朕東京市區ノ營業衞生防火及通運等永久ノ利便ヲ圖ル爲メ東京市區改正條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十一年八月十六日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
內務大臣 伯爵 山縣有朋
大藏大臣 伯爵 松方正義
勅令第六十二號
東京市區改正條例
第一條 東京市區改正ノ設計及每年度ニ於テ施行スヘキ事業ヲ議定スル爲メ東京市區改正委員會ヲ置キ內務大臣ノ監督ニ屬セシム其組織權限ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
東京市區改正委員會ノ費用ハ市區改正費ヲ以テ之ヲ支辨ス
第二條 東京市區改正委員會ニ於テ市區改正ノ設計ヲ議定シタルトキハ內務大臣ニ具申スヘシ內務大臣ハ審査ノ上內閣ノ認可ヲ受ケ東京府知事ニ付シ之ヲ公吿セシムヘシ
第三條 市區改正ノ費用ニ充ツル爲メ東京府區部內ニ於テ左ノ特別稅ヲ賦課ス
一 地租割 地租同額以內但耕地ヲ除ク
一 營業稅並雜種稅 地方稅十分ノ四以內
一 家屋稅 同上
一 淸酒 區內ニ輸入又ハ區內ニ於テ釀造販賣スルモノ一石ニ付金五拾錢以內
第四條 特別稅滯納者ハ租稅滯納處分法ニ依テ處分ス
第五條 市區改正ノ費用ヲ補助スル爲メ東京府區部ノ基本財產トシテ即今官用ニ供セサル東京府區部內ノ官有河岸地ハ總テ之ヲ下付ス
此河岸地ヨリ收入スル金額ハ市區改正事業ノ終ルマテ他ニ之ヲ支出スルコトヲ得ス
此河岸地ハ市區改正事業ノ終ルマテ其地租ヲ免除ス
此河岸地ハ賣却讓與スルコトヲ許サス但已ムヲ得サル場合ニ於テハ東京府知事東京府區部會ノ議決ヲ取リ內務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ賣却讓與スルコトヲ得
第六條 市區改正ノ經費及特別稅賦課徵收ノ方法ハ府縣會規則ニ依リ東京府知事東京府區部會ニ付シ之ヲ議定セシムヘシ
第七條 第三條第五條ノ收入合計ハ每年度三拾萬圓ヨリ少カラス五拾萬圓ヨリ多カラサルモノトス但每年度雜收入及前年度繰越金ハ本條ノ收入額ニ合算スルコトヲ得ス
第八條 前條ノ收入金額ハ先ツ燒失跡地改正事業ノ費用ニ充テ殘餘ヲ以テ其他ノ改正費用ニ充ツヘシ
第九條 東京府知事ハ每年四月ヨリ翌年三月マテヲ一周年度トナシ前年十月マテニ東京市區改正委員會ニ於テ議定シタル市區改正事業ニ屬スル收支豫算ヲ立テ東京府區部會ノ議決ヲ取リ內務大臣大藏大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ施行スヘシ
東京府知事前項ノ認可ヲ受タルトキハ之ヲ東京市區改正委員會ニ報吿スヘシ
第十條 東京府知事ハ一周年度ノ出納ヲ計査シ精算帳及計表ヲ製シ翌年通常會議ノ初メニ於テ之ヲ東京府區部會ニ報吿シ然ル後內務大臣大藏大臣及東京市區改正委員會ニ報吿スヘシ
第十一條 年度中ニ於テ豫知スヘカラサル事狀ニ由リ旣定ノ事業ヲ變更セサルヲ得サルトキハ東京府知事東京市區改正委員會ノ議定ヲ取リ內務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ施行スルコトヲ得但次囘ノ東京府區部會ニ之ヲ報吿スヘシ
第十二條 市區改正ノ爲メ一時巨額ノ支出ヲ要スルトキハ東京府區部ハ每年收入スヘキ特別稅ヲ目的トシ五十箇年以內ノ期限ヲ以テ公債ヲ募集スルコトヲ得其金額及起債ノ方法ハ東京府知事之ヲ定メ東京府區部會ノ議決ヲ取リ內務大臣大藏大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十三條 市區改正ニ屬スル會計ハ東京府知事特別ニ整理スヘシ
第十四條 市區改正ノ事務ハ東京府知事其執行ノ責ニ任スヘシ
第十五條 市區改正ニ係ル土地建物處分方法ハ別ニ之ヲ定ム
第十六條 本條例ハ明治二十二年一月一日ヨリ施行ス
朕東京市区ノ営業衛生防火及通運等永久ノ利便ヲ図ル為メ東京市区改正条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十一年八月十六日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
内務大臣 伯爵 山県有朋
大蔵大臣 伯爵 松方正義
勅令第六十二号
東京市区改正条例
第一条 東京市区改正ノ設計及毎年度ニ於テ施行スヘキ事業ヲ議定スル為メ東京市区改正委員会ヲ置キ内務大臣ノ監督ニ属セシム其組織権限ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
東京市区改正委員会ノ費用ハ市区改正費ヲ以テ之ヲ支弁ス
第二条 東京市区改正委員会ニ於テ市区改正ノ設計ヲ議定シタルトキハ内務大臣ニ具申スヘシ内務大臣ハ審査ノ上内閣ノ認可ヲ受ケ東京府知事ニ付シ之ヲ公告セシムヘシ
第三条 市区改正ノ費用ニ充ツル為メ東京府区部内ニ於テ左ノ特別税ヲ賦課ス
一 地租割 地租同額以内但耕地ヲ除ク
一 営業税並雑種税 地方税十分ノ四以内
一 家屋税 同上
一 清酒 区内ニ輸入又ハ区内ニ於テ醸造販売スルモノ一石ニ付金五拾銭以内
第四条 特別税滞納者ハ租税滞納処分法ニ依テ処分ス
第五条 市区改正ノ費用ヲ補助スル為メ東京府区部ノ基本財産トシテ即今官用ニ供セサル東京府区部内ノ官有河岸地ハ総テ之ヲ下付ス
此河岸地ヨリ収入スル金額ハ市区改正事業ノ終ルマテ他ニ之ヲ支出スルコトヲ得ス
此河岸地ハ市区改正事業ノ終ルマテ其地租ヲ免除ス
此河岸地ハ売却譲与スルコトヲ許サス但已ムヲ得サル場合ニ於テハ東京府知事東京府区部会ノ議決ヲ取リ内務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ売却譲与スルコトヲ得
第六条 市区改正ノ経費及特別税賦課徴収ノ方法ハ府県会規則ニ依リ東京府知事東京府区部会ニ付シ之ヲ議定セシムヘシ
第七条 第三条第五条ノ収入合計ハ毎年度三拾万円ヨリ少カラス五拾万円ヨリ多カラサルモノトス但毎年度雑収入及前年度繰越金ハ本条ノ収入額ニ合算スルコトヲ得ス
第八条 前条ノ収入金額ハ先ツ焼失跡地改正事業ノ費用ニ充テ残余ヲ以テ其他ノ改正費用ニ充ツヘシ
第九条 東京府知事ハ毎年四月ヨリ翌年三月マテヲ一周年度トナシ前年十月マテニ東京市区改正委員会ニ於テ議定シタル市区改正事業ニ属スル収支予算ヲ立テ東京府区部会ノ議決ヲ取リ内務大臣大蔵大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ施行スヘシ
東京府知事前項ノ認可ヲ受タルトキハ之ヲ東京市区改正委員会ニ報告スヘシ
第十条 東京府知事ハ一周年度ノ出納ヲ計査シ精算帳及計表ヲ製シ翌年通常会議ノ初メニ於テ之ヲ東京府区部会ニ報告シ然ル後内務大臣大蔵大臣及東京市区改正委員会ニ報告スヘシ
第十一条 年度中ニ於テ予知スヘカラサル事状ニ由リ既定ノ事業ヲ変更セサルヲ得サルトキハ東京府知事東京市区改正委員会ノ議定ヲ取リ内務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ施行スルコトヲ得但次回ノ東京府区部会ニ之ヲ報告スヘシ
第十二条 市区改正ノ為メ一時巨額ノ支出ヲ要スルトキハ東京府区部ハ毎年収入スヘキ特別税ヲ目的トシ五十箇年以内ノ期限ヲ以テ公債ヲ募集スルコトヲ得其金額及起債ノ方法ハ東京府知事之ヲ定メ東京府区部会ノ議決ヲ取リ内務大臣大蔵大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十三条 市区改正ニ属スル会計ハ東京府知事特別ニ整理スヘシ
第十四条 市区改正ノ事務ハ東京府知事其執行ノ責ニ任スヘシ
第十五条 市区改正ニ係ル土地建物処分方法ハ別ニ之ヲ定ム
第十六条 本条例ハ明治二十二年一月一日ヨリ施行ス