(送致事件の調査)
第三十九条 外国軍用品審判所は、第二十七条第三項又は第三十四条の規定による事件の送致を受けたときは、当該事件について必要な調査をしなければならない。
(調査のための強制処分)
第四十条 外国軍用品審判所は、第三十四条の規定による事件の送致を受けたときは、当該事件に係る船舶の船長等に対し、当該船舶の出航を禁止することができる。
2 前項の規定により出航を禁止する期間は、事件が送致された日から起算して一月とする。ただし、外国軍用品審判所は、通じて一月を超えない範囲で、当該期間を延長することができる。
3 外国軍用品審判所は、第四十五条第一項又は第二項の規定による決定をしたとき、その他第一項の船舶の出航を禁止する必要がなくなったときは、前項の期間内であっても、第一項の規定による命令を取り消さなければならない。
第四十一条 外国軍用品審判所は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 当該事件に係る船舶の乗組員その他の関係者又は参考人に出頭を命じて審問し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。
三 当該事件に係る船舶の船舶書類、積荷その他当該船舶に関する物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出された物件若しくは第二十七条第三項の規定による送致を受けた積荷を留置すること。
四 当該事件に係る船舶その他必要な場所に立ち入り、前号に規定する物件を検査すること。
2 外国軍用品審判所は、相当と認めるときは、外国軍用品審判所の事務官を調査官に指定し、前項の処分をさせることができる。
3 前項の規定により立入検査をする調査官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(留置物件の保管等)
第四十二条 外国軍用品審判所は、前条第一項第三号の規定により留置した物件(以下「留置物件」という。)のうち運搬又は保管に不便なものについては、看守者を置き、又は適当と認める者に、その承諾を得て、これを保管させることができる。
2 外国軍用品審判所は、留置物件のうち、人の生命又は財産を害する急迫した危険を生ずるおそれがあるものを廃棄することができる。
(留置物件の返還)
第四十三条 外国軍用品審判所は、留置物件について留置の必要がなくなったときは、その返還を受けるべき者にこれを還付しなければならない。
2 外国軍用品審判所は、前項の留置物件の返還を受けるべき者の住所若しくは居所がわからないため、又はその他の事由によりこれを還付することができない場合においては、政令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
3 前項の公告に係る留置物件について、公告の日から六月を経過しても還付の請求がないときは、その留置物件は、国庫に帰属する。
4 前項の期間内であっても、価値のない留置物件は、これを廃棄し、保管に不便な物件は、政令で定めるところにより、これを売却してその代価を保管することができる。
(調書の作成)
第四十四条 外国軍用品審判所は、事件について必要な調査をしたときは、その要旨を調書に記載し、かつ、特に第四十条第一項又は第四十一条第一項の規定による処分があったときは、その結果を明らかにしておかなければならない。
(審判の開始)
第四十五条 外国軍用品審判所は、事件について必要な調査の結果、第六条各項に規定する場合のいずれかに該当すると認めるときは、審判を開始する旨の決定をしなければならない。
2 外国軍用品審判所は、前項に規定する場合を除き、審判を開始しない旨の決定をしなければならない。
3 第四十条の規定は、外国軍用品審判所が、事件について必要な調査の結果、第六条第四項に規定する場合に該当すると認めて、第一項の規定による審判開始決定をしたときについて準用する。この場合において、第四十条第二項本文中「事件が送致された日」とあるのは「第四十五条第一項の規定による審判開始決定の日」と、「一月」とあるのは「三月」と、同項ただし書中「通じて一月を超えない範囲で、当該期間を延長する」とあるのは「特に必要があると認めるときは、一月ごとに当該期間を更新する」と、同条第三項中「第四十五条第一項又は第二項の規定による決定」とあるのは「第五十二条第四項又は第五項の審決」と読み替えるものとする。
第四十六条 外国軍用品審判所は、前条第一項の規定による審判開始決定をしたときは、政令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
2 前項の公告があったときは、利害関係者は、公告の日から三十日以内に、外国軍用品審判所に意見書を提出することができる。
3 外国軍用品審判所は、前項の期間が経過した後、審判を開始するものとする。
4 第二項の規定にかかわらず、利害関係者は、外国軍用品審判所がやむを得ない事情があると認めるときは、同項の期間が経過した後であっても、意見書を提出することができる。
(調査官の権限)
第四十七条 第四十一条第二項の規定により指定された調査官は、審判に立ち会い、証拠の申出その他必要な行為をすることができる。
(審判の公開)
第四十八条 審判は、これを公開しなければならない。ただし、国の安全が害されるおそれ又は外国政府との交渉上不利益を被るおそれがあると認めるときは、これを公開しないことができる。
(審判長の権限)
第四十九条 審判長は、開廷中審判を指揮し、審判廷の秩序を維持する。
2 審判長は、審判を妨げる者に対し退廷を命じ、その他審判廷の秩序を維持するため必要な措置をとることができる。
(証拠の取調べ)
第五十条 外国軍用品審判所は、申立により、又は職権で、必要な証拠を取り調べることができる。
2 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百四十三条から第百四十七条まで、第百四十九条、第百五十四条から第百五十六条まで、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、外国軍用品審判所が、審判に際して、参考人を審問し、又は鑑定人に鑑定を命ずる手続について準用する。この場合において、同法第百四十三条及び第百六十五条中「裁判所」とあるのは「外国軍用品審判所」と、同法第百四十三条、第百四十四条、第百四十五条第一項、第百五十四条及び第百五十六条第一項中「証人」とあるのは「参考人」と、同法第百四十三条、第百四十四条及び第百四十五条第一項中「尋問する」とあるのは「審問する」と、同法第百四十九条ただし書中「、証言の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で」とあるのは「その他外国軍用品審判所が」と、同法第百五十五条第一項中「尋問しなければ」とあるのは「審問しなければ」と読み替えるものとする。
(利害関係者の意見の陳述等)
第五十一条 第四十六条第二項又は第四項の規定により意見書を提出した利害関係者又はその代理人は、外国軍用品審判所に対し、審判廷における意見の陳述を申し出、又は証拠を提出することができる。
2 外国軍用品審判所は、前項の申出があるときは、審判の期日において、その意見を陳述させるものとする。ただし、審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代えて意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
(審決)
第五十二条 外国軍用品審判所は、審判手続を経た後、積荷が第二条第二号イに該当する外国軍用品であると認めるときは、当該積荷について廃棄の審決をしなければならない。
2 外国軍用品審判所は、審判手続を経た後、積荷が第二条第二号ロからチまでのいずれかに該当する外国軍用品であると認めるときは、当該積荷について輸送停止の審決をしなければならない。
3 外国軍用品審判所は、審判手続を経た後、積荷が第二条第二号リからヲまでのいずれかに該当する外国軍用品であると認める場合において、必要があると認めるときは、当該積荷について輸送停止の審決をしなければならない。
4 外国軍用品審判所は、審判手続を経た後、第三十四条の規定による送致を受けた事件に係る船舶が外国軍用品等を輸送しており、かつ、第六条第四項各号のいずれかに該当すると認める場合において、当該船舶が外国軍用品等の海上輸送を反復して行うことを防止するため必要があると認めるときは、航行停止の審決をしなければならない。
5 外国軍用品審判所は、審判手続を経た後、第六条各項に規定する場合のいずれにも該当しないと認めるときは、その旨を明らかにする審決をしなければならない。
(証拠による事実認定)
第五十三条 前条の審決においては、公知の事実を除き、審判手続において取り調べた証拠によって事実を認定しなければならない。
(審決の方式)
第五十四条 第五十二条の審決においては、認定した事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。
(審決の効力発生時期)
第五十五条 審決は、審判廷における言渡しによってその効力を生ずる。
(審決の公告)
第五十六条 外国軍用品審判所は、第五十二条の審決をしたときは、政令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
(審決の取消し)
第五十七条 外国軍用品審判所は、第五十二条第二項から第四項までの審決をした後、当該審決に係る積荷又は船舶についてその所有権の移転、仕向地の変更その他の事由により当該審決の要件である事実が消滅し、又は当該事実に変更があったと認めるときは、審決をもってこれを取り消すことができる。
第五十八条 外国軍用品審判所は、第五十二条第二項から第四項までの審決をした後、武力攻撃事態が終結したときは、遅滞なく、審決をもってこれを取り消さなければならない。
(事件記録の閲覧、審決書の謄本の交付等)
第五十九条 利害関係者は、外国軍用品審判所に対し、審判開始決定後、事件記録の閲覧若しくは謄写又は審決書の謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
(内閣府令への委任)
第六十条 この法律に定めるもののほか、外国軍用品審判所の審判の手続に関し必要な事項は、内閣府令で定める。