬禮ヲ行ヒ喇叭「海行カハ」一囘ヲ吹奏セシメ當日出場シタル將校以下ノ總員數ヲ申吿ス
第百五十一條 觀閱官閱兵中及退場ノ際ハ諸隊ハ第百條ノ規定ニ準シ敬禮ヲ行フヘシ
第五章 觀艦式
第百五十二條 觀艦式ハ國家ノ大典ニ際シ又ハ大演習其ノ他例年秋季ニ於テ之ヲ行フヲ例トス
觀艦式ノ擧行ハ勅旨ニ依ル
第百五十三條 親閱ノ當日ハ軍艦ハ滿艦飾ヲ、驅逐艦水雷艇及潛水艇ハ艦飾ヲ行ヒ夜間ハ軍艦ニ限リ電燈艦飾ヲ行フヲ例トス
附 則
本令ハ大正三年三月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕海軍礼式令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年二月十日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
海軍大臣 男爵 斎藤実
勅令第十五号
海軍礼式令
目次
第一編
総則
第二編
敬礼
第一章
通則
第二章
各個ノ敬礼
第一節
室内ノ敬礼
第二節
室外ノ敬礼
第三章
艦船ノ敬礼
第一節
軍艦ノ敬礼
第二節
短艇ノ敬礼
第四章
軍隊ノ敬礼
第五章
衛兵及番兵ノ敬礼
第三編
儀式
第一章
儀仗兵
第二章
遥拝式
第三章
迎送式及伺候式
第四章
観兵式
第五章
観艦式
海軍礼式令
第一編 総則
第一条 海軍軍人艦船及軍隊ノ礼式ニ関シテハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令中軍人ト称スルハ海軍将校同相当官兵曹長同相当官候補生准士官生徒及下士卒ヲ謂ヒ上官又ハ上級者ト称スルハ官等等級ノ上ナル者ヲ謂ヒ同級者ト称スルハ官等等級ノ等シキ者ヲ謂ヒ衛兵ト称スルハ艦船部隊等ノ衛兵ヲ謂ヒ番兵ト称スルハ衛兵ノ守所ニ在ル者ヲ謂ヒ軍隊ト称スルハ武装スルト否トニ関セス又人員ノ多少ニ拘ラス隊伍ヲ組ミタル軍人ノ集団ヲ謂ヒ隊長ト称スルハ軍隊ヲ引率スル者ヲ謂フ
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ候補生ハ兵曹長同相当官ノ下准士官ノ上トシ生徒ハ准士官ノ下下士ノ上トシ其ノ敬礼ニ関シテハ士官又ハ下士ニ準ス
第三条 皇后太皇太后皇太后ニ対スル礼式ハ天皇ニ対スル礼式ニ準ス
前項以外ノ皇族ニ対スル礼式ハ公式ノ場合ニ限リ前項ノ規定ニ準ス
第四条 外国ノ元首又ハ皇族ニ対スル礼式ハ公式ノ場合ニ限リ前条ノ規定ニ準ス
第五条 文武官ノ資格ニ於ケル皇族ニ対シテハ本官職相当ノ礼式ヲ行フ外国ノ皇族ニ付亦同シ
第六条 儀式祭典等ニ参与中ノ軍人艦船又ハ軍隊ハ該式典ノ為ニスル場合ヲ除クノ外式ノ施行中敬礼又ハ答礼ヲ行フコトナシ但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七条 上官ノ職ヲ執リ又ハ之ヲ代理スル軍人ニ対シテハ其ノ本官相当ノ礼式ヲ行フヘシ但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第八条 天皇ニ扈従スル軍人ハ敬礼ヲ行フコトナシ
職務上皇族又ハ上官ニ随従スル軍人ハ該皇族又ハ上官カ敬礼スル場合ヲ除クノ外敬礼ヲ行フコトナシ
第九条 儀式其ノ他ニ関スル高等武官兵曹長同相当官ヲ除クノ席次ハ特ニ規定アル場合ヲ除クノ外高等官席次同日同官等任官ノ者ニ在リテハ官報掲載ノ順序ニ依ル但シ艦船部隊ニ在リテハ副長ハ艦長ノ次席ニ列スルモノトス
兵曹長同相当官ノ席次ハ少尉同相当官ノ次席トスル外前項ノ規定ニ依ル
候補生ノ席次ハ兵曹長同相当官ノ次席トスル外第一項ノ規定ニ準ス
准士官ノ席次ハ第一項ノ規定ニ準ス
生徒ノ席次ハ准士官ノ次席トス
第十条 公務上口頭ニテ他ノ軍人ヲ呼フニハ上官タルト下官タルトヲ問ハス其ノ職名ヲ以テシ又ハ氏下ニ官名ヲ附スヘシ但シ卒ヲ呼フニハ単ニ氏ヲ以テス
前項ノ場合ニ於テ面識ナキ上官ニ対スルトキハ先ツ自己ヲ紹介スヘシ
第十一条 艦船軍隊又ハ衛兵ノ礼式ハ別段ノ規定アル場合又ハ特ニ命令アル場合ヲ除クノ外午前八時ヨリ日没迄ノ間ニ非サレハ之ヲ行ハサルヲ例トス
第十二条 陸軍軍人又ハ軍隊ニ対シテハ海軍軍人又ハ軍隊ニ対スルト同一ノ礼式ヲ行フヘシ
外国ノ軍人艦船軍隊又ハ文官ニ対シテハ特ニ規定アル場合ヲ除クノ外我海軍軍人艦船軍隊又ハ文官ニ対スルト同一ノ礼式ヲ行フヘシ但シ彼我ノ礼式ニ厚薄ノ差ヲ生シ不権衡ト認ムル場合ニハ帝国ノ威厳ヲ損セサル限リ首席指揮官臨機ノ処置ヲ為スコトヲ得
第十三条 儀式祭典等ニ当リ一境域内全般ニ亘ル礼式ヲ斉一ニシ且必要ナル順序等ヲ定ムルハ左ニ掲クル諸官ノ任トス
一 東京ニ在リテハ海軍大臣
二 軍港ニ在リテハ鎮守府司令長官
三 要港ニ在リテハ要港部司令官司令官ヲ置カサル要港ニ在リテハ第四号ニ依ル
四 其ノ他ノ各地ニ在リテハ所在首席将校其ノ地在勤者タルト否トヲ問ハス
軍港要港ニ在リテハ鎮守府司令長官又ハ要港部司令官ノ定メタルモノハ他ノ司令長官又ハ司令官ニ於テ官等ノ上下ヲ論セス等シク之ヲ遵守スヘシ
第十四条 受礼者ハ本令ニ依ル礼式ノ一部又ハ全部ヲ辞スルコトヲ得
第十五条 艦船ノ構造若ハ其ノ運用上又ハ演習等ノ為本令ニ依ルコト能ハサルトキハ適宜之ヲ取捨スルコトヲ得
第十六条 本令ニ定ムルモノノ外特別ノ場合ニ行フヘキ礼式ニ関シテハ海軍大臣之ヲ定ム
第二編 敬礼
第一章 通則
第十七条 軍人「君カ代」ノ奏楽又ハ喇叭練習中ノ奏楽喇叭ヲ除クヲ聞クトキハ姿勢ヲ正スヘシ
第十八条 勅語勅諭令旨等奉読ノ際ハ其ノ始終ニ於テ敬礼ヲ行フヘシ
第十九条 軍人ハ上官ニ対シ敬礼ヲ行ヒ上官ハ之ニ答礼シ同級者ハ互ニ敬礼ヲ交換スヘシ但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
同時ニ二人以上ノ上官ニ対スルトキハ特ニ規定アル場合ヲ除クノ外最高級ノ人ノミニ対シ敬礼ヲ行ヒ其ノ最高級ノ人ノミ答礼ヲ行フヲ例トス
敬礼ヲ行フトキハ受礼者ノ答礼畢ルヲ俟チ原姿勢ニ復スルヲ例トス
第二十条 官等等級ノ識別困難ナル場合ニ在リテハ上下ヲ論セス互ニ敬礼ヲ行フヘシ
第二十一条 軍人各個ノ敬礼ハ面識アル上官ニ対シテハ其ノ服装ノ如何ニ関セス之ヲ行フヘシ但シ軍艦ニ於テ号笛ヲ以テスル敬礼ハ制規ノ服装ヲ為ス者ニ対シテノミ之ヲ行フ
第二十二条 軍人行進間敬礼ヲ行フトキハ歩調ヲ執ルコトナク武装シタルトキヲ除ク速歩ニ於テ之ヲ行フ但シ至急ノ要務ヲ帯フルトキハ其ノ旨ヲ告ケ駈歩ノ儘之ヲ行フコトヲ得
第二十三条 教練受業中ノ者ハ各個ノ敬礼ヲ行ハサルヲ例トシ又作業中ノ者ニハ監督者ニ於テ必要ニ依リ敬礼ヲ省略セシムルコトヲ得但シ特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二章 各個ノ敬礼
第一節 室内ノ敬礼
第二十四条 室内ト称スルハ公室、私室、事務室、会食所、応接所等ヲ謂フ但シ宮中又ハ行在所ニ在リテハ廊下モ亦室内ニ準ス
第二十五条 室内ノ敬礼ハ先ツ室外ニ於テ脱帽シ室内ニ入リ受礼者又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ対シテ停止正面シ姿勢ヲ正シテ受礼者ノ眼又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ注目シ体ノ上部ヲ約十五度前ニ傾ケ頭ヲ正シク上体ノ方向ニ保ツヘシ但シ帽ヲ手ニ持ツトキハ右手ニテ其ノ庇又ハ前部ヲ摘ミテ之ヲ垂直ニ提ケ其ノ内部ハ右股ニ対セシム
下士卒銃ヲ携フルトキニ於ケル室内ノ敬礼ハ室外ノ敬礼ニ同シ
答礼ノ方法ハ敬礼ニ準ス但シ著席者ノ答礼ハ其ノ儘体ノ上部ヲ少シク前ニ傾ケ敬礼者ニ注目スルヲ例トス
第二十六条 天皇ニ拝謁スルトキハ先ツ御室ノ外ニ於テ敬礼シタル後御室ニ入リ直ニ敬礼シ更ニ進ミテ玉座ヲ距ルコト約六歩ノ所ニ於テ最敬礼ヲ為シ畢リテ退歩シ御室ノ出口ニ於テ敬礼シ御室ヲ出テ更ニ敬礼ヲ行ヒタル後退去スヘシ但シ宮中等ニ於テ特ニ規定アルモノハ之ニ従フ
最敬礼ハ不動ノ姿勢ヲ執リ先ツ天皇ニ注目シ次ニ体ノ上部ヲ約四十五度前ニ傾ケ頭ヲ正シク上体ノ方向ニ保ツ外前条第一項ニ同シ
軍艦其ノ他ニ於テ御写真ヲ拝スルトキノ敬礼ハ前二項ノ規定ニ準ス
第二十七条 賢所参拝其ノ他拝神ノトキハ拝礼ヲ行フヘシ
拝礼ハ神霊ニ対シ最敬礼ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ行フ
参内又ハ参殿ノ際ハ昇殿ノトキヨリ賢所参拝ノ際ハ賢所正門ニ入リタルトキヨリ脱帽シ祭典ニ参列スルトキハ祭場ニ入リタルトキヨリ又ハ式ノ施行中脱帽スヘシ
第二十八条 軍人上官ノ居室ニ入ルトキハ其ノ席ヲ距ルコト適宜ノ所ニ於テ敬礼ヲ行フヘシ上官二人以上ナルトキハ先ツ最高級ノ人ニ敬礼シ次ニ他ノ一同ニ敬礼スヘシ但シ在室者ニ主客ノ別アルトキハ先ツ主タル者ニ対シ敬礼ヲ行フヘシ其ノ居室ヲ去ルトキ亦同シ
第二十九条 上官居室ニ来ルトキハ在室者ハ起立シテ敬礼ヲ行フヘシ其ノ居室ヲ去ルトキ亦同シ但シ上官ト応対スル者ヲ除クノ外一旦敬礼ヲ行ヒタル後著席スルコトヲ得
第三十条 同級者居室ニ来リ敬礼ヲ行フトキハ在室者ハ一旦起立シテ敬礼ヲ行フヲ例トシ下級者居室ニ来リ敬礼ヲ行フトキハ著席ノ儘答礼スルヲ例トス其ノ去ルトキ亦同シ
第三十一条 士官以上ノ者下士卒ノ居室ニ入ルトキハ脱帽セサルモ妨ナシ此ノ場合ニ於ケル答礼ハ脱帽セサルトキハ挙手注目トシ脱帽スルトキハ注目トス
第三十二条 士官以上ノ者下士卒ノ居室ニ来ルトキハ最初之ヲ認メタル者「敬礼」ト呼ヒ在室者ハ皆起立シテ敬礼ヲ行ヒ入室者ノ許可アリタル後原姿勢ニ復スヘシ但シ事務室等ニ於テハ入室者ハ本条ノ敬礼ヲ省略セシムルコトヲ得教練授業又ハ作業中ナルトキハ教官又ハ監督者ノミ敬礼ヲ行フヲ例トス
第三十三条 軍人室内ニ於テ上官ヨリ位記勲記功記勲章辞令書証書褒状等ヲ受クルトキハ授与者ヲ距ルコト約三歩ノ所ニ於テ敬礼ヲ行ヒタル後帽ヲ左脇ニ挟ミ適宜前進シ右手ヲ以テ之ヲ受ケ左手ヲ副ヘテ披見シ畢テ左手ニ移シ適宜退歩シテ原位置ニ復シ帽ヲ右手ニ移シ再ヒ敬礼ヲ行ヒ退去スヘシ
第三十四条 軍人室内ニ於テ上官ヨリ書類其ノ他ノ物件ヲ受ケ又ハ之ヲ上官ニ呈スルトキハ前条ノ規定ニ準シ右手ヲ以テ之ヲ受ケ又ハ之ヲ呈スヘシ執銃スルトキハ左手ヲ以テス若受クル所ノ物件其ノ場ニ於テ披見ヲ要スルモノナルトキハ銃ヲ立テ体ニ托シ右臂ヲ以テ之ヲ支ヘ右手ヲ副ヘテ披見スヘシ返簡又ハ領証ヲ受クヘキトキハ適宜ノ位置ニ退キ之ヲ待ツヘシ
前項ノ場合ニ於テ執銃スルトキハ立銃ノ儘敬礼ヲ行フヲ例トス
第三十五条 軍人室内ニ於テ上官ヨリ命令諭告等ヲ受ケ又ハ上官ニ陳述ヲ為ストキハ第三十三条ノ規定ニ準ス
第三十六条 軍人室内ニ於テ公務ノ応対ヲ為ストキハ下級者ハ起立シテ姿勢ヲ正スヘシ但シ上官ノ許可アリタルトキハ著席スルモ妨ナシ
第三十七条 軍人室内ニ入ルトキハ徐ニ戸ヲ敲キ在室者ノ応答ヲ得テ後入室スヘシ但シ士官室事務室等ニ於テハ便宜省略スルコトヲ得
第三十八条 宴会集会等総テ公会ニ於テ上官ト同席スルトキハ上官ニ先チテ椅子ニ倚リ食卓ニ就キ食卓ヲ離レ又ハ退去スルコトナキヲ礼トス
第二節 室外ノ敬礼
第三十九条 室外ト称スルハ屋外、諸甲板、短艇内、砲台、砲塔、通路、廊下等ヲ謂フ
第四十条 室外ノ敬礼ハ挙手注目トス
挙手注目ハ姿勢ヲ正シ右手ヲ挙ケ右臂ヲ右斜ニ右前腕及掌ヲ一線ニ保チ五指ヲ伸シテ之ヲ接シ掌ヲ左方ニ向ケ食指ノ第三関節ヲ帽ノ右前部又ハ庇ノ右縁ニ当テ頭ヲ向ケテ受礼者ノ目又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ注目ス但シ両手ニ物件ヲ携帯シ担荷シ其ノ他右手ヲ挙タルコト能ハサルトキハ其ノ儘頭ヲ受礼者又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ向ケテ注目シ体ノ上部ヲ少シク前ニ傾クヘシ
答礼ノ方法ハ前二項ニ同シ但シ必要ニ依リ頭ヲ向ケ注目シ体ノ上部ヲ少シク前ニ傾ケテ挙手注目ニ代フルコトヲ得
第四十一条 将校抜剣中ノ敬礼ハ天皇ニ対スルトキ又ハ特ニ規定アル場合ニハ剣ノ敬礼ヲ行ヒ其ノ他ノ場合ニハ肩剣ニテ姿勢ヲ正シ頭ヲ向ケテ受礼者又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ注目シ体ノ上部ヲ少シク前ニ傾クヘシ答礼亦同シ
兵曹長上等兵曹抜剣中ノ敬礼ハ将校ニ準ス
将校相当官兵曹長相当官又ハ上等兵曹ニ非サル准士官ハ剣ヲ以テスル敬礼ヲ行フコトナシ
第四十二条 下士卒銃ヲ携フルトキノ敬礼ハ天皇ニ対スルトキ又ハ拝神等ノ場合ニ於テハ著剣捧銃シテ注目又ハ目迎目送ヲ行ヒ上官ニ対スル場合ニ於テハ行進中ハ頭ヲ向ケテ注目シ停止中ハ准士官以上ニ対シテハ捧銃シテ注目又ハ目迎目送ヲ行ヒ其ノ他ノ者ニ対シテハ立銃シテ姿勢ヲ正スヘシ
目迎目送ハ敬礼中受礼者又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ対シ頭ヲ向ケ注目シ其ノ適宜ノ距離ヲ行進スル間之ヲ継続スヘシ
捧銃ノ場合ニ於ケル目迎目送ハ銃ノ操作ヲ了リタル後直ニ之ヲ始メ立銃ト共ニ正面ニ復ス立銃又ハ単ニ姿勢ヲ正シテ行フ場合亦之ニ準ス
下士卒喇叭ヲ手ニスルトキハ其ノ管口ヲ股ニ当テ前三項ノ規定ニ準シ敬礼スヘシ
第四十三条 天皇ニ奏上スルトキハ玉座ヲ距ル約六歩ノ所ニ於テ敬礼シ適宜ノ距離ニ進ミテ奏上シ之ヲ終リタルトキハ玉座ヲ距ル約六歩ノ所迄退歩シ敬礼ヲ行ヒ退去スヘシ
第四十四条 途上ニ於テ行幸ニ遇フトキハ前駆ノ稍前ヨリ道路ノ一側ニ停止乗馬ノトキハ其ノ儘、乗車ノトキハ下乗正面シ車駕約六歩前ニ近ツクトキ敬礼ヲ行ヒ約六歩過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
途上ニ於テ皇族ニ遇フトキハ鹵簿ヲ用井タルトキハ前項ノ例ニ依リ之ヲ用井サルトキハ上官ニ対スルト同様ノ敬礼ヲ行フヘシ
第四十五条 軍人互ニ行遇ヒ又ハ近傍ヲ通過スルトキハ頭ヲ受礼者ニ向ケ敬礼ヲ行フヘシ答礼亦同シ
第四十六条 軍人停止シ在ルトキ上官其ノ近傍ヲ通過スルトキハ之ニ面シ起立シテ敬礼ヲ行フヘシ
第四十七条 軍人停止シ在ル上官ノ許ニ至ルトキハ其ノ上官ヲ距ルコト約六歩ノ所ニ於テ停止シ敬礼ヲ行フヘシ
第四十八条 卒番兵ノ前ヲ通過スルトキハ之ニ対シ敬礼ヲ行フヘシ
第四十九条 軍人上官ノ引率スル軍隊ニ行遇ヒ又ハ其ノ近傍ヲ通過スルトキハ其ノ隊長ニ敬礼ヲ行フヘシ但シ現ニ服務中ノ儀仗隊ニ対シテハ敬礼ヲ行ハス
第五十条 軍人軍隊ヨリ敬礼ヲ受ケタルトキハ其ノ隊長ニ答礼スヘシ
第五十一条 軍人途上ニ於テ軍人ノ葬儀ニ遇フトキハ官職等級ノ如何ヲ問ハス其ノ柩ニ対シ敬礼ヲ行フヘシ
第五十二条 軍人乗車馬ニテ上官ニ遇フトキハ其ノ儘姿勢ヲ正シ敬礼ヲ行フヘシ但シ自転車ニ乗リ在ルトキハ単ニ注目ヲ以テ敬礼ニ換フルコトヲ得
第五十三条 軍人室外ニ於テ上官ヨリ位記勲記功記勲章辞令書証書褒状等ヲ受クルトキ、書類其ノ他ノ物件ヲ受ケ若ハ之ヲ呈スルトキ又ハ命令諭達等ヲ受ケ若ハ陳述ヲ為ストキハ第四十七条ノ規定ニ依リ敬礼ヲ行フノ外其ノ動作ハ第三十三条乃至第三十五条ノ規定ニ準ス
第五十四条 軍人上官ト同行スルトキハ其ノ左側又ハ後方ニ就クヲ礼トス但シ嚮導者ハ此ノ限ニ在ラス
軍人舷梯ヲ昇ルトキハ上官ヲ先ニシ降ルトキハ下官ヲ先ニス短艇ヨリ陸岸ニ上ルトキ又ハ陸岸ヨリ短艇ニ降ルトキ亦同シ
第五十五条 敬礼ヲ行フヘキ者受礼者ト遠隔シ在ル場合ト雖其ノ上官タルコトヲ識別スルトキハ必ス敬礼ヲ行フヘシ
第三章 艦船ノ敬礼
第一節 軍艦ノ敬礼
第五十六条 定時ニ於テ軍艦旗ヲ掲揚降下スルトキハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 当直将校ハ艦橋ニ在リテ軍艦旗ニ面シテ敬礼ス
二 衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ後甲板ニ整列シ軍艦旗ニ面シテ捧銃シ喇叭軍楽隊在ルトキハ軍楽譜以下之ニ倣フ「君カ代」一回ヲ吹奏ス
三 番兵ハ軍艦旗ニ面シテ捧銃ス
四 上甲板ニ在ル者ハ軍艦旗ニ面シテ敬礼ス
五 中甲板以下ニ在ル者ハ起立シ姿勢ヲ正ス
戦時若ハ演習中又ハ総員ヲ以テスル教練作業等ノ場合ニ在リテハ前項ノ敬礼中衛兵ノ敬礼ハ掌信号兵ノミ整列シ喇叭「君カ代」ヲ吹奏シテ之ニ代フルコトヲ得
附近陸岸ニ在ル者軍艦旗ノ掲揚降下ヲ目撃スルトキハ之ニ面シテ停止シ敬礼ヲ行フヘシ
第五十七条 軍艦初テ軍艦旗ヲ掲揚スルトキハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 艦長副長及当直将校ハ艦橋ニ、其ノ他ノ高等武官ハ後甲板ニ序列シ軍艦旗ニ面シテ敬礼ス
二 衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ後甲板ニ於テ高等武官ノ前方ニ整列シ軍艦旗ニ面シテ捧銃シ喇叭「君カ代」一回ヲ吹奏ス
三 番兵ハ軍艦旗ニ面シテ捧銃ス
四 准士官ハ高等武官ノ後方ニ整列シ軍艦旗ニ面シテ敬礼ス
五 下士卒ハ分隊毎ニ分隊長ノ指揮下ニ上甲板ニ整列シテ軍艦旗ニ面シ分隊長ハ軍艦旗ニ面シテ敬礼ス
第五十八条 軍艦除籍セラレタルトキハ軍艦旗ヲ掲揚セサルモノハ一旦之ヲ掲揚シ前条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行ヒ軍艦旗ヲ降下スヘシ
第五十九条 軍楽隊ノ乗組ミタル帝国軍艦外国軍艦ト同所ニ在泊シ定時軍艦旗ヲ掲揚降下スルトキハ我国歌ヲ奏シタル後外国海軍指揮官ノ任官順序ニ依リ逐次其ノ国歌一回宛ヲ奏スルヲ例トス但シ外国港湾ニ在泊スルトキハ当該国ノ国歌ヲ先ニスヘシ
第六十条 帝国軍艦外国軍艦ト同所ニ在泊シ定時ノ軍艦旗掲揚降下ニ際シ外国軍艦ニ於テ奏スル我国歌ヲ聞キ又ハ我軍艦ニ於テ外国ノ国歌ヲ奏スルトキハ上甲板ニ在ル者ハ起立シテ姿勢ヲ正スヘシ
第六十一条 船舶灯台等ヨリ軍艦ニ対シ旗章ヲ降下シテ敬礼ヲ行フトキハ軍艦ハ軍艦旗ヲ半ハ降下シテ答礼ヲ行フヘシ
第六十二条 帝国軍艦ニ対シ外国軍艦ヨリ衛兵礼式又ハ奏楽等ヲ為シテ敬意ヲ表スルトキハ之ニ対シ相当ノ答礼ヲ行フヘシ若事情我ヨリ先ニ衛兵礼式又ハ奏楽等ヲ行フヲ適当ト認ムルトキハ指揮官ハ適宜之ヲ行フコトヲ得
衛兵礼式ハ衛兵衛兵司令(伍長)之ヲ指揮ス後甲板又ハ適宜ノ場所ニ整列シ捧銃又ハ立銃シテ之ヲ行フ
第六十三条 天皇軍艦ニ臨御ノトキハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 司令長官司令官参謀長艦長及当直将校ハ舷門ニ、他ノ高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ奉迎ス
二 尉官二名舷梯側ニ在リテ奉迎シ兵曹長上等兵曹二名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹ク
三 衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ対舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「君カ代」一回ヲ吹奏ス
四 番兵ハ捧銃ス
五 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
六 下士卒ハ舷側又ハ甲板中部ニ整列ス
七 艦長ハ乗御ノ短艇本艦ニ近接スルトキ祝声「万歳」三回以下之ニ倣フヲ唱ヘシム
第六十四条 還御ノトキハ其ノ敬礼前条ノ規定ニ準ス但シ祝声ハ乗御ノ短艇本艦ヲ離レ礼砲ヲ行フ前之ヲ唱ヘシム
第六十五条 軍艦乗御ノ艦船ト遇ヒ又ハ其ノ近傍ニ近ツクトキハ司令長官司令官参謀長艦長副長参謀及当直将校ハ艦橋ニ、其ノ他ノ高等武官及准士官ハ上甲板ニ在リテ敬礼ヲ行ヒ衛兵衛兵司令之ヲ指揮ス及番兵ハ捧銃シ喇叭「君カ代」ヲ吹奏シ下士卒ハ舷側ニ整列シ第六十三条ノ規定ニ準シ祝声ヲ唱フヘシ
前項ノ敬礼ハ乗御ノ艦船本艦ノ右(左)四点ノ所ニ来レルトキ之ヲ始メ左(右)四点ノ所ニ至リテ之ヲ止ム但シ距離ノ遠近ニ応シ敬礼ノ始終点ヲ適宜変更スルコトヲ得
乗御ノ短艇屡軍艦ノ近傍ヲ通過スル場合ニハ該艦ニ於テハ衛兵衛兵司令之ヲ指揮ス及番兵ハ捧銃シ喇叭「君カ代」一回ヲ吹奏シ敬礼ヲ行フノ外他ノ敬礼ヲ省略スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テハ軍艦ハ必要ニ応シ航路ヲ譲リ又ハ速力ヲ加減スヘシ
第六十六条 乗御ノ短艇ニ於テハ中佐又ハ少佐指揮ヲ掌ルヘシ
第六十七条 乗御ノ艦船ハ答礼ヲ行ハス
第六十八条 第三条第二項ノ皇族公式ニ非スシテ軍艦ニ来艦ノトキハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ退艦ノトキ亦同シ
一 司令長官司令官参謀長以上ハ旗艦ニ非サルトキハ奉迎セサルモ妨ナシ艦長及当直将校ハ舷門ニ、他ノ高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ奉迎ス
二 尉官二名舷梯側ニ在リテ奉迎シ兵曹長上等兵曹二名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹ク
三 衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ対舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「君カ代」一回ヲ吹奏ス
四 番兵ハ捧銃ス
五 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
六 下士卒ハ甲板中部ニ整列ス
第六十九条 勅使来艦スルトキハ前条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ但シ将官タル勅使ニ対シテハ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏シ其ノ他ノ勅使ニ対シテハ号笛ヲ吹キ又ハ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
第七十条 上命ニ依リ差遣セラレタル侍従武官又ハ令旨ヲ奉シ来艦スル東宮武官等ニハ其ノ本官ニ相当スル敬礼ヲ行フノ外左ノ敬礼ヲ行フヘシ退艦ノトキ亦同シ
一 司令長官司令官参謀長以上ハ旗艦ナルトキニ限ル艦長及当直将校舷門ニ出迎ス
二 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列ス
三 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
前項ノ諸官屡軍艦ヲ出入スル場合ニハ其ノ最初来艦ノトキ及最後退艦ノトキヲ除クノ外前項各号ノ敬礼ヲ省略スルヲ例トス
第七十一条 第六十三条第六十四条及前三条ノ規定ハ官衙部隊学校等ニ之ヲ準用ス但シ陸上ニ在リテハ号笛ヲ吹クコトナシ
第七十二条 司令長官又ハ司令官ニ対シテハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 初テ其ノ旗艦ニ著任シ又ハ職ヲ解キ其ノ旗艦ヲ退クトキ
(一) 司令長官司令官参謀長艦長及当直将校舷門ニ迎送ス
(二) 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ迎送ス
(三) 上等兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(四) 衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ対舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏ス
(五) 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
(六) 下士卒ハ甲板中部ニ整列ス
二 旗章ヲ掲ケ其ノ旗艦ヲ出入スルトキ
(一) 参謀長艦長参謀(副官)及当直将校舷門ニ送迎ス
(二) 上等兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(三) 衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ対舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏ス
三 旗章ヲ掲ケス其ノ旗艦ヲ出入スルトキ
(一) 参謀長艦長参謀(副官)及当直将校舷門ニ送迎ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
検閲ノ為麾下軍艦ニ乗艦シ又ハ該艦ヲ退クトキノ敬礼ハ第一項第一号、公務ヲ帯ヒ麾下軍艦ニ乗艦シ又ハ該艦ヲ退クトキノ敬礼ハ第二号ニ準ス
第七十三条 海軍大臣、元帥タル海軍大将又ハ海軍軍令部長ニ対シテハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 旗章ヲ掲ケ来艦シ又ハ退艦スルトキ
前条第一項第一号ノ敬礼
二 旗章ヲ掲ケス来艦シ又ハ退艦スルトキ
前条第一項第一号(一)(三)及(四)ノ敬礼但シ司令長官司令官及参謀長ノ迎送ハ旗艦ナルトキニ限ル
特命検閲使又ハ検閲官検閲ノ為来艦シ又ハ退艦スルトキノ敬礼ハ前項第一号ニ準ス
第七十四条 前二条ノ規定ニ依リ敬礼ヲ行フ場合ヲ除クノ外将官又ハ司令官タル大佐ニ対シテハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ但シ司令長官司令官及参謀長ノ迎送ハ旗艦ナルトキニ限ル
一 旗章ヲ掲ケ来艦シ又ハ退艦スルトキ
第七十二条第一項第一号(一)(三)及(四)ノ敬礼
二 旗章ヲ掲ケス来艦シ又ハ退艦スルトキ
(一) 司令長官司令官以上ハ来艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル参謀長艦長及当直将校舷門ニ迎送ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
第七十五条 将官相当官来艦シ又ハ退艦スルトキハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ但シ司令長官司令官及参謀長ノ迎送ハ旗艦ナルトキニ限ル
一 司令長官司令官参謀長以上ハ来艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル艦長及当直将校舷門ニ迎送ス
二 水兵二名舷梯側ニ立ツ
将官相当官本艦ヲ出入スルトキハ当直将校舷門ニ迎送シ水兵二名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ
第七十六条 天皇臨御ノ軍艦ニ於テハ前八条ノ敬礼ハ之ヲ行ハス
第六十八条ノ場合其ノ他特別ノ場合ニ於テ前四条ノ諸官陸続出入スルトキハ其ノ主タル者ニ対スル敬礼ヲ除クノ外其ノ他ノ敬礼ハ適宜之ヲ省略スルコトヲ得
第七十七条 艦隊参謀長ニ対シテハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 初テ旗艦ニ著任スルトキ又ハ職ヲ解キ旗艦ヲ退クトキ
(一) 参謀長艦長及当直将校舷門ニ迎送ス
(二) 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ迎送ス
(三) 上等兵曹大佐参謀長ナルトキハ兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(四) 衛兵衛兵司令(大佐参謀長ノトキハ伍長)之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ対舷ノ後甲板ニ整列捧銃シ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏ス大佐参謀長ノトキハ喇叭ヲ吹奏セス
二 旗艦ヲ出入スルトキ
(一) 参謀(副官)及当直将校舷門ニ送迎ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
第七十八条 艦長ニ対シテハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 初テ其ノ艦ニ著任スルトキ又ハ職ヲ解キ其ノ艦ヲ退クトキ
(一) 艦長及当直将校ハ舷門ニ迎送ス
(二) 高等武官ハ其ノ舷側後甲板ニ序列シ迎送ス
(三) 上等兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
(四) 衛兵衛兵伍長之ヲ指揮スハ其ノ舷又ハ対舷ノ後甲板ニ整列捧銃ス
(五) 准士官ハ舷門前部ニ整列ス
(六) 下士卒ハ甲板中部ニ整列ス
二 本艦ヲ出入スルトキ
(一) 副長及当直将校舷門ニ送迎ス
(二) 兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立ツ
第七十九条 副長本艦ヲ出入スルトキハ当直将校舷門ニ送迎シ兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ艦長不在ノトキニ限ル水兵一名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ
第八十条 佐尉官同相当官本艦ヲ出入スルトキハ副直将校舷門ニ送迎シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ
第八十一条 部隊長学校長等初テ著任スルトキ又ハ職ヲ解キ退去スルトキハ第七十八条第一号ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ但シ号笛ヲ吹クコトナク又衛兵ノ敬礼ハ本編第五章ニ依ルヘシ
第八十二条 旗章ヲ掲ケ来艦シ又ハ退艦スル他艦長ニ対シテハ艦長旗艦ニ在リテハ参謀一名ヲ加フ及当直将校ハ舷門ニ迎送シ衛兵衛兵伍長之ヲ指揮スハ捧銃シ兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ水兵二名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ駆逐隊艇隊又ハ潜水艇隊ノ司令旗章ヲ掲ケ来艦シ又ハ退艦スルトキ亦同シ
司令長官司令官ノ旗艦ニ在リテハ其ノ麾下ノ艦長又ハ司令ノ出入ニ対シ前項衛兵ノ敬礼ヲ省略スルヲ例トス
第八十三条 佐尉官同相当官来艦シ又ハ退艦スルトキハ艦長及当直将校以上ハ来艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル(副直将校)舷門ニ迎送シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ
外国海軍佐尉官ニ対シテハ前項ノ敬礼ノ外兵曹一名舷門ニ在リテ号笛ヲ吹キ其ノ艦長又ハ司令ナルトキハ衛兵衛兵伍長之ヲ指揮スハ捧銃スヘシ
第八十四条 外国駐箚ノ我大使又ハ公使公式訪問ノ為来艦シ又ハ退艦スルトキハ将官ニ準シ第七十二条第一項第一号(一)乃至(四)ノ敬礼又ハ(一)(三)及(四)ノ敬礼ヲ行フヘシ但シ当該官ノ駐箚国内ニ限ルヲ例トス
我大使又ハ公使軍艦ニテ赴任スルトキハ其ノ最後退艦ノトキ帰朝スルトキハ最初乗艦ノトキ前項ト同一ノ敬礼ヲ行フ
第八十五条 外国駐在ノ我領事官同一地ニ二人以上ノ領事官在勤スルトキハ首席領事官ニ限ル公式訪問ノ為来艦シ又ハ退艦スルトキハ艦長ニ準シ第八十二条ノ敬礼ヲ行フヘシ但シ当該官ノ管轄区域内ニ限ルヲ例トス
第八十六条 勅任文官公式訪問ノ為来艦シ又ハ退艦スルトキハ司令長官司令官参謀長以上ハ来艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル艦長及当直将校舷門ニ迎送シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ
第八十七条 奏任文官公式訪問ノ為来艦シ又ハ退艦スルトキハ艦長及当直将校以上ハ来艦者ニ比シ同官等以下ナルトキニ限ル(副直将校)舷門ニ迎送シ水兵一名舷梯側ニ立チ敬礼ヲ行フヘシ
第八十八条 軍艦ト軍艦又ハ軍艦ト将旗若ハ代将旗ヲ掲ケタル短艇相遇ヒ又ハ近傍ヲ通過スルトキハ左ノ敬礼ヲ行フヘシ
一 将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル軍艦ニ対シテハ他ノ軍艦ハ先ツ喇叭「気ヲ著ケ」一回ヲ吹キ上甲板ニ在ル者ハ該旗艦ニ面シテ姿勢ヲ正シ衛兵衛兵司令之ヲ指揮スハ捧銃シ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏シ准士官以上ハ敬礼ヲ行フヘシ
二 将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル軍艦前号ノ敬礼ヲ受ケタルトキハ喇叭「気ヲ著ケ」一回ヲ吹キ上甲板ニ在ル者ハ敬礼ヲ行ヒタル軍艦ニ面シ姿勢ヲ正スヘシ
三 将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル軍艦ト他ノ将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル軍艦トハ互ニ第一号ノ敬礼ヲ行フヘシ此ノ場合ニ於テハ後任将校ノ旗艦ヨリ先ニ之ヲ行フモノトス
四 将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル短艇ニ対シテハ軍艦ハ第一号ノ敬礼ヲ行フヘシ但シ将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル軍艦ハ当該将校短艇ノ当該将校ヨリ後任ナルトキニ限ル
五 軍艦ト軍艦トハ互ニ喇叭「気ヲ著ケ」一回ヲ吹キ上甲板ニ在ル者ハ姿勢ヲ正スヘシ此ノ場合ニ於テハ後任将校ノ乗艦ヨリ先ニ之ヲ行フ
海軍大臣旗ヲ掲ケタル艦船ニ対シテハ将旗ヲ掲ケタル軍艦又ハ短艇ニ対スルト同様ノ敬礼ヲ行フヘシ答礼亦之ニ準ス
第八十九条 天皇乗御ノ艦船現在スル場所ニ於テハ前条ノ敬礼ハ之ヲ行ハス
前条ノ敬礼ハ編隊ニテ航行シ又ハ出港入港スルトキハ其ノ首席指揮官ノ乗艦ノミ之ヲ行ヒ其ノ他ノ軍艦ハ之ヲ行ハサルヲ例トシ編隊ニテ航行シ又ハ出港入港スル軍艦ニ対シテハ単ニ其ノ首席指揮官ノ乗艦ニ対シテノミ敬礼ヲ行フヲ例トス
第九十条 軍艦ハ第六十三条乃至第六十五条ノ場合ノ外左ノ場合ニ於テ首席指揮官ノ乗艦ニ倣ヒ登舷礼式総員舷側又ハ上甲板ニ整列スヲ行フヘシ
一 戦時若ハ事変ニ際シ又ハ遠洋航海等ノ為出港ノ艦船ヲ見送ルトキ其ノ他必要ト認ムルトキ
二 登舷礼式ヲ受ケタルトキ
送別又ハ之ニ類スル場合ニ於テ登舷礼式ヲ行フトキハ祝声ヲ唱ヘ又ハ帽若ハ布片ヲ振リ別意ヲ表スルコトヲ得
第九十一条 軍艦戦時又ハ演習中ハ天皇若ハ外国ノ軍艦ニ対スルトキ又ハ特別ノ場合ヲ除クノ外左ノ敬礼ヲ行ハサルヲ例トス
一 第六十八条乃至第七十三条、第七十七条及第七十八条ノ敬礼中高等武官ノ序列及准士官下士卒ノ整列
二 衛兵ノ敬礼
三 第八十八条及第八十九条ノ敬礼
第九十二条 軍艦及短艇以外ノ艦船ニ付テハ軍艦ニ関スル規定ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ艦長ニ対スル敬礼ハ駆逐艦水雷艇又ハ潜水艇ニ付テハ其ノ隊ノ司令ニ対シテノミ之ヲ行フ
第九十三条 前条ノ場合ニ於テ駆逐艦水雷艇又ハ潜水艇天皇乗御ノ艦船ト遇ヒ又ハ其ノ近傍ニ近ツクトキハ総員上甲板ニ整列シ准士官以上ハ敬礼ヲ行ヒ海軍大臣旗将旗又ハ代将旗ヲ掲ケタル艦船ト遇ヒ又ハ其ノ近傍ニ近ツクトキハ上甲板ニ在ル者ハ姿勢ヲ正シ准士官以上ハ敬礼ヲ行フヘシ
第二節 短艇ノ敬礼
第九十四条 短艇櫓艇ヲ含ムハ乗艇者ノ区分ニ従ヒ左表ニ依リ敬礼ヲ行フヘシ
敬礼者
受礼者
海軍大臣、海軍大将以下准士官以上
下士卒短艇指揮乗艇シ在ルトキト雖本欄ニ依ル
天皇
短艇
橈漕中  橈ヲ立ツ
帆走中  総帆ヲ下ス
汽走中  運転ヲ停止ス
短艇
橈漕中
帆走中
汽走中
}同上
乗員
短艇指揮  起立敬礼
短艇長  起立敬礼
艇員  座シタル儘姿勢ヲ正シ注目ス
艇員外下士卒  起立敬礼
准士官以上  起立敬礼
乗員
短艇指揮
短艇長
艇員
艇員外下士卒
}同上
海軍大臣、海軍大将以下准士官以上
短艇
橈漕中
帆走中
汽走中
}現状ノ儘
短艇
橈漕中  橈ヲ上ク
帆走中  現状ノ儘
汽走中  現状ノ儘
}但シ海軍大臣旗将旗又ハ代将旗ニ対シテハ橈ヲ立テ大帆ノシートヲ伸シ又ハ機械ノ速力ヲ緩ム
乗員
短艇指揮  起立敬礼
短艇長  起立敬礼
艇員  其ノ儘
艇員外下士卒  座シタル儘姿勢ヲ正シ注目ス
准士官以上  座シタル儘敬礼
乗員
短艇指揮
短艇長
艇員
艇員外下士卒
}同上
下士卒短艇指揮乗艇シ在ルトキト雖本項ニ依ル
短艇
短艇
橈漕中
帆走中
汽走中
}現状ノ儘
乗員
乗員
短艇長ノミ座シタル儘敬礼
備考
一 短艇天皇乗御ノ短艇ニ遇フトキハ該艇ヲ距ルコト約三十米ノ所ニ於テ敬礼ヲ行ヒ約十米過去ル迄其ノ姿勢ヲ保チ其ノ他ノ短艇ニ遇フトキハ約十五米ノ所ニ於テ之ヲ行ヒ過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ但シ進行ヲ止メ又ハ速力ヲ緩ムルヲ危険ト認メタルトキハ進行ヲ継続スルコトヲ得
二 櫓艇ハ本表中短艇ノ橈ヲ立テ又ハ上クヘキ場合ニハ操櫓ヲ止ムヘシ但シ風波アルトキ又ハ急速ヲ要スルトキハ注目ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
三 短艇天幕ヲ張リ起立シ能ハサルトキ又ハクラツチヲ備ヘ若ハ橈索ヲ取付ケ在リテ橈ヲ立ツルコト能ハサルトキハ本表中橈ヲ立ツヘキ場合ニ橈ヲ上ケ起立ノ場合ニ坐シタル儘姿勢ヲ正シ注目ス櫓艇ニ在リテ多人数乗艇スルトキハ首席者ノミ起立敬礼ス短艇長橈手又ハ櫓手ヲ兼ヌルトキハ特ニ短艇長ノ行フヘキ敬礼ヲ行フコトナシ
四 短艇停止間ノ敬礼ハ本表ニ準ス但シ橈艇ニシテ橈ヲ出シ在ルトキハ橈漕中橈ヲ立ツヘキ場合ニ之ヲ立ツヘシ
五 短艇他船ニ曳カレ又ハ曳船ヲ為シ若ハ積荷ヲ為シタルトキノ敬礼ハ本表ニ準ス但シ速力ヲ変スルコトナク橈又ハ帆ヲ以テスル敬礼ヲ行ハス
六 短艇指揮ハ相互間ノ敬礼及後任者ノ敬礼ニ対スル答礼ニハ起立セサルモノトス
七 機働艇ノ艇員ハ敬礼ノ場合ニハ定所ニ起立シ在ルヲ例トス
八 短艇葬儀ノ列中ニ在ルトキハ天皇ニ遇ヒタル場合ヲ除クノ外敬礼ヲ行ハス又短艇隊運動、軍装艇ノ教練及競技中ノ短艇ハ敬礼ヲ行ハサルヲ例トス
九 短艇ハ上官ノ乗艇ヲ追越サス又ハ之ニ航路ヲ譲ルヲ礼トス但シ急ヲ要スルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九十五条 短艇乗御ノ軍艦ト遇ヒ若ハ其ノ近傍ニ近ツクトキ、附近陸岸ニ於ケル車駕ニ遇フトキハ前条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ但シ帆走中ハ大帆ノ「シート」ヲ伸スヘシ
短艇定時軍艦旗ノ掲揚降下ヲ目撃スルトキ亦前項ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
短艇海軍大臣旗将旗又ハ代将旗ヲ掲クル軍艦ト遇ヒ若ハ其ノ近傍ニ近ツクトキ又ハ他ノ敬礼スヘキ人ノ近傍ニ近ツクトキ亦前条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
第九十六条 守艇員ハ准士官以上ニ対シ起立シテ天幕ヲ張リタルトキハ座シタル儘敬礼ヲ行フヘシ
守艇員ハ本艦ニ於テ「気ヲ著ケ」ノ号音アルトキハ起立シテ姿勢ヲ正スヘシ
第九十七条 礼砲ヲ受クル者ノ乗艇ハ礼砲施行間進行ヲ停止スヘシ此ノ場合ニ於テハ橈艇ニ在リテハ礼砲ヲ始ムルト同時ニ橈ヲ上ケ終ルト同時ニ進行ヲ始ムルヲ例トス
天皇乗御ノ短艇ハ礼砲ヲ受クル間ト雖進行ヲ停止スルコトナシ
第四章 軍隊ノ敬礼
第九十八条 軍隊ノ敬礼ハ独立スル分隊、小隊又ハ中隊ニ在リテハ各隊毎ニ、大隊又ハ大隊以上ニ在リテハ停止間ハ大隊又ハ中隊毎ニ、行進間ハ中隊毎ニ之ヲ行フヲ例トス
軍隊敬礼ヲ為スニハ停止間ニ在リテハ目迎目送ヲ行ヒ行進間ニ在リテハ歩調ヲ執リ「頭右(左)」ノ号令ニテ受礼者又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ注目シ「直レ」ノ号令ニテ頭ヲ正面ニ復ス
前項ノ目迎目送ハ第四十二条第二項乃至第四項ノ規定ニ準シ「捧ケ銃」又ハ「頭右(左)」ノ号令ニテ之ヲ始メ「立テ銃」又ハ「直レ」ノ号令ニテ正面ニ復ス
位置ノ関係ニ依リ目迎目送ヲ為スコト能ハサルトキハ頭ヲ受礼者又ハ敬礼ヲ受クヘキモノニ向ケ注目ヲ為スヘシ
第九十九条 天皇ニ対スル軍隊ノ敬礼ハ停止間ニ在リテハ車駕ノ通路ニ正面シ砲隊縦隊ニ在ルトキ止ムヲ得サレハ其ノ儘行進間ニ在リテハ道路ノ一側ニ沿テ停止正面シ著剣捧銃ヲ行ヒ砲隊員ハ姿勢ヲ正ス抜剣シ在ル者ハ剣ノ敬礼、其ノ他ノ者ハ挙手注目ノ敬礼ヲ為シ喇叭「君カ代」ヲ吹奏ス
前項ノ敬礼ハ車駕隊列ヨリ約三十歩ノ所ニ来ルトキ之ヲ始メ隊列ヲ距ルコト約十五歩ノ所ニ至ルマテ其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
汽車ニテ通御ノ際亦前項ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
教練間臨御アリタルトキハ其ノ場ニ在ル最高級ノ将校ハ喇叭「気ヲ著ケ」ヲ吹奏セシメ各隊教練ヲ止メ其ノ位置ニ在リテ敬礼ヲ行ヒ該将校ハ車駕ノ許ニ至リ教練ノ次第ヲ奏上ス此ノ場合ニ於テハ勅命アルカ又ハ車駕其ノ場ヲ去ルニ非サレハ教練ヲ始ムヘカラス車駕其ノ場ヲ去ルニ方リテハ再ヒ敬礼ヲ行フヘシ
前項ノ場合ニ於テ軍隊休憩中ナルトキハ先ツ喇叭「気ヲ著ケ」ヲ吹キ整列セシムヘシ
第百条 海軍大臣、将官又ハ司令官タル大佐ニ対スル軍隊ノ敬礼ハ停止間ニ在リテハ之ニ正面シ立銃ノ儘隊長下士以下ナルトキハ隊長ノミ捧銃ス行進間ニ在リテハ行進ノ儘敬礼ヲ為シ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏スルノ外前第一項ノ規定ニ準シテ之ヲ行フ
前項ノ敬礼ハ受礼者隊列ヨリ約六歩ノ所ニ来ルトキ之ヲ始メ隊列ヲ過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
第百一条 前条以外ノ軍人ニ対スル軍隊ノ敬礼ハ受礼者隊長ヨリ上級者ナルトキニ限リ前条ノ規定ニ準シ之ヲ行フ但シ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
前項ノ場合ニ於テ受礼者相当官ナルトキハ隊長ノミ敬礼スヘシ下士卒ノ引率スル軍隊下士卒ニ対スルトキ亦同シ但シ相当官又ハ兵曹長以下ノ引率スル軍隊該軍隊ト同系ノ准士官以上ノ上官ニ対スルトキハ前項ノ規定ニ依ル
第百二条 勅使ニ対スル軍隊ノ敬礼ハ第百条ノ規定ニ準シ之ヲ行フ但シ将官タル勅使ニ対スル場合ヲ除クノ外喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
第百三条 他ノ軍隊ニ対スル軍隊ノ敬礼ハ第百条ノ規定ニ準シ之ヲ行フ但シ喇叭ハ「皇御国」一回ヲ吹奏スルヲ例トス
前項ノ敬礼ハ隊長ノ等級下ナル方先ニ之ヲ行ヒ同級ナルトキハ互ニ之ヲ行フヘシ但シ現ニ服務中ノ儀仗隊ニ対シテハ敬礼ヲ行ハス
上等兵曹以上ノ引率スル軍隊下士卒ノ引率スル軍隊ニ対シテハ隊長ノミ答礼ヲ行フ
第百四条 軍隊整列シタル衛兵ノ前ヲ通過スルトキハ軍隊ニ対スルト同一ノ敬礼ヲ行フ但シ下士卒ノ指揮スル衛兵ニ対シテハ隊長ノミ答礼ヲ行フ
第百五条 軍隊儀仗隊ヲ附シタル軍人ノ葬儀ニ遇フトキハ第百条ノ規定ニ準シ柩ニ対シ敬礼ヲ行フヘシ但シ死者隊長ヨリ下級ナルトキハ隊長ノミ敬礼スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
第百六条 軍隊拝神ノ礼ハ神前ニ整列シ天皇ニ対スルト同一ノ敬礼ヲ行フ
但シ喇叭ハ「国ノ鎮メ」靖国神社参拝其ノ他招魂祭ニ於ケル拝礼ニハ「水漬ク屍」一回ヲ吹奏ス
第百七条 儀式祭典ノ為其ノ場所ニ整列中ノ軍隊ハ該式典ノ為ニスルノ外天皇皇族又ハ勅使ニ対シ敬礼ヲ行フ
前項皇族ニ対スル敬礼ハ公式ニ非サルトキト雖第三条第二項ノ規定ニ準ス
第百八条 武装セサル軍隊ノ敬礼ハ武装シタル軍隊ノ敬礼ニ準ス但シ隊長ノ敬礼ハ挙手注目トシ喇叭ヲ吹奏スルコトナシ
武装シタル軍隊武装セサル軍隊ニ対スルトキ亦前項ニ同シ但シ隊長ハ剣ノ敬礼ヲ行フ
相当官及水兵部以外ノ下士卒ノ引率スル軍隊ノ敬礼ハ武装セサル軍隊ノ敬礼ニ同シ
第百九条 軍隊途歩行進間ニ在リテハ天皇ニ対スル場合ヲ除クノ外軍隊ノ敬礼ヲ行ハス隊長ノミ敬礼ヲ行フヲ例トス但シ他ノ軍隊衛兵其ノ他敬意ヲ表スヘキ人ニ遇フトキハ軍歌喫煙等ヲ止メ静粛ニ行進スヘシ
第百十条 軍隊行軍又ハ教練中隊列ヲ解キ休憩シ在ルトキハ敬礼ヲ行ハサルヲ例トス
第百十一条 野外ニ於テ演習実施中ハ軍隊ノ敬礼ハ之ヲ行ハサルヲ例トス
第百十二条 軍楽隊ノ敬礼ハ左ノ各号ニ依ル
一 奏楽ヲ為シ在ルトキハ敬礼ヲ行ハス但シ行進間ハ軍楽隊長ノミ剣ノ敬礼ニ準シ指揮杖ヲ以テ敬礼ヲ行フ
二 奏楽ヲ為ササルトキハ武装セサル軍隊ト同一ノ敬礼ヲ行フ
第五章 衛兵及番兵ノ敬礼
第百十三条 衛兵ノ敬礼ハ軍隊ノ敬礼ニ準ス
第百十四条 衛兵ハ天皇ニ対シテハ門外又ハ衛舎前ニ整列シ第九十九条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
第百十五条 衛兵ハ海軍大臣公務ヲ帯ヒ、特命検閲使検閲ノ為、将官若ハ司令官タル大佐著任、解職若ハ検閲巡視ノ為又ハ将官公務ヲ帯ヒ予報シテ其ノ所在ノ門ヲ出入スルトキハ門外又ハ衛舎前ニ整列シ第百条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
第百十六条 衛兵ハ其ノ所在ノ門ヲ出入スル軍隊ニ対シテハ門外又ハ衛舎前ニ整列シ第百三条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ但シ現ニ服務中ノ儀仗隊、下士卒ノ引率スル軍隊又ハ武装セサル軍隊ニ対シテハ敬礼ノ為整列スルコトナシ
第百十七条 衛兵所在ノ門ヲ出入スル准士官以上ニ対シテハ衛兵中最初ニ之ヲ認メタル者「敬礼」ト呼ヒ現在スル者起立シ姿勢ヲ正スヘシ前条但書ノ軍隊ニ対シ亦同シ
第百十八条 儀仗隊ヲ附シタル軍人ノ柩ニ対シテハ衛兵ハ門外又ハ衛舎前ニ整列シ第百五条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
第百十九条 番兵ノ敬礼ハ其ノ定位置ニ立チ受礼者約六歩前ニ来ルトキ之ヲ始メ目迎目送ヲ行ヒ六歩過去ル迄其ノ姿勢ヲ保ツヘシ
第百二十条 番兵ハ天皇ニ対シテハ捧銃陸上ニ在リテハ著剣捧銃ノ敬礼ヲ行ヒ准士官以上ニ対シテハ捧銃シ下士ニ対シテハ立銃シテ姿勢ヲ正シ敬礼ヲ行ヒ卒ヨリ敬礼ヲ受クルトキハ立銃シテ姿勢ヲ正シ答礼ヲ行フヘシ
第百二十一条 番兵ハ軍艦駆逐艦水雷艇又ハ潜水艇ニ対シテハ捧銃ノ敬礼ヲ行ヒ軍隊ニ対シテハ立銃シテ姿勢ヲ正シ其ノ隊長ニ対シテハ前条ノ規定ニ準シ官等ニ相当スル敬礼ヲ行フヘシ
第百二十二条 番兵ハ軍人ノ柩ニ対シテハ其ノ官職等級ノ如何ヲ問ハス捧銃ノ敬礼ヲ行フヘシ
第百二十三条 番兵ハ艦船部隊等ノ門ヲ出入スル高等文官ニ対シテハ捧銃ノ敬礼ヲ行フ但シ受礼者ノ身分ヲ知リタルトキニ限ル
第百二十四条 番兵銃ヲ携ヘサルトキハ挙手注目ノ敬礼ヲ行フヘシ
第百二十五条 番兵ハ夜間ト雖受礼者ヲ認識シ得ルトキハ之ニ対シ敬礼ヲ行フヘシ
第百二十六条 軍艦ニ於ケル衛兵ノ敬礼ハ第三章ノ定ムル所ニ依ル
第三編 儀式
第一章 儀仗兵
第百二十七条 儀仗トシテ天皇ニ供スル軍隊ヲ儀仗兵ト称ス特命検閲使鎮守府司令長官要港部司令官等ニ供スルモノ亦同シ
第百二十八条 儀仗兵ヲ分テ儀仗隊及儀仗衛兵トス
儀仗隊ハ行在所官庁旅館停車場波止場等ノ間途上ニ整列シ儀仗衛兵ハ行在所又ハ旅館ノ護衛ニ任ス
第百二十九条 儀仗隊ハ左ニ掲クル場合ニ之ヲ供ス
一 天皇艦隊軍隊ノ所在地ニ著御発御ノトキ
二 特命検閲使其ノ検閲スヘキ艦隊軍隊ノ所在地ニ著発ノトキ
三 鎮守府司令長官又ハ要港部司令官初テ著任シ又ハ解職出発ノトキ
四 其ノ他特ニ命令アルトキ
第百三十条 儀仗衛兵ハ天皇艦隊軍隊ノ所在地ニ滞御ノ間又ハ特ニ命令アルトキ之ヲ供ス
第百三十一条 儀仗兵ハ昼夜ノ別ナク何レノ時ト雖之ヲ供ス
第百三十二条 儀仗兵ノ敬礼ハ儀仗隊ニ在リテハ軍隊、儀仗衛兵ニ在リテハ衛兵ノ敬礼法ニ依ル但シ天皇及儀仗兵ヲ供セラルル当該者ニ対シテハ夜間ト雖敬礼ヲ行フ
第百三十三条 服務中ノ儀仗兵ハ天皇ニ供スル場合ニ於テハ天皇ニ対シテノミ敬礼ヲ行ヒ其ノ他ノ場合ニ於テハ之ヲ供セラルル当該者ニ対スルノ外天皇皇族又ハ勅使ニ対シ敬礼ヲ行フ
第百七条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百三十四条 儀仗兵ノ編制ハ左ノ各号ニ依ル但シ人員此ノ編制ニ充タサルトキハ適宜之ヲ定ムルコトヲ得
一 天皇ニ供スル儀仗隊ハ一大隊トシ大佐之ヲ指揮ス
二 特命検閲使又ハ鎮守府司令長官ニ供スル儀仗隊ハ一中隊トス
三 要港部司令官ニ供スル儀仗隊ハ一中隊二小隊ヲ以テ編制ストス
第百二十九条第四号ノ場合ニ於ケル儀仗隊ノ編制ハ特ニ之ヲ定ム
儀仗衛兵ノ人員ハ首席指揮官適宜之ヲ定ム
第百三十五条 外国ノ艦隊司令長官又ハ独立艦隊司令官軍艦ニテ軍港又ハ要港ニ入港シ公式ニ我司令長官又ハ司令官ヲ訪問スルトキハ一中隊以内ノ儀仗隊ヲ供スルコトヲ得
第百三十六条 儀仗隊ニハ軍楽隊ヲ附スルヲ例トス
第百三十七条 海軍葬儀ニ列スル儀仗隊ニ関シテハ本令ニ定ムルモノノ外別ニ定ムル所ニ依ル
第二章 遥拝式
第百三十八条 左ニ掲クル祝祭日等其ノ他特ニ命令アル場合ニハ艦船部隊学校等ニ於テ遥拝式ヲ行フ但シ東京ニ在リテハ生徒下士卒ノミ之ヲ行フ
一月一日
元始祭
紀元節
春季皇霊祭
神武天皇祭
明治天皇祭
秋季皇霊祭
神嘗祭
天長節祝日
新嘗祭
靖国神社大祭
第百三十九条 一月一日紀元節及天長節祝日ニハ艦船ニ於テハ第五十七条ノ規定ニ準シ総員整列シテ宮城ノ方向ニ面シ敬礼ヲ行ヒ畢リテ御写真ヲ拝スヘシ部隊学校亦之ニ準ス地方官衙ニ在リテハ御写真ノミヲ拝スヘシ
第百四十条 前条以外ノ祝祭日等ニハ艦船部隊学校ニ於テハ御写真ヲ拝セサル外前条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ但シ喇叭ハ「国ノ鎮メ」靖国神社大祭ニハ喇叭「水漬ク屍」一回ヲ吹奏ス
第三章 迎送式及伺候式
第百四十一条 天皇軍隊艦隊ノ所在地ニ著御発御ノトキハ迎送式及伺候式ヲ行フ特命検閲使其ノ検閲スヘキ軍隊艦隊ノ所在地ニ著発ノトキ又ハ司令長官若ハ司令官初テ著任シ若ハ職ヲ解キ退去スルトキ亦同シ但シ司令官ニ対スル迎送式ハ要港部司令官又ハ独立艦隊司令官ニ対シテノミ之ヲ行フ
第百四十二条 迎送式ハ左ノ各号ニ依リ之ヲ行フヘシ但シ迎送者ハ第一号ノ場合ニ於テハ天皇ニ対シテノミ敬礼ヲ行ヒ其ノ他ノ場合ニ於テハ之ヲ受クル者ニ対スルノ外第百七条第二項ノ規定ニ準シ天皇皇族又ハ勅使ニ対シ敬礼ヲ行フ
一 天皇ニ対シテハ所在准士官以上及約半数ノ下士卒武装ヲ為サス道路ノ側方ニ整列シテ奉迎奉送ス
二 特命検閲使ニ対シテハ所在准士官以上適宜ノ場所ニ整列シテ迎送ス
三 鎮守府司令長官又ハ要港部司令官ニ対シテハ所在麾下准士官以上及約半数ノ下士卒第一号ニ準シ迎送ス
四 艦隊司令長官又ハ司令官ニ対シテハ其ノ旗艦以外ノ麾下ノ各艦長及各艦士官室士官、士官次室士官、准士官総代各一名其ノ旗艦ニ参集シ対舷ニ整列シテ第七十二条第一項第一号ノ諸員ト共ニ迎送ス
海路ニ於テハ前項各号ノ外艦艇若干隻ヲ港外ニ派遣シテ迎送セシムルコトヲ得
第百四十三条 伺候式ハ左ノ各号ニ依リ之ヲ行フヘシ
一 天皇ニ対シテハ所在士官以上行在所又ハ乗御ノ艦船ニ奉伺ス
二 特命検閲使ニ対シテハ所在士官以上艦船官庁又ハ旅館ニ伺候ス
三 司令長官又ハ司令官ニ対シテハ所在麾下士官以上旗艦官庁又ハ旅館ニ伺候ス
第百四十四条 迎送式及伺候式ハ天皇ニ対スル場合ヲ除クノ外昼間之ヲ行フヲ例トス
第百四十五条 伺候式ハ之ヲ受クル者ノ著後又ハ出発前二十四時間以内ニ之ヲ行フヲ例トス
第百四十六条 天皇ニ奉伺スルトキハ拝謁ヲ賜ハル場合ヲ除クノ外掛官ノ指定ニ従ヒ署名簿ニ自己ノ官爵氏名ヲ書シ退出スヘシ
特命検閲使司令長官又ハ司令官ノ艦船官庁又ハ旅館ニ伺候スルトキハ対謁スルヲ例トス但シ受礼者之ヲ辞スルトキハ官職氏名ヲ記シタル名刺ヲ出シ其ノ意ヲ通シ退去スヘシ
第百四十七条 対謁ノ場合ニ於テハ特ニ対話陳述ヲ要スルニ非サレハ敬礼ヲ行ヒタル後直ニ退去スヘシ
第四章 観兵式
第百四十八条 観兵式ハ特命検閲使検閲ノ為又ハ司令長官若ハ司令官麾下陸戦隊ノ軍容ヲ閲スル為其ノ他特ニ命令アルトキ之ヲ行フ
観兵式ヲ閲スル将校ヲ観閲官ト称ス
第百四十九条 観閲官式場ニ来ル稍前ニ於テ陸戦隊指揮官ハ喇叭「気ヲ著ケ」ヲ吹奏セシメ大隊長ハ著剣ノ号令ヲ下ス
第百五十条 観閲官臨場スルトキハ陸戦隊指揮官之ヲ迎ヘテ剣ノ敬礼ヲ行ヒ喇叭「海行カハ」一回ヲ吹奏セシメ当日出場シタル将校以下ノ総員数ヲ申告ス
第百五十一条 観閲官閲兵中及退場ノ際ハ諸隊ハ第百条ノ規定ニ準シ敬礼ヲ行フヘシ
第五章 観艦式
第百五十二条 観艦式ハ国家ノ大典ニ際シ又ハ大演習其ノ他例年秋季ニ於テ之ヲ行フヲ例トス
観艦式ノ挙行ハ勅旨ニ依ル
第百五十三条 親閲ノ当日ハ軍艦ハ満艦飾ヲ、駆逐艦水雷艇及潜水艇ハ艦飾ヲ行ヒ夜間ハ軍艦ニ限リ電灯艦飾ヲ行フヲ例トス
附 則
本令ハ大正三年三月一日ヨリ之ヲ施行ス