朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル麥酒稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年三月三十日
內閣總理大臣 侯爵 伊藤博文
大藏大臣 子爵 渡邊國武
法律第十二號
麥酒稅法
第一條 麥酒(ビール)ニハ本法ニ依リ麥酒稅ヲ課ス
第二條 麥酒ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所每ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ其ノ製造ヲ廢止セムトスルトキハ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
第三條 麥酒稅ハ麥酒一石ニ付金七圓ノ割合ヲ以テ其ノ製造石數ニ應シ麥酒ヲ製造スル者ヨリ之ヲ徵收ス
第四條 麥酒稅ハ每月中ノ査定石數ニ依リ翌月中ニ於テ一時ニ之ヲ納ムヘシ但シ製造ヲ廢止シタルトキハ卽納トス
第五條 麥酒ヲ製造スル者麥酒稅ヲ逋脫シ又ハ逋脫セムトスルノ所爲アリト認ムルトキハ政府ハ直ニ麥酒稅ノ全部又ハ一部ヲ徵收ス此ノ場合ニ於テハ納稅ノ擔保トシテ麥酒ヲ差押フルコトヲ得
第六條 麥酒ノ製造石數ハ製成ノ時容器ノ容量ニ依リ之ヲ査定ス
犯則其ノ他ノ事故ニ依リ前項ニ依リ難キ場合ニ於テハ現在ノ麥酒又ハ證憑物件ニ就キ其ノ製造石數ヲ査定シ麥酒稅ヲ課ス
第七條 災害ニ罹リ亡失シタル麥酒ニ關シテハ其ノ麥酒稅ヲ免除スルコトヲ得但シ製造場外ニ移出シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第八條 麥酒ヲ製造スル者ハ製造石數査定前ニ於テ其ノ麥酒ヲ他人ニ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第九條 麥酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者ハ麥酒ノ製造、出入ニ關シ詳細明瞭ニ其ノ事實ヲ帳簿ニ記載スヘシ
第十條 收稅官吏ハ命令ノ規定ニ依リ麥酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者ノ所持ニ係ル麥酒、其ノ製造、出入ニ關スル一切ノ帳簿書類及麥酒製造又ハ販賣上必要ナル建築物、器械、材料其ノ他ノ物件ヲ檢査シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十一條 免許ヲ受ケスシテ麥酒ヲ製造シタル者ハ其ノ麥酒稅五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス
第十二條 麥酒ヲ製造スル者詐僞其ノ他不正ノ所爲ヲ以テ其ノ製造石數ノ査定ヲ免カレ又ハ免カレムトシタルトキハ其ノ麥酒稅五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ三十圓ヲ下ルコトヲ得ス
第十三條 麥酒ヲ製造スル者故意ニ事故ヲ作爲シ又ハ詐術ヲ構ヘ麥酒稅ノ免除ヲ得又ハ得ムトシタルトキハ其ノ申請ニ係ル總石數ノ麥酒稅五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ三十圓ヲ下ルコトヲ得ス
第十四條 麥酒ヲ製造スル者第八條ノ禁令ヲ犯シタルトキハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 麥酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者其ノ原料又ハ帳簿書類ヲ隱蔽シタルトキハ十圓以上三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 麥酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者麥酒ノ製造、出入ニ關シ帳簿ノ記載又ハ事實ノ申吿ヲ詐リ若ハ怠リタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十七條 收稅官吏其ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ其ノ執行ヲ拒ミ又ハ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第十八條 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減輕、再犯加重、數罪俱發ノ例ヲ用井ス但シ刑法第七十五條第一項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十九條 麥酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ麥酒製造者又ハ販賣者ヲ處罰ス
第二十條 麥酒製造ヲ廢止シタル者及其ノ相續人ハ麥酒稅完納前ニ在リテハ總テ本法ノ規定ニ從フ
附 則
第二十一條 本法ハ明治三十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十二條 本法施行前ヨリ麥酒ノ製造ヲ爲ス者本法施行後十日以內ニ於テ製造場一箇所每ニ政府ニ申吿スルトキハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル麦酒税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年三月三十日
内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
大蔵大臣 子爵 渡辺国武
法律第十二号
麦酒税法
第一条 麦酒(ビール)ニハ本法ニ依リ麦酒税ヲ課ス
第二条 麦酒ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所毎ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ其ノ製造ヲ廃止セムトスルトキハ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
第三条 麦酒税ハ麦酒一石ニ付金七円ノ割合ヲ以テ其ノ製造石数ニ応シ麦酒ヲ製造スル者ヨリ之ヲ徴収ス
第四条 麦酒税ハ毎月中ノ査定石数ニ依リ翌月中ニ於テ一時ニ之ヲ納ムヘシ但シ製造ヲ廃止シタルトキハ即納トス
第五条 麦酒ヲ製造スル者麦酒税ヲ逋脱シ又ハ逋脱セムトスルノ所為アリト認ムルトキハ政府ハ直ニ麦酒税ノ全部又ハ一部ヲ徴収ス此ノ場合ニ於テハ納税ノ担保トシテ麦酒ヲ差押フルコトヲ得
第六条 麦酒ノ製造石数ハ製成ノ時容器ノ容量ニ依リ之ヲ査定ス
犯則其ノ他ノ事故ニ依リ前項ニ依リ難キ場合ニ於テハ現在ノ麦酒又ハ証憑物件ニ就キ其ノ製造石数ヲ査定シ麦酒税ヲ課ス
第七条 災害ニ罹リ亡失シタル麦酒ニ関シテハ其ノ麦酒税ヲ免除スルコトヲ得但シ製造場外ニ移出シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第八条 麦酒ヲ製造スル者ハ製造石数査定前ニ於テ其ノ麦酒ヲ他人ニ譲渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第九条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ハ麦酒ノ製造、出入ニ関シ詳細明瞭ニ其ノ事実ヲ帳簿ニ記載スヘシ
第十条 収税官吏ハ命令ノ規定ニ依リ麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ノ所持ニ係ル麦酒、其ノ製造、出入ニ関スル一切ノ帳簿書類及麦酒製造又ハ販売上必要ナル建築物、器械、材料其ノ他ノ物件ヲ検査シ又ハ監督上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
第十一条 免許ヲ受ケスシテ麦酒ヲ製造シタル者ハ其ノ麦酒税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス但シ五十円ヲ下ルコトヲ得ス
第十二条 麦酒ヲ製造スル者詐偽其ノ他不正ノ所為ヲ以テ其ノ製造石数ノ査定ヲ免カレ又ハ免カレムトシタルトキハ其ノ麦酒税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス但シ三十円ヲ下ルコトヲ得ス
第十三条 麦酒ヲ製造スル者故意ニ事故ヲ作為シ又ハ詐術ヲ構ヘ麦酒税ノ免除ヲ得又ハ得ムトシタルトキハ其ノ申請ニ係ル総石数ノ麦酒税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス但シ三十円ヲ下ルコトヲ得ス
第十四条 麦酒ヲ製造スル者第八条ノ禁令ヲ犯シタルトキハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者其ノ原料又ハ帳簿書類ヲ隠蔽シタルトキハ十円以上三百円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者麦酒ノ製造、出入ニ関シ帳簿ノ記載又ハ事実ノ申告ヲ詐リ若ハ怠リタルトキハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十七条 収税官吏其ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ其ノ執行ヲ拒ミ又ハ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ依ル
第十八条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減軽、再犯加重、数罪俱発ノ例ヲ用井ス但シ刑法第七十五条第一項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十九条 麦酒ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ麦酒製造者又ハ販売者ヲ処罰ス
第二十条 麦酒製造ヲ廃止シタル者及其ノ相続人ハ麦酒税完納前ニ在リテハ総テ本法ノ規定ニ従フ
附 則
第二十一条 本法ハ明治三十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十二条 本法施行前ヨリ麦酒ノ製造ヲ為ス者本法施行後十日以内ニ於テ製造場一箇所毎ニ政府ニ申告スルトキハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス